Dr. Jason's blog

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講義 環境安全工学 2007-2

2007-10-08 | Mech Eng
 某大学での「環境安全工学」の2007年度講義の2回目.

 以下について,説明した.

 安全と危険とリスク
  安全とは何か?
   危険でないこと
   安心な状態
    ===> 本当は,安心感があっても安全でないことは多い

  危険とは何か?
   デンジャー(denger) 一般的な危険
   ハザード(hazzard) 人間が大切にしているものを脅かすもの
   リスク(risk)   ハーザードに出くわす確立とダメージの大きさ
   ペリル(peril)  真の危険の原因

  リスク
   ポジティブリスク,ネガティブリスク

  国際規格でのリスクの定義
   ISO, IEC 各種規格
   ===> JIS だけをあてにしてはならない.

  電気機械類の安全の国際規格
   IEC 61508
  
 安全のイメージ
  安全についての考え方
   日本 「絶対的な理想」「安全神話」
   欧米、国際規格 ある程度の危害を許容している。
  安全についての考え方は、人によって色々違う。(環境や社会によっても違う)
   自然環境
   歴史
   宗教
   教育
   文系 vs 理系
    日本の官僚や政治家には文系の人が多い
    文系の人の数学、科学や工学についての
    知識は高校半ばでストップしている。

  国際安全規格での考え方(ISO/IEC ガイド 51 1998の改訂案)
  「安全」とは、
   「受け入れ不可能なリスクがないこと」
    "freedom from unacceptable risk"

  リスク:= 被災の可能性 x ダメージの酷さ
    被災の可能性:  確率
    ダメージの酷さ: 重大度

  機械・システムの安全性への様々な攻撃


  日本と欧米の「安全」
   日本  理想主義。精神的指向。根性!!
   欧米  現実主義。数理的指向。合理的。

   日本  技術対策よりも人の対策を優先。
   欧米  人の対策よりも技術対策を優先。

   日本  管理体制を作り、人の教育訓練をし、
       規制を強化すれば安全を確保できる。
   欧米  人は必ず間違いを犯すものであるから、
       技術力の向上がなければ安全の確保ができない。

   日本  災害が発生するたびに、規制を強化。
   欧米  災害のひどさ低減化技術の努力。

   日本  安全は基本的に、タダである。
   欧米  安全は基本的に、コストがかかる。

   日本  みつけた危険をなくす技術。===>モグラたたき型
   欧米  論理的に安全を立証する技術。
 
   日本  度数率(発生件数)の重視
   欧米  強度率(重大災害)の重視

   日本  信頼技術と人の教育・訓練に依存した安全
   欧米  人はミスを犯す、人のミスの方が機械の故障より
       可能性が高い。事故防止は可能な限り人に依存せず、
       さらに、人のミスより可能性の低い機械の故障に
       対してさえも、いずれ必ず故障が発生することを前提
       として、安全性の立証できる技術を開発してきた。
  

 トラブルの確率とパターン
  事故や災害の確率
   ハインリッヒの法則  1:29:300の法則 労働災害における経験則
   致命的な失敗は,氷山の一角にすぎない.
   ゴキブリの法則  1:3~20 ソフトウェアのバグの発見率

  高度技術集約型システム
   技術そのものの見落とし
    オーストリアのケーブルカートンネル火災
    2000/11/11
    http://fiveone.com/visionworks-news/articles/20040219kaprun.shtml

   ヒューマンファクターの落とし穴
    名古屋空港の中華航空機エアバス墜落事故
    1994/4/26

   経済優先の落とし穴
    スペースシャトル「チャレンジャー号」爆発
    1986/1/28

  高度技術集約型システムの事故の確率
   1:29:300 ==> 1:2:10
   ハイテクで日常的な小事故は減少する
   予想しなかった大事故はハイテクでは防げない

  労働集約型技術システム
   建築現場,医療事故,情報システム,交通事故等

  都市構造技術システム
   地震災害 阪神淡路大地震
   水害  都市化による水害
   風害  台風、突風 
       洞爺丸遭難、余部鉄橋転落、東西線脱線
   火災  新宿歌舞伎町雑居ビル火災
       ロンドン地下鉄火災
   交通災害 東名日本坂トンネル事故
        タンクローリー店頭火災

   
  大きな組織でのシステムの落とし穴
   決定権を持つ者が,科学,工学,専門技術を知らない
   官庁,政府機関,国立研究機関,大企業
   特に,官庁,政府機関で,その傾向が強い
    =>日本では,高度に技術的なシステムを扱う組織でも
    文系の者を責任者にする場合が多い
   
   現場に近いところにいる専門家に組織上の権限がない
    年功序列の弊害,専門家の軽視

   関係者間での情報共有が不十分である
    所属組織,部門間の壁が大きい
    => 「村社会」的風習   

   問題解決と責任の明確化が切り分けられない
    問題解決を促進するための仕掛けの欠如
    責任ある立場の者が責任をとらない
    組織内における責任のなすり合い
    =>論理的手法,科学的手法で,組織が動かない

   安全性,信頼性の向上よりも,予算管理を優先する
    安全に関する認識が甘い


 安全のTips
  電車の事故と脱線.
  JR 福知山線事故 (2005/4/25) 事例
  被害者
   死者 107名
   運転士 1名
   1両目 42名
   2両目 57名
   3両目 3名
   乗車車両不明 4名

  一般的にも,先頭から3両目までは,大きな被害を受ける確率が高い.



 教科書
機械安全工学―基礎理論と国際規格
清水 久二,福田 隆文
養賢堂

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 この回の講義の参考書
安全と安心の科学 (集英社新書)
村上 陽一郎
集英社

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よくわかるリスクアセスメント―事故未然防止の技術 (中災防新書 (014))
向殿 政男
中央労働災害防止協会

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リスクマネジメントの法律知識 第2版 (日経文庫 D 20)
長谷川 俊明
日本経済新聞出版社

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国際化時代の機械システム安全技術
安全技術応用研究会,向殿 政男
日刊工業新聞社

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安全学の現在―村上陽一郎対談集
村上 陽一郎
青土社

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国産ロケットはなぜ墜ちるのか
松浦 晋也
日経BP社

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