Financial and Social System of Information Security

インターネットに代表されるIT社会の影の部分に光をあて、金融詐欺・サイバー犯罪予防等に関する海外の最新情報を提供

オーストラリア”Eligo”は暴走族や密入出国請負業者等捜査で5.8億豪ドル相当の麻薬、現金等の押収を発表

2014-02-01 19:30:59 | 金融犯罪と阻止策

 

 1月23日、オーストラリア犯罪委員会等による合同特別捜査班(Australian Crime Commission(ACC) Task Force :コードネーム”Eligo”)は、暴走族(bikie gangs)、麻薬カルテルや密入出国請負業者(有償で密入出国を請け負う者(people smugglers)に的を絞った特別捜査で5億8,000万豪ドル(約510億4千万円)相当の麻薬、現金2,600万豪ドル(約22億9,000万円)等を押収した旨発表した。
 ”Eligo”は、2012年12月にオーストラリアのマネーロンダリング捜査専門部隊として設立され、これまで多くの捜査・押収実績をあげて有名であるが、なぜかわが国では一般的にはほとんど紹介されていない。
(注1)

 今回、本ブログでこの問題をあえて取り上げた背景は犯罪者たちにはイスラム原理主義武装組織であるHezbollahといった国際テロ組織も含まれ、この問題の国際政治上の重要性が見逃せないからである。

 また、同時にACCが公表した「マネーロンダリング解説コンピュータ画像(Money laundering infographics)」は資金洗浄の具体的な捜査の事例図解として、わが国も含む他国の捜査関係者にとっても有用な情報と考えたこともある。


1.ACCの発表内容の解説
(1)オーストラリア犯罪委員会(ACC)オーストラリア連邦警察(AFP)オーストラリア不正金融取引報告および分析センター (Australian Transaction Reports and Analysis Centre:AUSTRAC)の共同発表

 ACCは、1月18日にシドニーで押収した570万豪ドルの現金の押収につながる1年間にわたるコードネーム”Eligo”が変質化させたマネーロンダリン捜査内容を1月23日に明らかにした。
 ”Eligo”合同特別捜査班(以下「タスク・フォース」という)は、全豪ベースで活動する重大かつ組織化された犯罪における正規のものに代わる違法な送金手段や非公式の金銭価値の送金手段(注2)(注3)を使用した犯罪の捜査のために2012年12月に設置された。タスク・フォースは5億8,000万豪ドル以上に相当する麻薬と金融資産(現金2,600万ドルを含む)を押収した。

タスク・フォースは、18の重大かつ組織犯罪グループを破壊させて、法の執行機関にこれまで知られていなかった128の犯罪目標も特定した。これらの犯罪目標は、オーストラリア犯罪委員会の国家犯罪取締り目標リスト( Australian Crime Commission’s National Criminal Target List)に定めたるもので世界20以上の国で活動しているものを含む。

○犯罪委員会の代行最高執行責任者であるポール・ジェトヴィック(Paul Jevtovic)は、特別捜査班が違法な国際的な資金の流れを中断させ、重大かつ組織化された犯罪に対して代わりの送金組織セクターの実行行為を『困難化させる』ために犯罪的な情報洞察(intelligence insight)(米国連邦司法省・麻薬取締局(DEA)情報洞察手法を含む)を使ったと述べた。
 また、「彼らの犯罪手続きを合法化しようとして、組織化された犯罪グループは複雑で高度な送金手段・構造を使用している。我々は、オーストラリアを目標とするこれら組織犯罪グループを分裂させ、犯罪を阻止させることを目的として、非伝統的捜査手法の法執行手続きを用いた。これらの新しい方法論、焦点の新しい領域と捜査の新しくてより効率的な方法の採用によって、我々は犯罪行為の精巧なネットワークを明るみに出し、犯人のポケットに沿って並ぶ運命にある犯罪の経済的利益5億ドルを取り除き、さらに麻薬密売のような犯罪捜査をさらに容易にすることができた」と述べた。

同タスク・フォースは、オーストラリア犯罪委員会、オーストラリア金融取引報告および分析センター(Australian Transaction Reports and Analysis Centre :AUSTRAC)、オーストラリア税関・国境警備局(Australian Customs and Border Protection Service )および州や準州警察と協力したオーストラリア連邦警察(AFP)で構成される。

○連邦警察委員会のコミッショナーであるトニー・W・ネガス(Tony William Negus)は、タスク・フォース”Eligo”は組織犯罪捜査に重大な影響を与えたと述べた。
 すなわち、これら犯罪シンジケート提供者は高度な専門知識と国際的な権限が及ぶ範囲を持ち、国境を越えた重大組織犯罪の気がかりな犯罪実態を提供する。しかし、これらの犯罪者たちは明らかに我々の視野にあり、オーストラリアにおける犯罪動機や組織犯罪に基づく報酬を取り除き続けるであろうと述べた。

○AUSTRACのCEOであるジョン・シュミット(John Schmidt)は、「タスク・フォースの重要な焦点である犯罪グループの合法的かつ現金集約型の送金部門が国際的に見て重大な犯罪組織グループによって利用されるリスクである。この固有(inherent)のリスクは、オーストラリア人が世界中のどこにでも手軽に送金できるという重要なサービスを提供し、強固な規制・監督体制を維持し、関係業界の取り組みと支援を継続することの重要性を明確化する。さらに過去2年間AUSTRACは15の送金事業者に規制・監督行動を行った。重要な点は、タスク・フォースはそれら重大な組織犯罪の脅威に対する耐性と安全性を構築すべく代替的な送金部門や関係する業界との共同作業を継続的に進める」と述べた。

○今回の捜査の間、タスク・フォースのコードネーム”Eligo”は米国DEAとともに同機関のグローバル・ネットワークとマネーロンダリング捜査における「盗聴技術」につき緊密に連動捜査を行った。

○オーストラリアのアメリカ大使館の副理事官(Assistant Country Attaché) ウリ・シャフィア(Uri Shafir )は国際的法執行機関が組織犯罪との戦いにおいて力を合わせるとき、大きな成功が得られた際立つ例であると述べた。また、米国のジョン・ベリー(john Berry)駐豪大使は「私はオーストラリアとの強固な協力にもとづき国際的な麻薬取引を破壊し、犯罪者が違法な利益を得ることの阻止を実現できたことは誇りに思う」と述べた。

○タスク・フォースの具体的な成果の内容は次のとおりである。
・2014年1月18日の単体で570万豪ドル(約5億200万円)シドニーでの押収を含む合計で2,600万豪ドル(約22億9,000万円)の現金の押収
・末端価格で5億3,000万豪ドル(約466億4,000万円)以上の麻薬の押収
・3,000万豪(2億6,400万円)ドル以上の資産の拘束
・18の重大な組織犯罪グループやネットワークの破壊
・法執行機関に今まで認識されていなかった128以上の取り締まり目標の識別
・190の刑事責任等を問いうる計105人の逮捕
・ビクトリア警察管内(ビクトリア州サンシャイン)における最大規模でかつ専門性の高い秘密の民間ベースの覚せい剤(アンフェタミン型)(注4)研究所の閉鎖
・NSWのポートボタニーの最大規模の都市部の家での大麻の水耕栽培施設を廃止に追い込んだ。
・1月16日、ウェスターン・オーストラリア警察により行われた計2,000万豪ドル(約17億6000万円)にのぼる現金、麻薬、資産の押収

(2)テロ資金や反マネーロンダリング捜査、押収規制に関するAUSTRACの機能
  AUSTRACは、報告義務事業者として定義されるオーストラリア民間事業者(送金人を含む)につき「2006年反マネーロンダリングおよびテロ対策資金取締法(Anti-Money Laundering and Counter-Terrorism Financing Act 2006:AML/CTF Act)(注5)と「1988年連邦金融取引報告法(Financial Transaction Reports Act 1988)」の遵守を監視する「規制機関(regulator)AML/CTF」であるとともに金融取引情報監視機関(financial intelligence Unit:FIU)という2つの任務を担う。
 また、AUSTRACは、「2006年反マネーロンダリングおよび反テロ資金取締法(Anti-Money Laundering and Counter-Terrorism Financing Act 2006)」「1988年金融取引報告法(Financial Transaction Reports Act 1988)」に基づく報告機関(reporting entities)であるオーストラリアの企業の法遵守を監視する執行機関である。

2.ACCが1月23日に公表した「Eligoが2012年以降に取り組んだ麻薬や現金の押収、マネーロンダリング犯罪組織にそおける資金の流れ等の解説画像(Money laundering infographics)」
 ACCは、今回約1年間にわたる捜査、押収による重大な組織犯罪の壊滅作戦を具体的に図解で解説している。

 このような組織犯罪の実態を具体的に解説する例は米国等でも多くないことから参考にすべく、各図解内容の項目を簡単に紹介する。なお、詳しくは各図やACCのリリース内容を詳しく読んでいただきたいが、ここでは各図の概要のみ取り上げる。

2012年7月~2014年1月の間に行われた州ごとの現金や麻薬の押収記録
②マネーロンダリングが果たしていかなる役者によりどのような手段を介して行われているかの図解 ただし、この図のみで犯罪の実態は分かりにくい。最近、筆者が見つけたブログ「タックス・ヘイブンとマネーロンダリング」が、具体的にわかりやすく説明している。
該当部分を一部抜粋する。

「ところで、ケイマンへの資金の持ち込みはどのようになされているのだろうか?

 まず第1に、銀行を通じての合法的な送金がある。これは、国際収支表にも現われる。投資収益について、ケイマンからの流入が国際収支表に記載されている。資本収支にもケイマンとの取引が記録されている。たとえば2007年においては、日本からケイマンに対して、3兆9,659億円の資金流出になっている(http://www.mof.go.jp/index.htm)。これは、アメリカへの資金流出3兆5647億円を超える規模であり、国・地域ベースでは最大の相手になっている。

 ただし、いうまでもないが、こうした方法で送金すれば、所得の存在が当局に明らかになってしまう。上で述べたような場合には、当局に把握されないかたちで現金を持ち込む必要がある。では、どのようにするのだろうか?

 いろいろな方法があるのだが、ジョン・グリシャムの『法律事務所』には、法律事務所が所有する小型ジェット機で現金を運ぶ場面が出てくる。100ドル札と20ドル札を段ボールに入れて25個、650万ドル(6億円ほど)をケイマン諸島まで運ぶ。これはもちろん違法だが、ケイマンの税関や銀行などに賄賂を使って実行しているらしい。

 「運び屋」を使う場合もあるのだそうだ。1万ドル以下の現金は税関の申告が不要なので、チンピラやその情婦たち、学生、その他のフリーランスに現金9,800ドルとケイマンやバハマへの航空券を渡して運ばせ、現地の銀行に預金させる。タダで休暇旅行ができるのだから、志願者はいくらでもいる。これは、合法的な方法だ。1回で運べる金額は大したものではないが、300人の人間が年に20回運べば、6,000万ドル近く(60億円弱)を持ち出せることになる。この方法は、「スマーフィング」(smurfing)と呼ばれる(この言葉は、英和辞典には載っていない。「密輸」という意味のsmugglingからつくった言葉だろうか?)。

 これは素人をその都度契約して運ばせる方法だが、プロが行なう場合もある。100万ドル程度(1億円弱)の現金を、空港の探知機で見つからないように巧妙に新聞紙でくるみ、ブリーフケースに入れて機内に持ち込んで運ぶ。これは違法な方法なので、たまに捕まる場合もある。しかし、運び屋はけっして口を割らない。また、運び屋が現金をもったまま姿をくらましてしまうこともある。しかし、必ず探し出されて、消されてしまう。

 このとおりのことが現実に行なわれているのかどうか、私には確かめようがない。ただし、これに類似した方法での持ち出しが行なわれていることは、間違いない。その証拠は、国際収支表に「誤差脱漏」という項目が現われることである。

 日本の場合にも、誤差脱漏がある。その値は、2006年まで、大幅な資金流出であった。つまり、日本から実際には資金流出があったのだが、それが把握されていないため、国際収支表ではバランスをあわせるためにマイナスの「誤差脱漏」を計上しなければならなかったのである。その額は、2003年以降、毎年2兆円程度という巨額なものである。03年から06年までを合計すると、10兆円近くになる。それが今も続いているのである。

・・・オフショアとは:
もともとは、「本土の近くにある島」(たとえば、イギリスのマン島)がイメージされていた。「すぐに行くことができるが、本土の規制が及ばない(あるいは緩和されている)」という意味である。

 しかし、最近では、物理的には本土内で行なわれていても「オフショア」と呼ばれることがある。その代表例は、アイルランド政府が1987年に設立した「ダブリン国際金融サービスセンター」である。アイルランド政府は、法人税の特別措置を与えたりして、世界各国から金融機関を中心に多くの企業を集めた。これまで約1,000社の事業を認可し、500社を超える現地法人が設立されたといわれる。
オフショア世界はわれわれのまわりのいたるところにある。」

不正な金銭価値の移送手段(Informal Value Transfer System:IVTS)の具体的な仕組み
 ステップ1~ステップ6にわたる流れのなかでIVTSが合法的な国際的な送金手段により行われ、また多くの国々でその実態が明らかとなっている。IVTSの運用実態は、”Hawala(Middle East,Afghnistan,Indian Sub-Continent)、Hundi(India)、Fei ch'ien(China)等の名前で知られている。重大犯罪グループはこれらのIVTSにつき法執行機関の捜査を受けることなく資金の国内外への移送を悪用可能としている。

マネーロンダリング取締規正法にもとづく金融機関の報告義務範囲を下回る金額に小口化する例の解説
 この図では”structuring”、”smurfing”という用語が使われている。前述したとおり、これらの用語の訳語はわが国の一般の英和辞書やオンライン辞書にはない用語である。

 したがって、米国連邦金融機関検査協議会(FFIEC)の「銀行秘密取引の報告等に関する法律(BSA)」 「反マネーロンダリング検査マニュアル」附則B「Structuring」の該当部分を一部抜粋,仮訳する。
 「BSAが定める報告義務、その他一定の記録要求を回避するためのストラクチャリング行為は、BSAに基づき民事および刑事罰を科すことがなされうる。すなわち、BSA(31 USC 5324:31 U.S.C. § 5324 - Structuring transactions to evade reporting requirement prohibited)条の義務およびCurrency Transaction Report (CTR)義務またはBSA(31 USC )31 U.S. Code § 5326 - Records of certain domestic coin and currency transactionsは一定の米国内の金融機関ならびに一定地域の金融機関に対する貨幣・通貨の取引報告義務命令(Geographic targeting order (or GTO))(31 U.S.C. § 5326(a))違反してはならない旨定める。
 なお、同マニュアルでは「Structuring」のより詳しい定義は米国連邦機関別現行規則集(31 CFR 103.11(gg)に定めるが、そこでは、SBA回避のため犯罪者が行う報告義務の閾値(10,000ドル)以下に現金額への小口化工作についてマネーロンダリング規制の観点から銀行員が払うべき十分な留意事項を記している。

合法取引をベースに持つマネーロンダリングの流れ
たとえば、組織犯罪グループは合法的な資金の送金を装う行為を行う、すなわち偽の輸出送り状(インボイス)を作成したりインボイスへの記載金額を下回ったり上回ったりして記載する手口で複数国間の輸出入取引が行われている。

3.マネーロンダリングに関する合同特別捜査班であるEligoのこれまでの捜査・押収実績
(1) Eligo活動の詳細
 ACCは詳しい解説サイトにより詳しい活動内容を解説している。

(2)2012-13 年次報告第3章「Chapter 3 - Investigations and Intelligence Operations」からEligoの機能や実績等に関する該当部を抜粋すると次の内容である。

Eligo is working on long-term prevention strategies, using criminal intelligence insights to disrupt money laundering, drive greater sector professionalism and make it harder for organised crime to exploit this sector. Significant operational outcomes already achieved include:

・arresting 41 people for 81 charges
・ seizing drugs with an estimated street value of more than $477 million
・ seizing precursor chemicals with a potential estimated street value of $6.8 million
seizing 365 litres of liquid methylamphetamine
seizing more than 357 kilograms of amphetamine-type substances
seizing 2.47 kilograms of cocaine
seizing 71 kilograms of heroin
seizing two commercial amphetamine laboratories (including precursor chemicals)
seizing 105 cannabis plants
seizing four firearms
seizing more than $12 million in cash
disrupting 11 serious and organised criminal groups/networks.

"The work of the Eligo Task Force is highly valuable to [us]. It complements [our] work…and provides excellent strategic targeting advice. Eligo is producing invaluable intelligence on the sector."(ACC stakeholder survey 2013)

Working in partnership with the financial sector is critical to achieving Eligo objectives. On 23 April 2013, we used the new provisions in the ACC Act to release information to senior representatives of banking and remittance service providers, at the AUSTRAC Major Reporters Forum. We provided Eligo insights into money laundering methodologies involving financial service providers. This first phase of ongoing engagement with the formal banking and alternative remittance sector was considered very successful, with attendees appreciating the timely insights provided.

The Eligo National Task Force continues to provide valuable intelligence insights into ever changing money laundering methodologies that in turn inform the responses of the ACC and our partners. The results to date affirm the value of applying an investigative strategy of following the money as an effective way of unearthing organised criminal activity such as the importation of drugs.

4.わが国の国際的なマネーロンダリング、テロ資金取締りの国際的な展開の最新情報
 警察庁や財務省が中心である。国際機関であるTAFTやエグモント・グループ等との連携は従来よりは強化されてきているものの、Eligoの活動成果などと比較するとなお多くの課題があると思われる。
 最近時の情報を関係機関のサイト情報を抜粋、補足しておく。

(1)警視庁のエグモント・グループの解説(一部、筆者の責任で補筆した)
「 エグモント・グループ(Egmont Group)は、各国FIU(注1)間の情報交換、研修、専門知識に関する協力等を目的として設置された国際機関。1995年4月に欧州主要国およぶ米国のFIUを中心的なメンバーとして発足した。エグモント・グループという名称は、その際の会合の開催地(ベルギーのエグモント宮殿)に由来する。エグモント・グループは、2007年5月に開催されたバミューダ年次会合において、エグモント・グループ憲章が採択されたほか、カナダに常設の事務局が設置されるなど、現在は公式機関として国際的に認められている。2013年9月現在、エグモント・グループには、139か国・地域のFIUが参加している。
(注1)FIU(Financial Intelligence Unit:資金情報機関)とは、マネー・ローンダリングやテロ資金に係る資金情報を一元的に受理・分析し、捜査機関等に提供する単一の政府機関のことでる。わが国のFIUは、警察庁・刑事局・組織犯罪対策部・犯罪収益移転防止管理官(JAFIC)である。


(2)このように警察庁・刑事局・組織犯罪対策部・犯罪収益移転防止管理官のサイトでは、JAFICと国際機関等の連携等、国際協調活動の内容が確認できる。しかし、FATFやエドモンド・グループさらには主要国の最新情報となるとその情報内容はいかにも遅い。また、警察庁は「マネー・ローンダリング対策等に関する有識者懇談会」を設置し、広く金融機関や学識経験者で議論しているが、わが国の法執行機関がいかなる形で関与しているのか、座長の教授はかつて筆者が学会活動でパートナーであったことから、機会を見て確認したい。

(3)財務省がフォローするマネーロンダリング、テロ組織等の国際協調活動
 ここではあえて詳しく論じないが、財務省の関係サイトで確認できるのは前述したFATF公表声明の都度のフォロー(原文・仮訳)のみである。その内容はマネーロンダリング・テロ資金供与リスク回避のため、国際的な対抗措置を要請する国家名等を挙げているだけである。今回取り上げたACCのリリースのような具体的裏資金の流れを解明するにはいかにも情報不足の感は否めない。


************************************************************************************

(注1) ACCの発表内容を大きく取り上げているのは、オーストラリアのメデイア(ABC news)だけではない。AFP等の犯罪捜査機関や中国の新華通信も大きく取り上げている。

(注2)具体的には、ここで指しているのは”Bitcoin”等仮想通貨をいう。ここで、米国や中国の司法当局における2013年以降における仮想通貨の取締りの状況を当局のリリースや米国メデイアに基づき概観しておく。

・2014.1.30 米国財務省金融犯罪法執行ネットワーク(Fincen)リリース「ヴァーチャル通貨に関する2つの行政規則(Administrative Rule)」違法行為およびマネーロンダリング

・2013.8.27 WSJ日本語版記事

「仮想通貨取引、金融規制の適用対象にすべき=米当局(Fincen) :



・2013.11.27 Business Newsline記事
「米財務省、Bitcoinの現物コイン製造業者に業務停止命令」

・2013.12.6 Business Newsline記事
「中国人民銀行、国内の金融機関に対してBitcoinの使用禁止の通達」
 :中国の中央銀行となる中国人民銀行は12月5日、マネーロンダリングを防止する観点から中国国内の金融機関がBitcoinを取り扱うことを禁止する通達を告示した。

・2013.12.18 Business Newsline記事
「米財務省、国内の大部分のBitcoin業者に対して事実上の業務停止命令」

・2014.1.29 Business Newsline記事
「New York州当局、Bitcoin向けの金融業開業免許制度の開設を検討」

(注3)マネーロンダリングにおける非公式の金銭的価値の送金方法は急速に拡大しつつある。たとえば、ダイヤモンド等もそれにあたる。
たとえば、1月13日、
FTAF(国際マネーロンダリング、テロ資金等取締金融活動専門作業部会:Financial Action Task Force (FATF))は、「FATFとFinancial Intelligence UnitsのFATFとエグモント・グループは、ダイヤモンド取引きにおけるすべての部門をカバーする“ひし形のパイプライン”のマネーロンダリングとテロ資金供与(ML/TF)脆弱性と危険を特定するため、ダイアモンドの生産、原石販売、カット、磨き、宝石類製造および宝石類小売業者等にかかる類型学研究プロジェクトで協力・作業した成果」を公表している。

(注4) アンフェタミン型覚せい剤(amphetamine-type stimulant)(注)(以下「ATS」という)の乱用は、1990年代に急速な伸びをみせ、現在においても世界的に拡大傾向にある。特に東及び東南アジア地域において、アンフェタミン型覚せい剤の不法製造、密輸、乱用が著しく増加している。(日本税関:2001年報告書:水際取締から一部引用)

(注5) ”Anti-Money Laundering and Counter-Terrorism Financing Act 2006”については、
AUSTRACサイトが詳しく解説している。なお、オーストラリアでは2011年11月1日施行の 「オーストラリア連邦金融取引報告およびAUSTRAC費用の修復課金法(Australian Transaction Reports and Analysis Centre Supervisory Cost Recovery Levy (Consequential Amendments) Act 2011)」「 Combating the Financing of People Smuggling and Other Measures Act 2011」とがあり、その機能、内容の見直しが行われている。

*******************************************************************************************************************
:Copyright © 2006-2014 芦田勝(Masaru Ashida).All Rights Reserved.You may reproduce materials available at this site for your own personal use and for non-commercial distribution.


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 米国連邦金融監督機関が消費... | トップ | ドイツ連邦内務省等がEUのNIS... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

金融犯罪と阻止策」カテゴリの最新記事