「5ナンバー」初の3割割れ 輸入車増と軽人気に板挟み
- 2019/2/3 4:52
かつて新車の65%を占めた「5ナンバー車」が縮小している。2018年の乗用車販売(軽含む)で小型乗用車(5ナンバー)の比率は29.9%と初めて3割を割った。一方で3ナンバーの普通乗用車は36%と2年連続で過去最高を更新したほか、軽自動車も販売を伸ばす。背景には消費者の嗜好の変化やメーカーの開発戦略がある。
18年12月の「日本カー・オブ・ザ・イヤー」。最優秀となったボルボ・カーの「XC40」と票を二分したのがトヨタ自動車が6月に発売した「カローラスポーツ」だ。これまでより一回り大きく3ナンバーになった。
日本車の3ナンバー化はカローラにとどまらない。ホンダが17年に6年ぶりに復活させた主力車「シビック」や18年末に4年ぶりに発売したハイブリッド車(HV)「インサイト」も大型化し3ナンバーになった。
道路運送車両法は自動車の大きさなどでナンバープレートに違いを設けている。排気量が660cc超~2000cc以下で全長4.7メートル、幅1.7メートル、高さ2.0メートル以下なら小型乗用車。ナンバープレートには「5」で始まる3ケタの数字が付く。それを超えれば普通乗用車で「3」ナンバーになる。消費者が負担する税金に違いはない。
日本では長らく5ナンバーが主流だった。日本自動車工業会によると93年の5ナンバー車の販売台数は約254万台と全体の65.3%を占めた半面、3ナンバー車は16%にすぎなかった。だが18年は5ナンバー車が約131万台とほぼ半減。逆に3ナンバー車は約158万台と2年連続で過去最高だった。
理由の一つは消費者の嗜好の変化だ。道幅が狭い日本では依然として小型車の人気は高い。5ナンバー車より小型で税金も安い軽自動車の販売台数は18年に前年比3.6%増の約150万台と2年連続で増えた。
英調査会社IHSマークイットの川野義昭マネージャーは「5ナンバー車の需要が軽に流れている」と指摘する。一方でブランド力の高い輸入車が3ナンバー車の伸びをけん引。輸入車と軽人気のはざまで5ナンバー車の存在感は薄れている。
もう一つの理由はメーカーの商品戦略にある。各社は開発の効率化へ1つの車台(プラットホーム)から複数車種をつくる動きを強める。カローラスポーツは一回り大きい「プリウス」と車台を共通化したほか、ホンダのシビックやインサイトも多目的スポーツ車(SUV)「CR―V」などと同じ車台を使う。
海外市場をにらんだ開発も影響している。カローラスポーツは欧州でも販売を予定している。世界的に厳しくなる安全要件を満たすため、室内空間を保ちながらドアや外装の強度を上げるには横幅などを大きくする必要がある。IHSの川野氏は「世界展開の流れが強まるなか、日本だけで5ナンバー車を投入する意義は薄れている」と話す。
手ごろで運転もしやすい5ナンバー車は、日本で独自の存在感を保ってきた。ただ今後、カーシェアリングや自動運転が広がれば自動車を保有する必要性は薄れる。高くても持ちたい3ナンバーの高級車や実用性の高い軽の人気で、市場の二極化が一段と進む可能性が高い。