尚樹は気脈の通じている直属の上司に「退社」の意志を告げた。
直属の上司は、以前勤めていた会社を辞めこの会社に就職したので
なんらかのアドバイスを貰えると思ったからだ。
アドバイスの内容は要して『立つ鳥跡を濁さず』というものだった。
その時、会社との交渉は始まっていたが、
『暖簾に腕押し』の対応に業を煮やしていたところだった。
そんな中の『立つ鳥跡を濁さず』のアドバイスは「熱した鉛を飲む」思いで聞いた。
尚樹の勤める会社は、尚樹が勤め始めた当初は
創業者が社長を務める言わば「ワンマン」の会社であった。
その当時は立ち上げ当初の会社員も居て、夏場など社長の号令で一部の社員に
拘束時間中だというのにバーベキューの用意に走らすなど良い面もあった。
しかし、創業者が会長に退き創業者メンバーで「社長の右腕」と頼る常務が社長になり、
創業者の娘婿が専務に就くと、専務の専横が始まり、会社の業績は上がったが、
会社全体に一体感が無くなり、「物言わぬロボットが作っている」様だった。
全てがシステマチックになり、他言は許されなくなった。
そんなところで「保証」を求められる状況では無かったが、
尚樹は「どうせ辞めるのだから・・・」と、半分自暴自棄になり交渉に挑んだのだが、
交渉相手が、元常務で今はサラリーマン社長の奥村であったので
具体的な話にはならなかった。
本丸の娘婿専務である大三郎を引き出さなければと思っていた。
しかし、この専務の大三郎、正社員の経験が無く、また高校に進学せず
ブラブラしていて、その時たまたま交際していた
当時の創業者社長の娘と付き合っていて、子を孕んだので息子の居ない社長家に
婿養子として入ったのだ。
大三郎の専横振りは、その時の社員を震え上がらせた。
「全ては金」という考えの基、「札で頬を叩く」様な振る舞いで、
またそれを注意する古参の社員も首をすくめていた。
尚樹はそんな相手と交渉のテーブルに着こうとしていた。
「その3」につづく
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直属の上司は、以前勤めていた会社を辞めこの会社に就職したので
なんらかのアドバイスを貰えると思ったからだ。
アドバイスの内容は要して『立つ鳥跡を濁さず』というものだった。
その時、会社との交渉は始まっていたが、
『暖簾に腕押し』の対応に業を煮やしていたところだった。
そんな中の『立つ鳥跡を濁さず』のアドバイスは「熱した鉛を飲む」思いで聞いた。
尚樹の勤める会社は、尚樹が勤め始めた当初は
創業者が社長を務める言わば「ワンマン」の会社であった。
その当時は立ち上げ当初の会社員も居て、夏場など社長の号令で一部の社員に
拘束時間中だというのにバーベキューの用意に走らすなど良い面もあった。
しかし、創業者が会長に退き創業者メンバーで「社長の右腕」と頼る常務が社長になり、
創業者の娘婿が専務に就くと、専務の専横が始まり、会社の業績は上がったが、
会社全体に一体感が無くなり、「物言わぬロボットが作っている」様だった。
全てがシステマチックになり、他言は許されなくなった。
そんなところで「保証」を求められる状況では無かったが、
尚樹は「どうせ辞めるのだから・・・」と、半分自暴自棄になり交渉に挑んだのだが、
交渉相手が、元常務で今はサラリーマン社長の奥村であったので
具体的な話にはならなかった。
本丸の娘婿専務である大三郎を引き出さなければと思っていた。
しかし、この専務の大三郎、正社員の経験が無く、また高校に進学せず
ブラブラしていて、その時たまたま交際していた
当時の創業者社長の娘と付き合っていて、子を孕んだので息子の居ない社長家に
婿養子として入ったのだ。
大三郎の専横振りは、その時の社員を震え上がらせた。
「全ては金」という考えの基、「札で頬を叩く」様な振る舞いで、
またそれを注意する古参の社員も首をすくめていた。
尚樹はそんな相手と交渉のテーブルに着こうとしていた。
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