WOWOWで放映されている全豪オープンテニスを毎日楽しんでいます。一昨年の秋、生涯グランドスラムを達成して日本の楽天オ-プンに初出場したナダルを直に観戦した頃から、本当にテニス観戦に填ってきました。3時間を超す二人だけの技術と体力と、そして戦略の戦いは、他のどのスポーツにも見あたりません。
例えが悪いかもしれませんが、相撲の試合で6回先に勝ったほうが1セット勝利し、5セットマッチなので3セット勝った方が勝利者、こんなハード試合がグランドスラム(四大大会)と云えるかもしれません。とにかく非常にハードだと云いたいのです。そして、紳士的なスポーツなのです。自分が打ったボールがコードコートに当たり、死んだボールがポトリと相手コートに入っても、そのゲームを勝ったにも関わらず喜ばず、申し訳ないと手を上げて相手に謝罪するのです。そんな誇り高きテニスに私は填っています。
さて、今回の注目は日本人最高の24シードで出場した錦織選手の活躍でした。2回戦で、マシュー・エブデンに2セット先取されて、自分の戦略(レシーブ重視でチャンスを待つ → ナダルやマレーの戦略 → ボルグやアガシのストローク・レシーブ重視のテニスの王道)を思いだした。第3セットからその戦略を貫き抜き通してその後の3セット勝ちきった試合は感動ものでした。3回戦は第1セットを落とすものの、第2,第3セットはタイブレイクを制し、相手の戦意をくじいて第4セットを6-3で勝ちきった。大きな自信つけて4回戦を迎え、その相手は第6シードのツォンガでした。またも最初のセット2-6で落とすが、その後6-2、6-1、3-6、6-3で自身の戦略を貫きツォンガのアンフォーストエラーを誘い、見事に勝ちきりました。画面を見ていて何度も大声を上げてしまいました。
ベスト4を選ぶクォータファイナルの相手は、第4シードのアンディー・マレー(錦織選手が目標とする相手)。錦織圭選手は自分の戦略を貫こうとしましたが、マレーは1枚上手でした。ロンゲストラリーはなんと42ショット(今大会最長か?)も続き、打ち勝ったのはマレーでした。試合後、圭はそのラリーの後、もう試合を続けたくないというような気持ちになったとコメントを残すくらいでした。しかし、マレーとの戦いでランキング10位内に入るために自分に何が足りないかを今まで以上に明確になった試合でした。
この1年間に圭がどのように自分の欠点を分析し、新たな技術を身につけるのか、とても楽しみです。若いにも関わらず、多彩な攻撃をができる圭ですが、10位以内に入るためにはもっと多彩なボールをコントロールできるようにならなければなりません。そして、プレッシャーのかかった時のサービスの正確性とより強靱なメンタルが必要だと私は感じました。
女子ではマリア・シャラポワのファンです。どこに引かれるのか、それは彼女の最後の最後まで、強気なショットを放つメンタルに惚れ込んでいるのです。マリアは4歳の時からテニスを始め、6歳の頃マルチナ・ナブラチロワに才能を見出され、9歳の頃父親とともに渡米しました。その時持っていた金は数百ドルでした。そんなハングリー精神があの不屈の勇気へと変身したのです。
次に好きな選手はキム・クライシュテルスです。キムは結婚して母親になって復帰して、ワイルドカードで出場した2009年の全米オープンで優勝しました。彼女の諦めない見事なレシーブと破壊力のある攻撃的な強打に惚れ込んでいます。そんなキムが今年のオリッピックで金メダルを取って引退の花道を飾りたいとコメントしていました。そして順当に勝ち上がってきたセミファイナルの相手は今大会絶好調のアザレンカでした。キムは第1セットを4-6で落とし、アザレンカは自分の攻撃的戦略に自信を持って迎えた第2セット。キムはオリンピックで金メダルを目指しているだけに、このまま負けるわけにはいかない。その強い意志は6-1という大差で勝利をもぎ取ります。アゼレンカの心の動揺はゲームに表れていました。必死にボールに食らいつくキムのテニスに自分の攻撃的戦略が通用するのか、そんな動揺が見えました。迎えた最終セット。アゼレンカは途中で自分の戦略に立ち戻ります。そして、キムのレシーブ力に真っ向勝負に出ました。この決意の変化、こんな場面を見られる、これこそがテニス観戦の醍醐味です。他のスポーツ観戦では見ることができません。
キムも必死に食らいつきました。まるでファイナルのような中身の濃いゲームとなりました。勝利したのは、気持ちを切り替え戦略通り左右に振って強気で攻めきったアザレンカでした。とてもいい試合でした。今大会の女子シングルスでは最高の試合でした。
マリア・シャラポワは苦手なサーブを克服し(いつもダブルフォルトで崩れていく)、強打の一辺倒のショットも抑えながらも、女子の中でもNO.1の勇気ある攻撃的テニスは健在でした。セカンドサーブの強打も健在でした。0-30でもガンガン打っていくサーブとショット。見ていていつも冷や冷やします。ゴルフで言い換えると、どんなことがあってもカップに届かないパットは打たない勇気です。私はそんな勇気に惚れたのです。ファイナルまで勝ち残ったマリアのインタビューで「的確なショットで…」という意外な言葉を述べた。これまでの彼女はどんな時でも攻撃的フルショットを最大の武器としていた、だからその言葉には驚きました。しかし、今大会の彼女のショットは今までにない緩急を初めて感じさせてくれました。
「的確なショット」はマリアが初めて立てた戦略だったに違いありません。18歳で初めてグランドスラムで優勝した自分を彷彿させるようなアザレンカの攻撃的テニスに対して、シャラポワはしっかりした戦略を貫けるか。ただファイナル出場がしばらくないシャラポワとファイナル出場が初めてのアザレンカ、どんな展開になるかとても楽しみでした。しかし、昨日のファイナルの結果はがっかりするものでした。アザレンカの強打にシャラポワは真っ向勝負してしまったのです。シャラポワは自らの戦略「的確なショット」を完全に忘れたのです。しかも2歳若いアザレンカの技術力はベテランのシャラポワを凌いでいました。コースの切り替えやボールの緩急は見事でした。シャラポワは振り回され、強打のミスを連発しました。ダウン・ザ・ラインのショットはことごとく外れました。
最後まで強打で攻めた彼女の勇気は、いつ見ても拍手を送りたいですが、的確なショットを放つ技術力をもっと磨かねばなりません。野球で云えば剛速球投手が多彩なボールを覚え、コントロール重視の変化球投手へ変貌した例は何人も見てきました。剛速球もそんなとき、輝きを見せるのです。この惨敗をきっかけにシャラポワはステップアップするために新たな技術を身に付けて欲しいと心から願っています。
メンタルの弱さや強打ばかりの一本調子のテニスと批判されてきたビクトリア・アザレンカ。グランドスラムでは長く準々決勝の壁を超えられなかったが、自分らしさの強打を保ちながらを経験とともに「賢さ」と強いメンタルを身につけ、今大会でそれを証明して見せたのだ。13歳でのプロ転向からほぼ9年、はい上がるために時間を要したかもしれない。しかし、勝ち方をしっかりと学んだはず。これが今後のテニス人生に<自信>という大きな財産になるでしょう。私は天才よりもこんな頑張りやさんが大好きです。全仏でのキム・クライスシュテルス、マリア・シャラポワとの対戦が俄然楽しみになってきました。フランスに行って直に観戦したくなりました。(つづく)
例えが悪いかもしれませんが、相撲の試合で6回先に勝ったほうが1セット勝利し、5セットマッチなので3セット勝った方が勝利者、こんなハード試合がグランドスラム(四大大会)と云えるかもしれません。とにかく非常にハードだと云いたいのです。そして、紳士的なスポーツなのです。自分が打ったボールがコードコートに当たり、死んだボールがポトリと相手コートに入っても、そのゲームを勝ったにも関わらず喜ばず、申し訳ないと手を上げて相手に謝罪するのです。そんな誇り高きテニスに私は填っています。
さて、今回の注目は日本人最高の24シードで出場した錦織選手の活躍でした。2回戦で、マシュー・エブデンに2セット先取されて、自分の戦略(レシーブ重視でチャンスを待つ → ナダルやマレーの戦略 → ボルグやアガシのストローク・レシーブ重視のテニスの王道)を思いだした。第3セットからその戦略を貫き抜き通してその後の3セット勝ちきった試合は感動ものでした。3回戦は第1セットを落とすものの、第2,第3セットはタイブレイクを制し、相手の戦意をくじいて第4セットを6-3で勝ちきった。大きな自信つけて4回戦を迎え、その相手は第6シードのツォンガでした。またも最初のセット2-6で落とすが、その後6-2、6-1、3-6、6-3で自身の戦略を貫きツォンガのアンフォーストエラーを誘い、見事に勝ちきりました。画面を見ていて何度も大声を上げてしまいました。
ベスト4を選ぶクォータファイナルの相手は、第4シードのアンディー・マレー(錦織選手が目標とする相手)。錦織圭選手は自分の戦略を貫こうとしましたが、マレーは1枚上手でした。ロンゲストラリーはなんと42ショット(今大会最長か?)も続き、打ち勝ったのはマレーでした。試合後、圭はそのラリーの後、もう試合を続けたくないというような気持ちになったとコメントを残すくらいでした。しかし、マレーとの戦いでランキング10位内に入るために自分に何が足りないかを今まで以上に明確になった試合でした。
この1年間に圭がどのように自分の欠点を分析し、新たな技術を身につけるのか、とても楽しみです。若いにも関わらず、多彩な攻撃をができる圭ですが、10位以内に入るためにはもっと多彩なボールをコントロールできるようにならなければなりません。そして、プレッシャーのかかった時のサービスの正確性とより強靱なメンタルが必要だと私は感じました。
女子ではマリア・シャラポワのファンです。どこに引かれるのか、それは彼女の最後の最後まで、強気なショットを放つメンタルに惚れ込んでいるのです。マリアは4歳の時からテニスを始め、6歳の頃マルチナ・ナブラチロワに才能を見出され、9歳の頃父親とともに渡米しました。その時持っていた金は数百ドルでした。そんなハングリー精神があの不屈の勇気へと変身したのです。
次に好きな選手はキム・クライシュテルスです。キムは結婚して母親になって復帰して、ワイルドカードで出場した2009年の全米オープンで優勝しました。彼女の諦めない見事なレシーブと破壊力のある攻撃的な強打に惚れ込んでいます。そんなキムが今年のオリッピックで金メダルを取って引退の花道を飾りたいとコメントしていました。そして順当に勝ち上がってきたセミファイナルの相手は今大会絶好調のアザレンカでした。キムは第1セットを4-6で落とし、アザレンカは自分の攻撃的戦略に自信を持って迎えた第2セット。キムはオリンピックで金メダルを目指しているだけに、このまま負けるわけにはいかない。その強い意志は6-1という大差で勝利をもぎ取ります。アゼレンカの心の動揺はゲームに表れていました。必死にボールに食らいつくキムのテニスに自分の攻撃的戦略が通用するのか、そんな動揺が見えました。迎えた最終セット。アゼレンカは途中で自分の戦略に立ち戻ります。そして、キムのレシーブ力に真っ向勝負に出ました。この決意の変化、こんな場面を見られる、これこそがテニス観戦の醍醐味です。他のスポーツ観戦では見ることができません。
キムも必死に食らいつきました。まるでファイナルのような中身の濃いゲームとなりました。勝利したのは、気持ちを切り替え戦略通り左右に振って強気で攻めきったアザレンカでした。とてもいい試合でした。今大会の女子シングルスでは最高の試合でした。
マリア・シャラポワは苦手なサーブを克服し(いつもダブルフォルトで崩れていく)、強打の一辺倒のショットも抑えながらも、女子の中でもNO.1の勇気ある攻撃的テニスは健在でした。セカンドサーブの強打も健在でした。0-30でもガンガン打っていくサーブとショット。見ていていつも冷や冷やします。ゴルフで言い換えると、どんなことがあってもカップに届かないパットは打たない勇気です。私はそんな勇気に惚れたのです。ファイナルまで勝ち残ったマリアのインタビューで「的確なショットで…」という意外な言葉を述べた。これまでの彼女はどんな時でも攻撃的フルショットを最大の武器としていた、だからその言葉には驚きました。しかし、今大会の彼女のショットは今までにない緩急を初めて感じさせてくれました。
「的確なショット」はマリアが初めて立てた戦略だったに違いありません。18歳で初めてグランドスラムで優勝した自分を彷彿させるようなアザレンカの攻撃的テニスに対して、シャラポワはしっかりした戦略を貫けるか。ただファイナル出場がしばらくないシャラポワとファイナル出場が初めてのアザレンカ、どんな展開になるかとても楽しみでした。しかし、昨日のファイナルの結果はがっかりするものでした。アザレンカの強打にシャラポワは真っ向勝負してしまったのです。シャラポワは自らの戦略「的確なショット」を完全に忘れたのです。しかも2歳若いアザレンカの技術力はベテランのシャラポワを凌いでいました。コースの切り替えやボールの緩急は見事でした。シャラポワは振り回され、強打のミスを連発しました。ダウン・ザ・ラインのショットはことごとく外れました。
最後まで強打で攻めた彼女の勇気は、いつ見ても拍手を送りたいですが、的確なショットを放つ技術力をもっと磨かねばなりません。野球で云えば剛速球投手が多彩なボールを覚え、コントロール重視の変化球投手へ変貌した例は何人も見てきました。剛速球もそんなとき、輝きを見せるのです。この惨敗をきっかけにシャラポワはステップアップするために新たな技術を身に付けて欲しいと心から願っています。
メンタルの弱さや強打ばかりの一本調子のテニスと批判されてきたビクトリア・アザレンカ。グランドスラムでは長く準々決勝の壁を超えられなかったが、自分らしさの強打を保ちながらを経験とともに「賢さ」と強いメンタルを身につけ、今大会でそれを証明して見せたのだ。13歳でのプロ転向からほぼ9年、はい上がるために時間を要したかもしれない。しかし、勝ち方をしっかりと学んだはず。これが今後のテニス人生に<自信>という大きな財産になるでしょう。私は天才よりもこんな頑張りやさんが大好きです。全仏でのキム・クライスシュテルス、マリア・シャラポワとの対戦が俄然楽しみになってきました。フランスに行って直に観戦したくなりました。(つづく)