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韓国のスワップは危機的状況

2017-09-17 13:57:19 | 日記

韓国のスワップは危機的状況

韓国、中韓スワップ延長を中国に懇願か?

新宿会計士

久しぶりに、心の底から呆れる報道を発見しました。

韓国と中国、通貨スワップ協定の延長を協議中=韓国中銀当局者(2017年9月13日 12:02付 ロイター日本語版より)

ロイターの報道によると、韓国の中央銀行である韓国銀行の「当局者」は、中韓間の2ヵ国間通貨スワップ協定(BSA)の延長を「実務レベルで協議中だ」と述べたのだそうです。

ただし、今のところ中国側から中韓スワップに関する報道は見当たりません。

あくまでも私の主観ですが、これは「実務レベルで協議中」なのではなく、「韓国が中国に対して懇願している最中」ではないでしょうか?

私がそう判断する理由は、昨年の日韓スワップ再開交渉を巡る韓国側の報道の過熱とパターンが似ているからです。

韓国政府担当者は、しばしば希望的観測を口にする

得てして韓国では、交渉の段階で、具体的な協議内容(というよりも韓国政府・当局の担当者の希望的観測)が、記者団にダダ漏れになってしまいがちです。

日韓スワップについてもこの例に漏れず、昨年9月末頃に、韓国のメディアから「新たな日韓スワップの規模は500億ドル程度になる」とのリークがありました(これについては私も昨年、『日韓スワップ「500億ドル」の怪』で触れています)。

おそらくこの報道の正体は、韓国の企画財政部担当者が口にした希望的観測をそのまま記事にしたものであり、日本側の財務省の裏取りなども一切なされていない代物だったのではないかと思います。

(※余談ですが、日韓スワップの再開交渉は今年1月6日に打ち切られ、今日に至るまで再開されていません。)

そのことを踏まえて、改めてロイターの記事を読んでみます。

ロイターの記事には「中韓両国は中韓スワップの延長を実務レベルで協議中」とありますが、これは、「中韓両国は大筋ではスワップの延長で合意しており、現在は実務者レベルで詳細条件を詰めている段階だ」というニュアンスだと受け取りました。

もしその意味だとすると、昨年の日韓スワップで韓国側からどんどんと先行して、「スワップ再開観測」が過熱して行ったのと、状況がよく似ています。

おそらく、今年10月10日に満期を迎えるスワップを延長するのであれば、もうそろそろ具体的な話が出て来ているべきでしょう。

それが、この段階で「実務レベルで協議中」と述べたということの背景にあると見るのは、あながち的外れではないと思います。

中韓スワップは「張子の虎」

改めて振り返っておきましょう。韓国が外国との間で締結しているスワップ協定は、2ヵ国間スワップ(BSA)が4本と多国間スワップが1本であり、米ドルに換算すれば、約1124億ドル程度です。

  • オーストラリアとのBSA(金額:100億豪ドル・9兆ウォン、約79億ドルに相当)
  • マレーシアとのBSA(金額:150億リンギット・5兆ウォン、約35億ドルに相当)
  • インドネシアとのBSA(金額:115兆ルピア・11兆ウォン、約86億ドルに相当)
  • 中国とのBSA(金額:3600億人民元・64兆ウォン、約540億ドルに相当)
  • チェンマイ・イニシアティブ・多国間スワップ(CMIM)(拠出可能額:384億ドル)

ただし、これは「米ドルに換算すれば」、という話であり、CMIMを除いて、実際に米ドルで引き出せる、という意味ではありません。

通貨・為替市場では、「どの通貨で引き出すか」が非常に重要です。

韓国が締結している4本のBSAは、いずれも相手国の中央銀行と締結しているものであり、相手国の中央銀行から通貨を引き出した場合、それを外国為替市場で米ドルなどに両替しなければ、使い物になりません。

そして、オーストラリアを除く3ヵ国の通貨は、いずれも国際的な市場では使い物になりません。

インドネシア、マレーシアともに通貨市場の規模は小さく、BSAに基づいて相手国通貨を引き出したところで、それをドルに両替しようとすれば、両国の通貨の暴落を招きます。

さらに、中国の通貨・人民元の場合、中国本土では本土人民元(CNY)の米ドルへの両替を中国人民銀行が厳格にコントロールしており、人民元を引き出したところで、それを米ドルに両替できるという保証はありません。

また、最近では人民元は香港、東京、ロンドン市場などのオフショアで流通していますが、いずれも市場規模が小さく、人民元を一気に米ドルに両替しようとすれば、オフショア人民元(CNH)の価値が暴落します。

張子の虎も破棄されれば痛い

以上から、韓国が想定している使い方(スワップで引き出した人民元を市場で米ドルに両替すること)は事実上不可能であり、韓国にとっては全く意味がない、使い物にならないスワップなのです。

(※もっとも、人民元建てのBSAは、中国からの輸入代金に人民元決済を使っている場合など、役立つ場合は皆無ではありませんが、その場合、3600億元ものスワップは必要ないでしょう。)

ただし、金融の素人から見れば、「為替換算して540億ドルを超える」という金額は、たしかに魅力的です。

いわば、この540億ドルは「張子の虎」、「絵に描いた餅」ですが、それでも投機筋からの攻撃に対する「気休め」程度にはなっていました。

ということは、その540億ドルを破棄されれば、韓国が保持するBSAの7割以上が一気に失われる格好であり、投機筋に対しては「今が韓国の通貨を空売りするチャンスですよ~」というメッセージになります。

通貨暴落の具体的プロセス

韓国は厳格な資本コントロールを行っているため、韓国の通貨の暴落が始まるとしたら、現実にはオフショアのNDFの売りからスタートするのではないかと思います。

ただし、NDF市場が崩落すれば、その影響は実体経済に及びます。

具体的には、外国人投資家の資金が逃げるため、株式債券もセットで売られ、株安・金利上昇・通貨下落の「トリプル安」となることが想定されます(いわゆるキャピタル・フライト)。

ただし、本当に怖いのは、株安でも金利上昇でもありません。「外債のデフォルト」です。

韓国の銀行は外国の銀行や機関投資家から、貸出金・債券の形で、相当多額の資金を調達しています。

その金額は日本円に換算して、40兆円少々ですが、これは韓国当局が公表している外貨準備の額とほぼ等しい金額です。

しかし、韓国の外貨準備高については、少なく見積もっても75%が不良資産であると考えられるため(このあたりの詳細は『韓国の外貨準備の75%はウソ?』に書きましたのでご参照ください)、

キャピタル・フライトが発生した時に自国通貨を買い支えるための外貨準備がすぐに底をつく可能性があります。

CMIMは約100億ドルまでIMFの介入なしに引き出すことができますが(いわゆるデリンク条項)、キャピタル・フライトの前には100億ドルなど「焼け石に水」です。このため、韓国はオーストラリアのスワップ(100億豪ドル)を引き出してすぐに米ドルに両替し(約80億ドル)、それでも足りなければインドネシア、マレーシアとのスワップを引き出して両国を通貨安の道連れにし、それでも足りなければ、

  • CMIMから残額を引き出す(つまりIMFの介入を招く)か、
  • 中国に頭を下げてCNYを引き出して米ドルと両替してもらうか、
  • それとも日本に泣きつくか、

という流れです。

日本は絶対に助けるな!

財務省の日韓スワップロジックの詭弁』でも指摘しましたが、韓国経済が破綻に近づけば、それなりに日本企業にも影響は出てきます。

しかし、それと同時に、アジア諸国では国家破綻など普通に考えられる話であり、個別の民間企業が韓国についてもカントリー・リスクをきちんと評価し、リスク管理しているべき筋合いのものです。

財務省、あるいはマス「ゴミ」あたりから、「財務省の外為特会から韓国への緊急融資を行え」といった議論が出てくることを、私は一番警戒しているのですが、これについては麻生太郎副総理兼財相がキッチリと〆てくれることを期待したいと思います。



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