「女の方が結構大胆かもしれないな・・・」
その夜の達也はいつもより激しく私を求めてきた
何かをふっ切ろうとでもしているのか、いつもより深いところまで攻めいり
私を満足させることだけに徹していたようで、自分は決して満足しようとしなかった。
「・・・・何が? それって、私のことを言ってるの?」
「いや違う・・・」
「すまない、今夜は少し乱暴だったかもしれないな」
「ふふっ・・・ いいえ、それは構わないけれど、何かあったの?」
私はその理由を多分知っている、それでも知らぬ顔で聞いてみた
「いやぁ~そうだな・・・まぁ、どうでもいいことだよなこんなこと、
真理子に言ったら笑われるかもしれないがな・・・
昨夜、うちのヤツ帰って来なかったんだよ
帰ってこないと言うのは違うな
帰っては来たが、朝方だった 昨夜学生時代の男たちと一緒だったはずだ
オレは寝ていて、気がついてないと思ってやがる でもな、ちゃんと知っていたんだよ」
さすがに私もその席にいたとは言えなかった
「あなたも、今夜こんなことをしているんだからお互いさまなんじゃないの?
っていうか・・・・やはり男の人って言うのは、自分のことは棚に上げても
奥さんの浮気だけは許せないのね? まぁ・・・そりゃぁそうでしょうね・・・」
嫌味で言ったつもりではなかったが、達也はどうとったのか・・・
その後しばらく考え込んでいた。
そう言えば、昨夜飲んだ佐藤さんのところも 奥さまの浮気が原因で別れたと言っていた
いつの時代も女はおとなしく家にいればいいと思っている男が多いのだろう
“まさかうちの嫁に限って”などと高を括っているのだろう
黙って考え込んでいたのかと思うと、ニヤリと笑った達也の手がまた私に伸びてきた
美咲は、達也と私のこと(存在)を知っている
私たちの関係が始まってすぐに気がつき
ダンナの浮気相手に電話してくるような女性だ
達也にしてみれば、なんやかんや言っても妻が自分を・・・
自分だけを愛しているものだと思っていただろう
かすかな疑いが、事実としてわかった時 男の方がうろたえるのかもしれない
そんな事があってからも私は達也と定期的に会い
会うたびに密な時間を持つようになっていた
肌が触れ合うと寂しさが少しは軽くなるような
そんな錯覚を起こしていたのかもしれない
気がつけばそんな関係を持ってから2回目の夏が近づいていたのだった