新型コロナ、シリコンバレーも非常事態宣言
2/28(金) 12:38配信
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新型コロナ、シリコンバレーも非常事態宣言
新型コロナウィルスの感染拡大について記者会見を行うトランプ大統領(REUTERS/AFLO)
世界中で感染の拡大が伝えられる新型コロナウィルス、COVID-19。米国でも2月26日現在、国内の感染者が56人に達した。米ではニューヨークの地下鉄で黒人男性がマスクをしたアジア系の女性に暴行を働く事件が起きたが、各地でこうしたアジア系に対するヘイトクライムの増加が問題になっている。
米国内の感染者数が最も多いのがカリフォルニア州で、10人に達した。しかもこれまでの感染者はクルーズ船、中国からの帰国者など感染源が明らかだったが、最新のカリフォルニアのり患者は米国初の感染源不明とされている。このためサンフランシスコ、シリコンバレーの中心地でもあるサンタクララなどが非常事態を宣言、感染拡大を最小限にとどめる努力を行う、としている。
ロサンゼルスでは現在のところ感染が確認されたのは1人だが、クルーズ船からの帰国者がロサンゼルス近郊の空軍基地に隔離されていることもあり、市民の間に不安が広がっている。カリフォルニアは米国でも最大のアジア系コミュニティが存在する地域でもあり、アジア系への差別的発言、暴力などが増加している。
たとえばロサンゼルス郡のサンフェルナンドバレーでは、アジア系の児童が同級生からのいじめにあい、殴られたりした結果病院でMRI検査を受けたことが報告されている。また感染者の報告がないにもかかわらず、アジア系住民の多いアルハンブラ地区では児童の親らが学校の閉鎖を求める署名運動を行い、1万4000もの署名が集まった。さらに、カーソン地区ではWHOを騙るチラシが配られたが、そこには「パンダ・エクスプレスなど、アジア系のレストランを避けるように」と書かれていたという。
このためロサンゼルス郡では郡のスーパーバイザーが「我々はあらゆるヘイトクライムに対して立ち向かう」と異例の声明を出した。特に米CDC(疾病予防センター)が「米国内でも市中感染が広がる可能性がある」と発表したことで、市民の間に不安が広がっているのもヘイトクライムの増加に拍車をかけると予想されている。
マスク着用イコール重病、というイメージ
米国でアジア系住民への忌避感が強まる原因のひとつに、マスク着用がある。米国人には元々マスクを着用する習慣がなく、マスク着用イコール重病、というイメージがある。2009年に新型インフルエンザ、いわゆる豚インフルエンザが流行した時も、米国内でマスクなどを着用する人はほぼ皆無だった。
当時CDCに勤務する知人がいたが、その人物が飛行機でツアー客らしき日本人のグループと乗り合わせ、隣の座席に若い日本女性が座ったが、彼女がマスクを着用していたのを見て「自分が菌をまき散らす人間と思われているように感じた」と語っていた。CDCに勤務していても、マスクに対してはそういう認識しか持っていないのだ。
理由として、マスクにはウィルス予防の役割があまり期待できないこと。ウィルスはマスクの織目よりも小さいため、すり抜ける。クルーズ船に検査に向かった検疫官や厚生労働省職員、さらに陽性患者を搬送した消防職員にまで感染したことを見れば、確かにマスクには予防という観点ではあまり効果的とは言えないかもしれない。むしろ重病者が少しでも飛沫などをまき散らすことを防ぐためのもの、というイメージがある。マスクを着用する人が忌避されるのはそのためだ。
さらに米国では今シーズンのインフルエンザが猛威を奮っている。2019年末から2月までの感染者は2000万人を超えると言われ、死亡者数も1万6000人に上っている。この中に実は新型肺炎患者が混じっているのでは、という社会的不安もある。CDCでは今後インフルエンザの検査に訪れる患者に対し、疑わしい場合はCOVID-19の検査も併せて行うことを発表しているが、もし患者数が急増すればパニックが起こり、アジア系への謂れのない差別が加速する恐れも十分にある。
トランプ政権はウィルス対策に25億ドルを投じる、と発表し、火消しに躍起だ。もし国内に感染者が増大すれば危機管理の出来ない指導者、というレッテルを貼られる。しかもロシアからと思しきフェイクニュースで「COVID-19のウィルスは米国による生物兵器で、試験的に中国にばらまかれた」とSNSなどへの書き込みがあることで、大統領のイライラが募っているとも言われている。
カリフォルニア州だけではなく、米国全体でアジア系住民が差別されるのでは、という不安も高まっており、各州や自治体の対応が迫られている。
土方細秩子 (ジャーナリスト)
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新型ウイルス「100年に1度」のレベル、抑止へ支援必要=ゲイツ氏
2/29(土) 4:07配信
ロイター
新型ウイルス「100年に1度」のレベル、抑止へ支援必要=ゲイツ氏
2月28日、米マイクロソフトの元会長兼最高経営責任者(CEO)で慈善家のビル・ゲイツ氏は、新型コロナウイルスについて「100年に1度」発生するレベルの病原菌とし、感染拡大を遅らせるために富裕国は中・低所得国の医療制度強化を支援するべきと述べた。写真は2019年1月、ダボス会議に出席するゲイツ氏(2020年 ロイター/Arnd Wiegmann)
[シカゴ 28日 ロイター] - 米マイクロソフト<MSFT.O>の元会長兼最高経営責任者(CEO)で慈善家のビル・ゲイツ氏は28日、新型コロナウイルスについて「100年に1度」発生するレベルの病原菌とし、感染拡大を遅らせるために富裕国は中・低所得国の医療制度強化を支援するべきと述べた。
ゲイツ氏はニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンへの寄稿で、「アフリカや南アジアの国々での備えを今支援することにより、命を救うだけではなく、新型ウイルスの世界的な拡大を遅らせることも可能になる」と指摘。中国発の新型ウイルスは現在46カ国に広がっており、中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)を引き起こす類似ウイルスよりも阻止がはるかに難しいとした。
米慈善団体ビル&メリンダ・ゲイツ財団は新型ウイルス対策に既に1億ドルを拠出している。
ゲイツ氏は安全で効果的なワクチンや医薬品の開発を加速するために、感染症の監視と技術改善に向けた世界的な投資が必要としたほか、国際的な協力とデータ供給を促す外交的努力の強化や、民間企業によるワクチンおよび医薬品開発のインセンティブとなる政府支出の拡大を求めた。
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