貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

母岩は必ずしも母ではない?

2023-03-17 10:51:04 | 岩石生成論

雑感の雑文です。(どれもそうだろw)

今でも無知ですけど、もっと無知だった頃、母岩に生えた結晶を見て、
「ううむ、これは母岩の成分が浸み出して結晶になったのだろうか」
などと思ったものです。

けど、これ、必ずしもそういうことではない。
もちろん、マグマから生まれた超高熱の熱水が接触して、あるいは大陸変動のものすごい力が加わって、元の岩石を溶かし、その岩石に含まれていた成分を改めて純粋結晶として結晶させるということはある。
そういった場合は、岩石は確かに結晶の「母」であるかもしれない。
でも、そういうことばかりとは限らない。
岩塊内に亀裂や空洞があって、そこにはるか彼方から特定成分を含んだ熱水が侵入し、そこでとどまってゆっくりと冷えて、大きな美しい結晶を作る。そういうことも多々ある。その場合、たまたまその空洞の周りにある種の岩石があったというだけで、岩石と結晶はほとんど無関係ということもある。
ペグマタイトなんかでは、融点が高いものから結晶ができる。で、後から固まったものは先の結晶を包むように固まる。包んでるほうの鉱物は母ではなくて兄弟というべきか。「共生」ですね。
「母岩を見なきゃその鉱物のことはわからない」という見解がありますけど、それは多くの場合正しいかもしれないけど、そうでない場合もある。

このチタナイトだと、いかにも母岩とその子である結晶みたいな感じ。

このアストロフィライトはどうかな。むしろ共生かな。



まあ経験と知識が豊富な人は、母岩や共生結晶を見て、その鉱物がどこでどうやってできたのかわかるのでしょうけど。

いや、だからどうだということではありません。
ただ、鉱物のでき方というのは、ほんとに様々だなあ、と感心しているわけです。
素朴なイメージだと、石はマグマが固まってできる。マグマにもいろいろバラエティはあるだろうけど、固まったらそこでおしまい、と。ところがとんでもない。とりわけ水が関与すると、あれを引っ張り出して、これと混ぜ合わせて、あっちへ運んで、とやりたい放題。(それは言い過ぎだろ)
いやあ、けっこう自由奔放な世界なんですねえ。知らなかった。

     *     *     *

物質はそれ自体で特異構造を作るのか、という大問題がありまして。
宇宙の星間物質からたまたま惑星が生まれて、たまたまそこに生命が生まれて、たまたまそこに人類が生まれた。唯物論はそう考えるわけです。
このたまたまってのは何じゃい。大鍋に手当たり次第に何かをぶち込んで長い間煮ていれば絶品のブイヤベースがたまたまできるかもしれない。サルにキーボードを打たせたら途方もない長い時間を掛ければシェイクスピアができるかもしれない。んなあほな。
いや、そうではなく、物質には何か特異な構造を生み出す仕組みが隠されているはずだ。とプリゴジンを始めいろいろな人があれこれ考えてきた。けどわかってない。
物質はほっておくだけで、特異な構造、もっと言えば「高次な構造」を生み出すのか。

石を見ていると、「こりゃやっぱ特異なもの、高次なものだよねえ」と思ってしまう。で、どうやったらこんなものができてくるのか。「たまたま」が重なった奇跡中の奇跡なのか。それとも何か別の作用因があるのか。それは物質内にあるのか、「外に」あるのか。
まあそれは永遠の謎でしょうけど。


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