中国共産党最高指導部を決める5年に一度の党大会が22日閉幕したが、最後に世紀の大事件が待っていた。
閉幕式の会場で、異例の3期目を確定させた習近平総書記の目の前で前総書記の胡錦濤氏が強制退場させられたのだ。
この衝撃映像はまたたく間に世界中に拡散され、さまざまな臆測を呼んでいるが、中国政治に詳しい評論家の石平太郎氏は「習近平の“逆クーデター”だ」と、その内幕を明かす。
大事件が起こったのは、今後5年間の中国を動かす最高指導部である政治局常務委員7人の承認が行われた中国共産党大会の最終日だった。
習氏の隣に座っていた胡氏が、党関係者に退席を促されて手を振り払うなどして1分以上にわたって抵抗。
最終的にわきを抱きかかえられるようにして立たせられ、習氏に何事かを言い放ち、“強制退場”させられてしまったのだ。
これを受けてツイッターを中心に世界中に映像が拡散し、「胡錦濤が粛清された」といった声が多数上がるほど注目を集める事態になっている。
いったい、この大事件の裏には何があったのか?
中国政治に詳しい石平氏は「すべては習近平や胡錦濤といった最高指導部や長老が集まった、今年8月の北戴河会議までさかのぼる」として、事件の内幕をこう明かす。
「異例の3期目を目指していた習近平は北戴河会議で長老たちの承認を得るため、胡錦濤派の李克強首相(前序列2位)と、全国政治協商会議主席の汪洋(同4位)を最高指導部に残しつつ、それぞれ次期全人代委員長と次期首相のポストを与えることで合意したとみられている。
しかし、3期目を確定的にした習近平は、胡錦濤派を一掃する裏切りに出た。新しい最高指導部の名簿から李克強と汪洋の名前を不意打ちで削除。これに気づいた胡錦濤が抵抗し、あの“強制退場”につながった」
石平氏の情報によれば新しい最高指導部の名簿草案には、21日午前の段階まで李氏と汪氏の名前は残っていた。
しかし、その後、各地域の代表団が検討する段階で、習氏の息のかかった上海市、重慶市、天津市の代表団から「もっと若返りを図るべき」との主張があり、これを根拠に2人の名前が名簿から削除されてしまったという。
その結果、李氏と汪氏ら胡錦濤派は、党大会最終日の会場で席に置かれた名簿を見て人事を初めて知ることに…。突然のことに2人がぼうぜんとするなか、唯一、抵抗したのが胡氏だったが、時すでに遅しだ。
反論するにもマイクのスイッチも切られており、何もさせてもらえないまま“強制退場”させられることになった。
こうして胡錦濤派を一掃したかった習氏の“逆クーデター”ともいうべき奇襲作戦は成功。
これまで胡錦濤派が習氏のブレーキ役を担ってきたが、今後は新しい最高指導部の7人すべてが習近平派となり、まさにやりたい放題となる。
今回の事件について石平氏は「前代未聞ですよ。これまで中国共産党の権力闘争は裏でとんでもないことをしていても表向きは一致団結を装ってきた。
胡錦濤の強制退場は乱暴すぎるし、今後の中国の暗い未来を暗示している」と指摘。
台湾問題についても「もう本当に習近平を止める人は誰もいなくなった。
ロシアのプーチン大統領以上の“完全独裁体制”を作ったから、あとは習近平の心ひとつであらゆる可能性が実行され得る」と警鐘を鳴らした。
絶対権力を手にした習氏に対し、世界の首脳がどう対応していくのか。
ますます難しいかじ取りを迫られそうだ。