例年9月に始まる米アップルの新型iPhone(アイフォーン)商戦を前に、携帯電話大手が頭を悩ませている。通信契約を条件に端末代金を大幅に割り引く「セット販売」が10月から禁じられ、市場環境は激変する。端末の値段が一気に上がる前にできるだけ多く売りたいのが本音だが、総務省は駆け込み販売を牽制(けんせい)している。新しい販売プランをまだ公表していないKDDI(au)とソフトバンクの出方が焦点となる。

 「セット販売」などを禁じる改正電気通信事業法は5月に成立。施行は秋ごろを予定していたが、総務省は10月1日とする方針を固めた。携帯会社は、それまでに新しい販売プランを始める必要がある。

 一方、例年9月中下旬には、人気機種の新型iPhoneが発売される。改正法施行までの1~2週間は、ルール上は現行プランで端末を最大半額で売ることもできる。

 ログイン前の続きただ、10月以降は端末代の割引が最大2万円に規制される。最新モデルの定価は税込みで約18万~約12万円。割引後でも10万円以上になる。消費増税も重なり、高額な機種は売れ行きが鈍ることが見込まれる。iPhoneは国内シェアで約5割を占め、各社にとって営業戦略上、重要性が高い。大幅に割り引けるうちに販売を伸ばしておきたいのが本音だ。

 ただ、簡単にそうはできない事情がある。総務省が6月、改正法施行を前に駆け込み販売をしないよう携帯大手3社に要請しているからだ。同省幹部は「現状、数字を見る限り思ったほど駆け込みはない」とするが、今月中に3社から取り組み状況を聞き取りする予定だ。改めてクギを刺すねらいがある。

 ソフトバンクは新しい販売プランを検討中で、宮内謙社長は8月上旬の決算会見で「どうしようかと思っている」と述べ、悩む様子をのぞかせた。新プランが10月開始になると、1~2週間の購入時期の違いで端末価格に大きな差が出るため、「(新プランの開始を)できれば前倒しした方がいい」とも話した。

 KDDI幹部も「売り方が変わることでお客さんを混乱させてはいけない」と言う。2社とも、まだ態度を決めかねているが、近く新プランを公表する見通しだ。

 一方、すでに「セット販売」を廃止し、新プランを6月に始めたNTTドコモの首脳は「現行プランで売るのはアンフェア。顧客目線に立つなら早めに新プランを導入するのがよい」と話し、ライバル2社を牽制している。(井上亮)

携帯電話の料金・販売をめぐる最近の動き

5月10日  「セット販売」を禁じる改正電気通信事業法が成立

6月1日  NTTドコモが改正法に対応した新料金制度をスタート

6月18日  総務省が法施行に向けた具体的なルールをとりまとめ

6月20日  総務省が携帯各社に対し、端末の駆け込み販売をしないよう要請

9月中下旬 米アップルが新型iPhoneを発売する見通し

10月1日  改正法が施行