未来のノーベル賞候補が日本で!細胞より小さな「ナノロボット」でガン細胞も直接治療してしまう最先端研究が日本で進行中!
FutabaNetPotal より 241230
血管内を動き回り患部を治療するナノロボットが現実に!?
1966年の映画「ミクロの決死圏」をご存じだろうか。人間の乗った潜水艦を極微サイズまで縮め、血管に注射して患部の治療に向かわせるというSFだ。
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映画公開から約60年が経ったが、さすがに人間を小さくする技術は見つかっていない。だが、潜水艦の代わりに超小型ロボットを使って病気を治す研究は進んでいる。その名はナノボット、前編で紹介したマイクロチップをさらに超える未来の医療の世界を紹介しよう。
■ナノテクで体内に病院を作る!?
ナノメディスンのイメージ。体内に病院を作るイメージだ 。
画像:公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター
前編で紹介したマイクロチップは、超小型のセンサだった。注射器で超小の測定機器を筋肉や組織に埋め込むイメージだ。注射できるほど小さなチップを作った技術はすごいけれど、体温を測る程度しかできないと聞くと正直、ガッカリというか……。
いやそんなもんじゃないんだ、もっとすごいことができるんだというのが、公益財団法人川崎市産業振興財団・ナノ医療イノベーションセンターの片岡一則センター長らが進めている「ナノメディスン」だ。
細胞よりも小さなマシンを作り、体の中で診察から投薬、手術まで全部やってしまおうという、いわば体の中に小さな病院を作ってしまうとんでもない技術なのだ。
「体の中に病院って、ロボットの医者や看護師がせっせとケガや病気を治してくれるの?」
と思うだろうが、そのイメージでほぼ間違いないらしい。ただし、その「ロボット」は金属製の小さな人型ではなく、高分子でできた球体だ。片岡氏らのプランでは、
□ 病気の診断をする「ナノ診断システム」
□ 薬剤を患部まで運び内科治療を行う「ナノDDSシステム」
□ 患部を外科治療する「ナノ低侵襲治療システム」
□ 病気により失われた患部を再建する「ナノ再建システム」
という4つのシステムが連携して体内で治療を行なうことを目指している。
■高分子の化学ロボットが活躍
化学物質の特性を利用したある種のロボットカプセルで、患部まで薬を運ぶ
前編で紹介したマイクロチップは、超小型のセンサだった。注射器で超小の測定機器を筋肉や組織に埋め込むイメージだ。注射できるほど小さなチップを作った技術はすごいけれど、体温を測る程度しかできないと聞くと正直、ガッカリというか……。
いやそんなもんじゃないんだ、もっとすごいことができるんだというのが、公益財団法人川崎市産業振興財団・ナノ医療イノベーションセンターの片岡一則センター長らが進めている「ナノメディスン」だ。
細胞よりも小さなマシンを作り、体の中で診察から投薬、手術まで全部やってしまおうという、いわば体の中に小さな病院を作ってしまうとんでもない技術なのだ。
「体の中に病院って、ロボットの医者や看護師がせっせとケガや病気を治してくれるの?」
と思うだろうが、そのイメージでほぼ間違いないらしい。ただし、その「ロボット」は金属製の小さな人型ではなく、高分子でできた球体だ。片岡氏らのプランでは、
□ 病気の診断をする「ナノ診断システム」
□ 薬剤を患部まで運び内科治療を行う「ナノDDSシステム」
□ 患部を外科治療する「ナノ低侵襲治療システム」
□ 病気により失われた患部を再建する「ナノ再建システム」
という4つのシステムが連携して体内で治療を行なうことを目指している。
■高分子の化学ロボットが活躍
化学物質の特性を利用したある種のロボットカプセルで、患部まで薬を運ぶ
画像:公益財団法人川崎市産業振興財団 ナノ医療イノベーションセンター
4つの技術のうち、もっとも早く実用化しそうなのが「ナノDDSシステム」だ。DDSはドラッグデリバリーシステムの略で、薬を病気の細胞までピンポイントで配送するシステム。いわば細胞版ウーバーイーツだ。
では、この「ナノDDSシステム」最大のメリットは何か?
たとえば、現在のガン治療では、抗ガン剤がガン細胞と一緒に健康な細胞まで壊してしまい、体への負荷が強すぎるのが問題になっている。大量の薬剤が必要で治療費も高くつき、副作用のせいで却って悪化する場合もあり、まったくいいところがない。
ところがナノDDSなら、抗ガン剤をピンポイントでガン細胞まで運び、直接注入できるのだ。最小限の薬を治療したい患部だけに注入し、副作用も抑えられる。いいこと尽くしだ。
しかし、ガン細胞まで薬を運ぶといっても、どうやればいいのか? 前編で紹介したマイクロチップに薬を入れて患部まで運ぶ? 塩粒より小さい箱の開け閉めなんてできるのか?
ガンの患部まで薬を運んで放出させるメカニカルなロボットを作ることは、現在の技術では不可能だ。しかし、化学物質による反応で薬を放出する仕組みを作ることはできる。
■日本発!ノーベル賞級の大発明
ガン以外にも脳に薬を届け、神経細胞を活性化させる実験にも成功した。アルツハイマーなどの脳の病気もこの技術で治療できる可能性が出てきた
4つの技術のうち、もっとも早く実用化しそうなのが「ナノDDSシステム」だ。DDSはドラッグデリバリーシステムの略で、薬を病気の細胞までピンポイントで配送するシステム。いわば細胞版ウーバーイーツだ。
では、この「ナノDDSシステム」最大のメリットは何か?
たとえば、現在のガン治療では、抗ガン剤がガン細胞と一緒に健康な細胞まで壊してしまい、体への負荷が強すぎるのが問題になっている。大量の薬剤が必要で治療費も高くつき、副作用のせいで却って悪化する場合もあり、まったくいいところがない。
ところがナノDDSなら、抗ガン剤をピンポイントでガン細胞まで運び、直接注入できるのだ。最小限の薬を治療したい患部だけに注入し、副作用も抑えられる。いいこと尽くしだ。
しかし、ガン細胞まで薬を運ぶといっても、どうやればいいのか? 前編で紹介したマイクロチップに薬を入れて患部まで運ぶ? 塩粒より小さい箱の開け閉めなんてできるのか?
ガンの患部まで薬を運んで放出させるメカニカルなロボットを作ることは、現在の技術では不可能だ。しかし、化学物質による反応で薬を放出する仕組みを作ることはできる。
■日本発!ノーベル賞級の大発明
ガン以外にも脳に薬を届け、神経細胞を活性化させる実験にも成功した。アルツハイマーなどの脳の病気もこの技術で治療できる可能性が出てきた
画像:東京大学リリース「脳脊髄神経系にメッセンジャーRNA(mRNA)送達を可能とする 高分子ミセルの開発」
片岡氏が考えたのは、体に優しく化粧品や医薬品に使われている高分子素材のポリエチレングリコール(PEG)とポリアミノ酸を使った極小のカプセルだ。この2種類の高分子物質を混ぜると、水に混じらない性質と電気的に惹きつける性質から球状になる。その際に運びたい薬品を混ぜておくと、薬品を包み込むように球(カプセル)が作られる。
化学物質でできたカプセルのサイズは20~100ナノメートル、1ナノメートルは100万分の1ミリだ。細胞の平均的なサイズは0.02ミリなので、細胞よりもはるかに小さい。
このカプセルがガン腫瘍に侵入すると、ガン腫瘍は他の細胞よりも酸性度が高く、酸性度が高まるとカプセルを形作る結合が弱くなり崩壊。これによりカプセルの中の薬剤が放出される仕組み。
化学物質の性質を利用することで、薬品を患部に届ける仕組みができたというわけだ。このナノDDSシステムの発明と研究の功績により、片岡氏は2023年度クラリベイト引用栄誉賞など数々のバイオ科学関連の賞を受賞、ノーベル賞候補として名前が挙がっている。
■魚ロボットが血管を泳ぎ回る
3Dプリンタで作成した高分子魚ロボット。体外から磁気で誘導、患部まで薬剤を運ぶ
画像:American Chemical Society「Shape-Morphing Microrobots Deliver Drugs to Cancer Cells」 https://www.youtube.com/watch?v=-QxioOUyFLg&t=137s
さらに、先に挙げた「患部を外科治療するナノ低侵襲治療システム」を実現するには、まさにSF的なロボットが必要になる。血管内を移動し、患部で手術を行なうロボットなんて、そんなものができるのだろうか。
まだまだ基礎研究でしかないが、そのようなナノボットはできつつある。アメリカで開発中の「ナノボットフィッシュ」は、3Dプリンタで造られた高分子製の魚型ロボットだ。磁気で外部から操作、血液中を泳いで移動し、患部に着くと口を開けて薬を放出する。
サイズは0.05~0.1ミリと細胞より大きいので、ナノDDSシステムほど患部を精密に狙うことはできない。ただ、高分子素材の刃を作り、ハサミのように組織を切り取ることも不可能ではないらしい。
将来、このような高分子素材のロボットを使って、体内で患部を手術できるようになるだろう。片岡氏のナノメディスン、体内病院計画は決して夢物語ではないのだ。
さらに後編では、体にマシンを埋め込み、病気を治すどころか、人間を人間以上に変えてしまう未来の技術「インプランタブルデバイス」を紹介しよう。これはまさにサイボーグ、科学の力で超人的な力が手に入る魔法の技術なのだ。
片岡氏が考えたのは、体に優しく化粧品や医薬品に使われている高分子素材のポリエチレングリコール(PEG)とポリアミノ酸を使った極小のカプセルだ。この2種類の高分子物質を混ぜると、水に混じらない性質と電気的に惹きつける性質から球状になる。その際に運びたい薬品を混ぜておくと、薬品を包み込むように球(カプセル)が作られる。
化学物質でできたカプセルのサイズは20~100ナノメートル、1ナノメートルは100万分の1ミリだ。細胞の平均的なサイズは0.02ミリなので、細胞よりもはるかに小さい。
このカプセルがガン腫瘍に侵入すると、ガン腫瘍は他の細胞よりも酸性度が高く、酸性度が高まるとカプセルを形作る結合が弱くなり崩壊。これによりカプセルの中の薬剤が放出される仕組み。
化学物質の性質を利用することで、薬品を患部に届ける仕組みができたというわけだ。このナノDDSシステムの発明と研究の功績により、片岡氏は2023年度クラリベイト引用栄誉賞など数々のバイオ科学関連の賞を受賞、ノーベル賞候補として名前が挙がっている。
■魚ロボットが血管を泳ぎ回る
3Dプリンタで作成した高分子魚ロボット。体外から磁気で誘導、患部まで薬剤を運ぶ
画像:American Chemical Society「Shape-Morphing Microrobots Deliver Drugs to Cancer Cells」 https://www.youtube.com/watch?v=-QxioOUyFLg&t=137s
さらに、先に挙げた「患部を外科治療するナノ低侵襲治療システム」を実現するには、まさにSF的なロボットが必要になる。血管内を移動し、患部で手術を行なうロボットなんて、そんなものができるのだろうか。
まだまだ基礎研究でしかないが、そのようなナノボットはできつつある。アメリカで開発中の「ナノボットフィッシュ」は、3Dプリンタで造られた高分子製の魚型ロボットだ。磁気で外部から操作、血液中を泳いで移動し、患部に着くと口を開けて薬を放出する。
サイズは0.05~0.1ミリと細胞より大きいので、ナノDDSシステムほど患部を精密に狙うことはできない。ただ、高分子素材の刃を作り、ハサミのように組織を切り取ることも不可能ではないらしい。
将来、このような高分子素材のロボットを使って、体内で患部を手術できるようになるだろう。片岡氏のナノメディスン、体内病院計画は決して夢物語ではないのだ。
さらに後編では、体にマシンを埋め込み、病気を治すどころか、人間を人間以上に変えてしまう未来の技術「インプランタブルデバイス」を紹介しよう。これはまさにサイボーグ、科学の力で超人的な力が手に入る魔法の技術なのだ。