春の気配が漂いだし、今年の桜はいつ咲くのかが気になりだした頃
取り締り達の集まりに参加するため
グループ会社の本社へと向かった
そこで私は、大好きな人に会った
小さい頃よく遊んでくれた優しい人だ
そう言えば、達也と同じ年くらいだろうか?
昔はとてもいい男だと思っていたその人も最近ではちょっと大きくなったお腹が目立つ
もともと大柄な人だったが、今日はまた特別大きく見える
「イチロおにいちゃまお久しぶり、まぁ・・・ずい分成長したわね」と
貫禄のあるお腹を小さく突っつくと
「こらっ! 触るなっ・・・今、7ヶ月だから」 と
ふざけながら大声で笑った
「最近ヤバいなって思ってるよ、こんなんじゃ若い子にモテないよなぁ~」
「まぁ・・・そんなこと言って・・・だめよ家庭は大事になさい」
「おいおい、真理子そう言うおまえはどうなんだい?
その・・・どうだ? いい男は見つかったか?」
少し遠慮気味にそう聞く従兄に曖昧な笑みを返し
「さぁさ、送れますわ」 とその場はそっとごまかした。

わかっている、みんな私のことを気使ってくれている
口にこそ出さないが、“もうそろそろ忘れなさい” と言われている気がした
“家庭は大事にしなきゃ・・・” なんて口では言いながら
自分は家庭のある人と今まで何度か接して来た
もちろん深入りするつもりなどないので、適当なところで自分から身を引くのだった
結局そのような環境の人との方が深入りせずに済む
無駄に束縛されることもなく自由にできる
恋愛に対して積極的になれないでいた