昔々 雄物川に「ナダラのふち」と呼ばれる恐ろしい渦巻きがあったんだと。
ところが、この淵のあたりには たくさんのサケが泳いでおった。
だから、毎年サケの季節になると、ここで命を落とす者が耐えなかった
そこで、ある時「地蔵様をたてて淵の怒りを鎮めよう」ということになったと。
頼まれた近くの石工は、身を清めて一生懸命にお地蔵様を作ったそうだ。
そして、とうとう出来上がったんだども、村の人たちは、そのお地蔵様をみてたまげてしまったと。
なんとまあ! みだぐねぇ(醜い)こと」 出来栄えが おが(とても)悪かったものな。。。
中には怒ってしまう人も居て、とうとう その地蔵様は川原に投げられてしまったと。
さて、その秋のこと。サケが登ってくる頃になったども、ちっともサケは やってこない。
その年は、日照り続きで、川の水が少なかったなんだけど、
みんなは みだぐねぇ地蔵様のせいだと 思ったわけだ。
「おめのおかげで、サケがのぼって来ねぇ!」
「こうしてける!」川原に転がっている地蔵様をみんなして、踏んだり、蹴ったり。
しまいに地蔵さんの顔に 小便かけてしまった。すると、
そのとたん。黒雲がもくもくと出て大雨が
ふってきた。その 降り方のあまりの激しさに みんな動転してしまった。
あわてて家に逃げ帰り「地蔵様のたたりだ」と 震えて一晩過ごしたと。
ところが、夜が明けて 川を見に行ってまた驚いた。大雨で水の増した川に
サケの大群が次から次へと のぼってくる。
その量の多いこと多いこと。その年のサケは大豊漁で、みんな大喜びだったど。
それから、数年して、また日照りが続いて不漁の年があった。村人達はこの地蔵様のことを思い出して、
今度は恐る恐る 小便を頭にかけたそうだ。したば、なんと!また、大雨が降って
サケがたくさんのぼってきた。それからというもの、日照りの年に 同じことを繰り返した。
とうとうたいした金持ち村になったんだと。みだぐねぇ地蔵様には、石工の魂が こもっていたんだべな。
村の人たちもそれが、わかったもんだから、その後「ナダラのふち」に近い長沢というところに、
お堂を建てて、、地蔵様を 大事に大事に まつったということだ。まんず、よかったな・・・
この地蔵様は関係ないです… -大曲に伝わる民話より―