むかしむかしある村の淵に河童が1匹いたんだと。この河童
時々、人に悪さをするんだと。ある夏の暑い日の事村の男が馬に水をかけて
冷やしてやろうと思って、その淵さ行ったわけだ。淵の河童はずっと前から
人の家の中を見てみたいとずっと思っていたんだと。
そこに男が馬を連れてきたもの。
今だと思って河童は馬の尻尾に飛びつくと、ギッチリとしがみついた。
男は尻尾の河童には、気が付かねぇまま家にもどってきたわけだ。
家に帰りついたとたん、河童は馬のシッポから離れてするするっと、
馬桶をかぶって隠れておった。しばらくして男が馬にエサをやろうと馬屋にきた。
でな、馬桶をひっくり返して、どでんしたのなんの。見たこともねぇような
生き物がいるんだもの。それから男は気を落ち着けて、よくよく考えてみたんだと。
せば、頭に皿があって背中に甲羅があって、これだば
河童に違いないと思ったわけだ。
そこで大声を上げて「河童だ!河童がいるど!」て人を呼んだ。この声に
そこらあたりから人が、わらわらと集まって来て、
「河童だと、殺せ、殺せ」ってみんなして騒いだもの。河童はすっかり
震えあがってしまって「そんたごど言わねで、なんとかごめんしてけれ、
ごめんしてけれ」何度も、何度も言った。
その様子を見てたばなんだかかわいそうになってきてな、
男はこう言ったど。「河童、おめぇな、人さらったり、人にいたずらすればだめだ。」
「わがった。わがりました。二度とそんなことしね(しない)。
しねども一つだけ願い事があるんす。聞いてけねべが」「なんだべ言ってみれ」
「へば、お願いだす。おら、キュウリが大好きだがら、切り初(そ)めの胡瓜を
川さ流してけねべが。あど悪さなどしねもの。なんとかお願いするす」
なんとこれだば簡単な願いだもの。男は願いを聞いて河童を逃がしてやった。
こんなわけで、それからこの村では毎年夏の始めに初物の胡瓜2本、
川に流して河童に上げることにしたんだそうな。して、河童も悪さをすることが
なくなったど。えがった。えがった。とっぴんぱらりのぷう。
仙北地方に伝わるお話より
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