日本はこのまま消滅するのか…人口減少の「絶望的現実」に打つ手なし この1年で出生数「3万人減少」の衝撃
現代ビジネス より 220620 河合 雅司
「出生率が死亡率を超えることがない限り、日本はいずれ消滅するだろう」――世界的起業家、イーロン・マスクの発言が記憶に新しいなか、厚生労働省は「人口動態統計」を発表した。この1年で出生数は3万人減少したという。
日本の絶望的な現実は、いかにして変えることができるのか。ベストセラー『未来の年表』シリーズの著者・河合雅司氏が、問題の構造を指摘し、根本的解決策を提案する。
⁈もうすぐ、日本人が「絶滅危惧種」になる日がやってくる
⚫︎たった1年で出生数が約3万人減
懸念していた通り、コロナ禍によって少子化が加速した。
厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)」によれば、感染拡大が本格化した2020年4月以降の妊娠による出産を反映した2021年の出生数(日本における日本人)は81万1604人にとどまり、過去最少を更新した。
コロナ禍前から出生数減の流れは続いていたが、前年比3.5%もの大幅減となったのは明らかに感染拡大に伴う影響だ。
日本では婚外出生が出生数全体に占める割合は2.38%(2020年)と小さく、結婚と妊娠・出産とは密接な関係にある。
日本では婚外出生が出生数全体に占める割合は2.38%(2020年)と小さく、結婚と妊娠・出産とは密接な関係にある。
ところが、感染が拡大した2020年の婚姻件数がコロナ禍前の2019年と比べて12.3%もの大幅下落となったため、2021年の年間出生数は80万人を割り込むと見られていた。
結果として80万人台を維持できたわけだが、それは米国などと比べて日本の感染者数は少なく、当初の予想ほど経済が落ち込ますに済んだことが大きかった。
とはいえ、わずか1年で出生数が3万人近くも減ったのである。
結果として80万人台を維持できたわけだが、それは米国などと比べて日本の感染者数は少なく、当初の予想ほど経済が落ち込ますに済んだことが大きかった。
とはいえ、わずか1年で出生数が3万人近くも減ったのである。
ちなみに、国立社会保障・人口問題研究所は日本人の出生数が81万人台前半になる時期を「2027年」と推計していた。
6年早まっており、出生をめぐる状況が厳しいことに変わりはない。
コロナ禍による出生数減の加速は、2022年以降も続きそうだ。2021年の婚姻件数は、激減した前年よりさらに4.6%も下落しているためだ。
⚫︎出生数減が止まらない決定的理由
だが、コロナ禍が終息したとしても出生数減の流れは変わることはない。というのも、日本の出生数減の主要因は子供を産みうる年齢の女性数の減少だからである。
なぜ出産期の女性数が減ってしまったかといえば、長年の出生数減で女の赤ちゃんが毎年減り続けてきたためだ。女の赤ちゃんが成人して「母親」となり得る年齢に達するまでには20~30年程度のタイムラグがあるため、この先もその人数は著しく減っていくこととなる。
子供を産み得る年齢の女性数がどれぐらい減ってしまうかは、現時点での0歳女児の人数を計算すればおおよそ分かる。
総務省の人口推計(2021年10月1日現在)によれば、0歳の女児は39万7000人でしかない。これに対して、30歳の日本人女性は57万9000人、20歳は57万1000人である。
コロナ禍による出生数減の加速は、2022年以降も続きそうだ。2021年の婚姻件数は、激減した前年よりさらに4.6%も下落しているためだ。
⚫︎出生数減が止まらない決定的理由
だが、コロナ禍が終息したとしても出生数減の流れは変わることはない。というのも、日本の出生数減の主要因は子供を産みうる年齢の女性数の減少だからである。
なぜ出産期の女性数が減ってしまったかといえば、長年の出生数減で女の赤ちゃんが毎年減り続けてきたためだ。女の赤ちゃんが成人して「母親」となり得る年齢に達するまでには20~30年程度のタイムラグがあるため、この先もその人数は著しく減っていくこととなる。
子供を産み得る年齢の女性数がどれぐらい減ってしまうかは、現時点での0歳女児の人数を計算すればおおよそ分かる。
総務省の人口推計(2021年10月1日現在)によれば、0歳の女児は39万7000人でしかない。これに対して、30歳の日本人女性は57万9000人、20歳は57万1000人である。
すなわち、20年後の20歳の日本人女性は現在より30.5%、30年後の30歳の日本人女性は31.4%少なくなるということだ。
短期で3割も減ったのでは、合計特殊出生率がわずかばかり改善したところで出生数は減り続けることとなる。
出産期を迎える日本人女性の人数いまさら増やせるわけではない。それでも無理に増やそうとするなら若い外国人女性に来てもらうしかないが、それで出生数が大きく増えるかと言えば簡単ではないだろう。
⚫︎政策ではどうにもならない…
日本の出生数減は構造的な要因で起きているのであり、政策を講じてみてもどうにもならない。コロナ禍は、こうした構造的な要因による出生数減の流れをわずかばかり加速させたに過ぎないのだ。
出生数減を止めようがないという「不都合な現実」に対して、政府や国会議員は顔を背け続けており、「子育て支援策の充実で少子化に歯止めをかける」といった呑気な精神論が相変わらず目立つ。
短期で3割も減ったのでは、合計特殊出生率がわずかばかり改善したところで出生数は減り続けることとなる。
出産期を迎える日本人女性の人数いまさら増やせるわけではない。それでも無理に増やそうとするなら若い外国人女性に来てもらうしかないが、それで出生数が大きく増えるかと言えば簡単ではないだろう。
⚫︎政策ではどうにもならない…
日本の出生数減は構造的な要因で起きているのであり、政策を講じてみてもどうにもならない。コロナ禍は、こうした構造的な要因による出生数減の流れをわずかばかり加速させたに過ぎないのだ。
出生数減を止めようがないという「不都合な現実」に対して、政府や国会議員は顔を背け続けており、「子育て支援策の充実で少子化に歯止めをかける」といった呑気な精神論が相変わらず目立つ。
手厚い補助金を配って周辺自治体から子育て世帯をかき集め、「わが市は子供数が増え続けている」と得意げに語る首長も一人や二人でない。こういう自治体を成功例のように取り上げるメディアも少なくない。
さらに、創設される「こども家庭庁」を切り札のように語る国会議員もいる。子供政策の一元化は重要だが、肝心の子供が生まれないのでは始まらない。
さらに、創設される「こども家庭庁」を切り札のように語る国会議員もいる。子供政策の一元化は重要だが、肝心の子供が生まれないのでは始まらない。
問題の本質は子供が生まれてこない状況の打開である。結婚や子供をもつことを希望しながらできずにいる人々にしてみれば、子育て支援策をどれだけ強化してもらっても問題解決とはならない。
日本の少子化がいかに危機的な状況に置かれているかは、合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供数の推計値)が証明している。
日本の少子化がいかに危機的な状況に置かれているかは、合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供数の推計値)が証明している。
2005年に過去最低の1.26にまで落ち込んだ後、わずかに上昇へと転じて2015年は1.45にまで回復したのだが、その後は再び下降線をたどり2021年は1.30である。
仮に、日本の人口減少を長期的に止めようとするならば、合計特殊出生率を「人口置換水準」(親世代が同数の子世代によって人口を維持し得る出生力の水準)である2.07にまで上昇させなければならない。1.30というのは、あまりにもかけ離れた数字だ。
さらに悪いデータがある。合計特殊出生率1.5を境として、少子化が比較的緩なかな「緩少子化国」と、非常に厳しい状況に置かれている「超少子化国」とに分類されるが、日本は1995年以降1.5を下回ったままだ。
仮に、日本の人口減少を長期的に止めようとするならば、合計特殊出生率を「人口置換水準」(親世代が同数の子世代によって人口を維持し得る出生力の水準)である2.07にまで上昇させなければならない。1.30というのは、あまりにもかけ離れた数字だ。
さらに悪いデータがある。合計特殊出生率1.5を境として、少子化が比較的緩なかな「緩少子化国」と、非常に厳しい状況に置かれている「超少子化国」とに分類されるが、日本は1995年以降1.5を下回ったままだ。
いったん「超少子化」に陥った国の合計特殊出生率が1.5以上に大きく回復したケースは、一部の例外を除いて見つからないのだ。
超少子化国は「低出生率の罠」に陥る。合計特殊出生率が長期低迷すると、子供が少ないことが「当たり前」となってしまい、それに合わせて人々の意識やライフスタイルが変わってしまう状態のことだ。
超少子化国は「低出生率の罠」に陥る。合計特殊出生率が長期低迷すると、子供が少ないことが「当たり前」となってしまい、それに合わせて人々の意識やライフスタイルが変わってしまう状態のことだ。
日常生活の中で小さな子供と接する機会が激減すると、子供をもつことのリアリティーが薄らいでいく。こうした変化の積み重ねが、合計特殊出生率のV字回復を阻む大きな原因となる。
残念ながら、「低出生率の罠」にはまってしまった現在の日本にとって出生数の劇的回復も、合計特殊出生率の大幅上昇も容易ではない。もはや、政治家も官僚も「少子化を止める」などといった意気込みを語るだけでは済まない段階にある。まずは「不都合な現実」を受け入れ、そのうえで「次なる一手」を考えなければならない。
⚫︎2つの少子化対策
出生数が減り続ける以上、今後の少子化対策は2つに分けて考える必要がある。1つはこれまで通り子育て支援策だ。出生数の減少に歯止めがかからないからといって、この状況を放置してよいということにはならない。
出生数が減少することは仕方ないにしても、そのスピードが速ければその分だけ総人口の減少も速くなる。そうなれば社会の激変は避けられず、国民生活へのダメージも大きくなる。少しでもペースを遅くすることは重要なことだ。
ただし、子育て支援策を手厚くするだけではあまり成果は期待できない。先にも述べたが、子育て支援はあくまで子供が生まれてからの政策である。
残念ながら、「低出生率の罠」にはまってしまった現在の日本にとって出生数の劇的回復も、合計特殊出生率の大幅上昇も容易ではない。もはや、政治家も官僚も「少子化を止める」などといった意気込みを語るだけでは済まない段階にある。まずは「不都合な現実」を受け入れ、そのうえで「次なる一手」を考えなければならない。
⚫︎2つの少子化対策
出生数が減り続ける以上、今後の少子化対策は2つに分けて考える必要がある。1つはこれまで通り子育て支援策だ。出生数の減少に歯止めがかからないからといって、この状況を放置してよいということにはならない。
出生数が減少することは仕方ないにしても、そのスピードが速ければその分だけ総人口の減少も速くなる。そうなれば社会の激変は避けられず、国民生活へのダメージも大きくなる。少しでもペースを遅くすることは重要なことだ。
ただし、子育て支援策を手厚くするだけではあまり成果は期待できない。先にも述べたが、子育て支援はあくまで子供が生まれてからの政策である。
政府はようやく結婚や不妊治療のサポートなどにも力を入れ始めたが、「子供が生まれる前」の段階の支援策をさらに強化する必要がある。
もう1つの対策は、出生数が減り続けることで起こる社会課題への対応である。
これまでこうした政策はほとんど手つかずだった。背景には、多くの政治家が「少子化を止められないと言ったら、政治にならない」と語ることで明らかなように、後ろ向きの姿勢をとることへの批判を回避したいという政治的思惑が存在する。
しかしながら、できもしない幻想をふりまき続けることの罪は重い。過疎化が進行している地方では、すでに公立小学校の統廃合などの課題が現実のものとなっている。
いま求められているのは、人口が増え続けていた時代に作られた制度や、人口が増えること当て込んだビジネスモデルを、人口が減っても維持できる仕組みや手法へと根本から変えることである。
出生数減が進み、総人口が高齢化しながら減っていけば、国内マーケットは縮み、人手不足は深刻化する。売り上げを拡大しながら成長するビジネスモデルの多くはどこかの時点で破綻する。
出生数減はマーケットの縮小を招くだけでなく、若者が減るので社会から「勢い=活力」を削いで行く。若い世代が減るにつれて、会社などの組織では新陳代謝が進みづらくなるが、各職場でマンネリズムが広がれば日本社会全体としてもイノベーションやブームを起こす力が衰えていく。
すでに日本経済は成長の鈍化が著しいが、これだって出生数減による社会の停滞と無縁ではないだろう。技術立国として経済成長を続けてきた日本が技術の優位性を無くしたならば、経済だけでなく国力の衰退にも直結する。
出生数が減っても企業が利益を伸ばし、イノベーションが起こり続けるよう、教育やスキルアップ、働き方など改革しなければならないことは山ほどある。
もう1つの対策は、出生数が減り続けることで起こる社会課題への対応である。
これまでこうした政策はほとんど手つかずだった。背景には、多くの政治家が「少子化を止められないと言ったら、政治にならない」と語ることで明らかなように、後ろ向きの姿勢をとることへの批判を回避したいという政治的思惑が存在する。
しかしながら、できもしない幻想をふりまき続けることの罪は重い。過疎化が進行している地方では、すでに公立小学校の統廃合などの課題が現実のものとなっている。
いま求められているのは、人口が増え続けていた時代に作られた制度や、人口が増えること当て込んだビジネスモデルを、人口が減っても維持できる仕組みや手法へと根本から変えることである。
出生数減が進み、総人口が高齢化しながら減っていけば、国内マーケットは縮み、人手不足は深刻化する。売り上げを拡大しながら成長するビジネスモデルの多くはどこかの時点で破綻する。
出生数減はマーケットの縮小を招くだけでなく、若者が減るので社会から「勢い=活力」を削いで行く。若い世代が減るにつれて、会社などの組織では新陳代謝が進みづらくなるが、各職場でマンネリズムが広がれば日本社会全体としてもイノベーションやブームを起こす力が衰えていく。
すでに日本経済は成長の鈍化が著しいが、これだって出生数減による社会の停滞と無縁ではないだろう。技術立国として経済成長を続けてきた日本が技術の優位性を無くしたならば、経済だけでなく国力の衰退にも直結する。
出生数が減っても企業が利益を伸ばし、イノベーションが起こり続けるよう、教育やスキルアップ、働き方など改革しなければならないことは山ほどある。
これ以上、時間を浪費してはならない。
もちろん結婚も子供をもつことも個々人が判断すべきことだ。だが、社会全体として見た場合、結婚しない人が増加して出生数が減れば、将来的に1人暮らし世帯が増えることとなる。高齢社会白書(2022年版)によれば、2040年には女性高齢者の4人に1人、男性高齢者も5人に1人が1人暮らしになるとしている。
もちろん結婚も子供をもつことも個々人が判断すべきことだ。だが、社会全体として見た場合、結婚しない人が増加して出生数が減れば、将来的に1人暮らし世帯が増えることとなる。高齢社会白書(2022年版)によれば、2040年には女性高齢者の4人に1人、男性高齢者も5人に1人が1人暮らしになるとしている。
認知症患者も増える見通しで、買い物難民や通院難民の増加へとつながる。それはやがて大きな社会コストとなるだろう。
人口減少社会に向けて今われわれがすべきは現状の維持ではなく、「縮小」を前提としてそれに適合できるよう社会を進化させることだ。それで人口問題が解決するわけではないが、戦略的に縮小させていくことで、小さくなっても「きらりと輝く国」にすることは可能だ。
人口減少社会に向けて今われわれがすべきは現状の維持ではなく、「縮小」を前提としてそれに適合できるよう社会を進化させることだ。それで人口問題が解決するわけではないが、戦略的に縮小させていくことで、小さくなっても「きらりと輝く国」にすることは可能だ。
これ以上、「不都合な現実」から目をそらし続けるならば、日本の未来には絶望しか待っていない。
💋地方選出の浅学非才で愚かな国会議員の多い事、首都圏集中化と首都圏への若者集中化では婚姻率は少ないし… マスコミ含め… マルサスの人口論を理解してない。
人あっての国家がわかってない… 地元でボ〜っと生きてる議員達、身近をみれば自ずと…