米証券取引委員会(SEC)は9月1日、オンライン暗号通貨(資産)貸付プラットフォームである(1)BitConnect、その創設者である(2)サティシュ・クンバニ(Satish Kumbhani)、および米国のトップ販売促進者(3)グレン・アルカロ(Glenn Arcaro)と(4)その関連会社に対してデジタル資産を含むプログラムへの連邦取引法違反にあたる未登録のままで投資の提供を行ったとして訴訟を起こした旨発表した。
より詐欺手口を説明すると、被告らはBitConnectの「貸付プログラム(Lending Program)」を立ち上げ、ユーザーに毎月40%以上のリターンを約束した。2017年から2018年の間に、「ボラティリティ・ソフトウェア・トレーディング・ボット(volatility software trading bot)(乱高下ソフトウェア取引ボット(検索などで人間を補助をするソフトウェア・エージェント(software agent)」によって年率3,700%以上のリターンがあったように見せかけた。しかし、これは完全なる「ネズミ講詐欺(Ponzi scheme)」である。
SECの告訴状によると個人投資家から少なくとも20億ドル(約2,180億円)を詐取したと主張している。
被告人は民事上の罰則を受ける可能性もある。証券取引法違反は、最高20年の懲役と500万ドルの罰金が科せられる。
なお、後述するとおりアルカロ被告は9月1日に有罪答弁を行った。
暗号通貨プラットフォ―ムBitConnectを巡るねずみ講詐欺事件や連邦証券法に違反して未登録のまま販売推進を行ったことに対するSECの厳しい姿勢は一層強化されている。
しかし、一方で米国をはじめ国際的なのネズミ講や証券詐欺は一向に減らない。本文で紹介する詐欺師たちの顔を見てほしい。どう見ても胡散臭さがうかがえるが被害者は減らないし、どういうわけかSECの告訴記事を取り上げる暗号資産専門サイトは多いが、いずれも被告の顔は出てこない。
本ブログは、公的資料に基づきできるだけ時系列的に整理し、正確にこれら組織犯罪の実態、起訴事実、法的解説等を中心にまとめることを試みた。
なお、わが国の暗号資産関係につき金融庁サイトで見ると「行政処分」であるが中身は「業務改善命令」のみである。また、国民生活センターに対する相談件数はやや減少傾向にあるようである。(注1)
一方で人工知能(AI)を用いた暗号資産(仮想通貨)事業への投資名目で現金をだまし取ったとして、愛知県警は12日、会社役員、石田祥司容疑者(59)ら男4人を詐欺の疑いで逮捕した。捜査関係者への取材で分かった。関係者によると、高配当をうたった投資話で、全国の2万人近くから計60億円超を集めた疑いがある(2021.7.12日経新聞)等極めてリスクがある危険信号がついたままである。
1.BitConnectを巡る犯罪グループに対するSECや連邦検事局の起訴や司法合意の動向の整理
(1)2021年5月28日,証券取引委員会は、個人投資家から20億ドル(約2,180億円)以上を調達した世界的な連邦証券法の登録規定に違反して未登録デジタル資産証券の提供を推進したとして5人の個人に対して民亊訴訟を起こしたと発表した。(起訴グループⅠ)
①トレボン・ブラウン(Trevon Brown (別名トレボン・ジェームズ:Trevon James)
②クレイグ・グラント(Craig Grant)
③ライアン・マーセン(Ryan Maasen)
④マイケル・ノーブル(Michael Noble (別名.別名マイケル・クリプト( Michael Crypto)
⑤ジョシュア・ジェッペセン(Joshua Jeppesen)
(2)2021年8月13 日、SECは前記④マイケル・ノーブル、⑤ジョシュア・ジェッペセン)および救済被告(relief defendant. )(注2)としてローラ・マスコラ(Laura Mascola)に対する和解に基づくニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所の判決を得た旨公表した。(起訴グループⅡ)
同判決に従い、2人の被告と救済被告は、350万ドル以上と190ビットコインをまとめて支払うよう命じられた。
(3)2021年9月1日、SECはオンライン暗号通貨貸付プラットフォームであるBitConnect、その創設者であるサティシュ・クンバニ(Satish Kumbhani)、および米国のトップ販売促進者グレン・アルカロ(Glenn Arcaro)とその関連会社に対してデジタル資産を含むプログラムへの連邦取引法違反により未登録の投資の提供を行ったとして訴訟を起こした旨発表した。
なお、9月1日に、連邦司法省(DOJ)は、アルカロが刑事告発に対して司法合意により有罪を認めたと発表した。
2..2021年5月28日証券取引委員会は個人投資家から20億ドル以上を調達した連邦証券法の登録規定に違反して未登録デジタル資産証券の提供を推進したとして5人の個人に対する民亊訴訟
証券取引委員会は2021年5月28日、個人投資家から20億ドル以上を調達した世界的な連邦証券法の登録規定に違反して未登録デジタル資産証券の提供を推進したとして5人の個人に対して民亊訴訟を起こしたと発表した。以下、仮訳、補足する。
2017年1月から2018年1月にかけて、ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に提出されたSECの訴状によると、BitConnectは米国に拠点を置くトレボン・ブラウン:,別名トレボン・ジェームズ)、クレイグ・グラント(Craig Grant)、ライアン・マーセン(Ryan Maasen)、マイケル・ノーブル(Michael Noble (別名マイケル・クリプト)を含む販売促進者(プロモーター)のネットワークを使用して市場に販売した。SECの訴状は、これらのプロモーターが、連邦証券法の要求に従って、証券提供を同委員会に登録することなく、同委員会にブローカー・ディーラーとして登録することなく、証券を提供し、売却したと主張した。
プロモーターは、「証言」スタイルのビデオを作成し、時には1日に複数回YouTubeに公開するなど、BitConnectの融資プログラムに投資するメリットを投資家候補に宣伝した。訴状によると、プロモーターは投資家の資金を勧誘する成功に基づいて手数料を受け取った。もう一人の米国に拠点を置く個人であるジョシュア・ジェッペセン(Joshua Jeppesen)は、BitConnectとプロモーターの間の連絡役を務め、カンファレンスやプロモーションイベントでBitConnectを代表した。
SECのニューヨーク地域事務所の副部長(Associate Regional Director of SEC's New York Regional Office)ララ・シャロフ・メフラバン(Lara Shalov Mehraban)は、「これらの被告は、BitConnect融資プログラムを個人投資家に積極的に宣伝することで、未登録のデジタル資産証券を不法に売却したと主張する.。デジタル資産に対する国民の関心を活用して、違法に利益を得た者に責任を問う」と述べた。
SECの訴状は、プロモーターたるジェッペセン被告が連邦証券法の登録規定に違反し、がBitConnectの未登録の貸出の申し出と証券の売却を支援し、賭けたとして起訴した。訴状は差し止め救済(injunctive relief)、判決前の保持利益に関する不当利得返還請求(disgorgement of illicit profits with prejudgement interest)、民事制裁金(civil money penalties )を求めている。
3.2021年8月13日、SECは「BitConnectのプロモーターのマイケル・ノーブルとジョシュア・ジェッペセンと救済被告に対する和解に基づく連邦地裁の判決を得た」と公表
以下、SECの公表を仮訳、補足する。
2021年8月13日、SECは「ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所は、BitConnectへの関与と「融資プログラム」の販売推進行為に対するジョシュア・ジェッペセン(Joshua Jeppesen)に対する判決と、マイケル・ノーブル(Michael Noble :別名マイケル・クリプト)に対する判決を下したと公表えた。また、同裁判所は、救済被告(relief defendant. )としてジェッペセン被告の婚約者であるローラ・マスコラ(Laura Mascola)に対する最終判決を下した。判決に従い、2人の被告および救済被告は、350万ドル(約3億8,150万円)以上と190ビットコインをまとめて支払うよう命ぜられた。
2021年5月28日に提出されたSECの訴状によると、2017年6月から2018年1月にかけて、ノーブル被告はBitConnectを推進し、「貸出プログラム」で有価証券を販売した。SECの訴状は、ノーブル被告が連邦証券法の要求に応じて、同委員会に証券提供を登録することなく、委員会にブローカーディーラーとして登録されることを行わずに証券を提供し、売却したと主張している。さらに訴状は、ジェッペセンがBitConnectとプロモーターの間の連絡役を務め、会議やプロモーションイベントでBitConnectを代表し、マスコラがジェッペセンのBitConnect活動から一定の収益を受け取ったと主張している。
SECの訴状は、ノーブルが連邦証券法の登録規定に違反し、ジェッペセンがBitConnectの未登録のまま貸出の申し出と証券の売却を支援し、賭けたとして起訴した。さらにSECの訴状は、マスコラに対し不当利得(unjust enrichment)を告発した。
SECの申し立てを認めたり否定したりすることなく、ノーブルは判決の開始に同意し、またジェッペセンは、ノーブルとジェッペセンがそれぞれ起訴された規定に違反し、特定のマーケティングまたは販売プログラムの提供、運営、または参加から、デジタル資産証券の提供に直接または間接的に参加することに同意した。
ジェッペセンに対する最終的な判決は、彼に3,039,485ドル(約3億3130万円)の不利益と判断権、190ビットコインの不当利得返還、150,000ドル(約1,635万円))のペナルティを支払い、190ビットコインを支払う義務を満たすためにビットコイン・ワレット(Bitcoin wallet)(注3)へのアクセスを引き渡すよう命じた。ノーブルに対する判決は、SECの動議の後日、裁判所によって決定される金額で、判決前の保持利益に関する不当利得返還請求(disgorgement of illicit profits with prejudgement interest、民事制裁金を支払うように彼に命じる。マスコラに対する最終的な判決は、彼女に576,358ドル(約6282万円)の判決前の保持利益に関する不当利得返還請求(disgorgement of illicit profits with prejudgement interestで支払うように命じた。
4.2021年9月1日、SECはBitConnect、その創設者であるサティシュ・クンバニ(Satish Kumbhani)、および米国のトップ販売促進者グレン・アルカロ(Glenn Arcaro)とその関連会社を起訴
SECの公表内容を仮訳、補足する。
SECは、オンライン暗号通貨貸付プラットフォームであるBitConnect、その創設者であるサティシュ・クンバニ(Satish Kumbhani)、および米国のトップ販売促進者グレン・アルカロ(Glenn Arcaro)とその関連会社(FUTURE MONEY LTD.,)に対してデジタル資産を含むプログラムへの連邦取引法違反により未登録の投資の提供を行ったとして訴訟を起こした旨発表した。
Satish Kumbhani被告
Glenn Arcaro 被告
2017年初頭から2018年1月にかけてニューヨーク南部地区の米国連邦地方裁判所に提出されたSECの訴状によると、被告は BitConnectによって提供された「貸付プログラム」への投資という形で、連邦証券法に違反して未登録の有価証券の募集と売却を行った。
SEC訴状は、投資家に意図された貸付プログラムに資金を預けるように誘導するために、被告は、とりわけBitConnectが投資家の預金を使用して途方もなく高い利益を生み出すとされる独自の「乱高下ソフトウェア取引ボット(volatility software trading bot)」を展開することで投資家に誤解させる目的で表明したと主張している。
しかしながら、SECは投資家の資金を取引ボットと称するものと取引するために展開する代わりに、被告のBitConnectとサティシュ・クンバニ(Satish Kumbhani)、グレン・アルカロ(Glenn Arcaro)は、実際は投資家の資金を米国のトップ販売促進者である彼らが管理するデジタル・ウォレット・アドレスに転送することで、投資家の資金を自分たちの利益のために吸い上げたと起訴状で主張した。
さらにSECの告訴は、BitConnectとKumbhaniが世界中の販売促進者のネットワークを確立し、そのかなりの部分を投資家から隠した手数料を支払うことで、彼らの販売促進活動と活動に対して報いたと主張した。
起訴状によると、これらの販売促進者の中には、彼が作成したWebサイト”FutureMoney”を使用して投資家を貸付プログラムに誘い込んだ米国向けBitConnectの主要な全米的な販売促進者であるアルカロが含まれていた。
SECのニューヨーク地域事務所の副部長(Associate Regional Director of SEC's New York Regional Office)ララ・シャロフ・メフラバン(Lara Shalov Mehraban)は「これらの被告は、デジタル資産への関心を利用して、世界中の個人投資家から数十億ドルを盗んだと主張しています。我々は、デジタル資産の分野で不正行為に従事する人々を積極的に追求し、責任を負う」と、述べた。
SECの告訴は、連邦証券法の詐欺防止および登録条項に違反したとして被告を告発した。訴状は、差し止め救済(injunctive relief)、判決前の保持利益に関する不当利得返還請求(disgorgement of illicit profits with prejudgement interest)民事制裁金(civil money penalties)を求めた。本ブログの第3項で述べたとおり SECは8月13日に、BitConnectの募集を宣伝するための関連訴訟で起訴した5人の個人被告のうち2人(ジョシュア・ジェッペセン(Joshua Jeppesen)、マイケル・ノーブル(Michael Noble (別名:Michael Crypto)と和解に達した。並行して、
連邦司法省カリフォルニア南部地区連邦検事局は9月1日、アルカロが刑事告発に対して有罪を認めたと発表した。
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(注1)国民生活センターに対する相談件数の推移
(注2) 「救済被告」とは、他の起訴状で指名された被告の違法行為の結果として、不正な資金または資産を受け取った個人または団体をいう。原告が求められた資金または資産を保護し、事件の最終的な回復にそれらを適用するために差し止めによる救済を求めるため、救済被告は通常その名前が公表される。 救済被告は名目上の被告と呼ばれることもある。(USLegal「Relief Defendant Law and Legal Definition」から抜粋、仮訳)
(注3)ビットコインウォレットとは、ビットコインを保管しておく財布(ウォレット)のことである。ビットコインは投資だけでなく、普段の買い物にも使える。ウォレットなしで使うこともできるが、ウォレットを使うことでハッキングされるリスクを抑え、安全にビットコインを使うことができる。
ビットコインウォレットは、ビットコインを使うために必要な「秘密鍵」「公開鍵」「ビットコインアドレス」を管理するために使うものである。」ウォレットに保管されているビットコインは、ビットコインアドレスによって管理され、使用する際には秘密鍵が必要になる。そして、本人が使用したことを示すために使われるのが公開鍵である。
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