Dr. Jason's blog

IT, Engineering, Energy, Environment and Management

不適切高価格と高付加価値のパラレルワールド

2006-02-14 | Business
 カリフォルニア在住の知人である八木博士の2006/2/12のblogに,スマートなデザインの家具等で有名なスウェーデンのIKEA社の紹介があった.

 その中に以下のような記述がある.少し長いが引用する:
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コスト低減で思うこと

私は以前いた会社で、米国の大手化学メーカーとの合弁事業締結を担当したことがあったが、その時に米国企業は常に価格ダウンで競争力確保という戦略に固執していた。 私のいた会社は、高付加価値、高価格戦略を掲げていた。 米国の会社との議論は、高機能高価格は、非現実的であると認めれば、合弁をしようというところまできたが、当時のTOP判断で、そこまでの妥協ができずに、話は流れてしまった。 日本の会社の癖であるが、高機能高価格は日本のマーケットでのみ通用する特殊な論理であると思う。 だれでも、いらないお金は使いたくないのである。 ビルゲイツもずいぶん長いこと格安チケットで飛び回っていたという。それにしても、世界展開をしている起業の考え方に学ばされることは多いが、今年の、IKEAの日本での展開は注目に値する。
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 この「高付加価値、高価格戦略」というのは,非常に多面的な意味を持つキーワードであると思う.


 まず,日本のマーケットの歪さについて自覚が必要であろう.
 日本では,中流の人々の経済力が中途半端に高いため,様々な日常品や日常的なサービスが世界的にみても非常に高い価格て提供されている.
 しかし,日本では,それが世界的にみて多少高くても「買えてしまう」のである.
 また,非専門家の人件費も,世界的にみて非常に高い.セブンイレブンやマクドナルドのアルバイトで,大学生が 10.00USD/H 稼げるのは,おそらく日本だけだ.
 しかし,一方で,専門家によるサービスや専門家の人件費は,欧米ほど高くはない.
 普段,日本の中にいると,これらのことには気がつかない.


 この日本のマーケットの歪さとは全く別に,どのような業界にも,プロを相手にする製品やサービス,ハイエンドのユーザを相手にする製品やサービスというものがある.そのようなマーケットは,一般にはそれほど大きくはないが,確実に「ニッチ」な市場として存在していて,そこでは,高品質,高性能,高ブランド力等の高付加価値がバリューであり,価格競争力はあまり重要ではない.
 例えば,日本の輸入車市場は,世界一多くの自動車メーカーを国内にもちながら,メルセデスやBMWの高級輸入車販売の台数が,より大衆的で大きな生産量をもつVWよりも多いという,特異なマーケットである.
 日本では,中流の人々の一部も(他の国では収入のバランスから考えられないほどの範囲で),このような高付加価値マーケットのユーザ層を構成している.これは,他の先進国では存在しないユーザ層である.

 これらのことを,はっきりと意識してマーケティングできているのは,そのほとんが日本の企業ではなく,主にブランド品,ハイエンド商品を日本に輸入販売している海外の企業である.


 日本では,この二つの世界が,パラレルワールドのように,同時に存在しているのだ.
 
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日本のコンピュータ生誕50周年記念シンポジウム

2006-02-14 | Informatics
 日本の代表的な情報系の学会である, 情報処理学会 は,1960年の設立で,今年で45周年である.また,今年は,1956年に日本最初の電子計算機 (富士フィルムの岡崎文次らによるFUJIC) が誕生してから50年目の年でもある.

 情報処理学会では,創立45周年記念イベントの一つとして 日本のコンピュータ生誕50周年記念シンポジウム を開催する.


「日本のコンピュータ生誕50周年記念シンポジウム」

開催日時:
 2006年3月7日(火) 13:00-17:15 [12:30開場]
 
開催会場:
 工学院大学 新宿キャンパス高層棟3F アーバンテックホール(東京都新宿区西新宿1-24-2)

特別講演:
 「情報学的転回とは何か」
 西垣 通 (東京大学 大学院 情報学環 教授)

基調講演:
 「ユニバーサル・コミュニケーションの時代 -充実した情報空間の建設に向けて-」
 長尾 真 (独立行政法人 情報通信研究機構 理事長,元京都大学総長)


パネル討論: 「日本のIT産業の未来を創る」
 司   会:吉澤 康文(農工大)
 パネリスト:
  日本のIT産業が生き残り、発展するためには   青山 幹雄(南山大学)
  中高大の教育の中で「情報」をどう扱っていくか 筧 捷彦(早稲田大学)
  工学系大学生・若手研究者への期待       大堀 淳(東北大学)


 このシンポジウムは,会員外もで参加可能であり,なんと参加費無料である.


 特別講演の西垣先生の著作は 2005/12/30のblog でも紹介した.


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