「で、そーいちろう? そろそろ紹介して下さらない?」
しびれを切らしたのか、興味津々なのか・・・
とうとう美咲が言いだした
男性陣は、勝手な想像と男同士の暗黙の了解とも言える沈黙を保っていたのに
とかく女は興味深いとでもいうのか・・・
イチロ兄は、わざとらしく含みを持たせ
「う~ん、そうだなぁ・・・簡単には教えられないなぁ」などと楽しんでいる様子
男性たちは表面にこそ出さないが目だけは輝いている
「なによ! もったいぶらないで早く言いなさいよ!」
「まぁまぁ・・・野暮なこと聞くなよ美咲・・・そう言えばこの間!!」
誰かが見かねて話をそらそうとしたところでイチロ兄は笑いながら
「あはは・・・悪い悪い! その、この人はだな・・・森下家のお姫様だよ」
「はぁ? お姫様って・・・何よ?」
「あぁ あのな、真理子はオレのいとこだよ
うちの家系は男が多い うちの子たちも男ばかりだし
真理子の・・・あ、この人のアニキんところの子達も男ばかりで
うちの弟のところの三番目がやっと女の子らしいが、まだ腹ん中だ
生まれてこないとわからんだろう?
オレら従兄弟の中では唯一の女の子だし、とにかくかわいいお姫様なんだよ
今でもそうだが、昔からかわいくてな
お姫様みたいにキラキラしてた
オレは真理子が大好きで、年はずい分離れていたが相手をするのがとても楽しかったんだよ
今ではなかなかお相手していただけないがな・・・」
私はイチロ兄がそんな風に見守ってくれていたんだと改めて嬉しく思った
それを聞いた周りの男性陣は、肩透かしにでもあったようにちょっとだけ残念そうな
それでいて、ホッとしたような 微妙な雰囲気を醸し出していた。
美咲だけははっきりとした口調で
「ふんっ 面白くないわねっ!
てっきりいい人なのかと思っちゃったのに、なぁんだ・・・そうなのね」
とかすかな笑みを浮かべただけでその後何も聞かなかった
私の居心地の悪さは変わらなかったが、それを聞いて男性陣たちが俄然張り切りだした
「真理子ちゃんは、今彼氏は?」とか
「この中じゃぁ どいつがタイプ?」 だとか・・・皆子供みたいに楽しそうだった
私はどの質問にも笑顔で返答をしてその場をしのいでいた
美咲はと言うと私には興味を失ったのか、隣に座る男性と指を絡ませている
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私は皆なと話ながらもしっかりその様子を視線の先に留めていた