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「現代人は12月と1月に最も死んでいる」「日本人の死亡原因の10%が『低温』!?」 202401

2024-01-17 02:41:00 | なるほど  ふぅ〜ん

「現代人は12月と1月に最も死んでいる」「日本人の死亡原因の10%が『低温』!?」 命を守る室温対策、何度以上に設定すべき?
   デイリー新潮 より 240117  新潮社


 冬は冷え込むのが当然であり、少々の寒さは耐えることでむしろ肉体の鍛錬につながる――こうした“昭和的”な考えは改めたほうが良さそうだ。冬本番を迎えるなか、部屋の低温状態を改善しないと思わぬ災厄が……。建築の専門家が警告。
 家の寒さが命を縮める!【岩前 篤/近畿大学建築学部教授】

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⚫︎冬があぶない!「家の寒さ」に警鐘を鳴らす岩前氏

 冬本番を迎え、寒さに身を縮こまらせながら帰宅し、暖房器具のスイッチを入れて一息つく――。

 年末年始は暖房の有難さが身に染みる季節です。しかし多くの日本人にとって、この表現を使うことは実は誤りといえるかもしれません。私たちは本当に“暖房”できているのでしょうか?

 隙間が多く、断熱が十分ではない日本の住宅の場合、あえて言えば暖房は存在しません。私たちは「房を暖めている(ルームヒーティング)」のではなく、暖房器具を直接的に人にあてて暖めたり、あるいは人がいる周辺のみを暖めているに過ぎません。
 ですから、正しくは「暖房」ではなく「暖人」あるいは「採暖」と言うべきなのです。
それは結局、一時的、もしくは局所的に寒さ対策をしているだけで、いってみればその場しのぎです。

 つまり家にいる時、いつでもどこでも暖かい環境で過ごすことができていない。
一度(ひとたび)暖房器具の近くから離れると、途端に寒さの中に身を置くことになってしまう。そして大事なポイントは、寒さは命を削る大敵だということです。

⚫︎「冬を旨とすべし」
 (こう指摘するのは、近畿大学建築学部建築学科教授で副学長の岩前篤氏だ。
 建築環境システムを専門とする岩前教授は、かねて日本の住宅の「寒さ」に警鐘を鳴らしてきた。寒さによって多くの人の健康が損なわれ、さらには命まで失われていると。
 岩前教授が“死に至る病”である寒さについて続ける。〉

「家のつくりようは、夏を旨とすべし」

 兼好法師が「徒然草」に記した有名な一文は、当時は妥当性を持っていたのでしょう。しかし、現代においてはこう言い換えるべきです。

「家のつくりようは、冬を旨とすべし」

 これは、冬が最も命の危険にさらされる季節であるという「現代の事実」に基づいた提言です。

⚫︎なぜ夏と冬の死亡リスクが逆転?
 国内で最も古いと思われる1910年の国勢調査のデータを見ると、たしかに8月、つまり夏に最も多くの人が亡くなっています。暑さが大きな要因のひとつだったと考えられます。

 ところが、1930年くらいから夏と冬の逆転が起こり始め、70年代には夏が最も少なく、冬に最も多くなる今と同じ状況に変化しているのです。
 日本に限らずアメリカでも、日本より20年ほど先取りして逆転現象が生じていたという報告もあります。これ以降50年以上にわたって日本では「冬>夏」で、12月と1月に亡くなる人が最も多い傾向が続いています。

 では、どうして逆転現象は起きたのでしょうか。

 夏に死亡者数が多かった背景には食中毒が存在します。冷蔵庫がなく、食に関する衛生環境が悪かった時代は、暑さで食べ物が腐り、食中毒で命を落とす人が多かったのだと考えられます。
 しかし、冷蔵庫が普及して食中毒が減ると夏の死亡リスクは減り、相対的に冬の死亡リスクが目立つようになったというわけです。

⚫︎低温の死亡リスクは高温の30倍
「冬」と「死」の因果関係、そのメカニズムについてはまだはっきりしないところもありますが、低温によって体力が奪われ、免疫機能が正常に働かなくなることでさまざまな健康被害がもたらされるのだと推察されます。
 いずれにしても、現に起きている逆転現象から考えると、低温の環境を避ければ健康リスクを減らせるのは間違いないといえるでしょう。

 実際、2015年に英国の医学系学術誌で発表された調査結果では、日本人の死亡者の約10%、およそ12万人が「低温」の影響で亡くなったと記されています。

 一方、夏の「高温」による死亡者が占める割合は0.3%に過ぎません。
低温と高温を比べると、実に約30倍も低温の死亡リスクは高いのです。
 近年、熱中症のリスクが注目されていますが、熱中症で病院に運ばれた人の9割以上はその日のうちに帰宅しています。
 こと「命」に関していうと,やはり夏の暑さより冬の寒さが圧倒的に危険といえるのです。

⚫︎「寒さ」と「低温」の違い
 いかに寒さが命に関わる大問題であるかお分かりいただけたかと思いますが、ここでひとつ誤解しないでいただきたいことがあります。
 冬の寒さが問題だというと、どうしても、「寒いところから急に暖かい場所に移る時のヒートショックに気を付ければいいんでしょ」と思う人が少なくありませんが、「温度差」以前に「低温そのもの」が危険なのです。
 私の父親が典型例で、「うちは大丈夫。家のどこに行っても10度くらいで温度差はないから」と言い、家の寒さを気にしようとしませんでした。そうではなく、家の中が10度と寒い時点で健康を害する恐れがあるのです。

 さらに、ここまで「寒さ=低温」として扱ってきましたが、厳密に言えば命をむしばむ危険性が高いのは体感的な「寒さ」ではなく「低温」という状態です。
 寒さを感じれば暖房器具を「弱」から「強」にしたり、寒い部屋から暖かいリビングに移るなどして何らかの対策を取るでしょうから、健康を害するほどの寒さを延々と感じ続けることは実はあまりありません。
 一方の低温は、それこそ我慢できないほどの寒さを感じるわけではなくても、知らず知らずのうちに私たちの健康を損なっていくため危険なのです。

⚫︎15もの症状が改善
 では、冬の室内の低温はどれほど健康を阻害するのでしょうか。逆に言えば、断熱性のすぐれた家に暮らすことでどれだけ健康は改善するのか。
 われわれが高断熱高気密住宅に引っ越した約2万4千人を対象に調査を行ったところ、驚くべき結果が出ました。引っ越し後、15もの症状が明らかに改善したのです。
 具体的には、想像に難(かた)くない手足の冷え、せきやのどの痛みだけではなく、肌のかゆみやアトピー性皮膚炎、花粉症といった症状にまで改善が見られました。

 アトピー性皮膚炎が改善したのは、室内の温度が上がったことで身に着ける衣類の量が減ったことに起因しているものと思われます。家の中が低温であれば、当然、服を着込むことになります。
 この重ね着が人間に与えるストレスは想像以上のもので、高断熱高気密住宅に住むことによって、化学繊維やウールといった肌への刺激が強い衣類を多く着なくて済み、肌に良い影響をもたらしたと考えられるのです。

⚫︎年8万円の医療費削減に
 また花粉症は、「治った」というわけではなく、高断熱高気密の住宅ですから、屋内に入り込む花粉の量が減り、総じて花粉症による苦痛が改善されたということでしょう。
 同様の理由から、アレルギー性鼻炎の症状も改善し、高断熱高気密の家に引っ越してきてから鼻水が出なくなったものの、友だちの家に行くと鼻水が出るといったお子さんもいました。

「脱低温」によってもたらされるメリットは、健康状態の改善だけではありません。
 それに伴い医療費も浮くのです。現在、「医療大国」である日本の医療費は約45兆円となっていて、ひとりあたり毎年36万円の医療費がかかっている計算になります。
 私どもの試算では、先に説明したような高断熱高気密による健康改善効果で、「父55歳、母50歳、子22歳と18歳」の4人家族の場合、年8万円もの医療費削減につながるという結果が出ています。

⚫︎日本に向けられた提言
 こうして見ると、やはり冬の低温から身を守ることが健康長寿に大きく寄与するのは明白です。事実、欧米では室内の温度を一定以上に保つことが常識になっています。
 例えばアメリカのニューヨークシティでは、10月1日から5月31日までの低温期、建物の所有者は、外気温が華氏55度(摂氏約12.8度)以下の場合、室内の温度を日中は華氏68度(摂氏20度)、夜間は外気温によらず華氏62度(摂氏約16.6度)以上に保たなければならないと行政が定めています。

 また、2018年にはWHO(世界保健機関)が住宅と健康に関するガイドラインを示し、居住者の健康を守るために室温を18度以上にすることを強く推奨しています。
 欧米では文字通りの意味での暖房、つまりルームヒーティングの重要性が浸透しているため、このWHOの「強い推奨」は、G7などの先進国においてはもっぱら日本に向けられたものとさえいえるのです。
 実際、先に紹介した英国の医学系学術誌発表の調査結果では、低温の影響で亡くなった人の割合は、調査対象13国のうち、中国に次いで日本が最も高かったという結果が出ています。

⚫︎最終的には割安
 それでは、家の中を暖かくするにはどうすればよいのでしょうか。

 新しく家を建てる人は、ぜひ高断熱高気密住宅を選択していただきたいと思います。
一般の住宅より工事費はかさみますが、修繕などのランニングコストを考えると、実は建設費はトータルで家にかかる費用の26%を占めるに過ぎません。
 その上、高断熱高気密住宅にすれば医療費はもちろん、暖房費も節約できます。生涯という長いスパンでの「ライフタイムコスト」を考えた場合、建設時に多少費用がかかっても、高断熱高気密住宅を建てた方が最終的には割安になるのです。

 そう言われても、とりわけ高齢の方にとってはいまさら新しい家を建てることは現実的にかなりハードルが高いでしょう。そうした人には断熱工事がお勧めです。
 家の壁に断熱材を埋め込む工事をするわけですが、リフォームを兼ねて一軒家全体でと考えると、場合によっては数千万円になってしまう可能性があります。
 そこでよりリーズナブルで、かつ高齢の方の生活実態にも即しているのが、限定的な断熱工事です。

⚫︎断熱にお金をかけるのは当たり前
 すでに子どもは独立し、夫婦だけで一軒家に暮らしている高齢の方も少なくないはずです。かつて子どもたちが使っていた2階の部屋はほとんど使わなくなった。
 でも、夫婦の寝室は2階にある。そういうケースでは、寝室を1階に移し、1階のスペースだけ断熱工事をすると、数百万円、安い場合では100万円程度で済ませることも可能です。

 もちろん数百万円も決して安い金額ではありません。しかし、「家の工事」というと住みやすくして気分が変わるメリットをイメージするかもしれませんが、断熱工事は「気分」の問題ではなく「健康」の問題なのです。
 病気になれば死ぬ前に手当てをするのは当たり前です。同様に、低温は命に関わるほど健康を阻害する要因なのですから、それに対する手当てをするのも、「高い」「安い」の問題ではなく当たり前のことなのではないかと私は考えます。

⚫︎ファンヒーターを窓向きに
 それでも断熱にまとまったお金は出せないという人には、より手頃に、DIYで部分的な断熱をする方法もあります。

 例えば、家の中で最も低温の箇所のひとつは、ドアの隙間から外気が入り込んでくる玄関です。玄関から廊下を通ってリビングなどに冷気が回り、家全体が低温になってしまう。
 これへの対策のひとつは、玄関とリビングなどをつなぐ廊下にカーテンを引き、外気の侵入をそこで一定程度遮断することです。

 また、大きな窓がある部屋では、そこから冷たい外気が入ってきて部屋の中を低温にしてしまうことがあるので、ファンヒーターなどを、部屋の中に向けてではなく窓に向かって置き、外気が中に入ってくるのを押し戻すのもひとつの手でしょう。

 リビングで過ごしやすくするために電気カーペットを敷いている家庭もあると思います。より暖かさを感じたいと考えて、電気カーペットの上に別のふわふわのカーペットや毛布を敷いている人もいるのではないでしょうか。
 しかし、これは逆効果です。電気カーペットの熱を上からふさぎ、床下に押し戻してしまっているからです。もし毛布などを敷くなら電気カーペットの下です。そうすることで、床下に熱が逃げていくのを防ぐことができます。

⚫︎命を削る敵
 そんな対策は必要がない。豊かな四季の自然に身を委ねることこそが、人間にとって文字通り自然な状態なのであり、冬は家の中も含めて寒いのが当たり前なのだ――そう主張する人がいます。
 しかし、低温を含めた自然環境は本当に人間の味方なのでしょうか。冬の死亡者数が多いことから分かるように、そうとは言い切れないはずです。
 自然は時に味方としてではなく、命を削る敵として立ちはだかってくる。そうであれば、低温対策をすることのほうが自然なことだと私は思うのです。



▶︎岩前 篤(いわまえあつし)
近畿大学建築学部教授。1961年生まれ。神戸大学工学部建築系環境計画学科卒業。同大学院工学研究科修了。大手ハウスメーカーに入社し、住宅の断熱、気密、防露に関する研究に携わる。95年、博士号取得(神戸大学)。2003年に退社、近畿大学理工学部建築学科助教授に就任し、09年に教授、11年には創設された建築学部の学部長に。建築物、特に健康・快適でエネルギー性能に優れた住宅のあり方の研究を続けている。

「週刊新潮」2024年1月4・11日号 掲載





💋ピンピンコロリ狙いの僕向きに、ここ十数年来ずっと冬は暖房なしで生活
  方向性は合ってる様で…そうさせる何か…
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