心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

星屑の涙・・・8

2013-07-03 18:35:52 | 星屑の涙

「真理子、今日 この後何か予定はあるのか?」

「いいえ、寂しいけれど何もないわ」

「じゃあ、一緒に来るか? 今夜は昔の悪仲間たちと一杯やることになっている

気晴らしにどうだ?」

「せっかく仲の良いお仲間たちとの席に私が行ってもいいのかしら?」

「野郎ばっかりでもむさ苦しいだけだ、一人くらい女性がいる方が

ヤツらも喜ぶよ、気にせず来ればいい」

私は、少しためらったがたまにはそういう席に参加するのも悪くないと思い

一緒について行くことにした。



昔から面倒見の良い従兄頭である森下総一郎氏は、

女性の事で少し兄ともめた時期があったらしいが

そんなことも今では遠い昔の話と笑い飛ばすだろう

そもそも私が知っているとは思っていないだろうけれど・・・



初めて行ったその店は、カウンター席の奥に一つ個室があるだけの

こじんまりとした割烹料理屋だった

落ち着いた雰囲気のおかみさんは慣れた様子でイチロ兄ちゃまに挨拶すると

私にも丁寧に接してくれた

「みなさまもうお着きですよ」と開けられた襖の向こうには

40代半ばの男性が5人と

男ばかりだと聞いていたのになぜか、一人の女性が賑やかに話し込んでいた

「おおーーっ! 総一郎!遅かったなぁ なんだよ?その子は?

おいおい・・・早く紹介しろー」

「いやいや、とにかく座れよ乾杯が先だ!」

口々に話す男たちに少々面っくらったが、私は促されるままイチロ兄の隣に座った

「女将、とりあえずビール8つ頼むよ」

誰かがそう言った声の後 イチロ兄は皆を見渡し

「おい!何で今夜は小西がいるんだ? 亭主はほおっておいていいのか?」

そう言われた女性は

「いいのよ、あの人も好き勝手にやってるわ」

と答えた

その声に改めて女性の顔を見直した私は 

“あっ・・・”と小さく声をあげてしまった




イチロお兄ちゃまとの会食の席に座っていた女性は、

達也の妻である美咲その人だった

お兄ちゃまが旧姓で呼んだので、気にも留めず

男性たちに圧倒されていた私は

落ち着くまでのしばらくの間

女性の顔をはっきりと見ていなかったのだった

美咲は、私の顔を知らない

だけどその場はなんとも居心地の悪い場になってしまった