世界初の革新 絶対に燃えない、レアメタルフリー 全固体ナトリウムイオン電池がすごかった
EnergyShift編集部 211125 より
蓄電池の世界で日本企業がイノベーションを起こした。蓄電池といえばリチウムイオン二次電池が全盛のいまの時代だが、それに代わる素材の模索もされてきた。その中で注目をされてきた一つがナトリウムイオン電池だ。
様々な長所を持つナトリウムイオン電池において、ブレークスルーを起こしたのが、大手ガラスメーカーの日本電気硝子である。世界初の革新とされる全固体ナトリウムイオン電池が、脱炭素時代においてどんな役割を果たすのか。ゆーだいこと前田雄大が解説する。
⚫︎ナトリウムイオン電池の特性とは
色々な長所を持つナトリウムイオン電池について,ブレークスルーを起こした日本電気硝子。11月18日、世界初となる全固体Na(ナトリウム)イオン電池を生み出したと発表した。
この技術は脱炭素時代に重要なブレークスルーとなる。そこで今回はまず、ナトリウムイオン電池の特性を紹介した上で、次の3つの論点について解説したい。
ー世界最大手の蓄電池メーカーとなった中国CATLも開発に乗り出した技術動向について
ーナトリウムイオン電池の課題とは
ー日本電気硝子が起こしたすごいブレークスルーとは
⚫︎ナトリウムイオン電池の特性とは
色々な長所を持つナトリウムイオン電池について,ブレークスルーを起こした日本電気硝子。11月18日、世界初となる全固体Na(ナトリウム)イオン電池を生み出したと発表した。
この技術は脱炭素時代に重要なブレークスルーとなる。そこで今回はまず、ナトリウムイオン電池の特性を紹介した上で、次の3つの論点について解説したい。
ー世界最大手の蓄電池メーカーとなった中国CATLも開発に乗り出した技術動向について
ーナトリウムイオン電池の課題とは
ー日本電気硝子が起こしたすごいブレークスルーとは
⚫︎まずは、ナトリウムイオン電池の特性から紹介していきたい。
今回取り上げることで、動作原理やセル構造が革新的かのようなイメージを与えてしまうかもしれないが、実はそれらについては、現在、主流となっているリチウムイオン二次電池と同様の形になっている。
リチウムイオン電池の場合、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極に炭素材料を用いるのが主流であり、構図としては、電池を充電すると、酸化により正極のリチウムイオンが引き抜かれ、有機溶媒である電解液を通り負極へ移動する。逆に電池を放電すると、負極からリチウムイオンが放出されて、正極に入る。このときの電荷の吸蔵・放出に伴う電位差が電圧となって取り出せるというのが仕組みだ。
ナトリウムイオン電池についても動作原理などの構図は基本的には同じだ。ナトリウム層状化合物を正極とし、電解液と正極の間でナトリウムイオンが移動することによって充放電が行われる仕組みである。リチウムイオン電池がリチウムイオンの移動であったのに対して、ナトリウムイオン電池はナトリウムイオンに変わる。
このように、リチウムイオン電池と基本構造が似ているというのがナトリウムイオン電池を語るときの一つポイントになる。というのも、現在、世界で流通しているリチウムイオン電池の製造装置の大部分を、ナトリウムイオン電池の生産に流用できるからだ。
この構図、酸化ガリウム半導体について解説したときに、酸化ガリウムが現在、全盛のシリコンの製造装置を使えるのが利点であると述べたが、やはり、生産ラインを大きく変えずに量産できる、というのは相当な強みになる。
では、なぜ、リチウムがあるのにナトリウムイオン電池を開発する必要があるのか。
そこは、日本には特に関係する論点になる。資源の問題だ。
⚫︎資源制約のないナトリウムが蓄電池業界に革新をもたらす
リチウムはレアメタルにも分類され、希少金属に入る。一方で、これからの脱炭素時代、再エネが増えれば増えるほど、その出力の不安定さを社会として平準化するために、何らかの形でエネルギーを固定化する必要が出てくる。そこで蓄電池や水素、という論点が出てくるのだが、目下、EV(電気自動車)の論点などもあり、蓄電池のイノベーションと競争が激しくなっている。
つまり、リチウムの確保が非常に重要になるということだ。既に資源獲得競争は起きている。日本は、完全に輸入国になるため、リチウム資源を獲得できるかどうかが死活問題になるわけだ。
ナトリウム電池に話を戻すと、このナトリウム電池、脱炭素時代の資源獲得競争において、最大の強みを発揮する格好となる。というのも、主原料のナトリウムの資源量は世界的に潤沢で地域的な分布にも偏りがないからだ。
ナトリウムについて、もしかするとなじみがない人もいるかもしれないが、例えば食塩などもナトリウム化合物だ。塩化ナトリウムといって塩素とナトリウムから出来ている。
このことからも分かるとおり、ナトリウムは、原料の塩が海水から採れ、さらには地殻中にも豊富に存在する。工業的な製造方法も確立されているので、安価で大量供給が可能な元素の一つ、ということで、この利点は非常に大きいわけだ。
日本も四方を海に囲まれており、いくらでもナトリウムを入手できるので、このナトリウムがリチウムの代わりを務めることが可能になると、蓄電池業界では革新的な話になる。
しかも、ナトリウムの利点はこれだけにとどまらない。東芝の「SCiB」という蓄電池の解説においてリチウムイオン電池の欠点として、低温時にリチウムイオン電池の性能が下がるという特性を紹介したが、この論点についてもナトリウムの方が優れており、使用可能な温度範囲が広い。そのため、寒冷地での使用もリチウムよりも適している。さらに、充電が速いというメリットもある。
非常に利点が多い電池がナトリウムイオン電池である。となると、中国が注目しないわけがない。既に世界最大手の蓄電池メーカーとなった中国CATLも開発に乗り出している。そこで次に、中国CATLの開発動向について、解説していきたい。
⚫︎世界最大の蓄電池メーカーもナトリウム電池開発に乗り出す
2021年7月、中国CATLはナトリウムイオン電池の商用化を開始するとオンラインで発表した。
CATLによれば、開発した第1世代のNIB(ナトリウムイオン電池)セルの重量エネルギー密度は160Wh/kgとのこと。
先日解説したソフトバンクの蓄電池でも触れたが、これからの脱炭素時代、密度は非常に重要な論点になる。3元系リチウムイオン電池(LIB)が同240~270Wh/kg、CATLの主力製品であるリン酸鉄(LFP)系LIBが同180~200Wh/kgであることを踏まえれば、まだまだこの数字は低い値にとどまっている。
ただ、さきほど利点としてナトリウムの方が充電に向くと述べたが、CATLによれば、やはり急速充放電性能は一般的なリチウムイオン電池より高く、15分で80%以上を充電できるとのこと。これはめちゃくちゃ利点になる。
また、低温性能についても、セ氏マイナス20度の低温環境でも定格容量の90%を利用できるともCATLは言っている。さらには、たとえセ氏マイナス40度といった極寒の環境でも電池として動作するとしていて、やはり寒さにはものすごく強いという特性を見せつけている。
短所、長所を述べた上で、ここからがCATLの工夫となる。
CATLはナトリウムイオン電池のいいところとリチウムイオン電池のいいところを引き出すために、LIBとNIBを並列に接続して1つのパッケージに集積した「ABバッテリーパックソリューション」も合わせて発表した。
どういうことかというと、要はEV向け蓄電池をNIBとLIBのハイブリッド構造にし、両電池を並列に接続することで、極低温時にLIBが動作しなくなってもNIBは動作し、走行を続けられる形にした。もちろん、充電の論点でもプラスは出るだろう。
タイムスパンだが、既にナトリウムイオン電池の産業化展開に着手していて、2023年には基本的な産業チェーンを形成する計画とのこと。
注目しているのは何もCATLだけではなく、中国政府も着目しており、中国工業情報化省もナトリウムイオン電池の規格構築に乗り出す方針を打ち出している。
やはり中国は、蓄電池やEVで世界をリードしていくつもりが満々な感じになっている。
ここまでナトリウムイオン電池の特徴や開発動向を解説してきたが、ナトリウムイオン電池の弱点も見えてきたので改めて整理をしたい。ナトリウムイオン電池の課題とは何か解説していこう。
⚫︎ナトリウムイオン電池の課題とは何か
そもそも、金属ナトリウムは、水に触れると激しく反応し、発火、爆発するリスクがある。それもあり、製造のしやすさや信頼性、安全性の面では大きな課題を抱えていた。もちろん、使用方法さえしっかりすれば、問題ない格好にはなるが、簡単な物質ではないということだ。
その上,リチウムイオン電池と比較すると,エネルギー密度が現状まだ低いという課題もある。
こうしたこともあり、電池業界では、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池ほど高いエネルギー密度が要求されない用途で普及が進むとの見方が主流になっている。具体的には、低価格の低速EV、再生可能エネルギーの蓄電設備、通信基地局のバックアップ電源などである。
加えて、寿命が短い、ともされている。蓄電池についてはEVで水冷式が導入されるなどして寿命が伸びてきているが、やはり継続利用を考えると、寿命という課題は克服する必要がある。
コストもかなり重要となる。もちろんこれから開発され、規模の経済が効いて来れば全く状況は変わってくるだろう。また長期でみれば、ナトリウムがどこにでもある資源であるという点で、最終的には強みに変わるだろうが、現状はまだリチウムイオン電池に比して高いとされている。
まだクリアしなければいけない課題は多くあるのだが、ただ、今回、日本電気硝子がやってくれたイノベーションがすごい。何がすごいのか。日本電気硝子のブレークスルーについて解説していきたい。
⚫︎日本電気硝子が実現したイノベーションの何がすごいのか
皆さん、全固体電池について、耳にされたことがあるのではないか。これはリチウムイオン電池の電解質部分を固体にしたもので、様々利点があり、次世代電池として注目を集めている。
今回、日本電気硝子が発表したのが、これのナトリウム版の全固体ナトリウムイオン二次電池である。具体的には、新たに結晶化ガラスを用いた負極材を開発し、結晶化ガラス正極、固体電解質と一体化した「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」の駆動に成功した、というものになる。
実は、日本電気硝子は、2017年11月に結晶化ガラスを正極材に用いた全固体ナトリウムイオン二次電池を試作し、室温駆動に成功したと発表をしている。
日本も四方を海に囲まれており、いくらでもナトリウムを入手できるので、このナトリウムがリチウムの代わりを務めることが可能になると、蓄電池業界では革新的な話になる。
しかも、ナトリウムの利点はこれだけにとどまらない。東芝の「SCiB」という蓄電池の解説においてリチウムイオン電池の欠点として、低温時にリチウムイオン電池の性能が下がるという特性を紹介したが、この論点についてもナトリウムの方が優れており、使用可能な温度範囲が広い。そのため、寒冷地での使用もリチウムよりも適している。さらに、充電が速いというメリットもある。
非常に利点が多い電池がナトリウムイオン電池である。となると、中国が注目しないわけがない。既に世界最大手の蓄電池メーカーとなった中国CATLも開発に乗り出している。そこで次に、中国CATLの開発動向について、解説していきたい。
⚫︎世界最大の蓄電池メーカーもナトリウム電池開発に乗り出す
2021年7月、中国CATLはナトリウムイオン電池の商用化を開始するとオンラインで発表した。
CATLによれば、開発した第1世代のNIB(ナトリウムイオン電池)セルの重量エネルギー密度は160Wh/kgとのこと。
先日解説したソフトバンクの蓄電池でも触れたが、これからの脱炭素時代、密度は非常に重要な論点になる。3元系リチウムイオン電池(LIB)が同240~270Wh/kg、CATLの主力製品であるリン酸鉄(LFP)系LIBが同180~200Wh/kgであることを踏まえれば、まだまだこの数字は低い値にとどまっている。
ただ、さきほど利点としてナトリウムの方が充電に向くと述べたが、CATLによれば、やはり急速充放電性能は一般的なリチウムイオン電池より高く、15分で80%以上を充電できるとのこと。これはめちゃくちゃ利点になる。
また、低温性能についても、セ氏マイナス20度の低温環境でも定格容量の90%を利用できるともCATLは言っている。さらには、たとえセ氏マイナス40度といった極寒の環境でも電池として動作するとしていて、やはり寒さにはものすごく強いという特性を見せつけている。
短所、長所を述べた上で、ここからがCATLの工夫となる。
CATLはナトリウムイオン電池のいいところとリチウムイオン電池のいいところを引き出すために、LIBとNIBを並列に接続して1つのパッケージに集積した「ABバッテリーパックソリューション」も合わせて発表した。
どういうことかというと、要はEV向け蓄電池をNIBとLIBのハイブリッド構造にし、両電池を並列に接続することで、極低温時にLIBが動作しなくなってもNIBは動作し、走行を続けられる形にした。もちろん、充電の論点でもプラスは出るだろう。
タイムスパンだが、既にナトリウムイオン電池の産業化展開に着手していて、2023年には基本的な産業チェーンを形成する計画とのこと。
注目しているのは何もCATLだけではなく、中国政府も着目しており、中国工業情報化省もナトリウムイオン電池の規格構築に乗り出す方針を打ち出している。
やはり中国は、蓄電池やEVで世界をリードしていくつもりが満々な感じになっている。
ここまでナトリウムイオン電池の特徴や開発動向を解説してきたが、ナトリウムイオン電池の弱点も見えてきたので改めて整理をしたい。ナトリウムイオン電池の課題とは何か解説していこう。
⚫︎ナトリウムイオン電池の課題とは何か
そもそも、金属ナトリウムは、水に触れると激しく反応し、発火、爆発するリスクがある。それもあり、製造のしやすさや信頼性、安全性の面では大きな課題を抱えていた。もちろん、使用方法さえしっかりすれば、問題ない格好にはなるが、簡単な物質ではないということだ。
その上,リチウムイオン電池と比較すると,エネルギー密度が現状まだ低いという課題もある。
こうしたこともあり、電池業界では、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池ほど高いエネルギー密度が要求されない用途で普及が進むとの見方が主流になっている。具体的には、低価格の低速EV、再生可能エネルギーの蓄電設備、通信基地局のバックアップ電源などである。
加えて、寿命が短い、ともされている。蓄電池についてはEVで水冷式が導入されるなどして寿命が伸びてきているが、やはり継続利用を考えると、寿命という課題は克服する必要がある。
コストもかなり重要となる。もちろんこれから開発され、規模の経済が効いて来れば全く状況は変わってくるだろう。また長期でみれば、ナトリウムがどこにでもある資源であるという点で、最終的には強みに変わるだろうが、現状はまだリチウムイオン電池に比して高いとされている。
まだクリアしなければいけない課題は多くあるのだが、ただ、今回、日本電気硝子がやってくれたイノベーションがすごい。何がすごいのか。日本電気硝子のブレークスルーについて解説していきたい。
⚫︎日本電気硝子が実現したイノベーションの何がすごいのか
皆さん、全固体電池について、耳にされたことがあるのではないか。これはリチウムイオン電池の電解質部分を固体にしたもので、様々利点があり、次世代電池として注目を集めている。
今回、日本電気硝子が発表したのが、これのナトリウム版の全固体ナトリウムイオン二次電池である。具体的には、新たに結晶化ガラスを用いた負極材を開発し、結晶化ガラス正極、固体電解質と一体化した「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」の駆動に成功した、というものになる。
実は、日本電気硝子は、2017年11月に結晶化ガラスを正極材に用いた全固体ナトリウムイオン二次電池を試作し、室温駆動に成功したと発表をしている。
正極材となる結晶化ガラスの軟化流動性を活用して、固体電解質として採用した高いイオン伝導性を持つβアルミナとの一体化を図り、イオン伝導性を高めたことによって当時「世界初」となる室温での駆動を実現したというもので、実績はあったわけだ。また、低温性能に優れるナトリウムイオンの特性をいかして、2020年には0℃での駆動にも成功したと発表をしている。
ちょこちょこと成功を収めてきていたのだが、先述したように金属ナトリウムは、水に触れると激しく反応し、発火、爆発するリスクがあり、報道によれば、日本電気硝子曰く、金属ナトリウムは正極や固体電解質の評価のためのあくまで暫定的な選択だったとのこと。
ただ、会社名に注目して欲しい。そう、この会社は、硝子を扱う会社だ。
今回、彼らは何を成し遂げたかというと、負極材料に結晶化ガラスベースのものを採用して、高い安全性を実現。そう、安全性の課題を見事克服してきた。
詳細は不明だが、なぜか、これまでは負極材に結晶化ガラスは用いられておらず、ナトリウムイオン電池において固体電解質との一体化を実現できていなかった。ただ、今回の「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」では、結晶化ガラスを用いた負極材を新開発することで、正極および負極と固体電解質との一体化に成功した上で「低温での駆動が可能」になった。
ちなみに、結晶化ガラス正極、固体電解質と一体化した「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」の駆動は、世界で初めての成功事例になる。
すごいのはここからだ。
まず安全性。こちらの図を改めてみていただきたいのだが、正極も結晶化ガラス、負極も結晶化ガラスで安定していて、その間に入っているのが固体電解質である。これらの電池材料が全て無機酸化物で構成されているのだが、これが本当にすごい。
先日のソフトバンクの蓄電池でも解説したが、有機化合物を使用するという特性からリチウムイオン電池はどうしても発火の恐れがある。EVの火災が起きていることも解説してきたが、電池の発火問題というのは必ず向き合わなければならない問題である。なぜ燃えるのか、それは「有機」だからだ。
つまり、無機ならその論点がない。そう先ほど述べたとおり、日本電気硝子の電池の素材は、全て無機酸化物で構成されている。つまり、燃えないわけだ。
使用時および製造時に発火や有毒物質発生の懸念がない、というのがこの電池の特性になる。釘やナイフが刺さっても発火や有害ガスの発生がない、ということはかなりすごい特性といえそうだ。
⚫︎絶対に燃えない、かつレアメタルフリー蓄電池が未来の扉を開く
そして、続いての特性だが、そもそも電池の特性が優れていると、日本電気硝子はしている。
曰く、
ガラスの軟化流動性を活用して正極および負極と固体電解質との一体化を図り、イオン伝導性を高めたことにより、 低温での駆動が可能。
固体電解質はイオン移動による劣化が小さくサイクル特性がよい。
シンプルな構造で、高電位系活物質の開発により,エネルギー密度の高い電池の作製が可能とのこと。
ちょこちょこと成功を収めてきていたのだが、先述したように金属ナトリウムは、水に触れると激しく反応し、発火、爆発するリスクがあり、報道によれば、日本電気硝子曰く、金属ナトリウムは正極や固体電解質の評価のためのあくまで暫定的な選択だったとのこと。
ただ、会社名に注目して欲しい。そう、この会社は、硝子を扱う会社だ。
今回、彼らは何を成し遂げたかというと、負極材料に結晶化ガラスベースのものを採用して、高い安全性を実現。そう、安全性の課題を見事克服してきた。
詳細は不明だが、なぜか、これまでは負極材に結晶化ガラスは用いられておらず、ナトリウムイオン電池において固体電解質との一体化を実現できていなかった。ただ、今回の「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」では、結晶化ガラスを用いた負極材を新開発することで、正極および負極と固体電解質との一体化に成功した上で「低温での駆動が可能」になった。
ちなみに、結晶化ガラス正極、固体電解質と一体化した「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」の駆動は、世界で初めての成功事例になる。
すごいのはここからだ。
まず安全性。こちらの図を改めてみていただきたいのだが、正極も結晶化ガラス、負極も結晶化ガラスで安定していて、その間に入っているのが固体電解質である。これらの電池材料が全て無機酸化物で構成されているのだが、これが本当にすごい。
先日のソフトバンクの蓄電池でも解説したが、有機化合物を使用するという特性からリチウムイオン電池はどうしても発火の恐れがある。EVの火災が起きていることも解説してきたが、電池の発火問題というのは必ず向き合わなければならない問題である。なぜ燃えるのか、それは「有機」だからだ。
つまり、無機ならその論点がない。そう先ほど述べたとおり、日本電気硝子の電池の素材は、全て無機酸化物で構成されている。つまり、燃えないわけだ。
使用時および製造時に発火や有毒物質発生の懸念がない、というのがこの電池の特性になる。釘やナイフが刺さっても発火や有害ガスの発生がない、ということはかなりすごい特性といえそうだ。
⚫︎絶対に燃えない、かつレアメタルフリー蓄電池が未来の扉を開く
そして、続いての特性だが、そもそも電池の特性が優れていると、日本電気硝子はしている。
曰く、
ガラスの軟化流動性を活用して正極および負極と固体電解質との一体化を図り、イオン伝導性を高めたことにより、 低温での駆動が可能。
固体電解質はイオン移動による劣化が小さくサイクル特性がよい。
シンプルな構造で、高電位系活物質の開発により,エネルギー密度の高い電池の作製が可能とのこと。
1つ目は、CATLもハイブリッド電池プラットフォームを作ったように、やはり低温性能というのはナトリウムイオン電池の特徴になる。この電池もそこは活かしてきた上に、さらに正極、負極、そして固体電解質の一体化が加わっているので、なおさら低温での駆動は進化するだろう。
そして、残り2つの特性だが、ここが個人的には意外だったのだが、先述したとおり、ナトリウムイオン電池の欠点は寿命とエネルギー密度。もちろんエネルギー密度は今後高めていく術はあるだろうが、この2つについて強みとして打ち出してきた、というのは期待ができそうだ。
もちろん、数値で今回示されているわけではないので、これからどう評価されるのか、見なければいけない。ただ、そもそも全固体電池は固体であるがゆえに長期に使っていくと固体電解質と負極活物質の間に隙間が生じてしまうため、寿命に難点があるとされてきた。ただでさえ、寿命が課題とされているナトリウムイオン電池で、かつ全固体であるため、
そして、残り2つの特性だが、ここが個人的には意外だったのだが、先述したとおり、ナトリウムイオン電池の欠点は寿命とエネルギー密度。もちろんエネルギー密度は今後高めていく術はあるだろうが、この2つについて強みとして打ち出してきた、というのは期待ができそうだ。
もちろん、数値で今回示されているわけではないので、これからどう評価されるのか、見なければいけない。ただ、そもそも全固体電池は固体であるがゆえに長期に使っていくと固体電解質と負極活物質の間に隙間が生じてしまうため、寿命に難点があるとされてきた。ただでさえ、寿命が課題とされているナトリウムイオン電池で、かつ全固体であるため、
寿命の限界に輪をかけそうだが、今後、ポイントになりそうなのが、正極と負極及び固体電解質の一体化だ。この点について、今後の動向を見ていきたい。
そして気になる実用性だが、今回開発された「全固体Naイオン二次電池」は出力電圧が3V。現行のリチウムイオン二次電池に匹敵する高い実用性を有するものになっている。
最後にポイントとなるのがナトリウムイオン電池の特性である資源の部分だ。今回はリチウムを使わないばかりか、この「全固体Naイオン二次電池」の技術に使われているのは、資源量の豊富なナトリウムや鉄が材料となっており、従来の電池技術で資源確保が問題とされているリチウムやコバルト、ニッケル等の希少金属元素を全く使っていない。
全く、というところがすごい。レアメタルフリーで、このすごい電池を作ってきた。
電池の性能評価については、これからだが、絶対に燃えない、かつ、レアメタルフリーの蓄電池。これは確実に未来の扉を開いてきた感じがする。
今回はこの一言でまとめたいと思う。 『おら、日本電気硝子の発明にわくわくがとまらねぇぞ!』
そして気になる実用性だが、今回開発された「全固体Naイオン二次電池」は出力電圧が3V。現行のリチウムイオン二次電池に匹敵する高い実用性を有するものになっている。
最後にポイントとなるのがナトリウムイオン電池の特性である資源の部分だ。今回はリチウムを使わないばかりか、この「全固体Naイオン二次電池」の技術に使われているのは、資源量の豊富なナトリウムや鉄が材料となっており、従来の電池技術で資源確保が問題とされているリチウムやコバルト、ニッケル等の希少金属元素を全く使っていない。
全く、というところがすごい。レアメタルフリーで、このすごい電池を作ってきた。
電池の性能評価については、これからだが、絶対に燃えない、かつ、レアメタルフリーの蓄電池。これは確実に未来の扉を開いてきた感じがする。
今回はこの一言でまとめたいと思う。 『おら、日本電気硝子の発明にわくわくがとまらねぇぞ!』