「さらばCD…」ついに、パッケージ・オーディオは終焉迎えるか…「衝撃的な高音質化」で、ネットオーディオの「第2段階」が幕を開けた
現代ビジネス より 240920 山之内 正(オーディオ評論家)
【】「音質がいまひとつ」は、過去…ストリーミングサービスが劇的に変化していた
類稀なる高音質で、話題になったネットオーディオ。しかし、割高な価格とダウンロードのわずらわしさから一部のマニアにしか支持されませんでしたが、高音質定額制配信サービスの出現で、大きく変わろうとしています。
ベテランと言われるオーディオ愛好家の中にも、CDやレコードなどの「パッケージメディア(パッケージ音源)」によるオーディオなら知識も経験もあるが、ネットワークが重要になった最近のオーディオに関しては、専門用語の意味もわかりにくいと感じている人もいるかと思います。
はじめてネットオーディオに挑戦するオーディオファンや音楽ファンを対象に、機材の選び方、高音質ストリーミングのセッティング、煩わしいネットの設定などなど、聴き放題の“1億曲ライブラリー”を手にするノウハウをご紹介しましょう。
※この記事は、『ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう』の内容を再構成・再編集してお届けします。
⚫︎パッケージメディアからネットワークへ
最近では、音楽を聴くのは大好きだけど、CDを1枚も持っていないという音楽ファンは珍しくありません。特に若い世代の音楽ファンの場合、それが普通かもしれません。これは、オーディオの世界にとって非常に重要な変化です。
その「パッケージメディアからネットワークへ」という重要な変化は2010年前後から始まり、わずか15年ほどの間に決定的なものになりました。なぜそれほどの短期間で、このような本質的な変化が起きたのでしょうか?
大きな変化をもたらした最大の要因は、インターネットの普及です。
パッケージ中心の再生からネットワークを利用した音楽再生への移行は、いくつかの段階を経ながらも急速に進み、本書執筆の時点(2024年)でもなお進行中です。2013年刊の私の著書『ネットオーディオ入門』(ブルーバックス)では、2010年前後に始まった第1段階のネットオーディオに焦点を合わせ、音楽を取り巻く環境の変化に注目しました。あらためてその内容を簡単に振り返ってみましょう。
▶︎パッケージ中心の再生からネットワークを利用した音楽再生へ
⚫︎CDからデータ再生への変遷
音楽を聴く手段としてデータ再生を選ぶ音楽ファンが増え始めたのは、2000年前後のことでした。21世紀に入ると音源をインターネットで販売する音楽配信サービスが始まり、ダウンロードして再生するためのプレーヤーが発売されるようになります。
北米で2001年に発売されたアップルのiPodはプレーヤーの象徴的な存在で、音源データ配信サービスでは2003年に北米で始まった『iTunesミュージックストア』がさきがけとなりました。
音源をインターネットで販売するサービスは、紆余曲折を経ながら内容が進化していきます。2007年にはイギリスの『リンレコーズ』が音質劣化のないハイレゾ音源の販売に踏み切り、2012年には『アップル』がDRMと呼ばれるデジタル著作権管理を撤廃するとともに音質改善に取り組み、利便性と音質の両面で音楽配信は次の段階に進みました。
⚫︎CDが抱える長所と短所
音楽配信の浸透にともなって起きた変化は、レコードやCDなど形のあるパッケージメディアの代わりに、デジタル化された音楽データをインターネット経由で購入し、そのデータを直接再生する方法が急速な広がりを見せたことでした。
CDが登場した1982年当時は、デジタル化された音楽データを複製して大量に流通させるためには、音楽データを収納する物理的なディスクが必要で、それが唯一の方法でした。
音源をインターネットで販売するサービスは、紆余曲折を経ながら内容が進化していきます。2007年にはイギリスの『リンレコーズ』が音質劣化のないハイレゾ音源の販売に踏み切り、2012年には『アップル』がDRMと呼ばれるデジタル著作権管理を撤廃するとともに音質改善に取り組み、利便性と音質の両面で音楽配信は次の段階に進みました。
⚫︎CDが抱える長所と短所
音楽配信の浸透にともなって起きた変化は、レコードやCDなど形のあるパッケージメディアの代わりに、デジタル化された音楽データをインターネット経由で購入し、そのデータを直接再生する方法が急速な広がりを見せたことでした。
CDが登場した1982年当時は、デジタル化された音楽データを複製して大量に流通させるためには、音楽データを収納する物理的なディスクが必要で、それが唯一の方法でした。
CDはデジタル音源を記録するために開発された非常に優れた媒体の一つです。
しかしCDのようなパッケージメディアを作るためには、大規模な生産設備が必要であり、リスナーの手元に届けるために複雑な流通システムも不可欠です。店頭に在庫がなければ、注文して取り寄せる必要があります。レコード会社のストックが尽きて再プレスが難しい場合は、やむなく廃盤ということになり、聴きたくても購入できなくなってしまいます。最近は実際にそうしたケースが増えているようです。
一方、データ音源はインターネットを介して音楽データを電子的にやり取りできるため、物理的なパッケージや物流システムが不要で、欠品や廃盤も原理的にありません。音源をダウンロードしてハードディスクに保存するだけなので、時間を節約できる上に、ディスクの置き場所を確保しなくて済むメリットもあります。
増え続けるディスクを整理して管理することを目的に、パソコンを使ってCDの音楽データをiPodやスマートフォンに取り込み、データ再生に切り替える音楽ファンが増えました。
パソコンを使って、CDの音楽データをiPodやスマートフォンに取り込みようになった
しかしCDのようなパッケージメディアを作るためには、大規模な生産設備が必要であり、リスナーの手元に届けるために複雑な流通システムも不可欠です。店頭に在庫がなければ、注文して取り寄せる必要があります。レコード会社のストックが尽きて再プレスが難しい場合は、やむなく廃盤ということになり、聴きたくても購入できなくなってしまいます。最近は実際にそうしたケースが増えているようです。
一方、データ音源はインターネットを介して音楽データを電子的にやり取りできるため、物理的なパッケージや物流システムが不要で、欠品や廃盤も原理的にありません。音源をダウンロードしてハードディスクに保存するだけなので、時間を節約できる上に、ディスクの置き場所を確保しなくて済むメリットもあります。
増え続けるディスクを整理して管理することを目的に、パソコンを使ってCDの音楽データをiPodやスマートフォンに取り込み、データ再生に切り替える音楽ファンが増えました。
パソコンを使って、CDの音楽データをiPodやスマートフォンに取り込みようになった
⚫︎ネットワークは、プレーヤーでも有利
ディスク再生は再生機器にも一定の制約があります。デジタル信号を読み取る光学ピックアップや、ディスクの回転機構が不可欠で、どちらも高い機械精度が要求されるため、ハードウェアの開発と生産には専門化された技術と規模の大きな設備投資が求められます。
実際に、光学ピックアップと回転機構を一体化した「メカドライブ」と呼ばれる部品は、ごく限られた企業が生産し、世界中のオーディオメーカーに供給しているのが現状です。
一方、ネットワークプレーヤーはほぼ電気回路だけで製品を構成することができ、ハードウェアとしてのプレーヤーの構成を大幅に簡略化できます。回転機構や読み取り機構など消耗する部品もほとんどなく、故障の要因も大幅に減らすことができます。さらにCDのように、メディアの物理的サイズに制約されることがなく設計の自由度が上がるため、小型化も容易です。
⚫︎初期段階のネットオーディオはハードルが高かった
初期段階のネットオーディオでは、音源の入手方法は主に2種類ありました。
パソコンを使ってCDのデータを読み込む(リッピング)か、または音楽配信サービスを利用してインターネット経由でダウンロードしてデータ音源を購入する方法です。リッピングやダウンロードで入手した音源は家庭内ネットワーク(LAN)に接続したハードディスク(ネットワーク接続記憶装置:NAS)に保存し、その音楽データ(音声ファイル)を「音声ファイル専用のプレーヤー」またはパソコンで再生するという方法が一般的です。
LANやWi-Fiを介して音楽データ(音声ファイル)をネットワーク経由で受信し、アナログ出力に変換して出力する専用プレーヤーをネットワークプレーヤーと呼びます。
この方法でもディスク再生にはない長所があります。しかし、リッピングやダウンロードのためにパソコンを操作する必要があり、音楽配信サービスから購入する音源のフォーマットを複数のなかから選ぶ必要があるなど、CDにはなかった煩わしく感じる操作も必要になりました。
さらに、「サーバー」(保存したデータをネットワーク経由で送受信する一種のコンピューター)に保存する音源が増えるに従って、膨大な音源を管理する難しさに悩まされるなど、音楽を聴くこととは直接関係のない問題に直面する機会が増えてきます。
⚫︎膨大な音源を管理する難しさという問題が生じてきた
早い時期からネットオーディオに取り組んできた先進的なユーザーの多くは、経験を重ねながらそうした問題をなんとか解決し、ストレスなく音楽を楽しんでいます。とはいえ、そうしたハードルの高さに嫌気がさして、再びCDに戻ってしまうという人も少なくありませんでした。そんな消極的な理由でこれからもCDを使い続けようと考えるオーディオファンが存在することからも、いまのネットオーディオが抱える課題が浮かび上がってきます。
販売量が減り、ショップの数も限られているとはいえ、CDはまだまだ現役のパッケージメディアとして広く普及しています。プレーヤーについても、安価な製品が少なくなった面はあるものの、特に日本では良質なCDプレーヤーをいまでも購入することができます。ネットオーディオの本格的な普及が進むまで、CDは重要な音楽メディアの一つとして存続していくはずです。
⚫︎定額制音楽配信サービスの登場
リッピングとダウンロードを中心とする「第1段階のネットオーディオ」が市民権を得た頃(2012年頃)、ストリーミング方式の音楽配信が登場します。ストリーミング方式とは、聴きたい音源をアルバム単位や曲単位で購入するダウンロード方式ではなく、ネットワークにつないだオンラインの状態で音楽をリアルタイム再生するサービスで、手軽さもあって欧米を起点にして急速に普及が進みました。
無料または有料で音楽を好きなだけ聴けるストリーミングサービスは、ダウンロード方式の音楽配信とほぼ同時期に欧州でサービスが始まった『Spotify(スポティファイ)』がさきがけで、2010年代半ばから2020年前後にかけて北米や日本など他の地域にも普及が進みました。
その後アップルやアマゾンが相次いで参入したことで、同様なサービスはさらに規模を拡大し、近年は多くの地域でCDなどパッケージメディアの売り上げを上回るまでの成長を遂げていますが、問題もあります。続いては、ストリーミングサービスの抱えている問題を見てみましょう。
⚫︎ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう
CDをはるかに凌駕する音質で、話題になったネットオーディオ。初めてネットオーディオに挑戦するオーディオファン・音楽ファンを対象に機材の選び方から、煩わしいネットの設定まで具体的に分かりやすく解説します。
⚫︎ネットオーディオのすすめ 高音質定額制配信を楽しもう
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