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名家俳句集 宝井其角 其角発句集 夏之部 二 塚本哲三 著 坎穿久臧 考訂 昭和十年刊

2024年06月21日 10時15分43秒 | 俳諧 山口素堂 松尾芭蕉

 

はれて?叉くもり?不二日記

氷室やま里葱の葉しろし日かえ草

夏草や橋豪見えて河通り

  引舟の潜

夏草に臑(すね)でかるたをそろへけり

      楓子沢

なつくさや家はかくれて御用茅

麻村や家をへだつる水ぐるま

      三蔵といへるかたゐのもの俳諧の歌仙とり出して

點ねがはしき由を申してしさりぬその巻のおくに

あまさかる非人たふとし麻蓬

蕗の蓋にとおもふも悲し深草寺(みくさでら)

百合の花折られぬ先にうつぶきぬ

蟷螂(かげろう)の小野とはいはじ車百合

紅粉買や朝見し花を夕日影

      望相州

雪見草かまくらばかり日が照るか

ひるがほや猫の糸目になるおもひ

白露を石菖にもつ價かな

      祐天和尚に申す

夕顔にあはれをかけよ膏名或

ゆふがほや白き錐垣根より

      畳に題す

タがほや一臼のこす花の宿

   酒 満

葛の葉の酒典童子も二面

藻の花や金魚にかゝる伊予簾

      遊女小紫をかがせて読み望まれしに

藻の花や繪に書きわけてさそふ水

      茂叔讃

傘に蝶蓮の立葉に蛙かな

  詞書略

香一爐蓮に銭を包みけり

      得正観世音像

    手に蓮膠にしまぬ匂ひかな

      妙法蓮華経

たへなえいや法のはちすの華経(はないかだ)

恵遠法師は法花の筆受たりといへども

慮山の交りをゆるさゞりけるとかや

玉あらば爰で筆とれ白蓮社

泥坊の影さへ水の蓮かな

      霊夢を感じて東湖辨財天に詣侍る

出ぬ茶屋に欺かれてもはちす裁

蓮切や下手にし切れば莖を角

寝てか問へ蓮にさそふ朝ぼらけ

海松の香に杉のあらしや初瀬山

    海松和布をや蜑の腰簑青角豆

みるの香や汐こす風の磯馴松

      鎌倉の濱出を

海松ふさや貝とる出刄を海士にかる

      瓜の一花

この花に誰あやまつて瓜持参

ならはしの鹽荼のみけり瓜の後

あたまから蛸になりけり六皮半

母の日や又泣出す真桑うり

水飯にかわかぬ瓜のしづく哉

瓜の皮水もくもでに流れけり

浴衣着て瓜買ひにゆく袖もがな

亀毛に賤

うりの皮笠は重しとかさねけり

     鬼のやうなる法師みちのくへ下るとて道祖神にとがめられ

異例して何某のもとより心よわき文ども送られしに

辨慶も食養生やうりばたけ

瓜守や桂の生洲たえてより

干瓜やおしろいしても黒き顔

ほし瓜やうつむけて干す蜑小船

     豊 年

ぬか味噌にとしを語らむ瓜茄子

巡礼のよろ木のもとやところてん

皿鉢に駒の蹴あげや心太

手にとるも林檎は軸でおもしろし

百目のあゞら戀しやあらひ鯉

百姓のしぼるあぶらや一夜酒

      酔登二階

酒の瀑布冷麥の九天より落るならむ

ひや酒やはしりの下の石だたみ

      會 盟

交りのさめて亦よし夏料理

手にかわく蓼摺り小木の雫かな

      止波浦にて

地引すと蜑のまに/\暮の汐

鴫焼はゆふべを知らぬ世界かな

      土用のいりといふ日に

箒木に茄子たづぬる夕ベかな

蓬生は歌はよまぬを虫はらひ

樟脳に代をゆづり葉の鎧かな

よめりせし時のまくらか土用干

捨人や水草にかけて土用干

うた々寝や揚屋に似たる土用ぼし

      市原にて

虫ばむと朽木小町の干されたり

夜着をきてあるいて見たり土用干

法のこゑむなしき蠹(きくいむし)の窟かな

      宗竹のもとへ博多より文參りたり送りもの

やさしかりければぬしに代りて

生の松いかにわすれむ汗ぬぐひ

死の海を汗のうき寝や夢中人

      歌仙貫之の古畫に

冠にも指をそふめり歌の汗

汗濃(あせご)さよ衣の背縫のゆがみなり

灸すゑてゆふだつ雲のあゆみ哉

白雨や内儀たま/\物詣に

      市中白雨といふ圖に

鳶の香もタだつかたに腥(なかぐさ)し

夕だちや漏をとむれば鼠の予

白雨にひとり外見乙女かな

  雨とするものにかはりて

タ立や田を見めぐりの神ならば

ゆふだちに鶯あつく嗚く音かな

  舟中啼

さゝがにの筑波嗚出て里急ぎ

タだちや法華かけこむ阿彌陀堂

ゆふだちや洗ひ分けたる土の色

白雨に獨活の葉ひろき匂かな

夕立やきのふの坂をのぼらば瀧

  浅茅が原にあそびて晴間うれしく

白雨や螽ちひさき草の原

ゆふだちや楽屋をかぶる傀儡師

    夕だちや家をめぐりて鳴く家鴨

八雲たつこの嶮膜(けんまく)を雲の峰

櫛挽のこゝろすかすや雪の峰

      高閣挽涼

香薷散犬がねぶって雲の峰

西行と武蔵坊には清水かな

にんにくの跡が清水のこゝろ哉

      ある人大なるふくべを二つに引割て盞としたるに句をのぞむ

しみづかけ李白が面にかぶりけり

芋の葉に命をつゝむ清水かな

      元角田川牛田といふ所にて

いそのかみ清水なりけり手前橋

  井に髪あらふ女は思ひもかけぬつやなり

顔あけよ清水をながす髪の長(たけ)

  露沾公能興行

日にやけて酒のみけるか清水鬼

  世にありわびて西行の跡なつかしき儘

ひとりすむ友よ朧の糒(ほしひ)雪清水

  清めり濁れりの判読せよといはれて

此論は一荷にになへ氷水

  嵯峨の御寺の開帳に

まはらば廻れ振舞水の下向道

      祇園殿のかり屋しつらふを

杉の葉も青水無月の御旅かな

里の子も夜宮にいさむ鼓かな

乳のめば清水がもとの祭かな

      七 日

鉾にのる人のきほひも都かな

      山王氏子として

我等まで天下祭や土ぐるま

番付かこ賣るもまつりのきほひ裁

松原に田舎まつりや晝休み

瓜むいて狙にくはするあつさ哉

蓮の葉の赤鱏(あかえ)もかるゝ暑さかな

かまくらにて

山賤か額の瘤のあっさかな

蝋かけの欄干あつし星は北

小女の帯にくるまるあつさ哉

      冠里公備中松山初入の時

川と暑や浦の苫屋の軸うつり

      傳九郎が持ちし扇に

朝比奈の楽屋へ入りしあつさ哉

むらさめの木賊にとほる暑哉

      呈露江公餞

供かたの鞘のあつさや岡の松

舟暑し覗かれのぞく闇の顔

身にからむ一重羽織も浮世かな

何と羽織縮緬は重し紗は軽し

      晝よりいねて

うた々寝やかぶりつめたる麻頭巾

抱籠や妾かゝヘてきのふけふ

      曲水の旅宿に湖水をおもひ出して

漣やあふみ表をたかむしろ

うすものの風情日にはる團扁哉

紅に團扁のふさの匂ひかな

      小町の讃

腰かけて休むならべき大圏扇

      破扇の圖

維光が後架へもちし扇かな

鳥飛ぶ紺のあふぎのあつさ哉

水の粉に風の垣なる扇かな

  ある御方より蕣書たる扇に讃せよとあるに

    朝顔やあふぎのほねを垣根裁  

と書て奉りけるに重ねてまた軍繪がいたる扇に讃のぞませ給ふ

    涼風や與市をまねく女なし

      序令はじめて上京に賤

涼みまで都のそらや連と金

すゝみ舟泥ぬりあひし游かな

      所 見

蔵か家か星か川邊のすずみ哉

      翁(芭蕉)よりの文のかへしに

丈山(石川)の渡らぬあとを涼かな

夕薬師すゞしき風の誓かな

      少年を供して不死の肴をととのへたる

此舟に老たるはなし夕すゞみ

      布袋の讃

寝たうちを子ども起すな夕納涼

海を見て涼む角あり鬼瓦

      浅草川歳々吟涼

此人数舟なればこそ涼みかな

河すゞみ顔に泥ぬる泳かな

涼つむ安房や上総に舟はなし

すゞしさや帆に船頭のちらし髪

千人が手を欄手や橋すゞみ

すゞしさや先づ武蔵野の流れ星

舷を玉子でたゝくすゞみ哉

      韓退之捨て酒吟あり

酒ほかす舟をうらやむ納涼かな

      牛御前

是やみな雨を聞く人下すゞみ

      餞久松肅山

竿をさす御笠やかろき下涼

      人の子をめでて

涼しいか寝てつぶり剃る夢心

  畫 讃

大虗(きょ)すゞし布袋の指のゆく所

      日枝にむかひ給ふ御神を

十八の明神つねにすゞみかな

      河原にて

曉を牛さへすゞみ車かな

この松にかへす風あり庭涼み

勘當の月夜になりし涼み哉

人にまだ暑い顔あり橋すゞみ

      自 棄

たがためぞ朝起ひるねタすゞみ

上下と裸の間をゆふすゞみ

      蟹をもてなす人に

うき舟のすゞしき中へ蟹の甲

      はなむけの一句を扁にのぞまれて生の松原のうたをよす

木曾路とは涼しき味をしられたり

      祇公日次の題をとりあはせて

河簀垣徳利もひたす流かな

      遠浦の猟船押送りしてこの橋の下に入る

帆をかふる鯛のさわぎや薫る凰

夏酔やあかつきごとの柄木夕水

子の肩とみつはくむなり夏旱

  青流亡妻をいたみて

園女とはこれや此世を夏の海

夏痩せに能因しかも小食なり

蕣(あさがお)になくや六月郭公

      芭蕉庵の留守

すびつさへすごきに夏の炭俵

      隣家に樹をすく人ありその四時先後を愛する事をしらす

何かいはむ六月桐をうゑる人

洞木(うつぼぎ)の鬼なおそれそともし笛

市中の光陰はことさらにいそがしきを

    秋ならすさゝら太鼓や夏神楽

      御 祓

夏収祓御師の宿札たづねけり

      大雨大風

吹降りの合羽にそよぐ御祓かな


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