心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

想いは伝わる・・・14

2024-02-08 17:56:00 | 想いは伝わる


で、先輩は
岡崎課長のことを 
どう思ってらっしゃるの?
恋愛感情なんて
微塵もないの?

直球で聞いて来た。
若さって、すごい

私には
ダーリンがいるから
よくわからないんですけどぉ


って、なによぉ
悔しいけど知ってるわよ


岡崎課長って
社内でかなり人気あるの知ってますぅ
先輩くらいのお年頃な
おねーサマたちは
かなりマジで狙ってますよ
先輩はいっつも 
我関せず
って顔で接してますよね
男って感じたことは
ないんですか?

おいおいおいおい
この子には 
かなわない


いやぁ男って?
そんな風に思ったことは
なかったような気がするわ
とりあえず
そうはぐらかした 
実際、恋愛感情
というものを感じているかどうかは
未だわからないのだから
とにかく今は
今夜のことを 
話さないでいよう

寄りたいところがあるので
先にここへ行っててくれ
と小さなメモを渡された
こういうのって
なんだかドキドキする
そういえば
岡崎と会社帰りに待ち合わせたことは
なかった
いつもは大抵同じ部署の子たちと
大勢で店に向かうからだ
受け取ったメモには
行ったことのない店の名前と
簡単な地図
電話番号が記してあった

私の為に予約を入れてくれた
そんな小さなことが
とても嬉しかった
先に店へ入っていてもよかったが
なんとなく外で待つ
なんだかいい気分

ウインドウに映る自分の姿を
さりげなくチェックする


うんOK
いい感じよ

しばらくすると岡崎がやってきた

なんだ千秋
寒いから先に入っていれば
よかったのに

あ、いえ
少し早すぎたので
と言いかけた時
軽く微笑み 
背中にそっとまわされる腕 
そのまま軽く抱かれるようにして
店の中へ案内される

うそ、なんだ今の
私、キュンってした

入ったお店は
気取った感じではない 
フレンチレストラン
ワインリストを見ながら
ソムリエとさりげなく会話を交わす

では、それでお願いします
そう告げると
岡崎は微笑みながら
私の方に身体を向ける
オレ
こういう店で
ワイン注文したの初めてだよ
小声で囁く

ちょっとかわいい
向かい合って座るって
今までに
なかったよね
私は少し緊張していた 
“初めて”  
と言ったけど堂々とした態度
今夜の岡崎さんは
いつもと少し違って見えた

まずは乾杯だな
千秋、お誕生日おめでとう

そう言って岡崎はとても丁寧に
“おめでとう” 
を言ってくれた

料理が順に運ばれてきて 
食事も半ばにさしかかった頃
私はどうしても言わなければ
と思っていたことを 
口に出す決心をしていた
あの あのね、岡崎さん 

うん、なんだ
神妙な顔をして?

・・・・・・

なんだどうした?

岡崎は少し頭を傾けて私の話を 
聞いてくれようとしている

あの、えっと
あ、そうそう
今夜は誘ってくださって
ありがとうございます!
誕生日を 
誰かと
しかも一応男性と過ごすなんて
何年ぶりのことか


おい一応とはなんだ
一応とは
笑っている


すいません だってその
岡崎さんを男性 って
今まであまり思ったことが
なかったもので 
でも今は、その 

少しだけ頬を膨らませて
無邪気な顔で怒ったふりをしている

とにかく
まずは今夜のお礼を 
言わなくちゃと思ったので
それからですね
その後勢いで話そうと思った時
メイン料理が運ばれて来た

うわぁおいしそう




想いは伝わる・・・13

2024-02-08 16:58:00 | 想いは伝わる


朝から気分がいい 
今日は新しいヒールを履いて来た
わからないところで
お洒落してみるのも悪くない
それにしても仕事中なのに
なんだかニヤついてしまう
私ってわかりやすい女だろうな
誰かにバレやしないかと
内心ドキドキする

ランチタイムは
美菜に誘われお気に入りのカフェへ

あれ?
先輩素敵なヒールですね

さすがするどいわ
たぶんお洒落大好きな美菜には
このヒールを 
初めて履いて来たことが
ばれているだろう
人の服装にも
細かくチェックを入れるのが
この子のいいところでもあり 
悪いところでもある

急に美菜の表情が変わる
ところで先輩
チョットした噂を
聞いたんですけど

思わずドキッとした

え、なぁに?
どうしたの  
さりげなく
なるべくトーンを落として聞いてみる

えっと あのね

なんなのよ
なにが言いたいのかしら?
黙って聞いていると

少し気まずそうな顔つきで
実は先日の
イブの日の出来事なんですけどぉ

え、なにっ?

真由美が 
あ、わたしの同期なんですけど
その子が
イブの日にBlue Noteで
先輩と岡崎課長が
一緒にいるところを見たって
言うんですよ

わたしは
そんなの絶対見間違いよって
言ったんですけど
その子絶対間違いないって
しかも千秋先輩が泣いていたって
いうんです
一緒にいること自体まさかですけど
千秋先輩が泣くだなんて
まさか、信じられないですよね?

私は、何者だ
泣かない女
そんなに強い?
それとも
なんだと思っているの?
いやいや
そんなことは、どうでも良くて
そんなことより
あの時あの場所に
会社の子がいたってこと?
誰かに
あの様子を見られてたってこと?

それってやばいでしょ!

今、噂って言ったわよね
もう、噂になってるの?

美菜の話を 
静かに聞いていたが
手の震えがおさまらない
慌ててテーブルの下へ 
でもきっと美菜には気付かれてる

美菜は
じっと私の顔を 
見ていたが
何を思ったか急に微笑み

でも先輩
もしも、もしもですよ? 
先輩と岡崎課長が一緒にいたとして
誰にも何にも言われる筋合い
ないですよねぇ

第一 うちの会社 
社内恋愛禁止ってわけでもないんだし
ましてや
先輩も課長もひとり身なんだし
不倫しているわけでもないんだから

いい加減2人ともいい年だし
どうせならくっついちゃったら 
いいじゃないですか
課長と先輩って
とってもお似合いだと思いますよぉ

ふぅとため息をついて
参りました とつぶやいた

美菜ちゃんあなたってひとは
あなたには
嘘を言っても駄目だろうから
正直に話すわ
そう言って
大きく息を吐いた

そう
あなたのお友達が見たことは
本当よ 
あの日
岡崎さんに声をかけてもらって
待ち合わせしていたの
たまたまチケットを 
貰ったらしくてね
そのチケットが
私の大好きなアーティストさんの物
だったので
イブだからというのではなく
純粋に聞きたいだろうと思って
声をかけてくださったの 
でも私ったら
ちょっとしたトラブルにあって
時間に遅れて行ったのよ

慌てて行った時は
もうアンコールの時間くらいに
なっててね

その時私の一番好きな曲が始まって 
その曲を耳にした途端
自分でもわけがわからぬまま
涙が出てきた
ということなの
残念ながら
ロマンティックな場面で
泣いた訳では
なかったのよ

美菜は目をパチパチさせながら
私の話に聞きいっていた
聞き終わると
嬉しそうに身を乗り出してきて
嬉しそうに一言

だから今日は素敵なヒール
履いているんですね
もしかして今夜はデートですか?

おいおい
まだ付き合ってる訳じゃ
ないってばー!

想いは伝わる・・・12

2024-02-08 10:04:00 | 想いは伝わる


完全に忘れていた
明日は、私の誕生日

わたしの誕生日は 
12/26 
クリスマスが終わった次の日だ
子供のころは
もう冬休みに入っていたので
友達から 
おめでとう と
言ってもらえることも
少なかった
小学生のころはまだしも 
中学生以上になってからは
プレゼント自体
クリスマスと混ざってしまって
うやむやになったことも 
しばしばだった

はぁ とうとう三十路
クリスマスケーキの売れ残りの売れ残り
賞味期限を切らした
ケーキと同じか
いやいや
それは遠の昔にすぎている
いや
ケーキなら一日くらい過ぎていても
大丈夫 
気にしなければ食べられるわよ
なんて
自分で自分にノリ突っ込み
あぁ悲しい


おい千秋
何を笑ったり 
泣いたりしてるんだ? 
おまえ、大丈夫か?


キャッ
と、おもわず
小さく飛びあがってしまった 
気がつくと岡崎が後ろに立っていた


あ、えーっと 今の見てました?
いつから?
どぎまぎしながらたずねると

岡崎は笑いながら 
たぶん、最初から?
といいながら
プーーッと吹き出した


失礼しちゃう! 
もう
岡崎さんったら
趣味悪いですよ
もっと早く声掛けて下さったら
いいじゃないですか

いやいや
あはっ
はっ おまえが
ずい分楽しそうにニヤついているから
どうしたのか
と思って見ていたんだが
上向いたり下向いたりして
忙しそうだったんで
ついつい声かけそびれたよ

ふんっ 
どーせ私はヘンな奴ですよ
明日またひとつ年とるし
とうとう三十路突入だし
いまだにひとり身でさみしいし
それでもさみしいなんて
だれにも言えないし

おい、明日誕生日なのか?

そぉですよぉっ

じゃぁ・・・・

バカか私は
何言ってんだ
まるで子供がいじけているような
言い方で
自分でもどうしてこんな風に
飾らず話せたのか
不思議な気分だった
んっ?そういえば今
岡崎さん最後に何か言わなかった?

じゃぁ千秋
明日2人で誕生会しよう
岡崎が 
耳元でそう言って立ち去った。

再び周りを見渡す

大丈夫
誰にも見られていないし
聞かれていない
それにしても誕生会って
子供扱いね
口に出して一人つぶやいてみる 
それでも心は
ワクワクしていた

社内恋愛で
ゴールインしたカップルを
何組か知っているが
こんな感じだったのだろうか?
などと
くすぐったい気持で考える 
いや
まだ恋愛しているわけじゃないけど
それにしても大胆なこと言うな 
岡崎さんって
そんなタイプだったっけ?

でも素直に嬉しかったし 
明日が待ち遠しくなった。
明日は何を着て来ようか? 
そんなこと考えるのは何年ぶり?


想いは伝わる・・・11

2024-02-08 09:11:00 | 想いは伝わる



結局 
私は来ないだろうと
半ばあきらめながらも 
ひとりで楽しんでいたらしい

まわりはカップルばかりのこの状態で

この人は
どんな顔をして
1人で1時間以上も
この状態でいたのだろうか
きっとまわりの誰もが
気の毒な男性だと思っていただろう
岡崎さんは
私に言い忘れていたこと
アーティスト名を
言わなかったことを
少し後悔していたらしい

おい千秋まさか
あれからまた眠ったのか
よかったぞ
お前遅れてくるから
結局アンコールしか聞けなかったな
あまり寝過ぎると
その
太るぞ

泣いた私を 
笑わそうとしているの?
おどけた顔して
ふざけたことを言っている

本当のことを言うのを 
躊躇した
今夜は
このまま気分よく過ごそう
でも
そのうちきっと
本当のことを素直に話そう

いいえ
話さなくちゃいけない
そんな気がした。



昨日の出来事は
やはり内緒にしておいた方が
いいですよね
書類を持って行った時 
こっそり聞いてみた

うん そうだな
まるで何事もなかったような顔で 
岡崎は頷いた
社内では
岡崎ファンが多いため
迂闊な行動はご法度だ 
なるべく敵は作りたくない
別に付き合いを 
始めたわけではないので
今までどおりにすればいいのだが

それでも私の心に少しだけ
今までにない気持ちが
芽生えたのは事実だし
それより何より
私に対しての岡崎の気持ちを
知ってしまったように思う
決して
私のうぬぼれではない 
だからなおさら

困った

千秋さぁん 
なんだか嬉しそうな顔してますよ
何かいいことあったんですかぁ?

美菜が声をかけてきた

顔に出てたの?
内心どきっとしたが
平静を装って


あら
私は特別なことは何もないわよ
美菜ちゃんこそ
彼とのイブは
どうだったの?


美菜はとろけそうな笑顔で 
ナ・イ・ショ
おどけて私に投げキッスを送ってきた

きっと素敵な夜を 
過ごしたんでしょうね
今が一番いいお年頃 
私もあの年頃が一番楽しくて
素直に自分を出していたと思う
あんな裏切りを受けなかったら
今頃こうして
仕事ばっかりしていなかったわよ
少し意地悪な気持ちになったが
なぜか
うふふ
と美菜につられてニヤケてしまった

思わず周りを見渡す
こんなニヤついた顔
だれにもみられなかったでしょうね