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チェルノブイリの森でおこっていること

2011年03月30日 | 自然からのメッセージ
二つ前の記事にも関連として少し紹介したのですが、チェルノブイリの小鳥の話。

あのチェルノブイリの立ち入り禁止区域は、廃墟となって草木も生えないと思われていましたが、20数年たった今現在、人間がいなくなった場所には緑の森が生まれ街を覆い尽くそうとしています。
研究者によるとそこでは、小鳥は汚染が薄い場所にきちんと巣を作り、汚染が少ない木の実を選んで食べているとのこと。(小鳥のキネシオロジー


(メアリー マイシオ著)


また「チェルノブイリの森―事故後20年の自然誌」というウクライナ出身の女性ジャーナリストのルポルタージュによれば、その区域では、多くの動物たちが戻ってきており、しかも絶滅危惧種すら増えているのですから驚きです。

さらに言うなら、今でも立ち入り禁止区域であるにもかかわらず、故郷に帰って来た人々が居住しているのです。そして彼らは今のところ、自分は健康だとは言わないものの、その不調は区域外の人々が訴える体の不調と大差ないというところに、著者の戸惑いがあります。
もちろん、その地が放射能に汚染されていることに変わりはないのですが・・・。

そこには、想像されたような奇形の動物などはどこにもいない、見た限りでは普通の姿かたちであり、同様に水に住む魚や両生類などもすいすいと元気に水の中を泳いでいました・・・。
そこに住む人々が言うには、おそらくは、奇形の個体は生まれても生きのびられないから、人の目に触れることはないのだろうということです。

カエルは、卵にカラを持たないことから、環境の変化を受けやすい生物です。
著者は、アメリカで農薬などの水質汚染によって寄生虫が増え、奇形のカエルが昨今衝撃的に増えてきているのを目の当たりにしています。ところが、ここでは奇形のカエルすら1匹も見つけることはできませんでした。
まるで、野生動物にとっては、放射性物質より人間の活動の方が危険であるかのような示唆すら受けました。


本をぱっと開いたら、330ページにこんなことが書かれていました。

私が訪れた、どのグループでも同じことが起こった。料理を勧められ、その間に死や別れ、強制避難や恐怖の話をたっぷり聞いた。みんなそろって一斉に逃げたこと--結婚して間もなく飛行機事故で妻を亡くした男性、癌で亡くなった若い甥、第二次世界大戦で戦死した父親や兄弟や叔父や従兄の話。けれども話をした人の中では、チェルノブイリ事故で誰かを亡くした人は一人もいなかった。


また、もう一度、ぱっと開いたら、このようなことが・・・(p312)

なんでも大げさに言いたがる圧力団体が、事故の影響を誇張したり過小評価したりするので、チェルノブイリ原発事故が健康に及ぼした長期的な影響が、いまだに議論されているのも不思議ではない。
原子力産業が主張する結果は限定的で、一方、政治家や活動家や被災者は、健康に及ぼす重大な悪影響を主張することになる。
(中略)
国内外の報道記者には、世間の話題をさらうような身体障害を持つ子どもを重点的に取り上げるという不可思議な習性があり、この習性が火に油を注いだ。子どもたちがチェルノブイリから遠く離れた場合や、チェルノブイリ事故が障害の原因とは考えられない場合さえ、取り上げた。
実際には、原爆被爆者の子孫には、先天的な身体障害の増加がみられないとされており、チェルノブイリの被災者でも同様だ。悲しいことだが、身体障害は、どこの住民でも発生する時には発生するものなのだ。
(中略)
けれども、事故が健康に与えた影響で証明されているのは、子どもの甲状腺がんの増加だけだ、という原子力推進派の主張も誤解を招いている。
残念ながら、事故が健康に与えた長期的な影響については、これまでのところきちんと計画された公平な医学調査が少ないため、ほとんど何も証明できない。



悲しいことだけれど、当時のソビエト連邦という国の閉鎖性もあって、チェルノブイリ事故の健康に及ぼす長期的な影響が、本当は何もわかっていない・・・ということがわかったのでした。
ただ、原発を推進する側と反対する側での、過小評価と被害の誇張。お互いの政治的な思惑で、歪んだ判断をしてしまうなら、むなしいだけです。

現実のチェルノブイリは、今だ汚染されていることに変わりありません。
しかし、それを「豊か」と言っていいのかもわかりませんが、ただ言えることは、確実に自然が回復しているということ。

それが、私には、「風の谷のナウシカ」に出てくる「腐海の森」・・・核戦争のあとの汚染された未来の大地を浄化するように生まれた森のようにも思えたのです。
(あのようなグロテスクな生き物もいなければ見たこともない植物が生えているわけではなく、防御マスクがなければ毒で死んでしまうというものでも、もちろんないのですが)

植物や野生動物、さらには水中や地面の下の見えない世界で起こっていること(木村秋則さん風にいえば、この地面の中の微生物がとても大事)・・自然の回復しようとする力は、化学的な放射性物質という想像を絶するような相手さえ、いつしか飲み込んで、新たな生態系をも作ってしまうのでしょうか。

私自身は脱原発の立場に変わりはないものの、大いなる自然というものが、人間の常識をも覆してしまうなら、原発事故真っただ中にいる日本人として、そこに救いを見た思いがしたのも事実です。




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