🌸🍀誰の責任か?🍀🌸
それは、カロリンスカ医科大学での講義中の出来事だった。
大手製薬会社は、マラリアや眠り病やそのほかの最も貧しい人たちがかかる病気について、
まったくと言っていいほど何の研究もしていない、と私が説明していたときだ。
一番前に座っていた学生が、こう言った。
「製薬会社の連中の顔に一発食らわしてやろうぜ」
私は口聞いてみた。
「なるほど。実はこの秋にノバルティスに行くことになってるんだ(ノバルティスはスイスの巨大製薬会社で、私は講演に招待されていた)。
誰に一発食らわせたらいいのかと、それが何の役に立つのかを教えてくれたら、やってみてもいいよ。
誰の顔を狙ったらいいんだい?
社員なら誰でもいいのかな?」
「いや、だめだめ。いちばゆ偉いやつじゃないと」と学生。
「そっか。じゃぁ、ダニエル・バスラだな」と当時のCEOの名前を出した。
「ダニエルなら知り合いだよ。秋に会ったら、一発お見舞いしたほうがいいのかな?
それで万事オーケーってこと?
一発食らったら心を入れ替えて研究の優先順位を変えてくれるかな?」
学生はさらに突っ込んできた。
「いや、取締役全員に一発食らわせないと」
「それはいいかも。その日の午後は取締役会で話すことになりそうだからね。
ってことは、午前中ダニエルにあうときはおとなしくして、
取締役会の部屋に入ったら歩き回ってひとりでも多くにパンチを食らわせればいいってわけだな。
もちろん、全員を叩きのめす時間はないと思うけど…、殴り合いなんてやったことないし、警備員がいるから、3人か4人殴ったら止められるだろうな。
でも、やってみるべきかな?
そうしたら取締役会が研究方針を改めてくれるかな?」
「まさか」別の学生が言った。
「ノバルティスは上場企業ですよ。方針を決めるのはCEOでも取締役会でもないでしょう。
株主ですよね。取締役が方針を変えても、株主は別の取締役を選ぶだけですよ」
「たしかに」と私。
「株主が望むから、会社は金持ちの病気にカネを使うんだね。
そうすれば元がとれるから」
では、社員も上司も取締役も悪くないってことだ。
「じゃぁ」最初に一発食らわそうと言った学生を見ながら言った。
「ノバルティスの株主は誰かな?」
「金持ちですよね」と肩をすくめる。
「違う。製薬会社の株価はすごく安定してるからね。
株式市場が上がったり下がったりしても、
原油価格が動いても、製薬会社の株は底堅いんだ。
景気に連動する銘柄ならば、消費が増えたり減ったりすると株価も動くが、
がん患者にはいつだって治療が必要だから製薬会社の株価はあまり変動しない。
そんな安全な株を持っているのは誰だろう?」
学生の目が私に集まる。
その顔は大きな?(クエッション)マークが浮かんでいる。
「退職年金だよ」
シ〜ン。
「ってことは、一発食らわす相手がいないんだ。
私は株主に合わないからね。
でも君たちなら会える。
今週末おばあちゃんの家に行って顔に一発食らわしてくるといいよ。
誰かを罰したいなら、安定化を持ちたがる欲深なお年寄りを責めるといい」
「そうそう、君たちが去年の夏休みに貧乏旅行に出かけたとき、おばあちゃんにお小遣いをもらっただろう?
なら、それもかえいい返したほうがいいな。
おばあちゃんがノバルティスにそのお金を突っ返して、貧しい人たちの健康に投資しろって言えるかね。
ああ、でももう使ったのなら使っちゃったのなら、自分の顔に一発食らわさないといけなくなるね」
(「ファクトフルネス」(日経BP社)オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング、ロンランド著 上杉周作、関美和訳より)
経済って、こんなふうに回ってるのですね。
それは、カロリンスカ医科大学での講義中の出来事だった。
大手製薬会社は、マラリアや眠り病やそのほかの最も貧しい人たちがかかる病気について、
まったくと言っていいほど何の研究もしていない、と私が説明していたときだ。
一番前に座っていた学生が、こう言った。
「製薬会社の連中の顔に一発食らわしてやろうぜ」
私は口聞いてみた。
「なるほど。実はこの秋にノバルティスに行くことになってるんだ(ノバルティスはスイスの巨大製薬会社で、私は講演に招待されていた)。
誰に一発食らわせたらいいのかと、それが何の役に立つのかを教えてくれたら、やってみてもいいよ。
誰の顔を狙ったらいいんだい?
社員なら誰でもいいのかな?」
「いや、だめだめ。いちばゆ偉いやつじゃないと」と学生。
「そっか。じゃぁ、ダニエル・バスラだな」と当時のCEOの名前を出した。
「ダニエルなら知り合いだよ。秋に会ったら、一発お見舞いしたほうがいいのかな?
それで万事オーケーってこと?
一発食らったら心を入れ替えて研究の優先順位を変えてくれるかな?」
学生はさらに突っ込んできた。
「いや、取締役全員に一発食らわせないと」
「それはいいかも。その日の午後は取締役会で話すことになりそうだからね。
ってことは、午前中ダニエルにあうときはおとなしくして、
取締役会の部屋に入ったら歩き回ってひとりでも多くにパンチを食らわせればいいってわけだな。
もちろん、全員を叩きのめす時間はないと思うけど…、殴り合いなんてやったことないし、警備員がいるから、3人か4人殴ったら止められるだろうな。
でも、やってみるべきかな?
そうしたら取締役会が研究方針を改めてくれるかな?」
「まさか」別の学生が言った。
「ノバルティスは上場企業ですよ。方針を決めるのはCEOでも取締役会でもないでしょう。
株主ですよね。取締役が方針を変えても、株主は別の取締役を選ぶだけですよ」
「たしかに」と私。
「株主が望むから、会社は金持ちの病気にカネを使うんだね。
そうすれば元がとれるから」
では、社員も上司も取締役も悪くないってことだ。
「じゃぁ」最初に一発食らわそうと言った学生を見ながら言った。
「ノバルティスの株主は誰かな?」
「金持ちですよね」と肩をすくめる。
「違う。製薬会社の株価はすごく安定してるからね。
株式市場が上がったり下がったりしても、
原油価格が動いても、製薬会社の株は底堅いんだ。
景気に連動する銘柄ならば、消費が増えたり減ったりすると株価も動くが、
がん患者にはいつだって治療が必要だから製薬会社の株価はあまり変動しない。
そんな安全な株を持っているのは誰だろう?」
学生の目が私に集まる。
その顔は大きな?(クエッション)マークが浮かんでいる。
「退職年金だよ」
シ〜ン。
「ってことは、一発食らわす相手がいないんだ。
私は株主に合わないからね。
でも君たちなら会える。
今週末おばあちゃんの家に行って顔に一発食らわしてくるといいよ。
誰かを罰したいなら、安定化を持ちたがる欲深なお年寄りを責めるといい」
「そうそう、君たちが去年の夏休みに貧乏旅行に出かけたとき、おばあちゃんにお小遣いをもらっただろう?
なら、それもかえいい返したほうがいいな。
おばあちゃんがノバルティスにそのお金を突っ返して、貧しい人たちの健康に投資しろって言えるかね。
ああ、でももう使ったのなら使っちゃったのなら、自分の顔に一発食らわさないといけなくなるね」
(「ファクトフルネス」(日経BP社)オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング、ロンランド著 上杉周作、関美和訳より)
経済って、こんなふうに回ってるのですね。
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