遊心逍遙記その2

ブログ「遊心逍遙記」から心機一転して、「遊心逍遙記その2」を開設します。主に読後印象記をまとめていきます。

『迷路のはじまり ラストライン3』   堂場瞬一   文春文庫

2024-03-26 17:12:37 | 堂場瞬一
 ラストライン第3弾。文庫書き下ろしとして、2020年3月に刊行された。
 このストーリー、羽田空港国際線ターミナルから岩倉剛の恋人赤沢実里がニューヨークへ旅立つ場面から始まる。所属する劇団の方から回ってきた話で、オーディションを受ける為に出かけるのだ。少なくとも3ヶ月は離ればなれになる。このシリーズでは初めて、岩倉の私生活の側面描写で変化が現れる。基層として流れるストーリーがどのように変わるか。シリーズを読み継ぐ読者としては、岩倉の心理面に及ぼす変化が気になるところ。この側面がどのように織り込まれていくかが楽しみとなる。

 午前2時に電話がかかり、岩倉は殺人事件の連絡を受ける。場所は梅屋敷。被害者は駅からの帰宅途中、背後から頭部を一撃された。所持品の免許証から現場近くに住む島岡剛太、28歳と判る。午前9時、南太田署に特捜本部が設置される。岩倉は警視庁捜査一課の中堅刑事、田澤とコンビを組むことになる。アパートの大家からの聞き込みで、島岡が石山製作所大森工場を辞めたという情報を得た。石山製作所大森工場の総務課長からの聞き込み捜査により島岡は勤務態度不良で解雇となっていたことがわかる。
 目黒中央署にも特捜本部が設置されていた。被害者は藤原美沙、32歳、東大卒。あるシンクタンクに勤務する会社員だが、若手の経済評論家としてテレビ番組にもよく出演し、かなり知られる存在になっていた。金曜から会社に出社せず、週明けも無断欠勤のため、会社の同僚が家を訪ねて、自室で殺されているところを発見したのだった。
 岩倉は田澤とともに、島岡周辺の関係者への聞き込みを広げていく。島岡がギャンブル好きであり、多額の借金を抱えていたことが判ってくる。さらに女性関係にもルーズだったことが明らかになってくる。調査を進める中で、藤原美沙の名前が浮上してくることに・・・・。
 殺人事件の被害者となった島岡と藤原美沙がどこでどのようにつながるのか。

 島岡と藤原美沙がつき合っていたという事実を捜査会議で報告した後、南大田署刑事課長の柏木の指示を受け、岩倉は目黒中央署刑事課長・田島にこのことを直接伝える。
 その結果、藤原美沙の自宅で採取された指紋の中に島岡剛太の指紋と一部合致するものが発見された。
 捜査会議は、島岡が藤原美沙を殺害した可能性でざわつく。岩倉は短絡する危険姓を指摘する。会議の雰囲気に水をさすことになる。
 このストーリー、この後これまでの捜査展開と異なる展開になって行く。なぜか。

 極めて異例なことだがと前置きして、南大田署の特捜本部と目黒中央署の特捜本部が協力して捜査を進めるという方針に転換されたのだ。この時点で、岩倉は柏木刑事課長の指示により特捜本部から外され、通常業務として発生する事件の捜査に戻されてしまう。
 そこで、岩倉は特捜本部の事件に一切関与するなと命じられたわけではないと勝手に解釈し、通常業務としての事件捜査に従事しながら、特捜本部の事件に関わる捜査を独自に開始していく。勿論、特捜本部の捜査の進展状況がわからなければ独自捜査も無駄になるかも知れない。密かに両捜査本部内の刑事とコンタクトをとり、情報交換できる工作をする。捜査一課の田澤と岩倉が捜査一課にいた当時の後輩にあたる大岡である。大岡は藤原美沙の事件に関わってきていた。岩倉は自分の入手した情報をこの二人に伝え、特捜本部に情報が伝わるようにしていく。イレギュラーに行動する岩倉の捜査そのものと、特捜本部との関わり方が、このストーリーの読ませどころとなっていく。
 岩倉の独自捜査が、ある局面では特捜本部の捜査の一歩先を進んでいくという面白さといえよう。いわば突破口を岩倉が切り開き、田澤と大岡を介して、特捜本部の人海戦術に密かにリンクできるようにしていくことである。
 単独で一歩先を進む岩倉の捜査は、岩倉を危地に立たせることにもなる。岩倉が追跡捜査の過程で拉致される羽目に!! だがその禍が転じて特捜本部に返り咲く契機にもなる。柏木課長の鼻を明かす結果にもなる。
 
 本作第3弾の面白さを幾つか挙げてみよう。
1.事件捜査の途中から、岩倉が単独捜査を始めて行くという展開になること。
 その背後に、柏木課長の思惑が絡んでいる局面が織り込まれている。柏木と岩倉との間には警察官人生における価値観の差が根っ子にあるのだ。
2.両特捜本部が担当する事件は、岩倉の活躍もあり、犯人を逮捕でき一応の決着がつく。
 一方、その背景に謎の組織が存在することが判明する。だが、その実態はおぼろげに把握できたに留まった。岩倉が接触しえた頂点の人物が静岡県伊東の海岸で遺体で見つかった。トカゲの尻尾切りの如くに・・・・。つまり、この組織の解明は本書のタイトル「迷路のはじまり」を意味しているというエンディングとなる。
 その組織とは何か。このストーリーの読ませどころの先にこの組織がある。第4弾以降への期待が湧く。
3.ストーリーの底流にこれまでは岩倉と実里との私生活が織り交ぜられてきた。今回は、岩倉の娘千夏が登場する回数が増えることに置き換わる。父と娘の関係に焦点があたっていく。千夏は大学進学の進路を選択する岐路に来ている時期でもある。さらに、千夏が父親の危地を救う一助を果たすことになる。どのように? それは読んでのお楽しみ。
4.この第3弾で、南大田署の刑事課長が交代した。新しい課長が柏木で、岩倉より年次が一年上。岩倉は「柏木はやたらと張り切るタイプで、かなり鬱陶しい」(p17)と感じるタイプ。それは逆に読者にとって、岩倉がどう対応するかという面白味につながる。
 一方、第4弾以降、今度は岩倉自身が他署に異動しての物語となっていくのかという期待感にもつらなる。
5.岩倉が、本部の”エージェント”と見做している川嶋刑事が要所要所で登場してくる。 川嶋の存在が、このシリーズの中でどのような位置づけなのか、それがいつも興味を引き立てるところがおもしろい。
6.岩倉の視点からストーリーの中で次の二人に言及させているところがおもしろい。
   失踪人捜査課第一分室室長高城賢吾   p224
   鳴沢了  p339
 この言及の面白さは、鳴沢了と高城賢吾の各シリーズを読んでいる人には、ニヤリとさせるところになるだろう。このあたりの言及は著者の遊び心か。

 本作は、第4弾への期待を抱かせる。本作の末尾の文を引用しておこう。
「川嶋のように距離を置くことで、安閑としているわけにはいかない。先回りしてカバーするのも、最終防御線としての自分の役割なのだ。」

 ご一読ありがとうございます。

こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『割れた誇り ラストライン2』   文春文庫
『ラストライン』          文春文庫
『共謀捜査』            集英社文庫
『凍結捜査』            集英社文庫
『献心 警視庁失踪課・高城賢吾』  中公文庫
『闇夜 警視庁失踪課・高城賢吾』  中公文庫
『牽制 警視庁失踪課・高城賢吾』  中公文庫
『遮断 警視庁失踪課・高城賢吾』  中公文庫
『波紋 警視庁失踪課・高城賢吾』  中公文庫
『裂壊 警視庁失踪課・高城賢吾』  中公文庫

「遊心逍遙記」に掲載した<堂場瞬一>作品の読後印象記一覧 最終版
                  2022年12月現在 26冊
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『割れた誇り ラストライン2』  堂場瞬一   文春文庫

2024-02-27 15:52:29 | 堂場瞬一
 ラストライン・シリーズの第2弾。文庫のための書き下ろしとして、2019年3月に刊行されている。
 前年に発生した殺人事件が、地裁で「犯行の事実なし」と認定され、完全無罪判決が出された。この衝撃は警視庁全体に伝わった。これが本書のタイトル「割れた誇り」の一つの意味なのだろう。もう一つある。それは、刑事として事件を追う岩倉の誇りが割れる瞬間が生じたという信念次元での意味である。完全無罪判決が出た後に、殺人事件の関係者たちとの関わりを始めて行く岩倉が己の捜査活動に対する誇りという次元で感じた意識に関わる。私はそう受け止めた。

 無罪が確定した田岡勇太が実家に戻ってきたと安原刑事課長が岩倉剛に告げた。この殺人事件を担当したのは隣の北大田署だったのだが、田岡勇太の実家は南大田署管内の都営団地にある。北大田署から安原に非公式に田岡勇太を監視して欲しいという依頼が来たという。安原は岩倉に田岡勇太を極秘に監視するよう指示した。
 無罪判決で帰ってきた男を監視することは問題にならないかと岩倉は当初反発した。だが、近所でのトラブルの発生なども予想されることから、本人の所在を確認だけはしておくという意味でという安原の考えを受けて、岩倉はこの監視作業に入る。
 岩倉は監視の意味合いを読み替えた。無罪の男が無関係だった殺人事件の絡みで余計なトラブルに捲き込まれるのを避けるために、周辺を監視しようと。事件の発生を防止するための監視だと。

 岩倉はこの殺人事件を担当していなかったので、事件の外形的事実を知るだけで、田岡勇太の人間性については何も知らないことに気づく。岩倉は田倉勇太の周辺でのトラブル発生の回避、本人保護のためにも、まずは田岡勇太について、具体的にその人物像を知ろうと情報収集することから始める。
 団地の自治会長秋山をまず訪ねる。秋山は偶然にも警察官OBだった。岩倉のスタンスを知った秋山は協力的に対応し、岩倉が田岡の友人にコンタクトできるきっかけも作ってくれた。一方、岩倉は、田岡勇太の元の勤め先の社長や裁判で田岡の国選弁護人となった堤からの情報収集も行う。殺人事件に関わる情報収集の対象を広げて行く。
 岩倉は、徐々に田岡勇太のプロフィールを形成でき、殺人事件についても事実内容に詳しくなっていく。

 団地の田岡の家にカラーボールを投げつけるという嫌がらせが発生する。監視中の岩倉が2人組に近づこうとしたとき、その一人を組み伏せた男がいた。その男は、機動隊に異動した彩香の代わりに赴任してきた川嶋市蔵だった。なぜ彼がこのタイミングでここに・・・。岩倉は川嶋の着任当日から、この男の正体に警戒意識を喚起されている。
 本作で初登場のこの得体のしれない川嶋刑事の存在と行動が、読者の目からもおもしろい異分子的存在となっていく。
 田岡の家へのいやがらせ電話が頻繁に発生する。勇太は自宅に引っこもらざるを得ない状況となる。勤務先の寮に入り勤めていた勇太の兄直樹が、しばらく実家に戻ってきて、通勤しながら、母親と勇太を守る生活に入る。岩倉は秋山を介して、兄の直樹と話し合える関係を築いて行った。
 
 田岡が容疑者とされた殺人事件の外形的事実は、岩倉が川嶋に説明する形で、明らかになっていく。被害者の石川春香には光山翔也という大学生の恋人がいた。その光山が田岡勇太の実家の戸口に押しかけてくるようになる。彼は大学生の友人達に、無罪判決はおかしい。絶対に田岡が犯人だと言い続けていた。岩倉は、光山の友人への聞き込みで光山の主張を聞き知っていた。
 
 地裁判決から2週間後、思わぬ事件が発生する。事件現場は東京と神奈川の県境、多摩川にかかる第一京浜の橋、六郷橋のほぼ真下だった。午前3時に安原課長から岩倉に電話連絡が入る。岩倉の自宅が現場に一番近いためだ。遺体を見て、岩倉は光山翔也と身元がわかった。橋からの転落死。殺人の疑いが強いということで、南大田署に特捜本部が設置される。岩倉はこの特捜本部に組み込まれ、本庁捜査一課の若手刑事花田とペアを組み捜査活動に従事する。
 ここからのストーリーの特徴は、岩倉と花田の捜査活動を主体に進展していくところにある。岩倉は常に田岡勇太の実家周辺の監視と保護を念頭に置きながら、捜査に関わっていく。
 おもしろいのは、岩倉が要所要所で花田と川嶋の違いを脳裏で比較する側面を織り込んでいるところである。岩倉が伝手を頼り、川嶋の素性を調べる。一層胡散臭さが増すところが、今後の伏線になっていくように思われて興味が湧く。
 
 午前2時、岩倉は安原課長から、田岡勇太が自宅近くの路上で襲われたという連絡を受けることに・・・・。岩倉は緊急搬送された病院に駆けつける。
 岩倉は兄の直樹との関わりが一層深まっていく。
 襲撃事件はいわば嫌がらせの極み。犯人たちは速やかに逮捕される進展をみせる。

 一方で、捜査本部では光山殺害に絡んで、勇太への事情聴取を川嶋が訴えるという一幕が出てくる。勿論、岩倉は意見を述べるという一幕となる。捜査の行き詰まりの雰囲気と岩倉の信念が端的に描き込まれている。
 
 岩倉はあることに気づいた。その気づきが捜査情報とリンクし、光山殺害の容疑者逮捕に結びついていく。
 だが、この容疑者逮捕がもう一つの真相を明らかにしていくことに・・・・・。
 このストーリーの構図のおもしろさはここにある。
 実に意外な展開となっていく。お楽しみいただきたい。

 人の発言、行動の意味すること、真実は何か。それを理解し判断することの難しさということがテーマになっているように思う。真と偽の識別の難しさ・・・。
 もう一つは、岩倉の捜査に対する信念と行動を描き出すことが根底にあるテーマだと思う。

 「捜査会議の終わりに、岩倉は冷たい空気をはっきり感じていた。またやってしまった・・・・・捜査会議で自分が発した一言が、全体の流れを引き戻してしまう。---これまで何度も経験している。悪いことではないのだが、その都度敵を作ってしまうのは困ったものだ。しかしどうしようもない。・・・・・・誰だって、自分がやってきた仕事を否定されれば腹がたつ。」(p318) 岩倉の信念の一端が表出されている。

 このストーリーには、岩倉と女優の実里との交際関係が底流に流れるパラレルなストーリーとして織り込まれていく。これが、いわばストーリー展開の上で、オアシス的役割を果たしている。年の離れた二人の人間関係がどのように進展するのか。読者にとっては、楽しみな側面である。

 ご一読ありがとうございます。
 
こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『ラストライン』          文春文庫
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『ラストライン』   堂場瞬一   文春文庫

2023-09-26 14:56:47 | 堂場瞬一
 既にラストラインのシリーズ第6弾として『灰色の階段 ラストライン0』が今年3月に刊行されている。この警察小説シリーズを読み継いで行くことにした。第1作『ラストライン』は、「週刊文春」(2017年8月17・24日夏の特大号~2018年6月7日号)に連載され、2018年11月に文庫本が刊行された。はや5年前になる。

 ストーリーは、定年まであと10年のベテラン刑事、岩倉剛警部補が、島嶼部を除き東京都内で一番南にある南大田署に赴任した日から始まる。この冒頭部にまず興味を引く記述がある。
「自分なりに仕事をこなして、基本的には大人しくしているつもりだった」(p9)
「『追っ手』を逃れて、東京最南端-いや、二番目に南にある所轄を希望して異動してきたのだから、とにかく靜かに、目立たぬように仕事をこなしていくつもりだった」(p9)
「実際、この署は暇なはずである。・・・・それでいい。これからの数年は、自分の人生の後半生をどうするか決めるための準備期間でもあるのだ。そのためにじっくり考える時間が必要ーそれに、私生活でも整理しておかねばならないことがある」(p9-10)

「追っ手」とは何のこと? この「つもり」という意識は、それまでの刑事活動の裏返しの意味なのか? 私生活の整理? さりげなくまず読者に関心を抱かせる。
 
 読み始めると早々に岩倉剛に絡むいくつかの背景情報がわかり始める。岩倉は警部補になってからは昇任試験に興味を失った。赴任した南大田署の刑事課長安原康介は、岩倉が警視庁捜査一課に所属したときの後輩。岩倉は別居中であり娘が居る。南大田署刑事課への異動に伴い、岩倉は署からほど近い東急池上線蓮沼駅近くの小さなマンションに移転した。舞台女優をめざしている赤沢実里と交際している。・・・・・岩倉の人物像をイメージできはじめる。

 赴任当日、岩倉は許可を得て一人管内巡視に出る。午後4時、署に戻ろうとしていたときスマートフォンに連絡が入る。岩倉の隣席になる新任刑事伊東彩香からの連絡だった。萩中で殺し発生。岩倉は現場に直行し、彩香と現地で合流することに。
 ここで一つ明らかになる。「岩倉が行く先々で事件が起きる」「つき」を持つ刑事、「事件の神様に好かれた人間」と周りからみなされてきた刑事だったということ。大人しく、目立たぬように・・・・は最初から崩れることに。読者にとっては、期待がふくらむ。

 マンション2階の204号室で、男が顔を確認できないほど殴られて死亡した。被害者は部屋の住人、三原康夫と推定される。寝室にあった免許証から70歳、管理人の証言から12年前に持ち家として購入。第一発見者は宅配の配送員。と言う点がわかる。
 特捜本部が立つ。最初の捜査会議の席で、本部の水谷刑事が玄関の鍵をこじ開けた手口から、常習の窃盗犯で今は出所している宮本卓也のやり口に似ていると発言した。当面捜査の方向性は、宮本の所在確認と近所の聞き込み捜査、防犯カメラのチェックとなる。事件の翌日、被害者は三原康夫と断定された。身元確認ができたことで、通常の捜査が始まる。
 宮本卓也の所在を見つけ、容疑者として署に引っ張り、水谷刑事が取り調べを始めるが、その進展は難航する。
 一方、岩倉は新聞販売店での聞き込み捜査から、三原康夫の行動について店主が電話で怒られたという思わぬ証言を得る。その情報は、三原が少なくともどの時点まで生きていたかを裏付けた。三原の周辺捜査が重要になっていく。

 そんな矢先に、110番通報を受けて地域課から刑事課に連絡があり、新聞記者の自殺という事実を彩香が受けた。嫌な予感がした岩倉は安原に報告し、指示を受けて、彩香を伴い自殺現場の検分に行くことになる。自殺したのは日本新報社会部の松宮真治記者、28歳で、彼は二方面の警察回りを担当していた。この事件に日本新報の警視庁キャップ、峰が広報にしないお願いという形でまず絡んで来た。現場を検分した岩倉は、不審な点は見つからず自殺と判断する。だが、動機が腑に落ちず、どうも引っかかりを感じるという。警視庁キャップ峰の接触のやり方にも違和感を感じる。峰は安原課長を無視し、署長に面会を求める行動にも出ていた。安原の承諾を得て、岩倉は一旦、特捜本部を離れ、松宮真治の自殺の動機に関連した捜査を彩香とともに始める。勿論ここから岩倉の捜査活動に比重を移した展開となって行く。
 読者としてはちょっとはぐらかされた感じを受けるとともに、松宮の自殺が三原殺害と関係していくのかどうかという関心に引きこまれていくことになる。被害者三原並びに容疑者宮本の周辺捜査の継続。松宮の自殺動機の周辺捜査。この両者がパラレルに進行していくことに・・・。
 三原の周辺捜査は三原の過去を明らかにしてきた。過去の勤務先が判明したのだ。一方、松宮の両親への事情聴取から岩倉は新たな捜査の切り口を見い出した。岩倉と彩香は特捜本部で新たな担当を割り振られる。そして、遂に、岩倉はミッシング・リンク(missing kink) が何かに気づく。それが意外な方向へと捜査を進展させていくことに・・・・。

 このストーリーの特徴をいくつかあげておきたい。
1.少しずつ、岩倉という刑事の素性、周辺情報が織り込まれていき、岩倉のプロフィールが読者の頭脳に蓄積されていく。岩倉を具体的にイメージ形成するステージとなっている。勿論、「追っ手」が何者かもはっきりとしてくる。

2.岩倉は同時点で南大田署に赴任した新任刑事伊東彩香を相棒として捜査するよう安原課長の指示を受ける。この相棒の確定は、岩倉が彩香の教育係とならざるを得ないという立場を意味する。岩倉が彩香を刑事として鍛えあげるための教育をどのように行って行くかという興味を読者に与える。いわゆるオン・ザ・ジョブ・トレーニングの側面がストーリーの中に織り込まれていく。この細部に渡る教育指導の側面がおもしろい。

3.捜査一課では後輩だった安原が、今では南大田署の刑事課長である。そこに赴任した岩倉が、警察組織における組織人として、どのように人間関係を構築していくのか。それは、警察の昇進試験をベースとする昇進システムを基盤とした警察組織運営の側面を織り込むことになる。警察組織の運営に目をむける面白さを引き出す。

4.足でかせぐ捜査による事実の積み上げと論理的な筋読みという捜査活動の本筋が描き出されていくことがやはり読ませどころとなる。捜査の王道が如何に描き込まれていくか。その面白さ。そこに現れる意外性が読者を引き付けるのだろう。

5.岩倉の別居は離婚を想定している。岩倉は実里と交際を始めている。岩倉の私生活の事情がどのように進展するのか。娘と岩倉の距離感はどうなるのか。このストーリーの底流になるサブストーリーが始まった。今後の展開が気になる。

 このラストライン・シリーズが現在までどのように展開してきているのか、追いかけていくのが楽しみである。

 ご一読ありがとうございます。


こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『共謀捜査』   集英社文庫
『凍結捜査』   集英社文庫
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「遊心逍遙記」に掲載した<堂場瞬一>作品の読後印象記一覧 最終版
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『共謀捜査』  堂場瞬一   集英社文庫

2023-07-31 23:27:07 | 堂場瞬一
 『検証捜査』では、キャリア官僚永井をリーダーとして全国の警察署から集められた刑事たちがチームを組み、捜査に携わった。警察が警察を検証するために極秘に捜査をするというものだった。その捜査が完了した時点で、刑事たちは原職へと戻っていった。だが、彼らの間には情報ネットワークが築かれていた。
 本書は『検証捜査』を源流として、『凍結捜査』との関わりを持ちながら、「捜査」がキーワードとなり、かつての人間関係が再びリンクしていくという作品である。その「捜査」はフランスが舞台となり、そこから捜査がスイスに移ってくという国際的スケールの警察小説になっていくところがおもしろい。文庫のための書き下ろし作品として、2020年12月に刊行された。

 警察庁のキャリア官僚である永井はフランスのリヨンに所在する「ICPO(国際刑事警察機構)」本部に出向した。永井は、各国警察の「調整機関」であるICPOに、ICIB(国際犯罪組織捜査局)を正式に発足させる準備を行うリーダーとなっていた。これは永井が警察人生を賭けた目標でもあった。日本においては長官官房付でのICPO出向と位置づけられている。
 ここに『凍結捜査』がリンクしてくる。函館中央署の刑事である保井凜が担当した射殺事件は表面的には事実が解明されて解決したものの、実質は凍結状態となった。これを契機として、凜は永井の誘いを受け、2年限定でICPO本部に出向して来て、永井の下で勤務することになった。
 
 このストーリーは、ICIBの発足が間近になってきている時点で、リーダーの永井が本部から2キロほど離れたアパルトマンに通勤に使っている自転車で帰宅する途上で、密かにつけてきたハイブリッドカーに追突され、拉致されるところから始まる。
 ICPOには捜査権はない。永井拉致事件はフランスの警察に任せなければならない。つまり、凜は直接には捜査に携われない。ICIBのチームメンバーと協力して、事件周辺情報を収集するとともに、フランス警察に協力しながら事件解決をめざすしかない。凜は日本国内の長官官房とのコミュニケーションの窓口となっていく。凜は神谷には永井が拉致されたことを電話連絡する。
 地元フランスの警察からの出向で、ICPO職員のアンドレ・クレマンという同僚、地元警察であるリヨン署の犯罪対策班、独身女性で33歳のカミーユ・モローが凜の直接的な協力者になる。
 事態は、ICIBに身代金として100万ユーロを要求する脅迫メールが届いたことから動き出す。

 一方、日本では、神谷が警察庁のナンバースリーである浦部官房長から直接呼びつけられる。浦部は、松崎泰之、45歳が昨夜殺されたと神谷に告げた。手渡された殴り書きのメモによると、後頭部に銃創がある状態だった。元神奈川県警の人間で、ブラックリストに載っていたという。浦部は『検証捜査』時点の背景事象を念頭に置いていた。神谷は松崎射殺事件を特命事項として神谷に調査するように命じた。浦部は神谷の助っ人を予め準備していた。埼玉県警捜査一課の桜内翔吾刑事が浦部が手配した助っ人だった。さらに、福岡県警の皆川慶一朗が加わることに。彼らは神奈川県警の特命捜査のメンバーだった。
 「今は全てが謎だ。進む先に何があるかはまったく見えない」(p61)と神谷が感じるところから、事態がスタートする。
 かつてのタスク・フォースの一人だった大阪府警の島村は、定年退職し大阪警察博物館の館長になっていた。彼はつきあいのある人間関係から組織内の問題事象を耳にする。刑事魂で情報収集を始める。パトロール中の臨港署員が、不審なロシア人に職務質問し、荷物を調べ、コカイン10kgを発見した。保管中のこのコカイン10kgが臨海署で紛失状態になっていた。島村は伝手を使ってその経緯の事実を密かに調べた。

 読者としては、まったく独立したと思われる3つの事件がパラレルに進行しはじめる。それぞれの事件の捜査が、全く異なるやり方で、進む。それらの捜査状況が交互に描写されていく。
 副産物として、読者にはフランスの警察組織が日本とどのように異なるかということがイメージとして掴めていく。ICPOという組織のことも少しわかるようになる。
 神谷たちの捜査は、官房長からの特命事項故に、通常の捜査とどのよう異なる行動になるのかが、興味津々となる。なぜなら、官房長は彼らの捜査の拠点として、公安が昔使っていたとい警視庁の新橋分室を手配し、長官官房の職員二谷を浦部のメッセンジャーに指定したのだ。浦部か掴んだ情報は二谷を介して提供されることになった。
 また、神谷は浦部の動きにも疑念を感じ、何か深い裏がありそうな気がするのだから、おもしろい展開になりそうな予感を読者は感じることに。
 浦部が提供した情報から、神谷らは聞き込み捜査を始める。浦部の動きは早く、ロシアン・マフィアに関する情報が入り、東京に住む貿易商のニコライ・チェルネンコに会うよう示唆が来る。貿易という点で、松崎が海外と、それもブラックな側面での繋がりがあった可能性が出てくる。
 神谷は松崎の足跡を追う中で桜内が見つけた松崎の名刺に記載された住所の部屋を調べる。クローゼットの天井裏から、ちょうど文庫本ぐらいの薄い金属片を見つけた。短辺の片方に、長さ3cmほどの5本のスリットが入っていた。この金属片がキーになり、
 ロシアン・マフィアがキーワードになっていく。島村は神谷がロシアン・マフィアの絡む事件に振り回された事件のことを思い出した。

 拉致犯人が3回目のメールをICIBに送って来た時はブランと名乗った。受け渡し方法は追って指示するという。その後のメールで、永井の受け渡しをスイスと告げてくる。
 凜たちは、受け渡しがどこになりそうか想定し、、永井救出法を練ることになる。

 このストーリー、3つの事件が交差し収斂していくのかどうか、が読者にとっての楽しみどころとなる。交差し収斂するとするならどのように・・・・。
 
神谷たち3人は浦部の命令を受けて、スイスに行くことになる。なぜ、スイスに行くのか。それを語ればネタばれになるので回避する。
 スイスに出向いた3人は凜と合流することになる。勿論、それは永井の救出と関連していた。
 永井の救出行動。そこには国際的犯罪組織撲滅のために想いも寄らぬ企みが組み込まれていた。本書のタイトルは『共謀捜査』である。「共謀」という語句がキーワードになっていることが最後によくわかる。

 この小説、最後に著者の「あとがき」が付いている。そこに、次の文が記されている。ここでご紹介しておく。
*私は、『検証捜査』で出した登場人物たちを、もう少し自由に動かして、主役の座に押し上げてやりたかった。そのため、その後登場人物それぞれを語り部にして、『検証捜査』とは直接関係ない作品群を書き続けることになった。  p515
*全てが『検証捜査』のスピンオフ作品なのだ。・・・・・絶対にシリーズではない。
 本書で完結する・・・・  p516

 その結果、『検証捜査』の後に、『複合捜査』『共犯捜査』『時限捜査』『凍結捜査』が生み出されて、本作に至ったということになる。

 ご一読ありがとうございます。


こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『凍結捜査』   集英社文庫
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『裂壊 警視庁失踪課・高城賢吾』  中公文庫
「遊心逍遙記」に掲載した<堂場瞬一>作品の読後印象記一覧 最終版
 2022年12月現在 26冊

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『凍結捜査』   堂場瞬一   集英社文庫

2023-07-27 21:42:54 | 堂場瞬一
 『検証捜査』でタスク・フォースとして全国から集められ捜査に従事したメンバーは、事件解決後、解散し原職に復帰した。だがそのネットワークを活用して事件捜査に役立てるというつながりが色濃く出てくる設定でおもしろい作品群が続く。それに加わった一冊である。文庫書き下ろしとして、2019年7月に刊行された。

 函館近郊にある大沼国定公園の雪中から後頭部を撃たれた遺体が発見された。発見者は国定公園内で土産物店を経営する浦田政次。彼は日課の早朝散歩の時、嫌な予感のする雪の膨らみを見て、雪を取り除いて、射殺遺体を発見した。
 保井凜(やすいりん)は、後輩の淺井真由から携帯に「大沼で殺しです」と連絡を受けた。凜は昨年10月から函館中央署の刑事一課に異動していた。連絡を受けた時には、3日の休暇をとり、神谷悟郎(かみやごろう)が訪ねてきていた。凜と神谷は『検証捜査』で捜査チームのメンバーだった。今は、遠距離交際の関係を続けている。神谷は警視庁刑事一課の刑事。
 凜が現場に着いた時、被害者は所持していた免許証から平田和己、33歳とみなされた。後頭部から二発撃たれて、二発とも顔面を貫通。通路脇の雪溜まりにうつ伏せ状態だった。アメリカのマフィアのやり口に似た射殺である。凜は、婦女暴行事件の被害者届が出されていたことから平田和己を記憶していた。彼の出身は東京で、札幌に住んでいた時、ロシアとの水産物輸出入を行う小さな商社に勤めていた。被害届が出されたことで本人の指紋が採取されている。この時の被害者は函館に実家がある水野珠希であり、被害届は一旦出されたが、その後すぐに取り下げられのだった。だが、凜は水野珠希の心のケアを兼ねて、彼女との接触を続けていた。凜は珠希の携帯に連絡をするが音信不通。珠希の実家に電話を入れると、母親が珠希が家出したようだと返答してきた。
 凜は、事件が望まない方に急に動き始めたと感じる。

 凜はまず、函館市内の珠希の実家を訪ねることから、捜査に入る。一方、神谷は函館の観光などをして時間を費やし、凜と過ごせる時間を有効に活用した後は東京に戻ることにした。神谷はこの事件に関心を寄せ、出来る範囲で情報を収集し分析する。東京に戻った後、間接的に東京から凜の捜査活動を支援する立場をとろうとする。
 函館の事件を知った埼玉県警の桜内省吾が神谷に連絡を入れてくる。神谷は桜内と会い意見交換をする。一方、神谷は警察庁刑事局広域捜査課長の永井とコンタクトをとる。永井はかつてのタスク・フォースのリーダーだったキャリア官僚。『検証捜査』で培われたネットワークがなにがしか有効なソースとなっていく。

 射殺事件の捜査本部が立つ。被害者について詳細に調べるために、凜は東京における平田の足取り捜査班4人の内に組み込まれる。東京での平田の足取り捜査の成果がでない内に、本部の2刑事は、札幌での殺人事件発生を理由に撤収し、かつ捜査本部も規模縮小となる。さらに凜たちも刑事一課長古澤からの連絡で函館に戻る羽目に・・・・。
 函館に戻った凜は捜査を続けるが、1週間ほど後に、凜は帰宅の途中、コンビニに立ち寄ったとき、見知らぬ女性に声を掛けられる。彼女は凜の素性を知った上で、接触をはかってきた。これを契機に、平田射殺事件には想像もできない裏がありそうだと凜は直観する。
 
 東京のあるホテルで殺しが発生する。待機中の神谷らは現場に臨場することに。被害者は若い女性。後頭部に二発撃たれ、処刑スタイルだという連絡を神谷は受けた。神谷は、函館の平田射殺事件を思い出す。手口が共通している・・・・と。浅川みどりという名での宿泊だったが、偽名と判明した。鑑識作業が終了時点で、遺留のバッグに残っていた運転免許証から、被害者が水野珠希と判明した。
 この事件について、神谷は函館の凜に連絡を入れる。非公式段階だが、凜は古澤課長にこの事件を報告し、遺体確認を兼ねて凜が東京に飛ぶことになる。これが第二部のはじまりとなっていく。
 函館中央署と警視庁は捜査で連携することになる。凜は函館中央署と警視庁との連絡役となる。警視庁側は、神谷が進藤を相棒として、珠希の交友関係を調べるために札幌に出張することから始まる。

 連携捜査は始まるが、捜査を進展させる事実が出て来ない。そんな最中に、凜の宿泊するホテルのロビーに、コンビニ前で接触してきたあの女性が、居ることに凜は気づく。神谷に連絡したことで、神谷が尾行し須藤朝美だと判明する。勤務先も大凡判明した。だが、それが逆に疑問を膨らませる。
 また、連絡役としての凜が函館に戻ることになった前夜、神谷と食事をして、宿泊ホテルの近くで別れた直後に、凜はプリウスにぶつけられ、スタンガンを使われて拉致されかけた。何とか車から自力で脱出。神谷が気づき車を止めさせようとするが、道路に放り出される。大通りに飛び出した車は、トラックと衝突事故を起こす結果に。凜は鎖骨にひびが入り全治三週間の怪我を負う。神谷と凜は、須藤朝美を糸口をつかむため、捜査のターゲットにする。須藤は凜を拉致しようとした運転手の名前だけは知っていた。
 須藤を問い詰めて得たひとかけらの情報と凜を拉致しようとした男が、捜査の糸口になっていく。そこから平田和己と水野珠希の射殺事件の真相は思わぬ方向へ進展していく。

 このストーリー、凜と神谷の連携捜査が軸となりこのあと進展していく。だが、捜査で判明することから意外な結末が導き出されていく。
 2つの射殺事件は、個別的には一応解明できる。だが、そこで留まらざるを得なくなる。真の問題は、現実の捜査という視点では「凍結」されてしまうことに・・・・・・・。
 興味深い構想のストーリーとなっている。捜査とは何か。それについて問いかける一つの視点が背景に置いて問題提起されているとも読める。

 最後に、上記のキャリア官僚、永井が神谷と凜に対して語ったことを、一つご紹介しておこう。
「神谷さん、変な風に聞こえるかもしれませんが、私は上から事態を見なければいけないんです。
 一方、あなたたちは、現場で人の苦しみや悲しみを見る---私たちがそういうことを経験していちいち気持ちを動かされていては、何もできなくなります」 p489

 読者として、仕方がないなぁ・・・・とは思う一方で、それ故フラストレーションが残る部分があるのも感想。とはいえ、こういう終わり方もありえるか。

 ご一読ありがとうございます。


こちらもお読みいただけるとうれしいです。
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