京都の「別荘」 高級マンション、富裕層が食指
- 2015/2/28 10:12
市中心部の御池、五条、河原町、堀川の各通りに囲まれた通称「田の字地区」では、そこかしこでマンションを建設するつち音が響く。
市役所近くでは野村不動産が「プラウド京都麩屋町御池」を建設中だ。最高価格は1億3980万円。広さ80平方メートルで8千万円台が最多と関西でも最高水準だが、昨年12月に発売後、すでに43戸が完売した。
全国から問い合わせがあり、契約者の約4割が首都圏在住。「セカンドハウス目的の中高年が多い」(同社)。東京の60代男性は購入理由を「京都には年に何度も訪れるが、宿が取りにくくなったから」と話す。
積水ハウスは御池通を挟んで「グランドメゾン京都御池通」を建てている。昨年6月に同ブランドで発売した平安神宮近くの物件は最高価格1億円超だが28戸の9割以上が売れ、約3割が首都圏在住。「京都に憧れ、終の棲家(ついのすみか)に考える人もいる」(大阪マンション事業部)
住友商事なども最高価格1億円超の「クラッシィハウス御池柳馬場」を建設。短期滞在用の実需と投資を兼ねた購入者が多く、「計画より半年以上早く完売できそう」(住商建物)と驚く。
不動産経済研究所(東京・新宿)によると2014年に京都市内で発売された1億円を超えるマンションは30戸と1996年以降で最多。田の字地区がある中京区の14年のマンション平均価格は前年比30.6%増の5891万円。市全体でも4288万円で東京都区部(5994万円)より安いが、3千万円台の大阪市や神戸市を上回る。
京都はまとまった土地が出にくく、景観保全の高さ規制でマンションの供給が限られてきた。不動産市況の回復で老朽ビルなどの再開発機運が高まり、マンション建設が増えた。
同研究所の笹原雪恵大阪事務所長は「アベノミクスの影響が出た13年以降、不動産大手が京都に参入し、首都圏の顧客に購入を勧める場合が増えた」と話す。
京都のブランド力から海外からの投資も増えているようだ。「世界的な知名度はあるが、東京や上海などに比べればマンション価格は安く、国内外の富裕層の注目が高まった」(不動産大手)
小売りの現場でもこうした京都暮らしを楽しむ府外の富裕層の存在感が高まる。高島屋京都店では14年上半期、関東各店の外商顧客が食料品や雑貨などを購入した額が2年前に比べ9.5%増えた。「週末に滞在して身の回りの物を買っているのではないか」(松本正樹副店長)とみる。
同店は1月に不動産会社と組み、高級マンションの入居者向けに家具や家電などの購入説明会を初めて開いた。「京都ブランドを生かした商品開発にも戦略的に取り組みたい」(松本氏)
大丸京都店でも14年に東京の顧客が京都で外商口座を開く例があった。不動産会社と組み、大阪の顧客などに京都市内の高級マンションを外商営業で売り込んでいる。(