もう一月過ぎたかと思うくらいいろいろあってフィギュアのこともなかなか整理出来てませんが(笑)。カナダのロンドンで開催されたフィギュアスケートの世界選手権では、期待の浅田真央、高橋大輔が不完全さが出てしまって期待通りの結果が出ませんでしたが、そこでつのる審判への不審の眼。男女とも一位となった選手へのジャッジの評価の不審。
素人にも感じられる異常な採点の根拠は何か?
誰も説明できないようです。
私は、ジャッジの採点表から点数をグラフにして、何が起こったのかを目で見えるようにしました。
ジャンプの場合は割と明確な判断が出来、しかしGOEの加点が納得性がないことが良く話題になっています。GOEは映像でもすぐに比較が出来るので議論し易いですね。
残り半分の点数であるPCS: Program Component Scoreについては、選手やコーチも何で上下するか分からないと言う話を見聞きします。ジャンプなどエレメンツを失敗すると影響するらしいけれど、どうしたら上がるのかが分からないということーそれは言い換えれば、今最も点数を稼いでる選手のどこを取り入れれば、点数を稼げるかが、理解できないということでしょう。
まず、切り口として選手ごとにSP: Short ProgramとFS: Free SkatingのPCSをつきあわせてみました。
Fig.1 Correlation Plot for SP and FP of PCS
上の図の傾向として、大部分の選手のPCSはSPよりもFSの方が0.5ポイントほど大きい様子です。FSは競技時間が長くアピールできる数が多いから、若干プラスに作用するのかもしれません。他にも理由はあるかもしれません。 目立つことは上のグラフで3人が大きく傾向から外れています。
(1)下左にいるZijun Liは中国の16才で愛らしい顔姿で人気もあったようですが、Freeの演技は完成度としても素晴らしいものでしたから、もっと高くてもいいのですが、このメンバーの中では低いになっています。SPよりもFSが良かったということでは評価が改善したと言えますが、妥当と言えるのでしょうか?PCSがその場のパフォーマンスを反映していないと言われる事実がここにも積み上がったようです。
(2)もう一人は橙色の鈴木明子選手、こちらはFreeで生彩を欠いたので上の選手中では唯一SPよりも点数が下がったのでしょうか。
(3)3人目は優勝したYuna Kimです。FSではSPよりも点数が各項目で1点ほども高くなっています。SPの演技と比べてそれほど演技がさらに素晴らしいものがあったのでしょうか?各項目にわたって素晴らしくなったということなのですが、そうなんでしょうか?
では次に、その各項目の点数を細かく見てみましょう。下の横軸にある5項目について9人のジャッジの平均値(詳しく言うとその中の最大最少を除いた平均)をプロットしたものです。全ての項目でYuna KimはCostnerやMao Asadaよりも頭抜けて素晴らしい演技ということになっています。トップ3人以外はさらに1点以上も下方に団子でひしめきあって見えます。
良く見ると各選手の5項目の点数は僅か0.5点ほどの狭い範囲に分布しています。ジャンプを失敗したり転倒したりしても、どこかの点数が大きく下がることはないのですね。この点数付けは本当に意味があるのかと思えてきます。いろいろ工夫しても結局、この選手はこれくらいというガイドラインみたいな線に沿って、±0.25位の幅で点数がついてるように見えてしょうがないです。
ここで、実はこの点数にはFactorがかかって実際の点数になるのですが、FSのファクターは1.6ですから、その1.6倍した結果をFig.3に示します。
Fig.2 PCS for Ladies Free Skating
Fig.3 PCS timed 1.6 factor for Ladies Free Skating
上のFig.2で各項目1点の差と言ってたものがFactor書けた後には1.6点となり、5項目ありますから、最終的には8点の差となるのです。それだけ重みのある評価点数なのに、なぜこれだけの差がつくのかが見えない様に思います。
Fig.4, Fig.5にShort ProgramのPCSをまとめておきますが、同様な傾向です。少し違うのはTopがKostnerだったこと。
Fi.g.4 PCS for Short Program
Fig.5 PCS for Short Program after timed 0.8 factor
ここまで、ジャッジの平均値を見てきましたが、さらに細部というか、審査員ごとの点数を分けてみてみましょうか。
・・・
この下のグラフからいろいろ見えてくるものがありました。上の平均点の傾向としては各選手ごとには僅か0.5点の幅で点がついてるように見えましたが、下のジャッジごとの点数でも極端な点の動きは少なくて、0.5点の幅で点数を振ってるだけに見えます。
それなのに、選手が変わるとがらっと違う点数が並ぶのです。ここは非常に奇妙に感じるところです。一人の選手に対してはわずか0.5点の幅の中で点をつけてるのに、選手が変わると大きな点数の違いを並べるとはいったい何を見てるのだろうかと。
もう一つ気付かされたこと、それは日本人選手3人にのみ共通するもので、点数の振れが外国の選手よりも少ないことです。下のグラフのジャッジの線の分布が日本人だけ密に固まってることが分かるでしょう。これは日本人を熱烈に応援するジャッジがいない、足引っ張るジャッジも少ないということです。ここまで明確に表れるとは驚きでした。
この9人のジャッジのうち、上下の両端になった点数は集計に入れませんから、一人だけ傾向の違う点数をつけても、それは集計に反映しないことになります。しかし、それを判っていても大幅に点数をつけたり、あるいは低い点をつけたりしているようです。なお、一人の審判がやっても点に影響しませんが、複数で同じ行動をすれば、点数は動きます。従って、今のFigure Skatingの点数は複数の審判を行動させることが必要なのです。
Fig.6-1の右上のグラフを見ると、キム選手の点数を5番のジャッジが下げにかかってます。あきらかに投げやりな点付けなのです。しかし、足を引っ張ったように見えますが、他の選手につけた点よりも大きく下げたわけではなく、加点に加担しなかっただけなのでしょう。事を荒立てない範囲での意思表示に感じられます。僅かに意思は表示できても、その人の点は両端ということで平均点には影響しません。
同じグラフでジャッジの1,2,7の3人は揃って大盤振る舞いの10点をつけていますが、この点のうち二人分は集計に反映されます。しかし、いくら素晴らしい演技と言って、他の選手には小幅な0.25刻みで点をつけてるのに、キムだけに0.5や1点も多くつけられるのでしょうか?疑問です。
これは、(何の根拠もありませんが)ジャッジのミーティングでキム選手の今日の出来は8.5付近だとか、FSの時にはいい演技しそうだから昨日より+1点程度で見て行きましょう、とかいう指示が出てるのではないでしょうか。そうじゃないとここまで揃った点数にはならないでしょう。
そういう指示が出てるならAsada選手も同じことでSPでは8点くらい、FSでは8.5付近でという申し合わせがされてるように見えますね。審判に対するPR活動が弱い日本人に対してはジャッジはその通りつけるから、点のばらつきが少ない。他の国はあの手この手で審判に義理を与えたり、弱みを握ったりして、いい点を上げるか、逆に足引っ張る点をつける行動を目立たない範囲で行ってるのではないでしょうか。
そういう意味ではこのPCSは会場でつけられてますが、その基本点(目安点)を指示するチーフジャッジを手中に収めたところが成績を左右できることになるでしょう。あるいはチーフジャッジを任命できるところを操ることが出来れば、点を左右できるということです。
もちろんその事前に定まった点数だけではなく、選手の頑張りによって点数が動くことも事実でしょう。村上選手は劣勢なPCSにもかかわらず、いい成績が出たのは本人の出来にジャッジも点を与えたという形です。
Fig.6-1 Each Judge's Score on SP and on FS
Fig.6-2 Each Judge's Score on SP and on FS
Fig.6-3 Each Judge's Score on SP and on FS
figureskating に詳しく毎回観戦して記事を書かれていたtoramomoさんのブログにも
この採点に関する印象が書かれています。
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