九大味覚・嗅覚(きゅうかく)センサ研究開発センターの広津崇亮助教らは、生物実験で一般的に使われる体長数ミリの線虫50~100匹を実験皿の中央に置き、皿の隅に人の尿を数滴、垂らす実験を242人分繰り返した。

 その結果、線虫は、がんがある24人の尿のうち23人分(95・8%)に近寄り、健康な人の尿218人では207人分(95・0%)で遠ざかった。がんは、胃がん食道がん前立腺がん、早期発見が難しい膵臓(すいぞう)がんなど、様々だった。遺伝子操作で一部の嗅覚を機能させなくした線虫は、がんがある人の尿に近寄らなかったため、においに反応しているらしい。

 きっかけは、共著者の伊万里有田共立病院(佐賀県)の園田英人外科部長が、4年ほど前に治療したサバにあたった患者。原因だったアニサキスは患者の胃壁にあったがん細胞に食いついており、早期の胃がんが発見できた。園田さんは以前、患者の呼気などからがんを診断する「がん探知犬」を研究したことがあり、「線虫が使えるのではと思いついた」という。

 九大は国際特許を出願し、日立製作所などと検診システムの構築を進めている。園田さんは「臨床試験を経て、10年後には実用化させたい」と語った。