芳野星司 はじめはgoo!

童謡・唱歌や文学・歴史等の知られざる物語や逸話を写真付でエッセイ風に表現。

光陰、馬のごとし OPEC

2016年05月16日 | 競馬エッセイ
              

 インド人のノーベル賞経済学者アマルティア・センは「穀倉が作物でいっぱいなときでも、飢饉が起こりうる」と言った。原油価格の高騰は単なる需給の関係で起こるのではない。…「貯蔵タンクが原油でいっぱいなときでも、暴騰が起こりうる」のだ。原油生産は落ち込んでいない。減産もしていない。しかしこれから産油国が減産するかも知れない、イラクの政情悪化やテロで、あるいはハリケーン被害で供給が滞るかも知れない、イランの核関連施設にイスラエルが急襲爆撃するかもしれない、中国の消費拡大でまだまだ騰がるかも知れない…疑心暗鬼と博打要素、それが市場原理下のカジノ資本主義の世界なのである。
 OPEC(石油輸出国機構)は1960年、バクダッドで開催された石油輸出国会議で創設された。産油国が原油の生産・供給・価格政策等で協調し、お互いの利益を守ろうという国際的な石油カルテルである。OPEC加盟諸国は、この国際カルテルによって国際石油資本に対抗し、さらに国際社会の中での大きな発言権を獲得した。
 現在イギリスやメキシコ、ロシアなどの非OPEC産油国が台頭し、相対的な影響力は弱まっているが、このOPEC創設以降、産油国の石油利権者たちに宇宙的な富をもたらし続けてきた。こうしたオイルマネーは欧米をはじめとする世界の金融市場を突き動かし、また世界の競馬のオーナー地図を激変させてきた。

 1980年日本の競馬界に、燃えるような真っ赤な覆面、真っ赤な勝負服が印象的なオペックホースという馬が、クラシックロードに名乗りを挙げた。鞍上は豪腕・郷原洋行である。道悪馬場の皐月賞は3番人気で、重上手のハワイアンイメージと激しく叩き合い、接戦の2着だった。ダービーはモンテプリンスに次ぐ2番人気で登場した。ゴールまで二頭は壮絶な叩き合いを続け、鼻差でオペックホースが制しダービー馬の栄冠を獲得した。この時点までは、オペックホースはこの世代の最強馬だったことは間違いない。
 しかし夏を越し秋を迎えて以降、引退まで、オペックホースは一度も勝つことができなかった。それも惨敗である。勝たせたい一心の佐藤勇調教師と馬主は、ダートレースまで出走させた。やがてオペックホースは、障害レースに出るための飛越練習までさせられていた。ダービー馬が障害競走に転向するなど前代未聞である。佐藤調教師にはファンから激しい抗議が寄せられたという。こうしてオペックホースは平地戦で32連敗を続け、屈辱にまみれて引退した。生涯成績41戦4勝。オペックホースには「史上最弱のダービー馬」という不名誉な称号が与えられた。

 オペックホースの父はアルサイド系リマンドで、晩成型のステイヤー血統である。母の父はハイペリオン系チューダーペリオッドで、これも中長距離を得意とする血統であった。作家で血統研究家の山野浩一は、このオペックホースの成績から、リマンドをステイヤーだが早熟型と書いている。リマンドの母の父が短距離系のパレスタインということから早熟型と推察したのだろう。
 しかし私の見るところ、リマンドはパレスタインのスピードを活かし短距離戦でも活躍できるが、本来は底力のあるステイヤーであり晩成型であると思われる。その産駒アグネスレディとテンモン(強い牝馬だった)はオークス馬になり、タレンティドガールがエリザベス女王杯を勝った。皐月賞とダービーに2着したメジロモンスニーもいた(ミスターシービーが三冠馬に輝いた年である)。また南関東公営の三冠馬サンオーイも出た。典型的な底力のあるクラシック血統である。

 私はオペックホースを見ていて気づいた。夏を越し秋になって、他馬の成長がオペックホースの能力を追い越したのではない。また馬は体調やレース展開、相手との力関係でのみ負けるのでない。おそらく彼の中から「闘争心」が消えたのである。彼の闘争心は皐月賞とダービーで燃え尽きたのかも知れない。しかしそれに気づかぬ人間たちが彼に競走を強い、その過程で彼の中の「自尊心」が傷つけられたのだ。
 どんなに優れた能力を持っていても、闘争心を失い、自尊心を傷つけられた馬は凡走する。単なるスランプではないのである。それは一時期のオグリキャップやトウカイテイオーにも見られた。サラブレッドは繊細で、豊かな精神性を持った動物なのだ。
 史上最弱のダービー馬と云う評価がたたり、オペックホースの種牡馬生活は惨めだった。しかし数少ない産駒からマイネルヤマトなどの活躍馬を出した。おそらく彼はリマンドの底力を伝える最良の後継種牡馬であったはずだ。しかし人間たちは、ついに彼を深く理解し得なかったのである。昨年の秋、オペックホースの死が伝えられた。

 ちなみに私は若い頃、スペインのアルジェシラスからジブラルタル海峡を渡って、モロッコのタンジールという港町に着いた際、パスポートを取り上げられ、数人の兵士たちに背と脇腹に機関銃を突きつけられて拘束された。連れて行かれた先は留置場である。「ラバトのOPEC総会が終了するまで、お前はここから出られない」と告げられた。テロリストと疑われたわけではないが、私は五日間を南京虫のいる留置場で過ごした。OPECの懐かしい想い出である。


         (この一文は2006年7月12日に書かれたものです。)
                                                      

音二郎と啞蝉坊 ~演歌の流れ~

2016年05月15日 | コラム
                              

 川上音二郎から添田啞蝉坊の演歌の流れを書いてみた。

 自由民権運動の時代、青年・音二郎は「自由童子」として政権批判の演説に駆け回った。政治批判演説が禁止されると、寄席でフランス革命をタネとした政治講談をやり、やがて大阪で歌舞伎役者に弟子入りした。さらに改良演劇と称した芝居一座を組み「壮士芝居」を始めた。自由民権思想をより多くの大衆にわかりやすく広めるためである。
 絵本の桃太郎のような奇妙な出で立ちで、板垣遭難記、佐賀暴動記など、生々しい事件も取り上げたが、ほとんど珍奇なお笑いショーに近かった。音二郎は壮士芝居の中で歌を歌い出した。

  オッペケペ、オッペケペッポー、ペッポーポー
    …
  権利幸福嫌いな人に
  自由湯をば飲ませたい
  オッペケペ、オッペケペッポー、ペッポーポー
    …
  いきな束髪、ボンネット
  貴女に紳士のいでたちで
  うわべの飾りは立派だが
  政治の思想が欠乏だ
  天地の思想がわからない
  心に自由のたねをまけ
  オッペケペ、オッペケペッポー、ペッポーポー

  不景気きわまる今日に
  細民困窮かえりみず
  目深にかぶった高帽子
  金の指輪に金時計
  権門貴顕にひざをまげ
  芸者たいこに金をまき
  内には米を倉につみ
  同胞兄弟殺す気か
  オッペケペ、オッペケペッポー、ペッポーポー

 啞蝉坊の演歌は堺利彦や西川光二郎らと出会ってから変化し、社会問題を歌うようになった。堺や西川らの演説会に警官たちが「演説中止!」を告げると、啞蝉坊らは「では演説をやめて歌を歌いましょう」とやり、これが受けた。さらに啞蝉坊の演歌には剽軽さと哀調を帯びた芸術味が加わり始めた。「まっくろけ節」は芸術的である。

  米で鳴る 陸奥に生まれて 食えぬとは
  嘘のようだが 来てみやれ
  炒り藁松葉餅 まっくろけのけ ホレまっくろけのけ
 
  雨が漏る 雨が漏る漏る美術館
  汚点(しみ)が画になる その汚点が
  職工の涙よ まっくろけのけ ホレまっくろけのけ

  金ほしや お金ほしやの空想の
  果ては足尾の銅山に
  カネを掘る掘る まっくろけのけ ホレまっくろけのけ

  進みゆく 文明の光か瓦斯燈か
  夜を昼にする工夫さん
  おまえはいつでも まっくろけのけ ホレまっくろけのけ

  労働者 下司よ下郎とバカにされ
  それが開化か文明か
  労働者がなけりゃ世は まっくろけのけ ホレまっくろけのけ


 川上音二郎の「オッペケベ節」を借りて作詞してみた。
 
  薩長藩閥とくせん倒し
  文明開化の幕開けが
  古代の昔に逆戻り
  王政復古に祭政一致
  水干直垂平安烏帽子
  太政官と神祇官
  不平等条約改正できず
  異国衣装で鹿鳴館
  オッペケペ、オッペケペッポー、ペッペッポー

  富国強兵に邁進し
  演説中止に発禁発禁
  統帥権に陶酔軍人やりたい放題
  ここが日本の生命線と
  どんどん外地にせせり出て
  多くの外地を苦しめた
  長い戦に明け暮れて
  叩き潰されすべてを失くし
  オッペケペ、オッペケペッポー、ペッペッポー

  多くの同胞犠牲にし
  得たのが平和な憲法だ
  薩長藩閥やしゃ孫どもが
  再び古代の昔に憧れて
  国民主権は制限付きで
  平和な憲法捨て去って
  自由言論政権批判は許さない
  美しい国を目指すとさ
  オッペケペ、オッペケペッポー、ペッペッポー

 それでは「まっくろけ節」に最後はオッペケペで…
甘利明先生の歌
〽TPP、TPP アメリカ様の要求は すべてOK TPP
 合意内容はまっくろけのけ ホレまっくろけのけ
 あたしゃそれよりUR  なんとかもっと金を出せ
 おれの顔立て金を出せ  それで合意だUR
 甘い利得だ議員先生の特権だ  斡旋利得だ甘利さん
 ホレまっくろけのけ~で オッペケペー オッペケペッポー 
 ペッポッポー

山田俊男先生の歌
〽TPP、TPP 選挙のときは反対だ 選挙のために反対だ
 だけど当選万歳だ ホレ万歳だ
 総理もTPP推進だ だからあたしも推進だ
 文句あんのか百姓め あたしに文句を言う奴は
 本当に殴るぞ百姓め ボディブローだアッパーだ
 ホレまっくろけのけ~で オッペケペー オッペケペッポー 
 ペッポッポー

菅原一秀先生の歌
〽女はね女はね 25過ぎたら女じゃない 俺の定義は厳しいの
 女はね女はね 子ども産んだら女じゃない 
 保育園落ちても俺知らねえ 日本死んでも俺知らねえ
 それより国会休みたい 国会なんか俺知らねえ
 嘘の休暇を届け出て 愛人連れてハワイ旅行
 ホレまっくろけのけ~で オッペケペー オッペケペッポー 
 ペッポッポー

                                                      

若槻泰雄という著述家

2016年05月14日 | エッセイ
               

 若槻泰雄という元玉川大学農学部教授の、日本語で書かれた著書のほとんどを愛読してきた。
 彼は中国の青島に生まれ、近衛歩兵第八連隊に入隊。悲惨な引揚げも目撃して来た。復員後に東大法学部を出て、農林中央金庫、日本海外協会連合会(国際協力事業団)等を経て、玉川大学農学部の教授となった方である。
 彼は少年時代に日本軍やその威を借る日本人の横暴や暴力を目撃してきた。外務省の外郭団体職員として、政府の棄民政策も目撃してきた。彼の中に、沸々と国家への怒りがこみ上げてくる。彼はそれらの体験を元に戦争、国家、天皇制に対する著述を始めた。
 著書に「排日の歴史」「原始林の中の日本人」「シベリア捕虜収容所」「発展途上国への移住の研究」「韓国・朝鮮と日本人」「戦争引き揚げの記録」「ニッポン難民列島」「日本の戦争責任」「『在中二世』が見た日中戦争」「外務省が消した日本人」「バナナの経済学」などがある。おそらく憤怒が彼にこれらの著述をさせたものだろう。いずれも名著である。
 以下は、美濃部達吉の天皇機関説排撃に乗じた陸軍が政府に圧力をかけ、「国体明徴に関する声明」を政府が発表した部分について触れたものである。

 恭しく惟みるに、我が国体は、天孫降臨の際、下し賜える御神勅により昭示せらるる所にして、万世一系の 天皇、国を統治し給い、宝祚の隆(さかん)は天地(あめつち)とともに窮(きわまり)なし。されば憲法発布の御上諭に…

 人間それ自体や、自分たちの種族・民族・さらには統治者の祖先が、天界から地上にやって来たのだ、というような神話や観念は世界各地に見られることでべつにめずらしいことではない。ただ日本が世界的にみてめずらしいのは、二十世紀も半ばにかかっている時代、しかも一応相当程度の文明に達した国が、こんな幼稚な神話を信じ、あるいは国家が国民に信じることを強制した、という点にある。

            「日本の戦争責任 最後の戦争世代から


 大日本帝國憲法が発布された際、中江兆民は苦笑したという。こんなものより全国の民権家たちが草した私擬憲法のほうがよほど優れていたからだ。ベルツは日本の人々を気の毒に思ったという。大日本帝國憲法は「愚妹なる国民」が前提なのであった。
 ちなみにベルツの前で、この憲法制定の責任者であった伊藤博文は、軍参謀総長に据えられた宮様のことを宮家に生まれるということは気の毒なことだと言い、操り人形の真似をして踊って見せた、とベルツの日記にある。


選挙の時の備忘録

2016年05月13日 | コラム

「呆・腐なる人材」

甘利明…典型的な斡旋利得罪。 山田俊男…JA関係者に公衆の面前で暴力をふるう。 菅原一秀…25歳以上は女じゃない、子供を産んだら女じゃない。国会を嘘の届け出で休み、愛人とハワイ旅行。 中山秀康…銀座ホステスお持ち帰り。経費は政治活動費で。 山田賢司…給与ピンハネを告発予定の秘書が、車内で練炭自殺。しかし顔は原型をとどめず謀殺疑惑。 宮沢洋一…SMバー費用を政治活動費で支出。 大西英男…新聞こらしめ・報道規制発言。セクハラ野次。巫女のくせに発言。 高木毅…若い頃の犯罪だが下着ドロ。親父がもみ消し。 丸山和也…黒人奴隷がアメリカの大統領に発言。 武藤貴也…ホモ連れ込み、未成年男性買春。 松島みどり…外務大臣答弁中の横で居眠り、大あくび、携帯電話に読書、うちわ。 小渕優子…観劇会とワイン配布。追求されると事務所のパソコン破壊で証拠隠滅。 佐藤ゆかり…政治資金規正法違反で身内が告発。 高市早苗…925万円の闇ガネ疑惑。 安倍晋三…相続税3億円脱税疑惑。 安倍実弟・岸信夫…政治資金規正法違反で、子分の江島潔ともどもオンブズマンが告発。 丸川珠代…放射能線量、科学的根拠否定。 島尻安伊子…北方担当相なのに歯舞が読めなかった。 石原伸晃…最後は金目でしょ発言。 宮崎謙介…育休パフォーマンスと政界ゲス不倫。 今井絵理子候補…情夫が未成年売春風俗店経営・逮捕歴。 江島潔候補者…安倍実弟・岸信夫とともに政治資金規制法違反でオンブズマンが告発。 これは氷山の一角。


「オッペケペ節」でというご要望にお応えして、「マックロケ節」に最後はオッペケペで…

甘利明先生の歌
〽TPP、TPP アメリカ様の要求は すべてOK TPP
 合意内容はマックロケのケ マックロケのケ
 あたしゃそれよりUR  なんとかもっと金を出せ
 おれの顔立て金を出せ  それで合意だUR
 甘い利得だ議員先生の特権だ  斡旋利得だ甘利さん
 それマックロケのケ~で オッペケペー オッペケペッポー 
 ペッポッポーィ

山田俊男先生の歌
〽TPP、TPP 選挙のときは反対だ 選挙のために反対だ
 だけど当選万歳だ ほれ万歳だ
 総理もTPP推進だ だからあたしも推進だ
 文句あんのか百姓め あたしに文句を言う奴は
 本当に殴るぞ百姓め ボディブローだアッパーだ
 それマックロケのケ~で オッペケペー オッペケペッポー 
 ペッポッポーィ

菅原一秀先生の歌
〽女はね女はね 25過ぎたら女じゃない 俺の定義は厳しいの
 女はね女はね 子ども産んだら女じゃない 
 保育園落ちても俺知らねえ 日本死んでも俺知らねえ
 それより国会休みたい 国会なんか俺知らねえ
 嘘の休暇を届け出て 愛人連れてハワイ旅行
 それマックロケのケ~で オッペケペー オッペケペッポー 
 ペッポッポーィ