hideyukiさんの、令和もみんなガンバってますね!笑み字も!Webにも愛と光を!

日々の楽しい話、成長の糧などを綴ります。
楽しさ、感動、知恵が学べる。
(^_^)私はとっても普通の人です。

いのちの絆を考える

2016-06-02 12:55:53 | 日記
🌸🌸いのちの絆を考える🌸🌸


痴呆症が深まった「ナミさん」というおばあちゃんの話です。

ナミさんは「君ケ畑(きみがはた)」という集落に生まれ育ち、

結婚や子育て、旦那さんの介護や見送りもやりました。

だからナミさんは認知が激しくなっても「この君ケ畑にいたい」とずっと1人暮らしを続けました。

でも老衰が深まるにつれて寝ていることが多くなり、

喋ることが少なくなって、全身のめぐりが悪くなって、浮腫(むく)んだりしました。

そんなナミさん見て娘さんが「うちに来てほしい」とお願いします。

ナミさんは娘のお願いを受け入れ、娘さんの家に行きました。


ある夜中、1人でトイレに行こうとしたナミさんが転倒します。

頭を7針も縫う大ケガでした。

孫やひ孫がお見舞いに来ても目も開けなかったのですが、

会話の中に「君ケ畑」という名前が出ると、ナミさんは何か言おうとしました。

「もしかして君ケ畑に帰りたいの?」

と娘さんが言うと、ナミさんは頷きました。

見ていた花戸ドクターが

「みんなで一緒に帰りましょう」

と声を掛け、

ナミさんはまた自分の家に戻ることになりました。

息子さんも京都から駆け付け、ヘルパーさんやお孫さんやひ孫さんもやってきました。

こうして君ケ畑の家に戻って5日間、

大切な人に寄り添われながらナミさんは過ごしました。

5日目、ナミさんの寝ている隣の隣の部屋で、私は息子さんと話をしていました。

突然、息子さんは話しかけていた言葉を途中で飲み込み、

ナミさんの部屋へと入っていきました。

私も後を付いて行くと、ちょうどナミさんの息が止まる瞬間でした。

「おーい、息が止まったぞ」

息子さんが声を掛け、
家の裏手から娘さんも駆け付けました。

娘さんはナミさんの手を握り

「おばあちゃん!」

と呼びかけました。

息が止まって何十秒も経っているのですが、

その呼びかけに舞い戻るかのように

ナミさんは、また息をし始めました。

娘さんは涙を流し、両手でナミさんの手を握り、言いました。

「おばあちゃん、ありがとうもう。

もう、ええよ」

ナミさんは、その言葉に安心したかのように完全に息を終えました。


後になって娘さんは、

「あのときはすごく温かかった。

満足みたいなものだったのかも」

と振り返ります。

別れのつらさ、悲しみはあるけれど、どこか温かな充足感、

もっと言えば命のエネルギーや命のほとばしりのような、厳かで温かな空気が満ちていたのだと思います。


私はカメラを持ったまま、

「シャッター音でその空気を壊してはいけない」と思いました。

我に返って、ようやく1枚撮りました。

亡くなったナミさんの目から涙がこぼれていました。

娘さんはその写真を見ながらボロボロと涙をこぼし、

「お母ちゃん、これでよかったんやね」

と、ナミさんに笑かけました。

波の中に笑顔がある、そんな場面でした。

ナミさんの息の吹き返し、

そして、亡くなってからの涙は、

ご家族にとって一生胸に残る大切な贈り物だと思いました。


(「みやざき中央新聞」國森康弘さんより)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿