カメルーンは英国領カメルーンとフランス領カメルーンという 2 つの旧植民地国家によ って形成されている。
旧英国領カメルーンの一部が、現在の英語圏カメルーンである。
こ の地域は分離主義を主張しており、特に 2016 年 11 月以降はこの要因が政治に大きく影響 を与えている。
分離独立運動は、小規模ではあるが抗議デモに発展し、政治リスクをもた らしている。
カメルーンでは、ビヤ大統領が 1982 年以来政権を維持している。
就任初期には、開かれ た政治体制を構築したいという意志がみられたが、1984 年にクーデター未遂が発生して以 来、独裁政治の基盤を固め始めた。
それ以来、選挙は不正に行われ、与党のカメルーン人 民民主連合 (CPDM) が国内政治を厳しく統制している状況で、ビヤ氏が死去する前に権力を 手放す見込みはない。
ビヤ氏が死去した際には、暴力を伴う政権移行が行われるリスクが 高い。
オックスフォード・エコノミクスは、ビヤ氏が大統領を続ける限り、改善への変化 は確実にないものと見ている。1
1 オックスフォード・エコノミクス
1990 年以降、カメルーン政府は投資促進、農業の効率化、貿易の改善などを図り、中央 銀行の資本構成を改めさせるために IMF や世界銀行のプログラムを活用してきた。
IMF は 経済改革を推し進めようとしており、予算の透明性の向上や国営企業の民営化、貧困削減 プログラムなどに取り組んでいる。
石油価格の低下により収入が減ったことから、政府は 国家予算を圧迫している電力、食糧および燃料に対して、教育や医療やインフラ事業から 予算を流用して補助金を提供している。2
2
〇電気通信、放送および郵便分野
〇概要
BMI リサーチの 2019 年度第 1 四半期版によれば、カメルーンの電気通信市場は 2027 年 まで前向きな展望を維持している。
市場には多大なビジネス機会が存在し、MTN や Airtel などの経験豊富な企業が優位な地位を占める状況だ。
一方、購入されたものの使用されて いない SIM カードを無効化しようという動きは、モバイル契約件数の増加予測に対する大 きなリスク要因である。
さらに、増大する政治的不安定性が 3G/4G の普及に対する下方修 正リスクとなっている。
特に、政府が国内におけるインターネットサービスの停止につい て、再び事業者に指示した場合はリスクが増大する。
カメルーンは光ファイバー網に積極的に投資している。
カメルーンでは、規制機関であ る通信規制局(ART)が光ファイバーへの投資を奨励しており、事業者がコストを下げる ことにより先進的なサービスに投資できるように取り組んでいる。
今後 5 年間は、データ およびデータ中心型の付加価値サービス(VAS)が、モバイルセクターにおける成長の主 なドライバーとなるという見解が示されている。3
3 BMI リサーチ 4 Ibid
〇事業における現在の規模とスコープ
モバイル音声およびブロードバンドセクターにおける高い競争と、新しい国際ケーブル による安価な帯域幅が利用可能になったことでカメルーンの電気通信市場は便益を得てい る。
同市場は 2015 年第 4 四半期に始まった SIM 登録義務により、2016 年と 2017 年にそれ ぞれ 124 万人と 91.2 万人ものモバイル契約者数の減少が生じているが、2018 年第 2 四半期 における契約者数は 1,786 万人を僅かに下回っており、年間成長率は 1.7%を記録している。
Fitch では、有機的な成長のポテンシャルにより、勢いある 3G/4G 普及が今後も市場で続く と見ている。4
3 BMI リサーチ 4 Ibid
〇電気通信および郵便事業における主要プレーヤー
〇 携帯電話とインターネット
カメルーンの携帯電話市場では、長年にわたり MTN Cameroon と Orange Cameroon が競 合している。
モバイル事業者が 2 社しかいないという、アフリカ諸国の中でも珍しい状況 だった。
その後、2014 年後半にNextell Cameroon(Viettel が大半を所有)が市場に参入し、 3G モバイルサービスを開始した。
Nextell Cameroon は急速に成長しており、300 万人以上 もの契約者を獲得し市場シェアも 16%獲得したとしている。
2023 年までのスマートフォンの将来予測 5
5 独自の計算 (3 G/4G の現在の普及率 x 2023 年度の人口) + 価格の低下につき 10 % を考慮、中古 については考慮対象外
2015 年初頭に MTN と Orange の両社がそれぞれ 3G サービスを開始したことにより、競 合は激化している。
2015 年末には LTE に基づいたモバイルブロードバンドが確立され、急 速に発展しているモバイルブロードバンドセクターに新たな風を吹き込んだ。
今後数年間 における企業の投資計画は、固定インフラのみで通信サービスが行き届いていない農村部 において、モバイルブロードバンドサービスを展開することに注力されるだろう。 6
6
https://www.prnewswire.com/news-releases/cameroon---telecoms-mobile-and-broadband--- statistics-and-analyses-300552288.html
7 BMI リサーチ
住所: P. O. Box 1571, Yaounde 設立年: 1974 電話: 237 223 4065 ファックス: 237 223 0303 主要幹部: デビッド・ンコト・エマネ、統括責任者
〇Nexttel (Viettel)
Viettel はベトナム、ラオス、カンボジア、ハイチ、ペルー、モザンビーク、カメルーン、 タンザニア、ブルンジにおいて電気通信サービスを提供している。同社は様々な所得層や 農村部のほか、遠隔地にも電気通信サービスを提供している。
Viettel は元々SIGELCO として 知られていた。
同社は 1989 年に設立され、ベトナムのハノイを本拠地としている。
また、 Viettel は Vietnam Military Telecoms の子会社として運営されている。 住所: Number 1, Giang Van Minh Street, Ba Dinh District, Hanoi 設立年: 1989 電話: 84 4 255 6789 ファックス: 84 4 299 6789 主要幹部:マン・フン・グイェン少佐、総務部長
Viettel は 2014 年 12 月に Nexttel が運営開始後の最初の 3 カ月間で 40 万件の契約件数を 獲得したと公開している。
フィッチの調査によれば、Nexttel の契約者数が 2015 年末まで には 370 万人にまで伸びたが、その後 2017 年 12 月までに 350 万人にまで減少したと推定 している。
同社は Orange と MTN と競合し、4G を立ち上げるとともに、新たに 200 万人の 顧客を獲得する目標を掲げていると話したと 2017 年 1 月に報告されている。
当時の Nexttel は 4G サービスの提供が間近であることを示唆していたが、2017 年末までに 4G サービスは 開始されていない。
〇固定回線
世界銀行の開発指標によると、カメルーンにおける固定ブロードバンドインターネット の契約者数 2016 年には 4 万 5,974 人であったと報告されている。
〇テレビ
放送メディアは政府が厳しく統制しており、テレビとラジオネットワークの両方で放送 している国営の Cameroon Radio Television (CRTV)が、正式免許を取得した唯一の放送事業者 であったが、2007 年 8 月に民間 TV 放送事業者 2 社と民間ラジオ放送業者 1 社に政府がラ イセンスを発行した。
国内では免許未取得の民間ラジオ局が 70 局ほど放送しているが、 これらはいつ閉鎖されてもおかしくない。
また、国外のニュースサービスは国営放送局と 事業提携を結ばなくてはいけない。8
8
https://www.cia.gov/library/publications/the-world-factbook/geos/cm.html
〇規制機関
機関名:Telecommunications Regulatory Agency (ART) 住所: New Route Bastos, Yaoundé- CAMEROUN Yaoundé, Cameroon, 6132 Yaoundé 電話: 237 222 23 37 48 /+237 222 23 03 80 メール: art@art.cm ウェブサイト: info@art.cm
運営チームの情報: 統括経営委員(General Management)が、取締役会によって採決された事項を実施してい る。
統括経営委員の上には事務局長が置かれており、これを事務局長代理が支援してい る。
両者とも共和国大統領令によって任命されている。
ART の管轄内容は以下のとおり。
電気通信および情報通信技術の分野における法や規制の担保
ネットワークアクセスにおける客観性、透明性、非差別性の担保
電気通信および情報通信技術セクターにおける競争の公平性と健全性の担保 各事業者の業務違反や反競争的な慣習に対して制裁を課すること、提供されている サービスの価格設定原則の設定、免許付与、申告領収証を正式に発行 相互接続やインフラ共有の条件や義務の設定
電気通信に関わる全ての法案や規制に関する原案への意見具申、周波数割当と管理
免許に関する入札準備
電気通信および情報通信技術セクターにおける開発や現代化に関する提案や提言を 政府に提出
IP アドレスの割当
端末機器の登録申請書類の審査・登録 電気通信および情報通信技術の分野における政府依頼によるその他一般的事項の実 施
〇法律、法および規制
22 件の法令が布告されている。
これらについては次の URL で確認できる。
http://www.art.cm/fr/reglementation/decrets
〇政策トレンドに関する基本情報
カメルーンでは、規制機関である ART が光ファイバーへの投資を奨励しており、事業者 がコストを下げることにより先進的なサービスに投資できるように取り組んでいる。
英語 圏の地域において、2017 年 1 月から 2018 年 3 月にかけて政府が強制したインターネット の遮断は、事業者に対する国外からの投資にとって下方修正リスクとなっている。
このよ うな状況は、成長機会としてモバイルデータサービスの普及が必要不可欠あり、そのネッ トワークの展開や近代化に向けて多大な投資が必要とされることを踏まえると、特に悪影 響となる。
2018 年第 3 四半期には、カメルーンのモバイル市場は 35 万 8,357 人の新規顧客を獲得 しており、顧客数は合計 1,825 万 4,000 人となった。
これは規制機関による全てのモバイ ル契約者を登録し、未登録の SIM カードを無効化するという政策により、3 四半期連続で 続いた顧客数の減少を経ての
ことである。
〇標準化団体
Telecommunications Regulatory Agency (ART)
・
・ 国内で承認が必要となる種類の機器は何 か? Wifi、Bluetooth、携帯電話、衛星などの通 信技術を搭載したほとんどの製品
・
〇周波数管理政策に関する動向
Viettel は商業サービス展開の遅れを補うため、3G 周波数有効期間の延長を政府に申請し ていたが、政府が 2014 年 12 月から MTN と Orange に 3G サービスを提供する権利を供与 したため、規制機関によってこの申請は棄却された。
国内におけるネットワーク拡大事業 が、外国投資の促進につながるよう、Orange は Intelsat S.A.との契約を更新し、C バンドに おける 3G 衛星通信サービスの追加を行い、次世代プラットフォーム、データ利活用の増 加、付加価値の高いサービス提供を行っていくとしている。
Nexttel が 3G サービスを開始 した 1 カ月後、規制機関は MTN と Orange の 2014 年 12 月からの 3G サービスの開始を許 可した。
Orange Cameroon の新しいライセンスは 15 年間有効であり、3G および 4G が含ま れている。
MTN Cameroon も運営ライセンスを XAF750 億で 3G/4G へとアップグレードし た。
向こう 5 年間はモバイルブロードバンドサービス市場における競争が成長の主なドラ イバーとなり、2016 年からの MTN と Orange による 4G サービスの展開によりさらに押し 上げられていく。
Nexttel も 2017 年末までに 4G を立ち上げることを示していたが、2018 年 6 月の時点ではまだ 4G サービスを開始できていない。
〇 郵政公社
ー略ー
〇ICT スタートアップを含む ICT の活用
〇ICT に関する基本情報
カメルーンの ICT セクターは GDP のうちわずか 3.5%しか貢献しておらず、地域の中でも その割合は低い。
同セクターがデジタル経済を更に活用するためには国内において顕著な 発展が求められる。 10
10 NEW YORK, Nov. 8, 2017 /PRNewswire
https://www.prnewswire.com/news-releases/cameroon--- telecoms-mobile-and-broadband---statistics-and-analyses-300552288.html
〇ICT に関する主な支援施策
〇政策
カメルーン政府はデジタル経済発展計画の一環として、若者によって起業され、政府に よる支援が必要とされる 2,700 件の ICT プロジェクトについて、郵便電気通信省を通じてリ スト化した。
ある情報筋によると、これらのプロジェクトはミネット・リボム・リ・リケ ン大臣と ICT に関心を持つ若手カメルーン人との間で開催された全国ビデオ会議の間に発 表されたそうである。
「デジタル経済の大冒険者」というコンセプトを掲げつつ、同大臣 は「彼らはプロジェクトの開発やスコープの策定や実現可能で持続可能なデジタルカンパ ニーの創出に向けて、公的機関からの適切なサポートを必要としていると口を揃えて言っ ている」と語った。
若手 ICT プロジェクトに従事する者のニーズに応えるものとして初めて企画されたツア ーでは、指導やアドバイスを提供できる専門家チームを率いて全国を巡回した。
それぞれ の専門性を提供した機関には、資金調達や事業計画の作成に特化した会社には以下が含ま れる。
・カメルーンファシリテータ協会(Camerounaise de facilitation)
・カメルーン投資サービス社(d’investissement et de service aux entreprises (Cafaise))
・カメルーン中小企業銀行(Banque Camerounaise des PME)
・アフリカ IT 研究所(Institut Africain d’Informatique)
・アフリカ知的財産団体(Organisation Africaine de la Propriété Intellectuelle)
デジタルセクターにおいて過去数年間見られてきたダイナミズムを活用するため、カメ ルーン政府は国家デジタル経済発展計画を作成しているが、この計画の実施には予算とし て FCfa6000 億が必要とされている。11
11 (https://www.businessincameroon.com/telecom/1402-6893-cameroon-the-government-has-alreadyregistered-close-to-2-700-projects-to-develop-in-the-ict-sector
また、政府は全国規模で接続性を改善することを目指した Cameroon Digital 2020 プログ ラムを策定している。
カメルーンは積極的に光ファイバー網に投資している。
2013 年 5 月には、郵便電気通信 省が 3,200km もの光ファイバーケーブルを展開し、10 地域と 60 の県都全てを接続した。
バックボーンプロジェクトへの取り組みは中国輸出入銀行による出資の下、2009 年 12 月 に Camtel の協力を得て始まった。
新しいケーブルの敷設により、カメルーンは約 6,000km の光ファイバー網を有するようになった。
また、カメルーン政府は光ファイバー網の総距 離を今後 1 万 km まで拡大していく目標を掲げている。
2015 年以来、カメルーン政府は国家の発展を達成するため、全国の利害関係者にネット ワーク型の経済、すなわちデジタル経済へと移行するように呼びかけている。
ただし、新 しい経済を実現していく上で何を行うべきかについては、ビジョンが必ずしも一致してお らず、このような政府の目標については未だ議論が続けられている。12
12 (DEVELOPMENT OF THE DIGITAL ECONOMY IN CAMEROON: CHALLENGES AND PERSPECTIVES)
〇インキュベーター支援施設
〇 ActivSpaces
2010 年に発足した ActivSpaces は、技術的なイノベーションの創出を目指し、カメルー ンの若手テック系起業家の成功率を高めることを目標にしている。
テックコミュニティを まとめ、テック系のマインドを持った者が学び、遊び、働き、発想を現実のものとするよ うな空間を創出している。
テック系起業家に直接的なサポートを提供し、世界有数のテッ ク起業家になるために必要なスキルを開発する支援する。
ActivSpaces は成功する技術系企業を構築する能力を有した世界有数の技術系起業家にな るよう若手カメルーン人のイノベーターを集め、訓練し、励まし、支援し、喜びを与える というミッションを掲げている。 https://www.activspaces.com/
〇イベントの実施
カメルーンにおけるイベント関連情報は、オンラインでは確認できなかった。
〇課題
所得水準が低いことが、消費者支出を抑制させる要因になっている。
国内農村部におけ るモバイルネットワークの基盤は限定的であり、その拡大スピードは成長を促進させるた めには不十分である。
〇ICT 活用の成功事例
〇The GiftedMom
The GiftedMom は、コミュニティのワーカーや医療従事者により妊婦や子供を産んだば かりの母親を登録できるスマートフォンアプリだ。
オフライン・オンライン両方でのデー タ収集を行うよう設計されている。
女性は通話料無料コードを用いてサービスに登録でき る。
カメルーンの女性のうち 35%を占めると推定されている非識字の女性にリーチするた め、開発チームは国内で広く使われている 4 言語による音声技術も開発している。
GiftedMom サービスの別の側面として、緊急搬送システムが挙げられる。
緊急事態に陥 った女性が GPS Tricycle Transport にアラートを送ると、三輪車が駆けつけその女性を保健 所へ連れていく。
アプリは農村部の場合でも地図や位置の詳細を示すことができ、アンテ ナ塔を用いた三角測量技術によりインターネットアクセスなしでも機能できる。
三輪車に はベッドが搭載されており、医療従事者用に別途席が用意されている。
これまでに、GiftedMom はカメルーン国内の農村部や都市部を通じて 12 万人もの妊婦や 母親にサービスを提供している。
これにより、産前ケアの割合を平均 80%上昇させ、予防接種率を 90%も高めている。
同時に、会社は意欲的でもある。GiftedMom は 7 月に UNDP の Business Call to Action に参加し、事業をナイジェリア、コートジボワール、ケニアの 3 カ国に拡大することを約束している。
〇Chekche
Chekche は、紛失した身分証明書やパスポートのほか公式書類などを携帯電話やタブレ ット上で、1 クリックで見つけることができるアプリである。
ドゥアラが本社でカメルー ン発のスタートアップ Communication Développement Innovation Sarl (CDI Sarl)が開発してい る。
本アプリの開発は電気通信会社 Orange Cameroun が支援しており、革新的なプロジェ クトを立ち上げている地域のスタートアップの開発をサポートし、持続可能な企業へと変 革させる取り組みである同社の Orange Fab に CDI Sarl を取り込んでいる。
Chekche によ り、スタートアップの CDI Sarl は若手カメルーン人たちが立ち上げた紛失書類を探すプラ ットフォームであり、所有者の手に戻ることを待っている 900 件もの紛失書類を記録して いるデータベースを有していると主張している Jetrouvtout.com と競合している。 https://www.businessincameroon.com/ict/1402-6897-cameroonian-start-up-cdi-sarllaunches-chekche-an-app-to-find-objects-you-have-lost