遊心逍遙記その2

ブログ「遊心逍遙記」から心機一転して、「遊心逍遙記その2」を開設します。主に読後印象記をまとめていきます。

『ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人』  東野圭吾  光文社

2024-11-01 18:42:55 | 東野圭吾
 本書も、第2弾となる『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』の新聞広告を見て気づいたブラック・ショーマンシリーズの始まりとなる本。奥書を見ると、書下ろし作品として、2020年11月に単行本が刊行され、2023年11月に文庫化されている。
  こちらが文庫の表紙カバー

 プロローグでは、アメリカ、ラスベガスでのマジックショーのシーンが描かれる。

 第1章は、都内のあるホテルのブライダルサロンに居るカップルの会話シーンに切り替わる。会話するのは中條健太と真世。真世の姓は少し先で、神尾とわかる。父はもと中学校の教師。健太と真世は婚約していて、ブライダルサロンで打ち合わせをしていた。真世は中学時代の同窓会に参加するべきかどうか、逡巡していた。というのは、同窓会には恩師が招かれるのだが、小さな町だったゆえに、その恩師は実の父親なのだ。

 このストーリーは、2019年に確認された新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の蔓延が、治療薬の効果の確認により予防接種が進み、一段落した時期であるが、ステイ・イン・トウキョウがいつまた発令されるかもしれないという状況を背景にしている。読者にとっては実にリアル感を伴う状況であり、そうだろうな・・・と実感できるところが、読者を引き込む要因にもなる。刊行当初は特にそうだったのではないか。

 真世は婚約中で心が高揚している時期だと思うが、月曜日の午後、ある電話連絡を受け、愕然とする。名もなき町、生まれ故郷の警察からの連絡。父・神尾英一が自宅で殺害されたという。真世は急遽故郷に戻り、警察署の死体安置室で、親族として父親の確認を迫られることに・・・。
 3月初めの月曜日の朝、遺体の第一発見者で通報者となったのは、地元で酒屋を営む真世の中学時代の同級生、原口浩平だった。

 火曜日の朝、真世は刑事の依頼を受け、自宅の現場に赴く。父が使っていた居間は足の踏み場もないほどに様々なものが散らばっていた。現場を実見しつつ刑事たちの質問に答えなければならない。
 そんな矢先、現場にミリタリージャケットを着た男が現れる。その男は真世の叔父だった。住民票には、被害者英一の弟、神尾武史の名が記載されているのだった。突然に叔父が現れてきたことに、一瞬真世は驚く。叔父武史は真世の父英一からは12歳も年下の弟なのだ。
 武史は東京の恵比寿で「トラップハンド」というバーを経営していると言う。子供の頃に一度会っただけの叔父。父の説明では、マジシャンになるという夢を抱いて渡米したということくらいしか知らない叔父だった。その叔父がなぜ父が殺されたこのタイミングで突然現れたのか。
 刑事の質問に武史は「いわれなくても嘘をつく気はない。帰ってきたのは二年ぶりくらいだ。何となく帰る気になってね」「・・・どうしても理由がほしいというのなら、虫の知らせってことにしておこう」(p63)武史はけむに巻いたような返答をした。
 なぜこのタイミングで、と真世の抱いた疑問は、後に武史から明かされることになる。

 武史は実家での異変を推測して戻ってきて、実兄が殺害されたことを知った。この後、武史は名もなき町の警察に犯人究明を任せるのではなく、己で犯人を見つけ出すという行動に出る。その決意を真世に告げ、真世にも協力させて、行動を始める。、
 犯人の探求の頭脳部分は叔父の武史が担い、独自に行動する一方、指示を出して真世を探求の先鋒として駒のように使う。二人が協力して犯人の究明を行うというストーリーが進展していく。
 情報収集する過程で、武史は真世が参加を逡巡している同窓会、そこに参加する予定の同級生の中に犯人がいるはずだと、推理を煮詰めていくことに・・・・。

 このストーリーのおもしろさは、叔父武史の人格には疑問を抱き、いやな思いを味わいながらも、人の心理を的確に分析して見抜き、柔軟にその場その場で言葉巧みにシナリオを描き実行していく明敏な頭脳と推理力。様々な仕掛けを巧みに取り入れて情報収集をしていく凄腕。真世の行動への的確な指示と先読みの能力。真世が懸命に、警察や同級生との対応をこなしていく姿にある。警察と刑事は、結果的に武史への情報提供先にすぎない立場に後退していくところが、このストーリー展開の妙味とも言える。

 武史が犯人究明のために使う手口と仕掛けが実に興味深く、かつおもしろい。マジシャンの手練が実に巧妙に発揮されていく。それがこのミステリーの新機軸になっている。

 ストーリー進展の中で、真世が叔父武史にどのような印象を折々に抱いていくか。その箇所をスキャンニングして目に止まった範囲で抜き出してみよう。抽出ページの表記は省略する。
 ふつう姪にそこまでたかる?/ それぐらいの芸当は朝飯前だろう/ デリカシーがなさすぎる/ この叔父にはいくつもの顔があるようだ/ いい加減なところは多いが、この叔父は抜け目がなく頼りになる/ あの人物は謎が多い。油断できない/ 人間性は最低ではないか。まるで詐欺師だ/ 鍵師の技術まで持っているらしい。一体何なのか、この男は/  と、まあこういう印象として受け止められた叔父である。それが実像か、武史の演技かは、つかめない・・・・。

 とはいえ、神尾武史の人間心理への功名な働きかけ方と、鋭利な論理及び推理の展開が読ませどころになっていく。単なる元マジシャンとは思えない。こいつは何者?と言いたくなる。謎多き人物。おもしろいキャラクターが創出されたものだ。

 さて、この名もなき町の中学校の同窓会に集まる主なメンバーをご紹介しておこう。

本間桃子 主婦。夫は単身赴任。コロナ禍もあり子供と実家に帰省中と言っている。
     同窓会の幹事役の一人。本間は旧姓で、結婚後は池永姓。
原口浩平 「原口商店」という酒屋を継いだ経営者。酒の新製品販売方針を企画中。
     地元の「萬年酒蔵」とのタイアップのために急いでいる。
杉下快斗 あだ名はエリート杉下。IT企業を起業し成功。親は資産家。
     テレワークを標榜し、家族と一緒に帰省し、仕事を進めている。
釘宮克樹 中学時代は漫画オタクで漫画家志望。零文字アズマを主人公とする「幻脳ラ
     ビリンス」という漫画がヒットし、有名漫画家になる。
     この漫画シリーズはこの名もなき町をモデルにする作品。通称「幻ラビ」
九重梨々香 有名広告代理店「報通」に勤務。今は、「幻ラビ」関連の仕事を担当。
     釘宮の実質的マネージャー役としてふるまっている。美人。
柏木広大 地元の有力企業「柏木建設」の副社長。町興しのために、「幻ラビ・ハウ
     ス」建築を請け負うが、コロナ禍で建築中止となる。幻ラビ関連新企画を
     仲間と検討している。中学時代のあだ名はジャイアン。
沼川   地元で居酒屋を経営。
牧原   地元の地方銀行に勤めている。幻ラビ絡みで柏木と連携。
     中学時代のあだ名はスネ夫。

 当初の同窓会の計画では、この時に白血病で病死した津久見直也の追悼会を同窓会の途中で行うという案が出ていた。同窓会に招かれる恩師・神尾英一は、桃子にとっておきのは話をしようとだけ述べていたという。
 津久見直也と釘宮克樹は仲がよかった。
 恩師の死により、危ぶまれたが同窓会は実行され、津久見の母の申し出で追悼会は中止となる。
 
 神尾英一の姿をまねた武史が登場し、最後に実兄殺害の犯人について、皆の前で一人一人に質問をしながら、謎解きを進めていくという趣向がおもしろい。

 「エピローグ」の末尾は「黒い魔術師は颯爽と出ていった」という叙述で終わる。タイトルにあるブラック・ショーマンという語句は、ここに由来するようである。
 勿論、プロローグに照応しているエピローグであり、出ていくのは神尾武史。
 それが、どこの場所からか、観客に相当するのは誰かは、お楽しみに。
 読者に最後の最後にストーリーの結末のつけかたを託する The End に仕立てられていて、おもしろい。
 
 ご一読ありがとうございます。
 


こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『希望の糸』   講談社
『あなたが誰かを殺した』    講談社
『さいえんす?』   角川文庫
『虚ろな十字架』   光文社
『マスカレード・ゲーム』    集英社
「遊心逍遙記」に掲載した<東野圭吾>作品の読後印象記一覧 最終版
                      2022年12月現在 35冊


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『透明な螺旋』  東野圭吾   文藝春秋

2024-10-30 16:52:48 | 東野圭吾
 ガリレオシリーズ第10弾! 最近、2024年9月の文庫版刊行の新聞広告で知った。冒頭の表紙カバーは2021年9月に刊行された単行本。単行本の出版を見過ごしていたことになる。

  こちらが文庫本の表紙カバー

 ガリレオ先生こと物理学者の湯川学は、前作『沈黙のパレード』までは帝都大学の准教授だったと記憶する。本書では、湯川が帝都大学教授に昇進した以降に、横須賀にある両親のマンションにて、ある事情で同居生活を送っている設定になっている。このシリーズもまた、歳月をへてきている。

 プロローグは、ある女性が、かつて働いていた千葉にある紡績工場の近くの児童養護施設の小さな門前に、赤ん坊を捨て子にするまでの経緯が描かれる。東京オリンピックを経た後の華やかな時代に・・・、である。

 第1章は、島内千鶴子と娘・園香の母娘の話に転じる。千鶴子はシングルマザー。母は園香を生んだ経緯をちゃんと娘に伝えていた。千鶴子には心から信頼し慕っている女性がいた。子供の頃から園香はその人をスエさんと呼んでいた。母の千鶴子は過労からクモ膜下出血になり急逝。園香は上野の生花店で働きながら、デザインの専門学校に通う。
 生花店にやってきて、仕事の関係で花を探しているというスーツ姿の男性客の相談に園香は応じた。その後、その男性との交際が始まる。上辻亮太と言い、映像関係の仕事をしているという。二人の関係は同居生活に進展していく。千鶴子・園香の母娘が住んでいたアパートに上辻が移ってくるという形で・・・・。

 10月6日、南房総沖で漂流している遺体が発見される。捜査の結果、その遺体が上辻亮太と判明する。9月29日に、東京都足立区で上辻亮太の行方不明届が出されていた。同居の園香が提出していた。園香は友人と9月27・28日の二日間、京都旅行に出かけていた。帰宅後に上辻との連絡が全くとれないことから行方不明届を警察署に出していたのだ。

 上辻亮太の死は殺人及び死体遺棄事件として、千葉県警と警視庁捜査一課との合同捜査本部が開設される。草薙がこの事件を担当することになる。

 上辻亮太は、9月27日にレンタカーを借りていて、返却の28日を過ぎても返却がないことから、レンタカー会社は10月5日に被害届を提出していた。
 園香は10月2日朝、勤務先の生花店に突然休職を願い出ていて、その後行方が分からない状況となる。
 捜査の結果、園香の京都旅行は、東京で美容師として働く、高校時代からの友人・岡谷真紀との旅行であり、岡谷の証言から、園香のアリバイは判明し、上辻亮太の殺人に直接関与していないことは明らかになる。では、なぜ園香が行方をくらましているのか。
 殺人事件の捜査と園香の行方の追跡捜査が始まっていく。

 今回も、草薙は殺人事件と園香の失踪の究明のために、横須賀に居る湯川を訪ねていき協力を求めることになる。このシリーズの展開パターンに入るわけだが、今までとは異なり異色な要素が織り込まれていく。
 大学時代以来、草薙は湯川との友人関係を深め、捜査への協力依頼を通じて草薙は信頼関係を一層築いてきている。だが、その草薙は湯川の私生活面をほとんど知らないままできた。今回の事件における協力関係では、湯川の私生活面に一歩踏み込んでいく形になる。
 このシリーズを愛読している読者にとっては、ガリレオ先生・湯川の生い立ちにまで関わっていく側面が一つのインパクトになる。物理学者湯川学の人間的側面が色濃く出てくるのだから・・・・。

 このストーリーの特徴を挙げておこう。
1.草薙は警視庁捜査一課の一係長として、部下を率いてこの殺人及び死体遺棄事件を担当する。部下の内海薫が捜査活動で大きな役割を担っていく。湯川教授とのパイプ役も内海薫の担当となる。
2.島内園香が通っていた高校と亡くなった島内千鶴子がかつて働いていた児童養護施設での聞き込み捜査が、園香の周辺状況を解明していく糸口になる。
3.園香の友人岡谷真紀からの聞き取りで、絵本作家ナエさんの存在が浮かびあがる。ナエさんは亡くなった母千鶴子さんが慕っていた人と真紀は聞いていた。
4.失踪した園香が住んでいた部屋には同じ作者の絵本3冊が見つかった。作者の名前は「アサヒ・ナエ」。本名は松永奈江とわかる。
5.アサヒ・ナエ作の一冊の絵本の最終ページに参考文献が記載されている。そこに、『もしもモノポールと出会えたなら』湯川学(帝都大学)と!
 草薙は湯川が滞在している両親のマンションを訪ねる。協力を依頼する。
5.「母子家庭」がストーリー全体の構造を二重三重に織りなしていくキーワードとなる。母と子のつながり。

 本作でガリレオ先生・湯川が草薙の持ち込んだ殺人及び死体遺棄事件に関わりを深めて行くスタンスは、これまでの関わり方とは異質な側面を含む。事件の解明のための研究室での実験は全く出てこない。それよりも捜査に対する協力のしかたに人間的側面が大きくかかわっていく。もちろんそこに湯川の信念が大きく反映していく。ここが本作の読ませどころになる。物理学者湯川学という人物像に厚みが加わる一作といえる。

 プロローグは捨て子の場面だった。エピローグは湯川の母の葬儀に草薙が出向いた場面で終わる。草薙は、スマートフォンに内海薫より事件発生の連絡を受け、斎場から中座せざるを得なくなる。文末の二人の会話がよい!
 「すまん、線香ぐらいは上げたいんだが」
 「気にするな。君は君の戦場を優先すべきだ。僕も研究室という戦場に戻る」

 ガリレオシリーズ、この後は再び湯川の研究室場面がストーリーに登場してくることだろう。教授となった湯川の研究室がどのように描きこまれるのか。楽しみに待ちたい。

ご一読ありがとうございます。


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『希望の糸』   講談社
『あなたが誰かを殺した』    講談社
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『希望の糸』  東野圭吾   講談社

2024-09-12 15:43:11 | 東野圭吾
 先日、加賀恭一郎シリーズ第12弾『あなたが誰かを殺した』の読後印象記をまとめていたとき、第11弾の本書を見過ごしていたことに気づいた。そこで遅ればせながら、遡り本書を読んだ。本書は書下ろし作品で、2019年7月に単行本が刊行された。2022年7月に文庫化されている。
     

 まず本作構成の巧妙さが印象的である。そして、ストーリーに引き込まれていくと、エンディングの場面では涙せずにはいられなかった。

 加賀シリーズなので、加賀も加わる殺人事件の捜査がメインストーリーとなる。だが、この殺人事件捜査と並行して、2つのサブ・ストーリーが進行していく。一つは、「プロローグ」から始まっていく汐見家の物語。汐見行伸・怜子夫妻は、新潟県長岡市にある怜子の実家に遊びに出かけていた二子、小学6年生の絵麻と3年生の尚人を中越大地震で亡くす。その後、不妊治療の過程を経て、子を授かる。時が経ち、2年前に白血病で怜子がなくなり、汐見家は行伸と中学生の娘・萌奈の父娘家庭となった。この汐見家の物語が織り込まれていく。汐見家には、萌奈に関わる出生の謎が底流にあった。

 セクション「1」は、金沢にある料亭旅館『たつ芳』を経営する芳原家に転じる。2つめのサブ・ストーリーが始まる。『たつ芳』の現在の女将は一人娘の芳原亜矢子で、父は末期癌患者として病院の緩和ケア病棟に入院していて、死期は近いと予測されていた。医師と面談し、病室の父と会った後、亜矢子は脇坂法律事務所から連絡を受け、脇坂弁護士と面談する。脇坂が亜矢子に示したのは、公証役場で脇坂も立ち合い作成された遺言書だった。脇坂は、「亡くなる前にお父さんの気持ちを知っておき、今のうちにできるかぎりのことをしたいと思うなら、早い段階で内容を確認しておいくのも一つの手だ」(p32)と亜矢子に助言した。亜矢子は脇坂の目の前で、遺言書を開封し、内容を読む。最後のページで思わぬ氏名が目に飛び込んできた。松宮脩平。これを起点に亜矢子が行動を開始し、芳原家の物語が始まっていく。その根底にも出生の謎が秘めらていた。

 セクション「3」でメイン・ストーリーに転じる。加賀恭一郎の登場! だが、今回の捜査活動においては、加賀自身が中心となった捜査活動が描かれるのではなくて、警視庁の捜査一課に所属し、加賀を従兄とする松宮脩平刑事の捜査活動に焦点を当てて捜査が進展する。この点が今までとは異色な部分といえる。加賀は捜査本部で捜査の進展状況を取りまとめる立場で登場する。捜査について指示し助言する役回りである。捜査の要のところで、加賀の行動が捜査のターニング・ポイントになる役回りとなるのだが・・・・。
 遺体発見から約4時間後、1回目の捜査会議が開かれた。殺人事件の捜査が本格的に始動する。初動捜査段階でわかったことを記しておこう。

殺害現場 目黒区自由が丘の喫茶店『弥生茶屋』 去年が10周年。落ち着いた雰囲気の店
被害者  カフェの経営者・花塚弥生、51歳、離婚し一人暮らし、子供なし、
     栃木県宇都宮市出身、両親は健在でその地に居住、
遺体状況 背中にナイフが刺さっていて、大量出血。
     検視官は死後12時間以上経過と判断。ほぼ即死と推察。
     凶器のナイフは刃長20cm以上、シホンケーキなどを切るための道具
第一発見者兼通報者 富田淳子、40代半ば。友人と週に一度か二度店に行く常連客

 聞き込み捜査から、経営者・花塚弥生についての評判はすべて良かった。捜査が進むと、弥生が結婚していた相手は綿貫哲彦、55歳。江東区豊洲のマンション住まい。内縁の妻と同居、とわかる。聞き込み捜査が広がるとともに、弥生と親しかった常連客の一人に汐見行伸が浮上する。
 捜査本部の捜査分担で、松宮は鑑取り班の一員となる、松宮は綿貫と汐見への聞き込み捜査を担当する。そこから聞き込み捜査の範囲が広がっていく。

 メイン・ストーリーは、松宮が所轄警察署の若手の長谷部刑事とペアを組み捜査するプロセスに焦点を当てていく。松宮が加賀に捜査状況を報告し、加賀と松宮が事件に関して対話することが捜査を進める節目となっていく。事件の核心へと近づくにつれ、松宮には疑念が湧き始める。
「他人の秘密を暴くことが常に正義なんだろうかって。親子関係に関わるなら猶更だ。警察に、そんな権利があるんだろうか。たとえ事件の真相を明かすためであろうとも」(p284-285) 松宮が加賀にこう語る。それに対して、加賀は会話の最後に己の考えを松宮に告げる。
 「前にもいわなかったか。刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。取調室で暴かれるのではなく、本人たちによって引き出されるべき真実というものもある。その見極めに頭を悩ませるのが、いい刑事だ」(p285)
 「大事なことは、自分の判断に責任を持つ覚悟があるかどうかだ。場合によっては、真実は闇のままってこともあり得るからな」(p286)
 この会話が、この事件の核心に直結している。このように発言できる加賀恭一郎がこのシリーズの魅力であると私は思う。

 この悩みを松宮が抱くに至る捜査の進展が、本作の読ませどころと言える。
 
 このストーリーの底流には、人は他人の言葉や行動を誤解しがちであるというテーマが息づいていると感じる。そこから悲喜劇が始まっていく・・・・。

 最後に一か所、引用しておきたい。会話文である。
*たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると思えたら、それだけで幸せだって、その糸がどんなに長くても希望を持てるって。だから死ぬまで、その糸は話さない。   p350
 「希望の糸」という本書のタイトルは、この引用文に由来するものと思う。

 親子とは何かというテーマが、メイン・ストーリーとサブ・ストーリーを通じて描き込まれていると思う。

 ご一読ありがとうございます。

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『あなたが誰かを殺した』    講談社
『さいえんす?』   角川文庫
『虚ろな十字架』   光文社
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『あなたが誰かを殺した』     東野圭吾    講談社

2024-08-31 18:36:52 | 東野圭吾
 加賀恭一郎シリーズ第12弾となる。これが何冊目かと調べていて、前作『希望の糸』(2019年刊)を見過ごしていることに気づいた。このシリーズ、愛読シリーズの一つなのだけど・・・・。逆にいえば、読む楽しみが増えたことになる。
 さて、本書は、書下ろしとして、2023年9月に単行本が刊行された。

 本作、第10弾までの作品と比較すると、刑事加賀恭一郎の活動としては異色なストーリー。連続殺人事件の犯人は事件発生の一週間後に送検された。この他県で発生した事件には無関係の加賀が事件の真相解明に巻き込まれていく。そこからまずこのストーリーは異例である。他県での殺人事件の真相解明に加賀が取り組んでいくのはなぜか?

 事件の犯人は送検されてしまっていたのだが、犯行の全容が解明できたという明言を警察は避けている状況だった。そこで、被害者たちの遺族の一人、高塚俊策が発起人となり、遺族たちが集合し事件の「検証会」を開きたいという提案をした。遺族と関係者はその検証会実施を受け入れた。検証会には同行者2名を認めるという形だった。
 この事件で夫・鷲尾英輔を亡くした春那は、職場の先輩金森登紀子に相談を持ち掛けた。登紀子より加賀の紹介を受け、加賀と金森が同行者になる。金森が看取った患者の息子が加賀であり、その縁で個人的な相談にも乗ったことがあるという関係だった。金森が直前に家庭の事情で同行をキャンセルした。そこで加賀一人が春那に同行し、検証会に出席する。勿論、加賀はこの連続殺人事件について、マスコミ報道等で公表されている情報を一通り情報収集し調べていた。

 なぜ、加賀が自由に行動できたのか。それは、ある一定の勤務年数を経た者は1ヵ月間の休暇を取らなければならないという制度の対象者に該当し、長期休暇中だったのである。暇ですることがないというメッセージを金森は受け取っていたのだ。巧みな背景設定がなされている。すんなりと状況に入り込んでいける。

 このストーリーの冒頭には、ある別荘地で近隣の4家が恒例のバーベキュー・パーティーを開催する日の状況とその夜に連続殺人事件が発生する状況が描かれる。そして、高崎の発案による「検証会」実施へと進展する。
 この検証会で、警視庁の現役刑事である加賀は、全員からこの会合の司会者兼とりまとめの役目を任される。つまり、当日の事件発生の状況・経緯の検証を加賀の司会のもとに、参加した遺族と関係者たちが、己の記憶をもとに、何が起こっていたのかの事実と認識を語り、己の意見も明らかにしていく。全員で事件の経緯の検証作業が始まる。
 加賀はいわば検証のためのコーディネーターを担当し、己自身が刑事としての立場から情報の再整理をしつつ、内心で犯人の割り出しを遂行していく。遺族・関係者に質問をし、事件の経緯を整理しつつ、情報の欠落部分を明らかにし、真相に迫っていく。
 この検証会には、この事件を担当し犯人を送検した県警の榊刑事課長がオブザーバーとして参加する。彼は、捜査資料そのものは見せられないが、質問がある場合、必要に応じて捜査結果の情報を提供する役割を果たすことになる。それは、事件の事実経緯を鮮明にしていく一助となる。加賀にとっても、それは検証会での司会による情報の聞き出しと整理に加え、捜査情報を具体的に知り、己の推論の裏付けを明確にしていくことになる。加賀の力量を判断した榊刑事課長は加賀との連携を円滑に進めていく。
 「鶴屋ホテル」の時間的制約のある会議室で、話し合いを一通り終えると、食事会をした後、一旦解散となり、翌日、別荘地の現地検証が実施されていく。
 そして、バーベキュー・パーティーが行われた山之内家の庭で、事件についての総括が始まる。
 
 この検証会に参加する前に、春那は「あなたが誰かを殺した」という一行のメッセージを記しただけで発信者名なしの手紙を受け取っていた。この検証会で同種の手紙が遺族・関係者にも送信されていたことを知った。誰がこの手紙を送信したのか。
 本書のタイトルは、このメッセージに由来する。

 バーベキュー・パーティーの参加者と殺人事件の被害者(●)を一覧にする。負傷者には(△)を付した。

山之内家 山之内静枝   鷲尾春那    鷲尾英輔(●)
栗原家  栗原正則(●)  栗原由美子(●) 栗原朋香
櫻木家  櫻木洋一(●)  櫻木千鶴    櫻木理恵   的場雅也(△)
高塚家  高塚俊策    高塚桂子(●)  小坂均    小坂七海   小坂海斗

 多少付記すると、山之内静枝は春那の叔母で、夫の死後この別荘地を住居とする。春那たちは新婚のカップルだった。栗原朋香は寄宿舎生活をする中学生。櫻木理恵は的場雅也と婚約関係にあった。小坂一家は高塚の経営する会社の出戻り従業員。
 検証会に、栗原朋香は、久納真穂と称し寄宿舎の指導員という同行者と参加した。つまり、検証会の同行者は、加賀と久納の二人だけである。
 検証会は、上記一覧の遺族・関係者並びに、加賀、久納と榊刑事課長の参加で進行する。

 連続殺人事件が発生した翌日の夜、鶴屋ホテルのダイニングルームを訪れた男性客は、25,000円の『鶴屋スペシャルメニュー』を注文し、白ワイン『モンラッシェ』を水のごとくに飲み、20万円はくだらないはずの『シャトー・マルゴー』をこれまた胃袋に流し込むようにして飲んだ。食事を終えて、責任者を呼び、警察に連絡してくれと言った。証拠だと言い、皿の上に載せた血のついたナイフを見せて・・・・。
 男の名は桧川大志、東京在住、無職、28歳。別荘地で起きた殺人事件の犯人は自分だと供述。生きている意味を感じないので死刑になりたいという願望を持っていたことと、自分を蔑ろにした家族への復讐が犯行に至る動機であると言う。彼は殺す相手は誰でもよかった、とにかく目についた人間を刺し殺そうと思い実行したと語るだけだった。桧川の示したナイフには、栗原正則と由美子の血が検出された。
 ストーリーの導入部で、殺人事件の犯人が最初に名乗りを上げて出てくるパターンでこのミステリーが始まる。このパターン自体は一つの類型である。

 なぜ桧川はこの別荘地で事件を起こしたのか。供述通りの単独犯なのか。それとも。どこかで、この別荘地の所有者との共犯なのか。現場の遺留品捜索にも関わらず、犯行に関わるナイフという証拠物件で発見できないものがあるのはなぜか・・・・。
 多くの謎が残されたままで、検証会が始まっていく。

 別荘所有者族の優雅な生活。優雅にお互いを尊重する社交が華やかに繰り広げられていくが、その裏面では互いに嫉みあい、批判的な観察と中傷を繰り広げているネガティブな側面、また、計算づくでの付き合いという側面が、検証会の場を通じて徐々に明らかになっていく。さらに、それぞれの家の内部事情が暴露されていくことで、それぞれの人間関係の明暗両面が見え始めていく。だが、そこに真相を解明するヒントが含まれていた。様々なお互いの欲望が背景で蠢いていたのだ。

 加賀は、今まで見えなかった側面が少しずつ表に現れていくように司会を進めていく。事件の経緯事実を再確認し、事実の整合性を見つけ出すことを参加者たちと共有しながら、検証を深めていく。ミッシング・リンクに気づき、それを見つけ出し、事実の間隙を埋めていく緻密な作業が、検証会で進行する。加賀にとっては、情報を整理し、同じ土俵の上で、尋ねることが唯一の武器なのだ。

 そこに思わぬ事実が明らかになってくる。読者にとってはどんでん返しの連続といえようか。エンディングが極め付きのどんでん返しとなる。加賀の心境や如何と推測したくなる。記されてはいないが、加賀の心境はやるせないのではなかろうか・・・・・。

 刑事加賀恭一郎の活躍の新たな局面を楽しめる作品になっている。既存の警察小説の捜査の定石的描写の累積によるストーリー構築とは一味異なり、一歩踏み超えた次元での捜査事実の再解釈、再統合という展開がおもしろい。これもまた警察小説の範疇だろう。
 本作もやはり一気読みしてしまった。
 ご一読ありがとうございます。


こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『さいえんす?』   角川文庫
『虚ろな十字架』   光文社
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『さいえんす?』  東野圭吾  角川文庫

2024-04-14 18:23:25 | 東野圭吾
 おもしろいタイトルの小説かと思って本書を開いてみたら、科学の視点と科学ネタを絡めたエッセイ集だった。手元の文庫は平成21年(2009)10月の第14版。平成17年(2005)12月初版発行である。「ダイヤモンドLOOP」「本の旅人」に掲載された連載を収録した文庫オリジナル。
 エッセイに付された初出の日付をざっと見ると、両誌で2003年4月号~2005年9月号の期間に連載されていたようである。

 このエッセイ集を読み、私的におもしろい、興味深いと思った点をまとめてご紹介しよう。
1.文庫本としては普通に縦書きの本なのに、目次は横書きになっている。サイエンスの本は横書きの本が多いから、『さいえんす?』の目次を横書きにしたのだろうか。それとも意図的に違和感を演出しているのだろうか。見かけないスタイル!

2. 科学に関するあれこれエッセイと言いながら、<北京五輪を予想してみよう> <堀内はヘボなのか?> <ひとつの提案>など、メダル獲得予想や野球の予想に関わるエッセイなど脇道に入ったエッセイもある。連載された当時の雰囲気が感じ取れ、懐かしめる。

3. ミステリー作家の視点で、科学技術の進歩が、創作に対して大きく影響を及ぼす側面を語っている。
 <科学技術はミステリを変えたか>
  携帯電話、デジタルカメラ、交通機関の発達、インターネットの広がりなどの科学
  技術と小説の構想、トリックの工夫との関係を作家の立場、舞台裏から語っている。
  「もっとも、作家が現実を追い越し、小説中で新犯罪を予見した、というケースは
  極めて稀だ」と末尾で述べてはいる。
 <ツールの変遷と創作スタイル>
  作家として手書きからいち早くワープロへ、さらにパソコンへと転換した体験談を
  語る。特にかな入力を選択した理由を述べている。ツールが進化しても、楽になら
  ない側面が、このエッセイのオチになっている。
 <嫌な予感>
  科学捜査による身元特定を話材にする。特に、DNAに光を当てていく。
  「彼等(=役人)は政治家を操り、国民全員のDNAデータを揃えようとするので
  はないか」(p36)という危惧まで飛び出してくる。無いとは言えない・・・。
 
4. 携帯電話やインターネットは疑似コミュミケーションと論じている。
 冒頭に、<疑似コミュニケーションの罠(1)> <疑似コミュニケーションの罠(2)>が取り上げられている。インターネットの掲示板、出会い系サイト、携帯電話、電子メールなどを俎上にのせて、「生身の人間同士のコミュニケーションが確立されているという前提」(p18)の重要性を論じる。「間違っても、『新しいコミュニケーション』などという表現を使ってはならない」(p18)と著者は言う。

5. 当時の時代状況を反映するテーマが取り上げられていて科学と絡めて語られる。
 <教えよ、そして選ばせよ>
  自宅のマンションの回覧「夏の電力供給不足による停電問題が起こってしまったら」
  に絡めて、原発問題、あらゆる危険姓とその確率の公表が論じられている。
 <何が彼等を太らせるのか>
  様々なダイエット法の氾濫に目を向けたエッセイ。末尾の一文がアイロニカルだ。
  「我々はいつまで馬鹿げたマッチポンプを続けるのだろうか」(p67)
 <人をどこまで支援するか?>
  カーナビと運転支援装置の開発、自動車の電子制御の現状が話材になっている。
  このエッセイの結論がおもしろい。近未来予測としてのドライバーの弁明発言だ。
 <滅びるものは滅びるままに>
  江戸時代には黄色い朝顔があったということをネタに、絶滅種の復活、クローンを
  論じている。一方で、冷徹に言う。「自然破壊が終わるのは、人間が絶滅した時だ
  ろう」(p79)と。
 <調べて使って忘れておしまい>
  自己の利用体験を踏まえて、電子辞書の功罪を語るエッセイ。そして、末尾の文が
  おもしろい。「彼等(=子供たち)の脳の発達に関しては、大人たちに責任がある
  のだ」(p85)と着地させる。
 <少子化対策>
  「少子化に歯止めをかけるには、女性が出産を検討できる期間を大幅に広げるしか
  ない、と私は考える」(p104)というのが著者の主張である。
 <大災害! 真っ先に動くのは・・・・・・>
  大震災の直後に起こる様々な事象を取り上げている。その上で結論づける。真っ先
  に動くのは詐欺師だと。ウ~ン、ナルホド。嫌な現象だが頷かざるを得ない。
 <誰が悪く、誰に対する義務か>
  このエッセイで著者がスノーボード好きということを知った。雪に引っかけて、温
  暖化問題が論じられている。末尾に若者側の主張を提示し、「この正論にどう答え
  ればいい?」(p141)と読者に投げかけている。
 <もう嘆くのはやめようか>
  2005年6月から実施される特定外来生物被害防止法に絡めて、外来種の放置に伴う
  問題を取り上げたエッセイ。末尾は悲観調である。
 <ネットから外れているのは誰か>
  500円硬貨の偽造事例から技術者たちの過信について論じ、コールバック・サービ
  スの問題事例に展開する。外れているのは誰かの指摘がオチになっている。
 <今さらですが・・・・・>
  血液型性格判断は全く科学的根拠がないのに、繰り返しブームが起こっている実態
  を取り上げているエッセイ。最後のオチがおもしろい。
 <どうなっていくんだろう?>
  2000年問題、2007年問題が論じられている。今から見れば遙か過去の話。だけど、
  このエッセイを読み、職人達の「勘」は、本当に数値化・技術化でき、コンピュー
  タ技術の中に組み込むことができたのだろうかと、改めて疑問に思う。

6. 著者の経験と絡めて論じられているエッセイにも、おもしろい視点が押さえられている。<数学は何のため?> <誰が彼の声を伝えるのか> <理系はメリットか> <二つのマニュアル> <42年前の記憶> これらのエッセイは著者の背景を知る上でもおもしろい。

7. 作家という立場に絡んだ主張も語られている。
 <ハイテクの壁は、ハイテクで破られる>
  書店の激減傾向、そこに万引きが絡んでいること。それに対する対応策としてのI
  Cタグの検討。だが、必ずハイテク破りが出てくることを論じている。著者曰く「
  犯罪防止にはローテクが一番だと思っている」(p54)と。
 <著作物をつぶすのは誰か>
  貸与権が認められているのは音楽や映像に対してのみだそうだ。貸与権を出版物に
  も適用することを主張。この点を論じている。「一冊の本を何千人に貸そうが、作
  家に入るのは一冊分の印税でしかない」(p58)書籍の電子書籍化に懸念を提起し
  ている。
 <本は誰が作っているのか>
  収録エッセイの最後がコレ! 著者の論点は実に明解。「この世に新しい本が生み
  出されるのは、書店で正規の料金を払って本を買ってくれる読者の方々のおかげで
  ある」(p186)
  とは言え、新刊書も買うけれど、図書館や新古書店も愛用するなあ・・・・・。

 20年ほど前の科学ネタと含めたエッセイ集だが、そこに含まれる視点は決して古くはない。問題指摘は今も生きていて、連続していると思う。
 気軽に読めるエッセイ集である。

 ご一読ありがとうございます。

こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『虚ろな十字架』   光文社
『マスカレード・ゲーム』    集英社
「遊心逍遙記」に掲載した<東野圭吾>作品の読後印象記一覧 最終版
               2022年12月現在 35冊

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