筆者は、さる8月30日付けブログで「SEC投資家向け告示:イニシャル・コイン投資への立法措置と詐欺対策(日米の比較)(その1)」 , 「同(その2)」を論じた。9月5日、わが国 (注1)および海外メディア(注2) は中国政府のバーチャル通貨のICOの禁止措置通達を受けた価格の大幅下落を報じた。
しかし、これらの記事内容はICOが本質的に持つリスクについて十分は論じていない。そのせいか、またぞろ価格の下落時が買い時という詐欺投資サイトが闊歩している。
その意味で筆者は、金融リテラシーの一環として中国の金融メディアや中央銀行である中国銀行の公告内容を仮訳しながら、ICOをめぐるリスクと投資詐欺被害の広がらないよう投資家や消費者に警告を発する必要性を感じ、本ブログを急遽まとめた。
翻訳時間の関係で、今回はとりあえず米国先端技術専門サイト”Tech Crunch”の解説内容のみの仮訳を行う。後日、中国の金融専門ニュースサイト”Caixin”の具体的な記事や中国人民銀行の告示通達、その他の関係機関の情報につき、詳しく解説したいと考える。
1.米国先端技術専門サイト”Tech Crunch”の解説内容
筆者は毎日”Tech Crunch”記事を読んでいるが、今回紹介する記事「中国はICOを禁止」は中国の金融専門メデイアや中央銀行の告示内容のリンク等が他のメディアに比してしっかりできていることが取り上げた理由である。以下、仮訳する。なお、リンクは筆者の責任で行った。
少なくとも今は中国の人たちのとってICO投資のための新しい時代が来ているように見えている。しかし、米国では、SECがすでにトークン販売とも呼ばれるICOのリスクを「公式に警告」 (注3)しているが、一方、中国政府も、急速に増えている資金調達オプションについて規制を履行するようになっている。
9月4日、中国の中央銀行(中国人民銀行)が率いる委員会からの通知(注4)は、、「経済と金融秩序を重大な意味で乱している」としてICO資金調達の即時禁止措置を発表した。
中国の金融専門ニュースサイト”Caixin”は 、同委員会が検査と報告の対象となる60の取引所(バーチャルコインのプラットフォーム)のリストを作成したと報告した 。その間、中国ではICOの取引は凍結される。
ICOは、一般的に”Ethereum”をベースにした新しい暗号通貨を作成して投資家に売却することで資金調達が行われる。それは、中国の金融監督当局が投資スペースを規制するかどうかについて、多くの投機的性格をもつ証券業務との比較につながった。
中国の委員会は、いくつかのICOが金融詐欺やねずみ講類似の仕組みであるとの懸念を表明した。これは、シンガポール通貨監督庁(Monetary Authority of Singapore:MAS)からの最近の警告を反映したものである。
シンガポールの中央銀行であるMASは、8月1日の声明において「ICOは、取引の匿名性のために、マネー・ローンダリングやテロ資金調達のリスクに脆弱性があり、また短期間に大金を投資家から巻き上げる可能性がある」と述べた。
委員会の調査リストでははっきりとしていないが、すでに中国最大のICO購入プラットフォーム( トークンを売っている企業とバイヤーを結ぶ)2社である、”ICOage ”と”ICO.info”- はサービスを一時停止し、新しいプロジェクトにつきステップを取り始めた。これら2社は、自らの中断は自発的であると述べた。
今年開催されたICOの数は世界中で非常に増加している。 ゴールドマン・サックスの報告書によれば 、2017年上半期のトレーニング販売からの総額は、従来のベンチャーキャピタルからの初期段階の投資支出を上回ったとある。
今年は、ICOの資金調達が16億ドル(約1744億円)を突破したと言われている。既にBitcoin等2つのコイン事業者は10億ドル以上の時価総額にまで成長しているが、現在のところその市場に商品がないため、そのランドマークの意義は不明である。
世界で最も活発なビットコイン・コミュニティの1つを保有する中国は、トークンを売っている企業とバイヤーがそれらを魅了している点で、ICOブームの重要な要素となっている。
国営メディア企業の新華社通信は、7月に中国企業が今年上半期に105,000人の投資家から3億8300万ドル(約417億4700万円)を調達したと報じた。
米国SECは、規制強化の発表にもかかわらず、まだICOが堅調な動きをしていないため、世界の眼はどのような仕組みがICOを支配するのか、実際にあらゆる種類のICOが規制されるのかどうか、中国に目を向けるだろう。また、中国が果たした著しい役割を考えると、ICO市場や暗号通貨の一般的な取り締まりの可能性を見極めることも興味深いであろう。
長年暗号通貨を見てきたウォチャーは、中国が人民元の通貨を使ってビットコインや他の暗号コインを購入することを許可しないようにすることを中国が禁止した2013年を思い出させるであろう。その結果、これら通貨は巨額の価格下落があったが、人民元金預金への支援が戻り、ビットコインが新たな高値にまで上昇した場合の価格 直近の取引所では5,000ドルとなっている。
2.北朝鮮の核実験や中国のICO禁止措置等規制強化によるBitcoin等の通貨としての大きなリスクを実証
2015.9.5付けの”Techcrunch”記事は「Bitcoinは、世界的な混乱の時代の避難所としてのテストに失敗した」という記事を載せている。
記事を要約すると、北朝鮮の挑発的な核実験に続き、週末に株式やその他の資産とともに落ち込んでいる。非国家管理通貨たるデジタル通貨が将来の避難所であると信じるならば、トレーダーは今日のようにビットコインを扱ってはいけない。
北朝鮮の核計画に関する世界的な緊張の中で、ゴールド、さらには日本円(東京は平壌から約800マイル)はビットコインを大きく上回っている。
また、最近の暗号化通貨の価格の大幅低下は、中国の暗号化トークン販売を「不正な資金調達の慣行」と呼んでいる中国のICO公開に対する取締りにも起因している。このニュースに対するBitcoinの価格感受性につき、その価格は9月2日にピークに達し、北朝鮮の水素爆弾実験を迎え、大きく下落した。中国は9月4日にICOに関する声明を発表している。
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(注1) 2017.9.5 日経新聞「中国のICO全面禁止、広がる波紋 仮想通貨下落:日本人プロジェクトは中国語サイト閉鎖 」を一部引用する。
中国当局が4日、仮想通貨発行による資金調達「新規仮想通貨公開(公募)(ICO=イニシャル・コイン・オファリング)」を全面的に禁止した影響が広がっている。米情報サイトによると、ビットコインなどの仮想通貨全体の時価総額は1日前に比べて約2兆円下落した。香港を拠点に日本人が主導するICOプロジェクトは中国語サイトを一時閉鎖すると発表した。
(注2) 2017.9.5 B Bloomberg「ビットコインが急落、中国人民銀行が仮想通貨の新規公開は違法と宣告」
仮想通貨ビットコインの価格が4日急落し、7月以来の下げ幅を記録した。中国人民銀行(中央銀行)がイニシャル・コイン・オファリング(ICO)を違法とし、関連する資金調達活動全てを即時停止するよう通告したことが背景にある。急成長中の仮想通貨市場にとっては、規制面でこれまで最大の課題を突きつけられた格好だ。
人民銀行は4日にウェブサイトで、ICOに対する調査を完了したと説明。今後ICOが行われた場合には厳罰に処すとともに、実施済みのICOについても法規違反で処罰すると明らかにした。同行によると、ICOでの調達資金は返金しなければならない。ただ、返金方法について具体的な指示はしていない。
人民銀行はまた、仮想通貨の取引所が法定通貨との交換を行うことも禁止。仮想通貨を市場で通貨として使用したり、銀行がICOのサービスを提供することも禁じた。
この発表を受け、ビットコインは前週末比で11.4%安の4326.75ドルまで売り込まれた。コインデスクのデータによると、同じく仮想通貨のイーサリアムは4日、16%を超える下げに見舞われた。
中国の国家インターネット金融安全技術委員会によれば、7月18日現在で同国内には43のICOプラットフォームがあった。65件のICOの調査が実施され、調達資金は26億元(約440億円)に上った。
なお、同委員会が検査と報告の対象となる60の取引所(バーチャルコインのプラットフォーム)のリストを作成したと報告
(注3) ここでいうSECのICOにかかる警告とは、2017.8.30付けの前述の筆者ブログで取り上げたものである。併せて参照されたい。
(注4) 2017.9.4 中国人民銀行の公告「中国の人民銀行、中央政府の産業と情報技術省の産業省、銀行規制委員会、中国保険監督管理委員会は、トークンのリスクの防止に融資を発行した(中国人民银行 中央网信办 工业和信息化部 工商总局 银监会 证监会 保监会关于防范代币发行融资风险的公告)」
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