昨年の今頃、大阪の打ち合わせ場所として指定されたカフェがわからず、近くの交番に飛び込んだことがある。
そこには直立不動の若い、おまわりさんが一人居た。
まだ制服が身につかず、顔は緊張し体もコチコチ。
まるで地方の街道沿いに唐突に立っている、おまわりさん人形みたいだと思った。
まだ慣れていないのかなと思いつつ「この、お店はどこにあるのでしょうか?地図の通りに行っても無いんですが」と聞いた。
彼は、地図を見つめて「少々おまちください。ただいま、調べてまいります」とハキハキした口調で言い、裏の方に消えて行った。
その途端、奥から、彼の
「おい、この店、誰か知らねぇかよ」と言う声が聞こえてきた。そこには何人かいるようで・・。
「えーー知らねぇなぁ」「わかんねぇよ」「うーーん。どっかで見たような気はするんだけどよ」などという声が次々にしてきた。盛り場にたむろしている、あんちゃんと同じか、それ以上に口が悪い。
「てめえら、早く思い出せよ、待ってるんだからよぉ」
彼は頼りない同僚を前にしてイラついている。私は彼の豹変ぶりが可笑しくて、必死で笑いをこらえていた。
2~3分すったもんだしたあげく、やっと結論が出た様子。
「お待たせいたしました」会話が筒抜けだったとは、知らない彼は、さっきと同じように緊張した面持ちで姿を現した。
「道が間違っていたようです」彼は丁寧に地図に書き入れてくれ、お礼を言うと
「失礼します」と敬礼までしてくれた。
交番を一歩出ると、犬のお巡りさんの曲が自然に口をついて出て来て、笑いが止まらなかったのを覚えている。
今年も近くまで行ったので、その交番を覗いてみたけれど彼の姿はなかった。
あの可愛い、お巡りさんは勤務に慣れただろうか?
シミ、シワ、タルミ専門店
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