心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

想いは伝わる・・・10 ~やさしい心~

2024-02-07 18:01:00 | 想いは伝わる


さすがにイブの街は
人も車も混雑している
途中でタクシーを降りて走る


まるでTVのワンシーンね
などと思いながら
店の前まで来たが
さすがに岡崎の姿はなかった


PM8:30 


やっぱりね
ちょっと悲しくなって
店を背に歩きかけたところへ

おーい 千秋!

店の階段を上がったところで
こっちこっち
手招きをしながら
岡崎が立っていた
よかった
これからアンコールが始まるぞ
いいからおいで

なんだかとても安心した

階段を降りながら聞こえてきた
懐かしいメロディ


え?と、岡崎を見る 
うん
と、うなずいて微笑む岡崎の顔

そう
もらったチケットは
私の大好きな
George Benson

ちょうど流れて来たのは
彼の曲の中でも
一番好きな曲 


“Nothing's gonna change 
my love for you”



 ~ ♪ ~

If I had to live my life without you near me

The days would all be empty

The nights would seem so long


~ 略 ~


Nothing's gonna change my love for you

You ought to know by now how much I love you

One thing you can be sure of

I'll never ask for more than you love ~


略~


君なしで
生きてゆかなければならないのなら
たぶん毎日は空虚で
夜はどんなにか
長く思えるだろう
たとえ何があっても 
君への愛は変わらない
どんなに愛しているか
知っているはずさ
これだけは信じてほしい
君の愛さえあれば何もいらない

君への愛は 変わらない

目の前にいる岡崎の顔が
涙で見えなかった

私が急に泣きだしたので
びっくりしたでしょうね
待っていてくれたこと
こんな素敵な夜を 
私にプレゼントしてくれた
少し慌てて
そっと触れてくれた手が
とても暖かかった

大好きなアーティストを 
初めて目の前で見た
甘く切ない歌声
なんて素敵な声 
心に響く歌

思っていたより 
少し年老いて見えたその人と
目があった気がした
にっこり微笑みながら
泣いている私に向かって
歌ってくれているように見えた

何度も何度も聞いた懐かしい曲

あぁもっと早く来ればよかった

いろんなことを後悔したが
とても幸せな気分だった

そばにいるのは
今まで愛だとか恋だとか
そんな思いを 
感じたことのなかった人
それでもなぜだかとても大切な
大事にしたいと初めて感じた



想いは伝わる・・・9 

2024-02-07 09:57:00 | 想いは伝わる


目を開くと
窓の外は暗くなっている
嬉しいのか 
悲しいのか
なんだかわからない

私の悦ぶところを覚えている
その悪戯な唇や指先は
容赦なく触れてくる
ダメだ
と頭の中では
考えていたものの
久しぶりに感じる指先には
抗うことが出来ず
私の身体は素直に反応していた

たっぷりと時間をかけて
さまよった指先は
私の準備が整ったことを感じると
ますます悪戯に攻めてくる
そして
そっと離れてゆき 
それを追いかける
私の腰を持ち上げ
ゆっくりと中へ入ってきた

唇は何度も耳元で
優しくささやくのだった

相変わらずやさしかった
身体のぬくもりを
長い間忘れていた私は
夢中になって
会っていなかった時間が
ウソのように
タカシのリズムに合わせて
身を任せた


でもこころは
悲しくて虚しい
なんだかとても後悔していた

断れなかった
あの時の私の身体は
忘れられない喜びを味わいたくて
明らかにタカシを
受け入れる準備が出来ていた

思わず時計を見た
PM 6:30
私はあわてて起き上がる
タカシは
当たり前のように横で眠っている

バカだ私は
やはりこんなこと
どうせ続きはしない
たまたま今日は
お目当ての女の子と
時間が合わなかったのだろう
時間つぶしに声をかけて来たのだろう
そんなことより
もう時間がない

というか
こんなことをした後で
岡崎さんに会うなんて
会ってはいけない気がする

夢と現実が交差して
訳がわからなくなる
がっくりとうなだれて
後悔だけが大きくなった

でもあの人は
きっと私が来るまで待っている
そんな気がした

そう思うと
自分の愚かさに腹が立ってきた
どうしてこんな風になるのだろう

その時しのぎの欲におぼれて
私はバカだ
自分で自分が情けなくなった

タカシ起きて!
無性に腹が立ち
子供のように
バタバタと背中を叩いて
タカシを起こす

起きて
早く出て行って
そして二度と
二度と気まぐれで
私を抱いたりしないで

何を いきなり言ってるんだ? 
というような顔をして
タカシは起き上がり
モタモタと服を着ると
おお こわっ
と ふざけた笑い顔を残し
またな
と言って出て行った

力が抜けて座り込む

どうしよう
こんな私
何も知らない岡崎さんに
やっぱり会えない
でもこのままほおっておくのも失礼だ
彼は一応上司だし
せっかくのイブに 
ひとりさみしく過ごす私を 
気遣ってくれている

相談として
話してみるのはどうか

でもタカシは
岡崎さんの友達でもある 
こんなこと話しても
いいものだろうか

どのように話そうか
時間は刻々と過ぎてゆく
とにかく待ち合わせ場所まで
行ってみよう
さすがに呆れて
帰ってくれているかもしれない

そんなことを思いながら
家を飛び出した時は
もう待ち合わせの時間を
とっくに過ぎていた

想いは伝わる・・・8

2024-02-07 09:41:00 | 想いは伝わる



ぼんやり考えていた
日曜日のクリスマスイヴ

そもそもクリスマスは
男と女がいちゃつくために
あるんじゃないのよ
と、

それでも世の常というのか
今や仕方ない 
今年は日曜で良かった
ひとりさみしく
たとえ1日中家にいたって
誰にもわからない

というか
それ自体悲しいが 
昨夜はしゃいで飲みすぎたので
少し頭が痛い

最近弱くなったな
さっきから何度もため息が出る


ため息をつくと 
ため息の分だけ幸せが逃げて行くのよ

誰かに言われた事を思い出した
さて もうひと寝入りしますか
布団にもぐりこんだ時
電話が鳴った


面倒くさいなと
思いながらも
受話器をとった


・・・・
森田?

えっ岡崎さん?

おはようござ いえ、こんにちは
電話の声は 岡崎信也だった

休みなのに悪いな、まだ寝ていたか?

あは ばれましたか? 
昨夜友達と飲んで
まだ何となくぼんやりしていました

そうか、いやその
今夜は
今夜 何か予定があるか?
よかったら飯でも食いに行かないか

正直驚いた

まさか岡崎がクリスマスイブに
誘ってくるなんて

電話口で返事をしかねていると
岡崎が続けた

もしも今夜時間があれば
7時に待ってる
休みにひとりで晩飯も
さみしいなと思ってな
千秋なら空いているかなと思って
いやいや
変な意味ではないぞ
怒るなよ

ははは と、
軽く笑って電話を切った

なんでも知り合いに
とあるチケットをもらったらしい
よく見ると日付が今夜だったそうで
アーティストの歌を聴きながら
食事が出来るそうだ
ほおっておこうと思ったが
捨てる気にもならず 
私に声をかけてみた
ということだった

深い意味はないのだろう 
どうせ私なら
暇にしているとでも思ったのだろう
微妙な気持ちになったが
悪い気はしなかった。

それからまた少しうとうといていた
夢を見ていた気がする

そこへ再び電話が鳴った
岡崎さんかな


そろそろ準備しようと思ってましたよ
と 岡崎だと思い
そう返事をした


千秋 元気か?

!!!


今度の電話の相手は
岡崎ではなくタカシ

宮本高志
その人だった

うそでしょっ!
思わず大きな声が出た

相変わらず元気そうな声だな
誰かさんからの電話だと思ったか

タカシ


宮本高志
5年前に悔しくて悲しくて
もうこれ以上は無理だと
必死で別れた相手
自分だけの人だと 
勝手に思っていた
自分だけを 
見てくれていると思っていた
ずっとそばにいてくれると
思っていた

でもやさしさは
私にだけ向けられていたものではなく
他に何人も同じような女の子がいた
私はその他大勢の中の一人だった

あれはなんだったの?
あなたの優しさと大人のリードで
私はそれまで感じた事がなかった
甘く艶やかな気持ちを知ったのに


いやぁこの間 
岡崎と一緒だったろう?
まさかお前達
付き合ってるわけじゃないだろう?
いい女になったな
と思ってな
逢いたいな千秋

千秋逢いたい

ああ
なんて強引な人
変わってないわね
そう言って甘い声でささやけば
私が子犬のようにしっぽを振って
逢いに行くとでも思っているの

逢いたいって タカシ
あなた全然変わってないわね

私は少し呆れた声でそう言ってみた


そうか?
逢いたいと思ったから
そう言ったまでだ 
お前は俺に逢いたくないのか

俺さまは お変わりないのね

一瞬 心がひるんだ
そして同時に
なんて勝手な人
と思った
頭の中ではダメだと思いながら
それでも正直な身体だけは
逢いたいと
あの蜜の味を忘れられずに
サインを出していた

千秋
あなたまた
同じことを繰り返すつもり

どこにいるの?

こんな風に聞いてしまった時点で
私の負け
もうだめだ
やはり逢いたい

そばまで来てるよ
部屋は変わってないのか?

再び驚いた

あ そうか
この人は自分の目的の為なら
どんなに面倒なことでも
簡単にやってのける
とてもマメなタイプだった

部屋はだめ 
散らかってるから
外で待ってて
どこか言ってそこまで行くから

千秋の部屋に行きたい
というかもう目の前だ 
寒いから早く開けてくれよ

え? 目の前
うそっ

まだ部屋着のままの姿
今まで何処で会ってもいいように
頑張ってきたのに
まさかこんな姿で
こんな姿を見られるなんて
嫌だ

慌てたがもう遅い
ドアを叩く音
観念してドアを開ける


おまえ まだそんな恰好だったのか
変わってないな
とニヤニヤ笑っている

あなたも変わらないわね
相変わらず強引で
言い終わらないうちに
腕を引き寄せられた