人間は永続する平和と安全をもたらせるか
ほんとうの希望は,現実でありまた真実である事がらに基づきます。偽りの希望は人びとを欺き,真の希望に対して盲目にならせるにすぎません。
わたしたちが今直面しているような危機の時代にあって,偽りの希望は人の命を奪うものとさえなります。
それゆえ,わたしたちは自問してみることが必要です。ほんとうの平和と安全をもたらすために解決しなければならない問題がどれほど大きいかを,わたしたちははっきり認識しているでしょうか。
事態がどこまで切迫しているかを悟っているでしょうか。人間の持つ解決策が,果たさねばならない仕事の膨大さに対応しうるものであるという,どんな実際の証拠を得ているでしょうか。
また,世界の指導者にも神にも同時に頼ることができるのかという問題にも答えなければなりません。そうすることができると信じる人たちがいます。
そうした人びとは,永続する平和をもたらそうとする今日の人間の努力には神の後ろだてがあると信じています。しかし,ほんとうにそうでしょうか。多くの事が関係していますから,
事実を検討してみるのがよいでしょう。
恐怖と切迫感に促された行動
幾千年もの間,人間は永続する平和と安全を求めながら成功してきませんでした。しかし,今や生じた新しい事態のゆえに,人間はこの問題と取り組んで成功できると信じる人びとが多くいます。
その新しい事態とはなんですか。
それは,世界平和か世界の自殺かのいずれかを決定しなければならないということを,世界の指導者が初めて認めるようになったという点です。
彼らは,核の全面戦争があまりにも壊滅的であるために勝者は存在しえず,ただ敗者のみであろうという点で同意しています。それだけではありません。
多くの人,特に科学者は,全世界的な汚染から来るさらに大きな危険が存在すること,また“人口爆発”とそれに伴う広範囲な飢きん,病気,社会不安の脅威を指摘します。
そして,世界規模の災厄を回避するためには,すべての国の人びとによる全地球的な行動が必要であるが,そのための時間も尽きつつある,という点を述べます。
アメリカ,ワシントン特別区からの一報道はこう伝えています。
「アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリア,スウェーデン,チェコスロバキア,ソ連,インド,日本など異質の国々において,その国の指導的な人びとが,
人間のこれまでの経験に類例のない危険が差し迫っていることをにわかに意識するようになった。未来学者はそれを,危急中の危急,人間の限りない過誤の頂点と呼ぶ」
( ワシントン・ポスト紙)
これらの人びとは,人類がたとえこうした危機を一時に一つは乗り越えることができたとしても,もしすべてが,あるいはその幾つかであっても,同時に襲うなら,
もはや生き残りえないということを認めています。
しかし,問題は,災厄に対する恐怖がほんとうに人類を転じさせ,不一致と抗争から,真の平和と安全の道に至らせるであろうか,という点です。
人間の努力によって戦争のない世界? へ続く>>>