貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

フェナカイト

2024-08-16 11:26:52 | 単品

何かねえ。(何だよ)
すごい人気の石みたいなんですよ。
フェナカイト。Phenakite。
「カ」が正しいらしい。mindat さんいわく、
《過去には phenacite という綴りが使用されていたが、承認されている綴りは phenakite である。》
日本でもフェナサイトという表記があって、あちきもそっちが正しいと思っていた。直さなきゃ。
《石英と間違われることを暗示して、ギリシャ語で「欺瞞者」を意味する φέναξ から命名された。》
「ξ」は「クサイ」だから「フェナクス」ですかね。「k」「s」どちらもありか。いっそのことフェナクサイトにすればよかったか。(そんな鵺みたいなw)
「欺瞞」というのは何か似たような話があったな。ああ、アパタイトか。みんなひどい名前を平気でつけるね。石に対して失礼でしょうに。(そういう感性は西洋にはないw)
組成は Be2SiO4。珪酸ベリリウム。いたって単純。ベリリウム単独塩基の鉱物はこれとベルトランダイト(Bertrandite Be4(Si2O7)(OH)2)くらいか。ベリリウム鉱物リストはこちら。ペグマタイト鉱物。

だいたい高い。とんでもなく高い。ロシア産のものが特に高い。(高い高いとうざい)
見た目は透明で「水晶欺瞞者」と言われるくらいだから水晶と変わらない。
ところがところが、何と、「ヒーリングパワー」がものすごいのだとか。
ちょっと引用させていただこうかな。
《フェナカイトは、世界で一番波動が高い石と言われています。他の追随を許さない唯一無二の超エリートなクリスタルです。……そのパワーは、世界三大ヒーリングストーン……の遥かに上をいく『別格のもの』です。》
ふうむ。あちきの右目の難病も治るかしら。
さらにさらに、こんな記述も。
《フェナカイトは、人の内側に溜まった悪いエネルギーを全て外に出し、身体の内側からクリアにすることで、癒しの効果を生み出します。》
あれ、あちきなんかはぺちゃんこになりそうですね。(悪いもんしか詰まってないのかよ)
まあもっとすごいことも書かれているので、興味のある方はこちらをどうぞ。

つまり、「パワーストーン」ファンの方々がこぞって買うので高くなるのでしょうね。
あちきなんかの出る幕ではない。のだけれど、何せベリリウム鉱物。しかも純粋珪酸塩。やっぱちょっと見てみたいなと。で、パーフェクトストーンさんでお安い結晶が出たのでポチッと。



写真へた。ファンに怒られそう。
ううむ。水晶。水平方向の条線も水晶に似ている。
けれど煌めきがある。トパーズの煌めきに近いか。屈折率が1.65~1.67くらいで水晶より全然高いからかも。トパーズ、トルマリンより若干高い。ただし分散度は0.005と低い。濃い色の結晶ではプレオクロイズムが見られるそうだけど、透明では無理。
ヒーリングパワーは……すみません、不感症です。

と書いていたら、クリワ立川さんでこんなのに出会った。

なんと、黄色いフェナカイト。
何でも、三つ入って来て、透明なのはもう売れたとか。パワーストーン系の人は純粋を求めるのでしょうね。しかし、鉱物標本としては、めったに見ない、珍品ではないしょうか。
おまけにえらくお安くてありがたい。(そっちが主だろ)

さて、こういうヒーリング・ストーンというのはどういうふうに扱うのでしょうか。
悪い所にペタっと貼る? 眼帯してそこに入れて右目に当てて寝るかな。
右目が治ったら報告します。(不信の輩には御利益はないだろうよw)


アンティゴライト&蛇紋岩の謎

2024-08-13 20:30:02 | 単品

京都府宮津市小田採石場(中ノ茶屋)産。ヤフオクです。
アンティゴライト(Antigorite、葉蛇紋石)はサーペンティン=蛇紋石の一種。名前は原産地イタリア・ピエモンテのアンティゴリオ渓谷から。
和名が示すように、薄い層構造をしている。蛇紋石がこんなにキリっとしているなんて、ちょっとびっくり。

こういう石石した石(は?)は華麗さはないけど、力強くて魅力的ですねえ。

サーペンティンの主要多形には、
 クリソタイル(単斜、斜方)
 リザーダイト(六方)
 アンティゴライト(単斜)
がある。このうちクリソタイルは中空の極めて細い繊維状で「白石綿」と呼ばれる。アンティゴライトとリザーダイトはシート状。アンティゴライトは比較的少ない。
アルミニウム欠乏環境でできる。アルミが豊富にあると緑泥石ができやすいとか。

     *     *     *

さて、このサーペンティン主体の蛇紋岩。サーペンティナイト。
前記事で地味ーで根暗とか書いたけど、どうもけっこう重要な岩石らしい。

まず、この蛇紋岩が主体になった「海山」がある。
伊豆-小笠原-マリアナ島弧、通称IBM弧というのがあって、これは太平洋プレートがフィリピン・プレートの下に沈み込み、そこで例の「水による玄武岩マグマの生成」が起こって、たくさんの海底火山島が列になってできている。それらはプレートの移動に伴って日本列島に向かって突進してきていて、伊豆半島はすでに列島にぶつかった火山島。主に安山岩でできていると考えられている。
ところが、このIBM弧の「前弧域」には、いくつもの「非火山性の円錐台形海山」があり、これは蛇紋岩でできているらしい。は?
これらは、「初期島弧火成活動に関与した、かつてのマントル・ダイアピル(マグマ塊)が部分的に大量の水を取り込んで蛇紋岩となり上昇してきたものの名残である」という説が出されている。(石井輝秋:ダイアピル的蛇紋岩海山
難しいですね。沈み込み帯で下側(太平洋プレート)に含まれていた水が、上側(フィリピン海プレート)の下にせり出した「マントル・ウェッジ」に移動し、玄武岩マグマが作られる。それが上昇して上側の玄武岩地殻を溶かして安山岩マグマを作り、それが上昇して火山噴火が起きる。これが「島弧火成活動」。しかし前弧海山では噴火が起こらず、発生した玄武岩マグマが水を含んで蛇紋岩になり、それが上昇して山を作った、ということでしょうか。
IBM弧の「島弧火成活動」は原始地球における大陸地殻発生のモデルと考えられています。そうやってできた島弧が集まって大陸ができたのだ、と。そこに「蛇紋岩主体の海山」が入るとどうなるのか。島弧と共に大陸地殻を作るのか。沈み込んでいって消滅するのか。それはよくわかりません。もし大陸地殻に組み込まれるなら、蛇紋岩も大陸形成にいくぶん関与しているのかも。
しかしですねえ、よくわからないのが、マントルの橄欖岩が溶けて玄武岩マグマになり、それが固まって玄武岩となって海洋地殻を作るとされているわけですけど、橄欖岩に水が混じると蛇紋岩ができる。初期海洋地殻の形成において蛇紋岩はできなかったのでしょうか。また、噴火しなかった玄武岩マグマが蛇紋岩化するのなら、地球のあちこちで蛇紋岩の巨大塊が埋もれているということになるのでしょうか。ううむ。

さて二番目。
こうした蛇紋岩海山周辺では、「湧水」現象が見られるのだそうです。
そして重要なことは、その水には橄欖岩が蛇紋岩に変化する「蛇紋岩化作用」によって、水素やメタンが含まれており、特にそこに含まれる「アセチルCoA」は、地球生命の基本的な生化学的経路に不可欠な物質である。そこから、蛇紋岩海山帯のの熱水噴出孔は地球生命誕生の候補地ではないかとも考えられている。参照:大柳良介:海亀海山の蛇紋岩研究史
すごいではないですか。蛇紋岩は生命の母?
ある科学者からは、蛇紋岩は「生命誕生に必須の6つの鉱物」の一つとも提唱されているそうです。Six 'Must-Have' Minerals for Life's Emergence: Olivine, Pyrrhotite, Bridgmanite, Serpentine, Fougerite and Mackinawite:Michael J Russell, Adrian Ponce, Life, 2020.

おまけ。蛇紋岩は二酸化炭素を含み込む能力がある。そこで現在問題になっている大気中の二酸化炭素を地下の蛇紋岩層に送り込むことで減らすことができるのではないかと検討されている、とのことです。まあこれは余計な話か。

蛇紋岩、「影の大立者」ではないですか。
地味で根暗などと言ってすまん。


                   〔えへん。〕


パイロフィライト(葉蝋石)

2024-08-11 10:12:40 | 単品

Pyrophyllite、葉蝋石。Al2Si4O10(OH)2。フィロ(平面派)珪酸塩水酸化物。
Graves Mountain, Lincoln Co., Georgia, USA 産。エヌズミネラルさんより。



いわゆる「ローセキ」の主成分。地面にお絵かきをするやつ。ローセキは葉蝋石や滑石・カオリナイト・セリサイトなどの微細粉を主体とする混合岩石。
名前はギリシャ語の「火」と「葉っぱ」から。熱すると細かく剥がれるからだとか。パイロもフィロもいろんな鉱物で使われるからまぎらわしい。
塗料、ゴム、化粧品など広く利用される。耐熱材、絶縁材としても有用。タルカムパウダーは主に滑石から作られるが葉蝋石の場合もある。
だいたいが変成岩中の層状堆積物として出るので、こういう結晶になっているものはけっこう珍しいらしい。

赤だけど茶色というか紫というか、微妙な色合いが入る。上の写真よりもう少し紫っぽい。やや濁った重たい色。淡緑色のものもあるみたい。
放射状の結晶も見える。

さらにオナマにも表面にシラーのような輝きも出る。

なかなか美しいではないですか。
硬度は1.5。柔らかいけど「蝋のような手触り」はあんまり感じない。比重は2.9とけっこう重い。
ちょっと不思議な石ですね。

葉蝋石や滑石やカオリンは、「粘土鉱物」とも総称され、蛇紋岩が変質してできる。その蛇紋岩は橄欖岩が水によって変質してできる。つまりマントルが水煮されてできた蛇紋岩がさらに水煮されてできたもの。茹でた野菜や肉をさらに煮てべちょべちょにした離乳食のようなものか。(ひどい譬えだねえw)
前に書いた“岩石進化論”では、
  マントル=橄欖岩 → 玄武岩 → 安山岩 → 花崗岩 → 水成鉱物
という“進化”ルートが主眼だったけど、これは
  マントル=橄欖岩 → 蛇紋岩 → 粘土鉱物
という別ルート。
ペグマタイトや熱水脈でできる華麗な石たちとは全然異なる、地味ーで根暗な(は?)石たちだけど、タルカムパウダーとか陶磁器の粘土とか、実に役に立ったりする面々。これなしには人類はお化粧もできないし、お茶碗で飯を食うこともできない。(……まあな)
しかしその根暗集団の中で、もじゃもじゃ中に埋没することなく熱水に乗って地下空洞中で華麗な結晶を作り上げて見せたのが、こやつ。前に上げたブルー・タルクデューウィライトなんかもそうですな。とてもヒロイックな石たちではないでしょうか。(ヒロイック?)
そう思うといとおしいではないですか。(変な感想)


イエロー・アパタイト

2024-08-09 09:00:38 | 単品

黄色つづき。
前にもちらと書いたけど、『宝石と岩石の大図鑑』(翻訳本)に「メキシコ産で鮮やかな黄色のアパタイトがあったのだけどあまりに人気が出て掘り尽くされた」とあったので、へえ、どんなんだろうと思っていた。mindat フォトギャラリーのアパタイトにもメキシコ産はない。
そしたらクリスタルワールド御徒町さんのサイトにイエロー・アパタイトが出ていて、「Mercado Mine Durango Mexico この鉱山は美しい結晶を沢山産する事で有名でしたが現在は閉山したらしく、今後入手が難しくなるかもしれません」とあった。おやおやと思ってポチろうかと思ったけど、ちょっと色が薄いのでヤフオクを探したら、鉱山名はないけどドゥランゴ産とあって何かキラキラするのが出ていたのでポチってみた。(ぐだぐだw)

黄色はちいと薄い。かすかに緑を帯びているようにも見える。
けど、中が虹色に輝く。



イエロー・アパタイトのつもりがイエロー・レインボー・アパタイトになってしまった。インクルージョンのせいかクラックのせいかは老眼なのでよくわからない。


イエロー・アパタイトはパキスタンとかマダガスカルとかでもあるらしい。むちゃ高価なルースがヤフオクにも出ている。ものすごい黄色ガンガンかというと、そうでもない。やっぱ黄色というのはなかなか難しい色ですね。

ところで、mindat には「カザフスタン産のアパタイトの中には、日光下では黄色味を帯びた緑が白熱灯下ではピンク・オレンジに変わる“アレクサンドライト効果”を見せるものもある」と書かれている。
こやつはどうかとやってみた。

はは、妖しい色。これはアレクサンドライト効果=カラーチェンジですかね。それとも単なる反射?w

思ったほどの黄色さではなかったけど、面白い、美しい石です。


レモンクォーツ

2024-08-07 20:09:17 | 単品

なんか最近ちょくちょく見る。淡い黄色の水晶。
シトリンとはちょっと違う色合い。面白そうだからお安いのを買ってみた。ブラジル産。




少し緑がかった、はかなくていい色なんだけど写真じゃ出ない。

硫黄入り水晶とも言われるけど、「ネガティブ・エネルギーを駆逐する」とかいうスピ系の説明ばかりで、科学的な記述は見つからない。
mindat さんは「はは、シトリンでっせ」と素っ気ない。(「はは」とは言ってないだろw)
硫黄と珪素は仲が悪いのだから、硫黄入り水晶だとしたら案外珍しいのかもしれない。もっとも水晶というのは水だろうが油だろうが構わずくわえ込む豪傑だから、硫黄だって「うげ」と思いつつ飲み込んでしまうのかも。
まあよくわからんのです。
しかしこの色はいい味わい。
ちょっとブラジリアナイトに似ていなくもない。



素姓はよくわからないけど、いい石ではないかなと思うのです。