広島鉄道模型友の会 公式ブログ

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キハ52 製作記

2010年09月13日 | 会員の作品
☆製作の動機

2009年の競作発表会の後、私の製作したキハ32とセノハチ様の製作したキハ20を連結して走行(多分こんな運用もあったとの言いだしっぺは会長のような…)させたところ、世代の違う車両の凸凹具合に妙にハマってしまいました。



キハ20は持って無かったものの、当会入会間もない頃にI藤氏より『16番をするなら真鍮キットを作ってみたらどう?』と1500円で譲って頂いた同じキハ20系のキハ52-0番台のキットがあったのを思い出し、四国マニアの会長に確認すると『キハ52なら松山にJR化後しばらくは603番がいたよ。』との事。603番は0番台からの改造車なので手持ちキットが使えます。そこで真鍮キットの作り試しで一丁やってみるかと、製作を開始した次第です。

☆製作の実際

1:車体
格安で譲って頂いたキットは古のフェニックス製で、構成パーツを検証してみたところ前面パーツが実物とはちょっと印象が違うかなというのが第一印象。その他はなにせ真鍮キット自体が初めてなもので後々苦労することになるとは露知らず、まあこんなもんかと着手しました。
本格的な真鍮工作は始めてですから、製作に入る前に設備投資から始めました。ハンダこては手持ちの60Wをとりあえず使うことにして、こて台・パワーコントローラー・クリップ・ヤニなしハンダ・こて先用の銅棒(これはネコ模型店店主のアドバイス)等を購入しました。
まず、印象の違う前面パーツの加工から始めます。とりあえず前面窓の位置修正を兼ねて、プレス表現のHゴムを削ってしまいます。新たなHゴム表現はガラス側に行う事にして前面窓をHゴム分だけ拡大するのですが、この時に元の窓位置よりやや内・下側に位置を修正する事でキハ20系特有の「すっとぼけた表情」に近づけます。また、プレスによるメクレ修正や車体本体との屋根カーブ調整等をヤットコ等を駆使して行います。
貫通扉も同様にHゴム削除、窓の拡大を行いますが若干縦方向に大きかったようで、どうやら上下方向の拡大はしなくても良かったようです。
この後、大き過ぎる手摺穴を小さくするのですがこれもネコ模型店店主のアドバイスに沿って外径0.5mm、内径0.3mmのパイプをハンダ付けした後、表面を整えました。



それからいよいよディテール工作に入ります。各種パーツをハンダ付けしていきますが、この時に小さく加工した手摺穴部分のハンダが溶けたり嵌めておいたパイプが浮いたりで、早速真鍮工作の難しさを経験する事になってしまいました。
フェニックス製気動車キットにおいて有名な修正点の前照灯取り付け部分の修正も念入りに行いましたが、前照灯位置については後述の通りこの後にさらに深い罠が待っていたのでした。
ボディ本体は大きな修正点は無く、排気管パーツ取付け用の穴開け、前面同様に手摺取付け穴縮小程度です。各扉パーツはドアノブ用の穴を開けた後、ボディにハンダ付けします。乗務員扉のまわりの溝が多少ハンダで埋まった為、キサゲ処理後溝を彫っておきました。
いよいよ前面とボディの接合を行いますが、位置を合わせながらのハンダ付け等慣れない作業の為、何度もやり直しています。やり直しが利くのがハンダ付けの良いところと言われていますが、逆に言えばやり直しが必要になるようなキット構成はやめてもらいたいとも言える気がします…。
接合部の屋根の裏側部分は帯金で補強を行い、表面はヤスリでゲシゲシ削ってカーブを合わせました。
次の難関は雨樋のハンダ付けです。エコーの治具を使いキット付属の真鍮線を付けて行くのですが、治具の使い方がまずかったりハンダ付けが上手く行かずヘロヘロになってしまいました。
ヘロヘロのままでは見れたものではないので、一旦引っぺがして新規に購入してきた真鍮線で再度チャレンジして、なんとか見れる程度に付けることが出来ました。両端部分も写真等を見ながらそれらしく表現してあります。
最後の難関は床板取付け用アングルのハンダ付けです。やはり手持ちの60wコテでは厳しいのでは、との声もありましたがネコ模型店直伝の自作コテ先でなんとか熱を伝える事が出来たようです。
車体がハコになってしまえば後はディテールパーツの取付けですが、エコーモデル製票差し等小パーツもなんとか付けることが出来ました。
ベンチレーターについて当初はエンドウ製を利用しようとしたのですが、いざ合わせてみると取付け穴の問題やパーツ下部の処理の仕方等修正出来そうにない問題が判明したため、結局キット付属パーツを使うことになりました。但し、そのままでは取付け穴が大きく接着面積が稼げない為、寸法に合うパイプをハンダ付けしておきました。同時にヒケのある表面のペーパー掛けや、足部分の整形も行っています。
また、前述の前照灯の位置については製作途中の車体を例会に持って行ったところ会長より『本来は前照灯の上端と屋根の上端が揃うはず。』との指摘を受けた事や、雨樋の位置にある屋根とボディの塗りわけラインが前照灯にかかってしまうことが判明した事などの理由で、結局付け直すハメになってしまいました。位置の修正の為ライト取付け穴の下半分に合わせU字型に曲げた帯金をハンダ付け後、穴全体を上方に削り拡げた後にライトパーツを付けてあります。それにしても基本寸法すら怪しいとは、16番のキットは奥が深いと思い知った次第です。

2:床下
動力関係は、CN-16片軸モーターとMPギアの組合せで片台車駆動としました。モーターはちょうど中心部にあるラジエーターの間に収まる為、そこへ取付けてあります。
床下機器はエンドウのキハ55用を使用。当初は全面的に使うつもりが床下器具取付板に装着後、いざボディと合わせてみると肝心のエンジンパーツがしょぼく見える上に外側に張出し過ぎてあまりにも不細工です。モーターと干渉するわけではないので、結局キット付属のエンジンパーツを使い床板取り付け板のさらに内側にプラ板のスペーサー用いてネジ止めしてあります。また、エンドウ製パーツに含まれていない機器などはキット付属パーツを加工したりしてまとめてあります。
集電関係はエンドウの集電シューを使用し、床上に配線が出ないようにまとめてあります。車両をひっくり返した時に配線が見えてしまうので邪道のような方法ですが、普通に走行させる分には気にならないのでこれで良いと思っています。
なお、注意すべき点として床板の高さが挙げられます。縦型エンジン車の床板高さは横型エンジン車より模型にして約1mm高いのですが、実は当の本人がそのことを知らず一度完成した後ネコ模型店に持って行ったところ、たまたま来店しておられた本職のO船氏やネコ模型店店主より『えらく車高が低いねぇ』との指摘から発覚したのでした。本人的には車高を落としたクルマに乗っている(笑)こともありまったく気にならなかったのですが、間違いが分かった以上は修正せねばなりません。とりあえず台車ボルスタ部分に1mm厚のプラ板を貼り車高を上げてあります。また、5月例会の記事にあるようにエンジン位置が低かったのも実は車高が低いのが原因だった為、エンジンパーツの修正はしなくても良かったのでした。ついでに言えば会長のブログ過去記事にもこの事がしっかり書いてありました。



カプラーはケーディー58番ですが取付け位置を若干後ろへずらしてあります。栓受はエコーのパーツですが、放送用ジャンパの栓受はNゲージのキットから流用しています。
その他、トイレ流し管や乗務員用ステップ、消火器箱等も付けておきました。本当はブレーキシリンダーのパーツも準備していたのですが、取付け位置がはっきり判らない為、結局付けていません。

3:塗装
車体色はタラコ色です。金属車体の塗装はNゲージで経験はあるのですが、やはり不安があるのでいろいろと情報を仕入れてから取り掛かりました。
車体の洗浄について、最初は酸洗いから始めたところ結構な量のハンダが溶けてしまいました。ネコ模型店店主にも酸性のクリーナーはハンダを侵す旨のアドバイスは頂いていたのですが、まさかあそこまで溶けるとは予想外でした。結局継ぎ目部分はサーフェイサーで修正、車体洗浄には会長オススメの「トイレマジックリン」を使用、最後に中性洗剤で洗浄・乾燥の後にアサヒペンのプライマーを吹き付けて塗装に備えました。
塗料はGM製品を利用、まず屋根と下塗りを兼ねてねずみ色1号を吹付け、乾燥後屋根をマスキングして朱色5号を吹付けて完了です。ヘッドライト周りの塗り分けはいろいろ資料を漁ってもはっきり分からない為、会長の助言を基にヘッドライトを車体と同じ朱色5号、ライト先端は銀色を筆塗りして塗り分けています。

4:仕上げ
窓ガラスは乗務員扉を除いてt0.2透明プラ板とt0.4透明プラ板を高透明両面テープを使用して貼り合せ全てはめ込みで表現。客室窓は銀色のカッティングシートを併用して2段表現をしています。前面窓はt0.1プラ板の中を抜いて貼り合せてHゴム表現をしました。
乗務員扉の窓については銀色のカッティングシートでサッシを表現した透明プラ板を普通に貼り付けてあります。
また、各扉のドアノブは0.25mm洋白線で表現しました。
標記類は完成品付属品等を適宜流用(かなりいい加減ですが…)しています。
内装は各仕切りを適当な紙を使って表現、車内に張り出した排気管はt1.5プラ板、ロングシートはパーツを、クロスシートはKATOの12系客車を加工した際に発生した物を利用して表現しました。

☆終わりに

こうして初の真鍮車両が完成しました。感想としては相手が金属で硬い材質のため、切断や穴あけ等とにかく面倒と云う事に尽きます。窓周りをハメコミにした事で普通の金属製車両とは一味違った仕上がりになったと思いますが、結局はプラ車両の加工やペーパースクラッチの方が自分の性に合っているような気がします。



しかし出来上がった金属車体の質感も意外と捨てがたく、思い入れのある車両のキットが手に入ることがあればまた製作しても良いかなとも思いました。