夏井いつき先生のブログ 100年俳句日記
風光る 広島県尾道市・玉里幸江(家事・70歳)
毎日新聞2016年5月21日 大阪朝刊
声・投書 女の気持ち
読者からの投稿
「玉里さん、私、こんなにドキドキしているのよ」。
60代のMさんはまるで少女のように、私の手を取り自分の胸に当てた。
ここは広島県福山市内の小さなレストラン。
昼食がすんだら、憧れの人に会いに行くのだ。
Mさんは行事で会った時、あいさつする程度のろう者の友人だった。
1年前、Mさんのご主人の通夜の席で少し話をしたのがきっかけで、2人は急接近した。
行動的なMさんは私をバスツアーに誘い、
この日の俳人、夏井いつきさんの講演会の申込書も、Mさんが持って来た。
元文学少女の2人は話もよく合う。
俳句心のない2人だが、テレビで見る夏井先生の大ファンだ。
申し込みの時、「友人はろう者なので横で通訳してもいいですか?」と了解をもらっていた。
主催のNHKが、中央の前列に2人の席を取ってくれていた。
恐縮しながらも、とてもうれしくありがたかった。
ろう者にとり、口の動きと表情が見えるのはとても大切だから。
テレビと同じく、とても楽しく時間が過ぎた。
通訳の合間に「先生はどんな声?」「とても可愛くはっきりしてるよ」と手話でおしゃべりも。
約100人が1句ずつ作り、先生が7句を入選として大きく張り出し、披露した。
なんとその中に、私たちの姿を詠んだ句が!
「風光る最前列に手話の人」。恐縮の気持ちが消え、温かい空気を感じた。
詠んでくれた人、選んでくれた先生、ありがとう。
夜、Mさんからメールが届いた。
「最高の1日だったよ。夏井先生の声、聞きたかったな」
いいお話しなので 覚え書きします ............