伊佐子のPetit Diary

何についても何の素養もない伊佐子の手前勝手な言いたい放題

ブラック・ジャック展

2024年09月08日 | 展覧会・絵

手塚治虫「ブラック・ジャック」の展覧会が
美術館「えき」KYOTOで開かれていたので行って来た。




手塚治虫の漫画の中でも人気作品である「ブラック・ジャック」、
東京からの巡回で、
展示はブラックジャックの生原稿・原画を中心に展開されていた。
(今回は展示品の写真撮影は禁止。
但し美術館へ通じる通路のパネルは撮影OKだった)






パネルは沢山あり、手あたり次第写真に撮った。



美術館えきKYOTO
https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/
Museum「EKi」KYOTO ジェイアール京都伊勢丹7階隣接

https://kyoto.wjr-isetan.co.jp/museum/exhibition_2407.html
連載50周年記念
手塚治虫ブラック・ジャック展
50th Anniv. Tezuka Osamu’s BLACK JACK Exhibition
2024.9.1日 - 10.6 日

なんと連載から50年になるという。
思ったより生原稿の展示が多く、
ほぼブラックジャックの膨大な生原稿で埋め尽くされていた。
各エピソードごとに2ページ、もしくは4ページの原画が展示されていた。
その前後の話が分かるようにパネルでおおまかな粗筋も展示。

つい読んでしまい、時間がかかった(>_<)。
見終わるのに2時間くらいかかった。
最近の展覧会でこんなに時間がかかったことはなかった。






「ブラック・ジャック」はコミックスで揃えていたと思うが、
もしかしたら抜けがあったかもしれない。
グッズ売り場には全25巻くらいあった。



展示は虫プロ倒産、というスキャンダラスな逸話から始まる。
劇画が当時の漫画界を席巻し、手塚の漫画は古い、
手塚ヒューマニズムはぬるい、という風潮の中、
虫プロが倒産、借金に追われ自宅を手放し、
手塚治虫はどん底にいた━

当時の少年チャンピオンの編集者のインタビューが、
大きなモニターの映像で流れている。
「手塚の死に水を取る」つもりでブラックジャックの連載を持ちかけた、と。

モニターは他に手塚治虫の長男・手塚真と
長女・手塚ルミ子の映像が流れていた。

手塚真によると、家を手放した時、
一家で狭いアパートに引っ越すのかと思ったが、
一戸建てで庭もあった、のでひもじい思いはなかった、とか。




NHK大阪のローカル番組「ぐるかん」(ぐるっと関西お昼まえ)で
「ブラックジャック展」が紹介されていた。
なんと、その手塚真がゲストで解説していた。
(いっばい裏話が聞けて良かった
真さんも本籍は宝塚にある、とか)

・手塚はほとんど家に帰らず、ずっと制作スタジオにこもりっきりだった。

・「ブラック・ジャック」の連載が始まった時は中学生で、
毎週楽しみにしていた。

これによると手塚真は手塚治虫を父親というより、
漫画家として作品を楽しみに読んでいたようだ。

そして手塚の話を作る能力がすごい、と。
ブラックジャックだけで200話以上あるが、
ひとつの作品で言うと700くらいの漫画を描き、
ひとつひとつの漫画についてエピソードもあるから
全部で数千のお語を作った、と。

手塚自身、アイデアはバーゲンセールに出すほどある、と言っていた。
それくらい物語を生み出す能力があった。
彼の頭の中は一体どうなっていたのだろうと思う。
話を作るのが時に上手すぎる。
だから予定調和すぎたり手軽なヒューマニズムに寄り過ぎたりもした。
手塚は多作だった。
だから名作も多いが駄作も多かった。

「冬の時代」であったどん底の時代は本人が述懐している通り陰惨で、
グロテスクに偏った作品もあった。

「ブラック・ジャック」の連載が始まり、徐々に評価されてゆくと、
それが手塚復活のきっかけとなったのだった。








手塚真はそれまで医者が主人公の少年漫画はなかった、と言っていた。
確かに(青年向けはともかく)少年漫画、子供向け漫画は、
スポーツ選手のヒーローやSFアクションのヒーローなど、
ヒーローものが多かった。
大人の男性が主人公になることも珍しかった。
当時、医者という職業を少年漫画の主人公にしたことは画期的だった。

「ブラック・ジャック」以降、医者が主人公の漫画が増えたり、
様々な職業の人物が主人公として描かれるようになったのは、
「ブラック・ジャック」の影響ではないか、と思っている。








さて「ブラック・ジャック展」では手塚治虫の医師免許も展示されていた。
賞状で、手塚治と書かれていた。

そして医学生時代の顕微鏡を覗いて描いたスケッチも。
それが後年のブラック・ジャックの医療場面に生きて来るのだと思った。


生原稿は思っていたより小さかった。
少年雑誌の大きさより2割くらい大きいと思っていたが、
雑誌と同じような大きさだった。
小さいコマの中にとても丁寧にキャラクターが描かれている。



手塚真の言っていた通り、線描がとても美しい。
キャラクターを描く線が自在の太さで、
どことなく雪舟の筆遣いを思わせた…。

背景やベタ部分はアシスタントの仕事だろうが、
どこまで手塚の手が入っているのだろう、
キャラクター自体はすべて手塚の手によるものだと思うが、
漫画家の描く線は原画を見るとその美しさがよりはっきりと分かる。


そして手術場面のリアリティも実感したが、
あの内臓などを正確に描いた手術場面も
当然手塚自身の手によるものだっただろうから恐るべし。





しかし展示を見ているうち、つい読んでしまい、
ああこのエピソード、あったなあ、とか
このエピソードは好きだった、とか、
ついつい物語に引き込まれてしまい、
夢中になり時間をかけて読んでしまった。


宇宙人が登場するエピソードなどは突飛な発想なので、
きわ物になりがちな所を人情ものにまとめるなど、
手塚のストーリテラーぶりが発揮されていたと思う。

それと登場人物の動かし方のうまさ。
手術代金を値切りつづけるケチなキャラクターによって
(この手術は別料金か?と聞いたり💦)、
よりブラック・ジャックの思想が浮かび上がる仕掛けだったり。







手塚マンガの中でも、
ブラック・ジャックに焦点を当てた展覧会が開かれるということは、
それだけ人気があることでもあるだろうが、
恐らくリアルタイムでは読んだことのない若者に向け、
手塚マンガを体験してもらいたいという思いもあったのかもしれない。

手塚プロダクションの労力を総結集した膨大な生原稿の数々と
パネル内容の選択に熱意を感じることが出来た。







グッズ売り場では久しぶりに展覧会グッズを買った。
ブラック・ジャックのマスクケース大のマルチケースとキーホルダー。
クリアファイルは売ってなかったのでマルチケースにした




ぐるかんで手塚真が言っていた、
ドクター・キリコとのからみで京都が登場する、
というのを展示を見ているうちすっかり忘れてしまっていた(>_<)。
会期中にもう一度行ってみようかなあ💦。
今度こそ、読むより絵を堪能したいので…。






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