楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

春の泡沫読書ー騎士団長殺し

2017-05-06 23:54:40 | 人間

 

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編
村上 春樹
新潮社
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編
村上 春樹
新潮社

今、最もポピュラーな最新村上本を連休に読んだ。正確に言えば、読むことに流された。

考えねばならぬこと、記さねばならぬことがかつてないほど多いにも関わらず、何故流されたか?

それは、人生この歳に及んで、なお「ねばならないこと」に身を費やす自分、その中で生き長らえようとするジレンマからの逃避があったからだろうと思う。

読んでどうであったか。スッキリ爽やか!

この作の中の具彦(=騎士団長=イデア、と思う)の死に様、「私」の「父」としてのリセット、少女まりえの初期人生の飛躍、それぞれの人生の再生が「騎士団長殺し」というところに鍵があったというパラドックス人生賛歌。

村上は大衆迎合作家と言われながらも根強いファンをもつ秘密を見た気がする。読んでよかった。つけは大きいが。

読書途中で、さる女性教授(同僚というか後輩というか)と、この小説の話をしたら、「私は処女作から村上は読んでいて、もうxx年の付き合い!全部読んでいるわよ」と。

「え!今回は少々エロいのに、どう思う?」と・・、出そうになった言葉を飲み込んだ。

 そう言えば彼女、熱気球とか、ファンタジー溢れる趣味で有名な人でもある。確かに村上春樹に出てくる女性のようだ。

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サイコパス

2017-05-06 05:11:25 | 人間
サイコパス (文春新書)
中野 信子
文藝春秋

サイコパス 今売れている中野信子  

 全ての人間には表と裏があり、その葛藤の中にある。  
 性善説、性悪説 古くからの葛藤がある。  
 近い関係は性善説で、遠い関係は性悪説でがうまくいく、と読める。  
 それを間違うと、人間関係も、社会関係も、国際関係も大火傷。  
 それらを破滅させる無感情冷血人間(サイコパス)が必ず一定存在する。
 
 決めているのは、脳内のやりとり。  理性は前頭葉、感性は小脳原始脳という議論が昔あったな〜、と思い出す。  
 
 カントの感性、悟性、理性も脳の技、ということか。 
 
 サイコパスにも生存理由があったとの挑戦的(?)仮説
 面白いが独裁者合理論、村八分合理論へ繋がる危うさあり(?) 
昔、酒の席で、「私らの頭は湧き出る泉、学生らはそれを受け止め流す河川レセプター、一般人は海」
と平然と言ってのける教授がいて背筋が寒くなった。それまでの尊敬が一気に吹っ飛んだことがあったのを思い出した。
横溝猟奇推理小説にみるサイコパスと社会、などと考え出す者もが出てきそうだ。     
 
 脳の能力は、先天性と後天性の両者が決めるが、先天性が意外と重要と本書。先天の上にちょっと後から味付け。  
 でもこれ気をつけないとDNA優生論になるので不正確な理解は危険と著者自身も警告。
 自らのIQの高さを記しながら述べる自己顕示的著述様式は、Conflict of Interest でいかにもだが、それは本人の意思?  
 それとも出版編集者の意思?  
 
 脳科学って何を考えているのかの片鱗を見た気がした。
 理解を目的とする基礎科学のうちはいいが、「役に立つ」ことをoutcomeとして期待する応用科学としての目的は何?
 善悪判断も人工頭脳にやらせてしまうのが展望?  
 
 最終ボタンは人間に持たせなくて良い。全てを読み込んだ「人工頭脳」
 まるで「2010宇宙の旅」のモノリスだ。
 
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