某大学での「環境安全工学」の2007年度講義の2回目.
以下について,説明した.
安全と危険とリスク
安全とは何か?
危険でないこと
安心な状態
===> 本当は,安心感があっても安全でないことは多い
危険とは何か?
デンジャー(denger) 一般的な危険
ハザード(hazzard) 人間が大切にしているものを脅かすもの
リスク(risk) ハーザードに出くわす確立とダメージの大きさ
ペリル(peril) 真の危険の原因
リスク
ポジティブリスク,ネガティブリスク
国際規格でのリスクの定義
ISO, IEC 各種規格
===> JIS だけをあてにしてはならない.
電気機械類の安全の国際規格
IEC 61508
安全のイメージ
安全についての考え方
日本 「絶対的な理想」「安全神話」
欧米、国際規格 ある程度の危害を許容している。
安全についての考え方は、人によって色々違う。(環境や社会によっても違う)
自然環境
歴史
宗教
教育
文系 vs 理系
日本の官僚や政治家には文系の人が多い
文系の人の数学、科学や工学についての
知識は高校半ばでストップしている。
国際安全規格での考え方(ISO/IEC ガイド 51 1998の改訂案)
「安全」とは、
「受け入れ不可能なリスクがないこと」
"freedom from unacceptable risk"
リスク:= 被災の可能性 x ダメージの酷さ
被災の可能性: 確率
ダメージの酷さ: 重大度
機械・システムの安全性への様々な攻撃
日本と欧米の「安全」
日本 理想主義。精神的指向。根性!!
欧米 現実主義。数理的指向。合理的。
日本 技術対策よりも人の対策を優先。
欧米 人の対策よりも技術対策を優先。
日本 管理体制を作り、人の教育訓練をし、
規制を強化すれば安全を確保できる。
欧米 人は必ず間違いを犯すものであるから、
技術力の向上がなければ安全の確保ができない。
日本 災害が発生するたびに、規制を強化。
欧米 災害のひどさ低減化技術の努力。
日本 安全は基本的に、タダである。
欧米 安全は基本的に、コストがかかる。
日本 みつけた危険をなくす技術。===>モグラたたき型
欧米 論理的に安全を立証する技術。
日本 度数率(発生件数)の重視
欧米 強度率(重大災害)の重視
日本 信頼技術と人の教育・訓練に依存した安全
欧米 人はミスを犯す、人のミスの方が機械の故障より
可能性が高い。事故防止は可能な限り人に依存せず、
さらに、人のミスより可能性の低い機械の故障に
対してさえも、いずれ必ず故障が発生することを前提
として、安全性の立証できる技術を開発してきた。
トラブルの確率とパターン
事故や災害の確率
ハインリッヒの法則 1:29:300の法則 労働災害における経験則
致命的な失敗は,氷山の一角にすぎない.
ゴキブリの法則 1:3~20 ソフトウェアのバグの発見率
高度技術集約型システム
技術そのものの見落とし
オーストリアのケーブルカートンネル火災
2000/11/11
http://fiveone.com/visionworks-news/articles/20040219kaprun.shtml
ヒューマンファクターの落とし穴
名古屋空港の中華航空機エアバス墜落事故
1994/4/26
経済優先の落とし穴
スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発
1986/1/28
高度技術集約型システムの事故の確率
1:29:300 ==> 1:2:10
ハイテクで日常的な小事故は減少する
予想しなかった大事故はハイテクでは防げない
労働集約型技術システム
建築現場,医療事故,情報システム,交通事故等
都市構造技術システム
地震災害 阪神淡路大地震
水害 都市化による水害
風害 台風、突風
洞爺丸遭難、余部鉄橋転落、東西線脱線
火災 新宿歌舞伎町雑居ビル火災
ロンドン地下鉄火災
交通災害 東名日本坂トンネル事故
タンクローリー店頭火災
大きな組織でのシステムの落とし穴
決定権を持つ者が,科学,工学,専門技術を知らない
官庁,政府機関,国立研究機関,大企業
特に,官庁,政府機関で,その傾向が強い
=>日本では,高度に技術的なシステムを扱う組織でも
文系の者を責任者にする場合が多い
現場に近いところにいる専門家に組織上の権限がない
年功序列の弊害,専門家の軽視
関係者間での情報共有が不十分である
所属組織,部門間の壁が大きい
=> 「村社会」的風習
問題解決と責任の明確化が切り分けられない
問題解決を促進するための仕掛けの欠如
責任ある立場の者が責任をとらない
組織内における責任のなすり合い
=>論理的手法,科学的手法で,組織が動かない
安全性,信頼性の向上よりも,予算管理を優先する
安全に関する認識が甘い
安全のTips
電車の事故と脱線.
JR 福知山線事故 (2005/4/25) 事例
被害者
死者 107名
運転士 1名
1両目 42名
2両目 57名
3両目 3名
乗車車両不明 4名
一般的にも,先頭から3両目までは,大きな被害を受ける確率が高い.
教科書
この回の講義の参考書
以下について,説明した.
安全と危険とリスク
安全とは何か?
危険でないこと
安心な状態
===> 本当は,安心感があっても安全でないことは多い
危険とは何か?
デンジャー(denger) 一般的な危険
ハザード(hazzard) 人間が大切にしているものを脅かすもの
リスク(risk) ハーザードに出くわす確立とダメージの大きさ
ペリル(peril) 真の危険の原因
リスク
ポジティブリスク,ネガティブリスク
国際規格でのリスクの定義
ISO, IEC 各種規格
===> JIS だけをあてにしてはならない.
電気機械類の安全の国際規格
IEC 61508
安全のイメージ
安全についての考え方
日本 「絶対的な理想」「安全神話」
欧米、国際規格 ある程度の危害を許容している。
安全についての考え方は、人によって色々違う。(環境や社会によっても違う)
自然環境
歴史
宗教
教育
文系 vs 理系
日本の官僚や政治家には文系の人が多い
文系の人の数学、科学や工学についての
知識は高校半ばでストップしている。
国際安全規格での考え方(ISO/IEC ガイド 51 1998の改訂案)
「安全」とは、
「受け入れ不可能なリスクがないこと」
"freedom from unacceptable risk"
リスク:= 被災の可能性 x ダメージの酷さ
被災の可能性: 確率
ダメージの酷さ: 重大度
機械・システムの安全性への様々な攻撃
日本と欧米の「安全」
日本 理想主義。精神的指向。根性!!
欧米 現実主義。数理的指向。合理的。
日本 技術対策よりも人の対策を優先。
欧米 人の対策よりも技術対策を優先。
日本 管理体制を作り、人の教育訓練をし、
規制を強化すれば安全を確保できる。
欧米 人は必ず間違いを犯すものであるから、
技術力の向上がなければ安全の確保ができない。
日本 災害が発生するたびに、規制を強化。
欧米 災害のひどさ低減化技術の努力。
日本 安全は基本的に、タダである。
欧米 安全は基本的に、コストがかかる。
日本 みつけた危険をなくす技術。===>モグラたたき型
欧米 論理的に安全を立証する技術。
日本 度数率(発生件数)の重視
欧米 強度率(重大災害)の重視
日本 信頼技術と人の教育・訓練に依存した安全
欧米 人はミスを犯す、人のミスの方が機械の故障より
可能性が高い。事故防止は可能な限り人に依存せず、
さらに、人のミスより可能性の低い機械の故障に
対してさえも、いずれ必ず故障が発生することを前提
として、安全性の立証できる技術を開発してきた。
トラブルの確率とパターン
事故や災害の確率
ハインリッヒの法則 1:29:300の法則 労働災害における経験則
致命的な失敗は,氷山の一角にすぎない.
ゴキブリの法則 1:3~20 ソフトウェアのバグの発見率
高度技術集約型システム
技術そのものの見落とし
オーストリアのケーブルカートンネル火災
2000/11/11
http://fiveone.com/visionworks-news/articles/20040219kaprun.shtml
ヒューマンファクターの落とし穴
名古屋空港の中華航空機エアバス墜落事故
1994/4/26
経済優先の落とし穴
スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発
1986/1/28
高度技術集約型システムの事故の確率
1:29:300 ==> 1:2:10
ハイテクで日常的な小事故は減少する
予想しなかった大事故はハイテクでは防げない
労働集約型技術システム
建築現場,医療事故,情報システム,交通事故等
都市構造技術システム
地震災害 阪神淡路大地震
水害 都市化による水害
風害 台風、突風
洞爺丸遭難、余部鉄橋転落、東西線脱線
火災 新宿歌舞伎町雑居ビル火災
ロンドン地下鉄火災
交通災害 東名日本坂トンネル事故
タンクローリー店頭火災
大きな組織でのシステムの落とし穴
決定権を持つ者が,科学,工学,専門技術を知らない
官庁,政府機関,国立研究機関,大企業
特に,官庁,政府機関で,その傾向が強い
=>日本では,高度に技術的なシステムを扱う組織でも
文系の者を責任者にする場合が多い
現場に近いところにいる専門家に組織上の権限がない
年功序列の弊害,専門家の軽視
関係者間での情報共有が不十分である
所属組織,部門間の壁が大きい
=> 「村社会」的風習
問題解決と責任の明確化が切り分けられない
問題解決を促進するための仕掛けの欠如
責任ある立場の者が責任をとらない
組織内における責任のなすり合い
=>論理的手法,科学的手法で,組織が動かない
安全性,信頼性の向上よりも,予算管理を優先する
安全に関する認識が甘い
安全のTips
電車の事故と脱線.
JR 福知山線事故 (2005/4/25) 事例
被害者
死者 107名
運転士 1名
1両目 42名
2両目 57名
3両目 3名
乗車車両不明 4名
一般的にも,先頭から3両目までは,大きな被害を受ける確率が高い.
教科書
機械安全工学―基礎理論と国際規格清水 久二,福田 隆文養賢堂このアイテムの詳細を見る |
この回の講義の参考書
安全と安心の科学 (集英社新書)村上 陽一郎集英社このアイテムの詳細を見る |
よくわかるリスクアセスメント―事故未然防止の技術 (中災防新書 (014))向殿 政男中央労働災害防止協会このアイテムの詳細を見る |
リスクマネジメントの法律知識 第2版 (日経文庫 D 20)長谷川 俊明日本経済新聞出版社このアイテムの詳細を見る |
国際化時代の機械システム安全技術安全技術応用研究会,向殿 政男日刊工業新聞社このアイテムの詳細を見る |
安全学の現在―村上陽一郎対談集村上 陽一郎青土社このアイテムの詳細を見る |
国産ロケットはなぜ墜ちるのか松浦 晋也日経BP社このアイテムの詳細を見る |