美咲が手を握り見つめるその先にいた男性は
達也とは全く正反対な雰囲気を持つ人だった
“元彼とつきあっている” と達也は言っていたが
達也自身それがどんな人か知っているのだろうか
線の細いおとなしそうな・・・良い言い方をすれば優しそうだが
悪い言い方をすると、神経質そうな
そしてこれは私の勝手な想像だが、人妻と付き合うようなタイプではない気がした
そっと見ているつもりだったが、イチロ兄に気づかれ
耳元で 「こらッ!真理子 見すぎだぞ、気になっただろうが知らん顔をしておけ
あいつ等はな、その・・・むかし付き合ってたんだ 今はどうなのか知らんがな」
と、神妙な顔で説明してくれた。 イチロ兄は案外真面目な人なのだ
“知っている”とは言えないので 「へぇ~いろいろあるのね」 と素知らぬ顔で見て見ぬふりをした
しばらくして誰かが「じゃぁそろそろ、お開きにするとしよう またそのうち会おうな!」
と言って立ち上がったので、慌ててイチロ兄について外へと出た
夜風が気持ちよく明りの少ない路地から見上げた空はいつもより少し多めに星が見えた
「うわぁこんな街中でも星が見えるのねぇ、お兄ちゃま~」と見上げて言う間に
皆はそれぞれ勝手に次の場所へと消えていた
美咲とあの男性が2人でどこかへ行ったのか、それとも帰ったのかわらなかった
イチロ兄の隣には二人の男性が残っており
“もう一軒行こう” ということになったらしい
私は今度こそ遠慮しようと思ったが、「真理子ちゃんもおいでよ」と誘われ
イチロ兄も 「そうだぞ、真理子も一緒に行こう 遠慮はいらん
こいつらは二人とも花の独身貴族だ、たまにはパッと気晴らしすればいい」
イチロ兄は精一杯気を使ってくれているに違いない
帰りを待つ人もいない身・・・
今夜は、さっきの居心地の悪さを払拭してから帰ろうと思った