「明日がちょっと幸せになる」という冠言葉が付いている。奥書のプロフィールを見ると、著者は「寺と神社の旅行研究家」と称されているようだ。
本書は、著者が日本各地の石像を訪ねて、その多くはクローズアップ写真なのだが、自ら石像を撮り、その石像との対話から湧き出た「ことば」を写真に添えた本である。
石像との語らい、その石像の代表が「お地蔵さま」なのだ。
石像写真と短いメッセージが生み出すコラボレーション。どこから読むかも読者の自由。見開きの2ページで写真と文が一つにまとまっている。135ページという手軽なボリュームの本である。
本書は2014年11月にた単行本が刊行された。
本書はU1さんのブログ記事で知った。仏像の中でも、地蔵菩薩には特に関心を抱いている仏像の一つ。本のタイトルを読んでまず興味を抱いた。次に、取りあげられているのはお地蔵さまだけではないということと、未知の著者だったことがさらに興味を惹きつけた。
地元の図書館には蔵書がなかったので、購入して読んだという次第。
「はじめに」から著者の言葉を引用しよう。
「耳を澄ましてみると、お言葉も聞こえてきます。もちろん本当にお地蔵さんがしゃべるわけじゃないけれど、お顔が親しみやすくて生きているかのように表情豊かなので、もしかすると、この石仏はこんなことを言いたいんじゃないかと、どんどん想像が湧いてくるのです」
冒頭に、お地蔵さまは石像の代表と書いた。そこで本書の構成をまず分析的にご紹介する。
本書は、お言葉を58項目取り上げている。目次として一行のメッセージが連なっている。見開きページを見ると、そのメッセージに、マンガで使われる吹き出しの形で、サブ・メッセージが語られる。いわば、一行メッセージをかみ砕いた解釈あるいは補足の語りが付いている。一行メッセージが一層具体的にわかりやすくなっている。吹き出しなしのメッセージもある。
一行メッセージと吹き出しのメッセージ。その先の対話をどのように続けるか?
それは読者のあなた次第ということに・・・・。
お地蔵さまを石像の代表と記した。石仏とは意識的に書かなかった。
そこで、58の石像の構成を、本書での見出し語句に準じて数量的にまとめてご紹介すると、次のとおり:
地蔵菩薩 18
観音菩薩 14 如意輪観音(7)、十一面観音(2)、聖観音(1)、二十五菩薩(1)
三十三観音(2)、岩屋観音(1)
阿弥陀仏 4 そのうちの一つは、二尊逆修塔(阿弥陀如来/薬師如来)
羅漢像 7
不動明王 2 そのうちの一つは、不動三尊像
他の石仏 6 布袋像(1)、弁財天(1)、十王(1)、角大師(1)、金剛力士(1)
奪衣婆(1)
田の神 2
女神 1
巨石群 1
動物等 3 狐(1)、狛犬(1)、ムジナ(1)
本書で取り上げられた石像で一番数の多いのが地蔵菩薩であり、石仏のポピュラーさから考えても、お地蔵さまがやはり代表となることだろう。
勿論、一枚の写真には数多くの石仏・石像が写っているので、本書で眺める石仏・石像数はかなりの数になる。地蔵石仏以外に関心が向く読者もおられるのではないかと思うので、全体構成もまた、参考にしていただけるのではと思う。
地元としては、この本に取り上げられている京都市の愛宕念仏寺の羅漢像群や金戒光明寺の五劫思惟阿弥陀仏は訪ねたことがある。一方、赤山禅院の三十三観音・羅漢像や古知谷阿弥陀寺の如意輪観音は未訪。暖かくなったら・・・・探訪目標がまた一つできた。
本書には、コラムが4つ載っている。お猫さま/ 赤の着こなし(付記:お地蔵さま関連)/ 狛犬コレクション/ 美貌の観音さま である。これらも勿論石像・石仏の写真のページ。
美貌の観音さまの一番最後に取り上げられている写真が、赤山禅院の千手観音像。真っ先にこの石仏を真近くで拝見したくなった。
最後に、一つだけ、お地蔵さまのことばをご紹介しておこう。
お言葉32として掲載されている。見開きの左ページに載るのは、神奈川県川崎市の浄慶寺にある「足の裏地蔵」である。こんな石仏、初めて目にした!
一瞬、エッ!と思い、ちょっとユーモラスでもある。
お地蔵さまのことばは、
守りに入るのはまだ早い
これについている吹き出しの語りは:
僕はあなたの足の裏にいる地蔵です。
昔は、好きなものに向かって突進するあなたに
難儀しましたが、最近は家と会社の往復だけ。
でも、楽だからって楽しいわけじゃない。
これからもどんどん突飛なことを思いついて
右へ左へと、走り回ってほしいな。
転んだりしないように、しっかり支えていますから。
家と会社の往復すら、はるか過去のことになった現在、改めて「守りに入るのはまだ早い」という言葉をとらえ直してみたいと感じる。
やさしい表現だけれど、その言葉とじっくり対話するとしたら、本書を通読する時間の何倍も、何十倍も時間を要するだあろうなぁ・・・というのも感想である。ときどき開けて、写真を見ながら、メッセージの意味の対話をつづけるのにもってこいの一冊である。
ご一読ありがとうございます。
本書は、著者が日本各地の石像を訪ねて、その多くはクローズアップ写真なのだが、自ら石像を撮り、その石像との対話から湧き出た「ことば」を写真に添えた本である。
石像との語らい、その石像の代表が「お地蔵さま」なのだ。
石像写真と短いメッセージが生み出すコラボレーション。どこから読むかも読者の自由。見開きの2ページで写真と文が一つにまとまっている。135ページという手軽なボリュームの本である。
本書は2014年11月にた単行本が刊行された。
本書はU1さんのブログ記事で知った。仏像の中でも、地蔵菩薩には特に関心を抱いている仏像の一つ。本のタイトルを読んでまず興味を抱いた。次に、取りあげられているのはお地蔵さまだけではないということと、未知の著者だったことがさらに興味を惹きつけた。
地元の図書館には蔵書がなかったので、購入して読んだという次第。
「はじめに」から著者の言葉を引用しよう。
「耳を澄ましてみると、お言葉も聞こえてきます。もちろん本当にお地蔵さんがしゃべるわけじゃないけれど、お顔が親しみやすくて生きているかのように表情豊かなので、もしかすると、この石仏はこんなことを言いたいんじゃないかと、どんどん想像が湧いてくるのです」
冒頭に、お地蔵さまは石像の代表と書いた。そこで本書の構成をまず分析的にご紹介する。
本書は、お言葉を58項目取り上げている。目次として一行のメッセージが連なっている。見開きページを見ると、そのメッセージに、マンガで使われる吹き出しの形で、サブ・メッセージが語られる。いわば、一行メッセージをかみ砕いた解釈あるいは補足の語りが付いている。一行メッセージが一層具体的にわかりやすくなっている。吹き出しなしのメッセージもある。
一行メッセージと吹き出しのメッセージ。その先の対話をどのように続けるか?
それは読者のあなた次第ということに・・・・。
お地蔵さまを石像の代表と記した。石仏とは意識的に書かなかった。
そこで、58の石像の構成を、本書での見出し語句に準じて数量的にまとめてご紹介すると、次のとおり:
地蔵菩薩 18
観音菩薩 14 如意輪観音(7)、十一面観音(2)、聖観音(1)、二十五菩薩(1)
三十三観音(2)、岩屋観音(1)
阿弥陀仏 4 そのうちの一つは、二尊逆修塔(阿弥陀如来/薬師如来)
羅漢像 7
不動明王 2 そのうちの一つは、不動三尊像
他の石仏 6 布袋像(1)、弁財天(1)、十王(1)、角大師(1)、金剛力士(1)
奪衣婆(1)
田の神 2
女神 1
巨石群 1
動物等 3 狐(1)、狛犬(1)、ムジナ(1)
本書で取り上げられた石像で一番数の多いのが地蔵菩薩であり、石仏のポピュラーさから考えても、お地蔵さまがやはり代表となることだろう。
勿論、一枚の写真には数多くの石仏・石像が写っているので、本書で眺める石仏・石像数はかなりの数になる。地蔵石仏以外に関心が向く読者もおられるのではないかと思うので、全体構成もまた、参考にしていただけるのではと思う。
地元としては、この本に取り上げられている京都市の愛宕念仏寺の羅漢像群や金戒光明寺の五劫思惟阿弥陀仏は訪ねたことがある。一方、赤山禅院の三十三観音・羅漢像や古知谷阿弥陀寺の如意輪観音は未訪。暖かくなったら・・・・探訪目標がまた一つできた。
本書には、コラムが4つ載っている。お猫さま/ 赤の着こなし(付記:お地蔵さま関連)/ 狛犬コレクション/ 美貌の観音さま である。これらも勿論石像・石仏の写真のページ。
美貌の観音さまの一番最後に取り上げられている写真が、赤山禅院の千手観音像。真っ先にこの石仏を真近くで拝見したくなった。
最後に、一つだけ、お地蔵さまのことばをご紹介しておこう。
お言葉32として掲載されている。見開きの左ページに載るのは、神奈川県川崎市の浄慶寺にある「足の裏地蔵」である。こんな石仏、初めて目にした!
一瞬、エッ!と思い、ちょっとユーモラスでもある。
お地蔵さまのことばは、
守りに入るのはまだ早い
これについている吹き出しの語りは:
僕はあなたの足の裏にいる地蔵です。
昔は、好きなものに向かって突進するあなたに
難儀しましたが、最近は家と会社の往復だけ。
でも、楽だからって楽しいわけじゃない。
これからもどんどん突飛なことを思いついて
右へ左へと、走り回ってほしいな。
転んだりしないように、しっかり支えていますから。
家と会社の往復すら、はるか過去のことになった現在、改めて「守りに入るのはまだ早い」という言葉をとらえ直してみたいと感じる。
やさしい表現だけれど、その言葉とじっくり対話するとしたら、本書を通読する時間の何倍も、何十倍も時間を要するだあろうなぁ・・・というのも感想である。ときどき開けて、写真を見ながら、メッセージの意味の対話をつづけるのにもってこいの一冊である。
ご一読ありがとうございます。