ご存じ、内田康夫のシリーズ。
今回は、棄霊島。
長崎県端島。所謂軍艦島。世界遺産に申請したとか、ニュースかドキュメンタリーでか見た。
ここがそもそもの舞台。戦後の混乱期に始まる事件。
北朝鮮による拉致問題や、閣僚による靖国神社参拝とそれに対する中韓の反発など、
幅広く扱っている。
東京裁判でA級戦犯である東条英機に対する作者の想い。B,C級戦犯でありながら
映画「私は貝になりたい」のように平凡に床屋のオヤジとして市井に暮らしを営んでいた男が
召集令状、いわゆる「赤紙」で戦地に送られる。上官の命令で「敵国人」を殺した罪に
問われ、死刑となる。
死んだら「靖国で会おう」と言って戦場に赴いた特攻隊員。
などなど、いろいろな事柄を、浅見光彦に語らせているが作者の想いであることは明白。
今でも「東京裁判」は戦勝国による裁判で裁かれたものは「被害者」と言う向きもある。
裁判記録を読んでいないから、何が裁かれたのか全く分からない。
最高責任者と言うならば天皇であろう。
戦前の憲法では、天皇に軍隊の統帥権があった。
戦後の世界情勢を鑑みた占領軍が天皇を遺すのが得策と見た結果であることは、
歴史学者の大方の見方。
100事件目、ということで戦後の昭和史を俯瞰するような作品となっている。
毎回の事件で登場する「光彦」に想いを寄せる女性が登場するが、
今回は「光彦」も惹かれていく展開。
最後は、光彦曰く「寅さん」と同じだなあ、で締めるのだろう。