遊心逍遙記その2

ブログ「遊心逍遙記」から心機一転して、「遊心逍遙記その2」を開設します。主に読後印象記をまとめていきます。

『浄瑠璃寺の365日』  佐伯功勝  西日本出版社

2024-05-27 14:40:56 | 宗教・仏像
 奥書のタイトル表記は標題の通りであるが、表紙と背表紙には、「石仏の里に佇む静寂の寺」という冠語句が記されている。浄瑠璃寺は探訪したことがある。まさにそんなお寺だなと思う。浄瑠璃寺という寺名をご存知ない人には、「石仏の里」という言葉が魅力を加えることになるだろう。
 池の西側に横長の本堂が見え、そこに九体の阿弥陀如来坐像が祀られているお寺。九体阿弥陀堂は平安時代に幾つも建立された歴史があるが、現存するのはここ浄瑠璃寺の本堂だけという。ひょっとすると、九体の阿弥陀仏よりも、年に3回、厨子の開扉期間にのみ拝見できる秘仏・吉祥天女像の方がよく知られているかもしれない。

 本書はお寺の365日シリーズの一冊として2023年7月に刊行された。
 カバーの裏の折り込み部分には、興福寺、金峯山寺、大安寺という3寺の先行本が紹介されている。

 本書は浄瑠璃寺の現住職が、浄瑠璃寺について語ったエッセイ集である。
 ここには浄瑠璃寺の365日の日々の営み、浄瑠璃寺の沿革、浄瑠璃寺の立地、現在のお寺の伽藍や池、境内で眺められる季節の花々、境内で一番広い面積を占めている池について、浄瑠璃寺とこの石仏の里周辺のお寺について、また諸寺との関係について、著者の子供時代の心象風景、お寺という存在について・・・等が、静寂の寺と照応するかのように、淡々とした平静な筆致で綴られていく。難解な語句はほとんど出てこない。平易な文で語られている。祖父から三代目のお寺の子としての思い出も含め、浄瑠璃寺について、いろんな視点から見つめた本である。

 目次の続きに、池越しの本堂全景、三重塔の正面全景、池三景と浄瑠璃寺伽藍(案内図)がまず載っている。そのあと、エッセイの内容に照応する形で、適宜、写真が併載されていく。境内の四季の変化、境内の四季の花々、秘仏として扱われている、大日如来像・薬師如来坐像・厨子入義明上人像・厨子入弁財天像・地蔵菩薩立像・役行者三尊像・厨子入吉祥天女像の諸像、また、九体阿弥陀如来坐像、延命地蔵菩薩立像、四天王像、子安地蔵菩薩像、不動明王三尊像、馬頭観音立像が載っている。
 「当尾の里の石仏」と題して、石仏の里に佇む石仏たちも紹介されている。
 巻末には、「浄瑠璃寺花ごよみ」と「浄瑠璃寺略年表」が併載されている。
 結果的に総合的な浄瑠璃寺ガイドになっている。
 
 このエッセイ集を読み、知ったこと、再認識したこと、並びに印象に残る一節をご紹介しておきたい。
 まず、知ったことと再認識したこと。
*浄瑠璃寺の境内にある池(外周約200m)の水は湧水であること。
*浄瑠璃寺の本寺(本山)は、中世より明治初頭までは奈良の興福寺(法相宗)で、それ以
 降は奈良の西大寺(真言律宗)になった。
*九体阿弥陀仏の中尊の光背は「千体光背・千仏光背」と呼ばれる。
 令和2年度の修理で、寛文8年(1668)の後補と判明。千仏個々には願主が存在した。
*平成期に飛び地境内に地蔵堂を建立した。 
*顕教四方仏の世界観
  東の薬師と西の阿弥陀は「相対的な時間軸」 太陽の運行、繰り返しの生死観
  南の釈迦と北の弥勒は「絶対的な時間軸」 過去の釈迦から未来に出現する弥勒
*寛文6年(1666)に本堂の屋根が桧皮葺きから瓦葺きに改変され、建物の構造変更の工事
 などもこの時に行われた。
*平成20年代に約10年がかりで庭園整備が行われ、その折に弁財天の祠の修理を実行
*発掘調査により、以前は本堂前に通路がなく水際が近くまであり、そこに州浜が造
 られていたことが判明した。現在の水際付近に州浜を復元する折衷案で整備された。
*鐘楼の鐘は昭和42年(1967)に再興 ⇒もとの鐘は戦時中に金属供出の対象に
*平成20年(2008)に三重塔内にアライグマが入り込み巣作りして被害を及ぼした。
*境内に咲く花の多くは「野生の」、またはそれに準ずる品種である。
   ⇒その花の多くは通路の脇、足元で咲くことが多いとか。

 エッセイ中の印象深い一節をいくつか引用する。
*参拝の方々に花に関わる話をする際には、こういった足元に咲く花にも目を向けてほしい、とよくお願いしている。花に限らず、目立つものや一番多いものを見て納得してしまうのでなく、頭上や足元、全方位を意識する広い視野が何ごとに対しても大事だと。p28

*いわゆる明治政府の発した神仏分離令は、それまでの日本の信仰のあり方に大きな歪を生み、それは現在にも続いている。一方を否定し、一方を礼賛することの不条理、危険姓を見ることができる例だと思われる。・・・・・お互いが尊重し合い、わかり合おうとする努力、それを続ける限り争いは起こらない。  p31

*顕教と密教、この2つの教えが重なって、浄瑠璃寺全体の世界観となっている。p146
  ⇒ 東の三重塔内に秘仏薬師如来、西の本堂に九体阿弥陀如来
    飛び地境内に地蔵堂。将来は更にその北側に弥勒菩薩を祀るお堂の建立構想
    境内北の灌頂堂には密教(真言系)の大日如来

*正直自分の寺の宗派以外と接する機会が少なく、わかっていないことも多い(自分の宗はですら心許ないが)
 宗教に限った話ではないが、全体の姿と、今自分がいる位置を俯瞰的に見る習慣を持つことはとても大切だと感じている。偏りすぎず、こだわりすぎず、広い視野と気持ちの余裕を持って。  p147

 エッセイを通して、読者が浄瑠璃寺に親しみをもてる内容に仕上がっていると思う。
 本書を読んでから浄瑠璃寺を訪れれば、市販観光ガイドブックとは一味違う浄瑠璃寺に触れられるのではないだろうか。

 ご一読ありがとうございます。

補遺
浄瑠璃寺(木津川市) :「京都やましろ観光」
浄瑠璃寺  :「木津川市」
浄瑠璃寺について  :「京都南山城古寺の会」
浄瑠璃寺  :ウィキペディア
九体阿弥陀仏に込められた人々の願い  1089ブログ :「東京国立博物館」
国宝 阿弥陀如来坐像(九体阿弥陀)  :「TSUMUGU Gallery」
秘仏 吉祥天女立像(秋季)(浄瑠璃寺)  :「祈りの回廊」

 ネットに情報を掲載された皆様に感謝!

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


もう1つの拙ブログ「遊心六中記」で浄瑠璃寺の探訪をまとめている。
こちらもご覧いただけるとうれしいです。
歩く&探訪 [再録] 京都・木津川市 加茂町 -1 まず常念寺へ
  6回のシリーズとして探訪記をまとめた。
  その中で、
  歩く&探訪 [再録] 京都・木津川市 加茂町 -5 浄瑠璃寺  を記している。

  
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『千里眼の水晶体』  松岡圭祐  角川文庫

2024-05-25 21:21:38 | 松岡圭祐
 千里眼新シリーズが始まった時、この第3弾までの3冊が一挙に刊行された。つまり、本書もまた平成19年(2007)1月の刊行である。

 今年、78歳になるジェフリー・E・マクガイアが回想する。それは終戦直後の1945年8月20日に、日本国内の夏場でも涼しげな気候の山村で行った軍事行動の記憶。日本軍が開発した生物兵器”冠摩”を秘匿する建物と兵器を確保せよという命令だった。冠摩は日本軍がインドネシアの蚊から抽出したウィルスを培養させたもので、このウィルスは亜熱帯性の気候と気温のなかでなければ生きられないという。
 実際の軍事行動は、呆れるほど小さな木造の小屋から、ミルクのビンくらいのサイズ、コルクの蓋で液体が入っていったビンを確保するだけで終わった。小屋の番人だった一人の日本兵は、ライフル銃と拳銃を乱射した後、日本刀で自決した。何とも不可解な記憶なのだ。この回想がいわばプロローグ。読者にはこれがどのように繋がるネタなのか予想もつかない。

 ストーリーは、国土交通省航空局の職員で羽田空港事務所に勤務する米本亮が、臨床心理士会事務局を訪れるところから始まる。着陸した飛行機から外に出たがらない乗客に対応するために臨床心理士に臨場を要請する依頼だった。応対した舎利弗浩輔は岬美由紀を推薦した。同僚と喫茶店に居て、山形県での大規模な山火事のニュース映像を見ていた岬美由紀は舎利弗から電話連絡を受け、羽田空港に急行する。
 美由紀は篠山里佳子という極端な不潔恐怖症の女性に対処し、飛行機から空港近くのホテルへの移動を納得させる。だが、部屋に入るなり、バスルームに駆け込み、シャワーを使いつづけるという状況。夫の篠山正平は、山形を本社とする古美術品買い取り業の会社の課長で、東京支社設立により転勤となり、妻と一緒に、東京で住む場所を探しに来たという。
 その状況の中に、山形県警の葦藻祐樹警部補が現れる。その葦藻の風姿は里佳子からすれば真っ先に不潔なイメージを誘発させるものだった。ここらあたり、読者を楽しませる設定になっている。葦藻は山形県の山火事は放火であり、実行犯と見られる容疑者は既に身柄を拘束されていて、その犯行に篠山里佳子の関わりがあるとみられている言う。
 篠山夫妻を観察している美由紀には、彼らが嘘をついていないと分かっている。葦藻は篠山里佳子を現地に同行し、任意で事情を聞きたいと主張する。美由紀は現状で里佳子を現地に同行することは土台無理な話と判断し、里佳子の話を聞いておき、美由紀が現地に代行として行こうと主張する。それが契機となり、美由紀は山形県の山火事事件の捜査に巻き込まれて行く。
 葦藻は目撃証言と入手証拠をもとに、里佳子の関与を裏付けようと試みていくが、美由紀が次々に反論を繰り出していく。さらに、放火の容疑者に美由紀は会わせてもらうことで、容疑者の竹原塗士の自白が嘘であると見抜く。このストーリーで、まずこの反論プロセスが読ませどころとなる。おもしろい。

 美由紀が山形県に居る間に、東京では緊急事態が発生していた。美由紀と篠山正平は、警視庁のヘリで来た米本に言われ、急遽東京に引き返す。千代田区立赤十字医療センターに直行する。美由紀たちは血液検査の後、予防接種をした上で、化学防護服を着こむという手順を踏まされる。篠山里佳子は顔中に赤い斑点を発症させていた。息はあるが、意識はほとんど不明という状態に陥っていたのだ。
 何と、その総合病院に、美由紀の友人雪村藍が緊急搬送されてきた。由愛香が付き添って来ていた。雪村藍の症状は里佳子の症状とうりふたつだった。

 千代田区立赤十字医療センターの20階の大会議室で防衛省の関係者と美由紀は会うことになる。そこで、防衛大学の授業でも触れられていた冠摩というウィルス兵器について極秘事項として聞かされた。現在の緊急事態がその冠摩を原因とする感染だという。
 不潔恐怖症の悩みをもつ人々が真っ先に感染する状況が急激に進行していた。
 山形県内でも同種の症状が続出しているという。葦藻が美由紀にその後の竹原の自供内容を連絡してきた。その時にこの症状に触れた。さらに竹原は西之原夕子という女のことを自供したという。その女がこの症状のことを口にしていたことも。

 これは生物兵器”冠摩”の成り立ちや効果を知る者の計画的犯行なのか。そうだとすれば犯人は? 冠摩の開発段階で症状を中和するワクチンの研究はなされていたのか? 
 葦藻が伝えてきた情報をきっかけに、美由紀の行動が始まっていく。
 そして、すべての事象が連関して行く事に・・・・。意外な事実が根源にあった。
 本作の読ませどころは、一筋の糸口が確かな解明への道筋に転換していくプロセスにある。次々に意外な連関が明らかになっていく。
 美由紀が戦闘機を自ら操縦し、手がかりを求めてハワイ・オハフ島に飛ぶことに!!
 冠摩を原因とする感染を阻止する治療法を解明するためのプロセスが読ませどころである。読者を一気読みへと突き進ませる。

 このストーリーの興味深い点は、美由紀が直面させられる
「本心を見抜けなかったわけではない。見抜いていたから真実に気づけなかったのだ」(p183)
という思いにある。

 この美由紀の思いの直前に、美由紀に投げつけられた揶揄がある。
「・・・・なんにも気づいていなかったの? ・・・・千里眼が本心を見抜けないなんて、どうなってんの? いっぺん眼科に診てもらえば? 角膜に異常がなければ、水晶体がおかしくなってるのかもよ」(p183)
タイトル「千里眼の水晶体」はこの揶揄に由来すると言える。

 読了後に振り返り、読者の思考を右往左往させるプロットの組み立て方が実に巧妙だと感じた次第。楽しめる作品である。

 ご一読ありがとうございます。

こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『千里眼 ファントム・クォーター』  角川文庫
『千里眼 The Start』 角川文庫
『千里眼 背徳のシンデレラ 完全版』 上・下  角川文庫
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅸ 人の死なないミステリ』 角川文庫
『千里眼 ブラッドタイプ 完全版』   角川文庫
『千里眼とニアージュ 完全版』 上・下  角川文庫
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅷ 太宰治にグッド・バイ』  角川文庫
『探偵の探偵 桐嶋颯太の鍵』    角川文庫
『千里眼 トオランス・オブ・ウォー完全版』上・下   角川文庫
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅵ 見立て殺人は芥川』   角川文庫
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 Ⅶ レッド・ヘリング』  角川文庫

「遊心逍遙記」に掲載した<松岡圭祐>作品の読後印象記一覧 最終版
                    2022年末現在 53冊
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『SEEING SCIENCE 科学の可視化の世界』 ジャック・チャロナー  東京書籍

2024-05-24 14:00:00 | 科学関連
 210mm×257mm という寸法のAB判の大きさの本。一言で言えば、科学に関わり普通では見えないものを見える形にした写真集である。2023年7月に翻訳書が刊行された。
 タイトルに惹かれた。ちょっとお高い本なので、図書館で借りて読んだ。

 「はじめに」はまず「眼で見ることの重要性」について語る。
 レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉を引用することから始め、その次に1911年に『ニューヨーク・イヴニング・ジャーナル』紙の編集者アーサー・ブリスベンが広告主の集まりで告げたという言葉を引用する。「写真を使いましょう。写真は千の言葉に値します」。これは「科学でも力を発揮する」と著者は言う。そして、「本書では、160以上の例を挙げながら、科学におけるイメージ(画像)の重要性と利用法について探っていく」(p8)と述べている。その通りの本!ほぼ全ページに画像が掲載され、それも、私たちが今までに見ることがなかった画像ばかりである。本書ではこれらのイメージ(画像)は科学の知識を売り込むため、人々を科学に導くためのトリガーとして使われている。

 本書は、次の4章構成にまとめられている。
  1 「見えない」を「見える」に変える
  2 データ・情報・知識
  3 数理モデルとシュミュレーション
  4 科学にけるアート

< 1 「見えない」を「見える」に変える >
 人間の目には限界があり、視力にも限界がある。最初にこの点を明確にする。目の限界は、波長、感度、分解能の3つの限界。視力に限界があるのは誰もが体験から知る通り。それを乗り越える道具・装置などが次々に発明された。ます顕微鏡と望遠鏡。ここでは、顕微鏡を使ってスケッチを描いた科学者の事例から始める。電子顕微鏡、連続写真、高速写真、ハップル宇宙望遠鏡や太陽望遠鏡その他様々な装置を使って撮られた写真が続いていく。本書では、まさに普段「見えない」ものが「見える」写真として、可視化されて提示され、説明が加えられていく。それは科学の成果と知識への誘いである。
 報道などでの見聞を踏まえて、比較的イメージしやすいかもしれない写真事例を本書から取り上げてみよう。連想されたイメージとの差異を本書でご確認いただくのも一興だろう。「リンゴを貫通する弾丸の高速写真」「新型コロナウィルスSARS-CoV-2の疑似カラーSEM」(2021年)「太陽の高解像度画像」(2017年)「ペルーのミイイラをコンピューター断層撮影(CT)した疑似カラーイメージ」(2011年)が掲載例である。

 宇宙からやってくる塵についての写真が掲載されていて、隕石と流星塵についての解説文が載っている。こんな一節がある。「毎日10トンから数百トンもの宇宙塵が大気に突入しているが、その多くは非常に小さいので、空中に留まり、陸からの風で舞い上げられた砂や土と混ざり合っている。そのため、宇宙塵は航空機で採集することが可能で、高空で採集すれば、地上からの粒子が混ざることが少ない」(p47)そうだ。私はこんなこと初めて知った。今まで考えたことがない領域の一例である。
 本書は、私を異世界に誘ってくれた。

< 2 データ・情報・知識 >
 冒頭はこんな文から始まる。
”英語の「science(科学)」という言葉は、ラテン語の「scientia(知識)」に由来する。つまり、私たちの生きるこの世界についての知識を探求することが科学だ。”(p81)
 科学は「データ・情報・知識・知恵」(DIKW)ピラミッドと称される階層を成していると述べ、データを可視化する意味、その重要性を事例を通して明らかにしていく。この章も私には初見のイメージ(画像)ばかり!
 事例をピックアップする。「太陽、月、惑星の動きを示す図」(10世紀か11世紀の作)「史上初の海盆の断面図」(1854年)「過去1000年間の地球の気温を示すグラフ」(1999年)「ヒトの脳のトラクトグラム」(2006年)「アメリカの麻疹患者数を表したストリームグラフ」(2022年)「地球の海洋地殻の年代を示す地図」(2008年)「ヘルツシュプルング=ラッセル図」(1910年頃)「簡略化した生物進化の系統樹」(2017年)など多領域に及ぶ。
 この章で著者は次の点を指摘している。「」は引用である。
*「科学分野のデータには、例えば、距離、速度、電荷、時間を計測したもの、動物の行動、星の色を観察したものなど、さまざまな種類がある。そうしたデータの重要な用途の1つが、標準指標(モノサシ)の作成だ。」 p82
 「現代の科学的方法のルーツは16世紀にあり、同じく台頭する経験主義哲学とともに発達してきた。経験主義とは、すべての知識はこの世界での経験に由来する、アポステリオリ(「より後なるものから」)だとする考え方である」 p82
*データベースの構築と、よく使われる直交座標系の方法や様々な方法によるデータの可視化が、仮説を生み、体系的な検証を可能にした。コンピュータがビッグデータの蓄積、分析、マイニング(発掘)の上からもますます重要性を増している。 p84,p102
*「情報は一般的に文脈や意味をもつデータと定義される。・・・・・情報の可視化は、データの可視化とは違って、見る人になんらかの影響を与える意図があるか、ほかの科学者が参考資料として利用することを目的としていることが多い」 p116

< 3 数理モデルとシュミレーション >
 代数方程式を使えば、現実世界の現象を「モデル化」することができ、この数理モデルにより、現実世界の系をシミュレーションできる。この章では、コンピュータ・シュミレーションの結果を可視化したイメージを様々な領域から事例として抽出し提示する。
 例えば、次の可視化イメージが印象的である。「H1N1ウィルスの分子動力学モデル」(2015年)「DNAに影響を与えるイオンのシミュレーション画像」(2013年)「腫瘍のシミュレーション画像」(2017年)「小惑星衝突のシミュレーション」(2017年)「南極氷床の流動シュミレーション」(2020年)「銀河の衝突:実際のものとシミュレーション」(2015年)「暗黒物質の密度分布のシミュレーション」(2020年)「超音速飛行による衝撃波のシミュレーション」(2020年)「パーペチュアル・オーシャン(永遠の海)」(2011年)

 仮説を検証する方法として、シミュレーションという新たな方法が重要な役割を担っているのだろうなということを具体的科学的にはわからなくても感じ取れるセクションである。

< 4 科学におけるアート >
 科学の可視化がアートの想像力、創作力に影響を与え、またアートと科学が融合して作品が生まれている。そんなフェーズを取り上げている。
 この章で印象的なイメージを幾つか抽出してみよう。「ヤママユガとナガバディコ」(1705年)「海底を描いた絵画」(1977年頃)「神経断面の水彩画」(2020年)「レンチキュラー印刷『Heartbeat(鼓動)1.1』」(2010年)「偏向フィルターを用いたデジタル写真『Life Tales(生命の物語)』」(2014年)「T4バクテリオファージ」(2011年)「ケツァルコアトルス・ノルトロビの復元図」(2016年)「アウストラロピテクス・セディバの3次元復元模型」(制作年不明)「オウムアムアの想像図」(2017年)「天の川銀河の想像図」(2013年)

 実にさまざまな可視化画像を満載する。「見えないもの」を「見える」に変えた結果の集成がこの一冊。イメージ(画像)に添えられた解説文の字面を通読したが、その文意を十分に理解できたとは思えない。何となく意味を感じ取ってイメージ(画像)を眺め、読み進めたにしかすぎない。しかし、可視化の重要性はなるほどと思う。難しい理論、理屈よりも、イメージ(画像)から科学の世界への関心を深める入口となる一書である。
 何よりもイメージ(画像)に好奇心を喚起された。まず楽しめる。

 ご一読ありがとうございます。

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『紫式部の実像』 伊井春樹  朝日新聞出版

2024-05-23 12:20:00 | 源氏物語関連
 本書のタイトルには、「稀代の文才を育てた王朝サロンを明かす」という長い副題が付いている。本書は、2024年2月に朝日選書1041として刊行された。

 「はじめに」の冒頭は次の文から始まる。
 「紫式部とは、どのような人物だったのだろうか。どのような環境に生まれ育ち、いかにして漢籍、和歌、物語文学のほか、さまざまな有職故実に堪能な女性として成長したのだろうか」この問いかけが本書のテーマである。だが、最初のパラグラフの末文は、「そのいきさつをはじめ、紫式部の生まれた年や名前などもまったく不明といわざるをえない」と明記する。そこから「紫式部の実像」探求が始まる。現存する史資料を駆使して、実像に迫ろうとした書である。史資料を基盤に、根拠を明示した上で、著者の論理と推論が重ねられて行く。そこからうかがえる実像が明らかにされた。ここには学究的なスタンスが貫かれている。
 
 紫式部の実像として、端的な事例を第11章から取り上げてご紹介する。『紫式部日記』の中で、紫式部は清少納言批判を記している。このことは以前に他書でも触れていて、読んだ記憶がある。本書ではその箇所を引用した上で、著者は次のように説明している。
 「紫式部の清少納言に対する評価は異常といってもよく、すでに五、六年前に清少納言は宮仕えをやめているため、現実に対面したことはなく、それでも執拗に厳しいことばを連ねる。紫式部はもっぱら『枕草子』と女房からの話が情報源であったはずで、直接交流したことのない彼女に対し、感情的とまで思われるような口吻で批評する」(p290-291)と。そして、この記述について、「道長から宮仕えを求められた折、中宮彰子を、かつてはなやかだった定子文化サロン以上にし、具体的に清少納言をもちだし、匹敵する働きをするように厳命されたのではないかと思う」(p291)と、紫式部の批評ぶりから著者は推論を推し進めている。
 これを「実像」の一側面と捉えると、現在NHKの大河ドラマ「光る君へ」で進行中のまひろ(紫式部)とききょう(清少納言)の交友関係は、脚本家の独自の想像力がフィクションとして大胆に織り込まれて進展してきているものと言える。この先どのように『紫式部日記』に記述された内容と整合させていくのだろうか・・・・そんなことが気になる。大河ドラマにおけるまひろとききょうの親交の進展状況から、紫式部と清少納言の関係をイメージする人は、「紫式部の実像」からはかなりかけ離れていくことになるのではなかろうか。紫式部と『源氏物語』、さらには藤原道長がどのように描き込まれるかに関心があるので、他にも部分的な違和感をいくつか抱きながらも、今まで見ることのなかった大河ドラマなのだが、「光る君へ」は見つづけている。

 余談として『紫式部日記』での清少納言批評には、別の解釈もある点をご紹介しておこう。池田亀鑑著『源氏物語入門[新版]』(教養文庫)は「作者とその像」において、次のように説明している。
 「日記の中で、和泉式部の奔放な行動や、清少納言の衒学的な態度を非難しているのも、決して対抗心や嫉妬心ではありますまい。実は、自分の内部に対する間接的な鞭であったと考えていいでしょう。それだけに紫式部には、みずから高く己を持すといった性格がある」(p37)と。日記記述の解釈にも学者によりかなり幅がありそうだ。

 さて、本書の構成をご紹介しておこう。
 1章 セレブ二人の間を取り持つ
 2章 具平親王文化サロンと父たち
 3章 父為時の官僚生活の悲運
 4章 紫式部の少女時代
 5章 為時の越前守赴任
 6章 為時の任務と宣孝との結婚
 7章 女房の生活
 8章 紫式部の宮仕え
 9章 紫式部之宮中生活
 10章 中宮彰子御産による敦成親王誕生
 11章 献上本『源氏物語』
 12章 その後の紫式部

 本書から学んだことの要点をいくつか取り上げ、覚書を兼ねてご紹介したい。
1. 紫式部が女房として仕えた当初は「藤原の式部」と呼ばれていたと推測される。
 『栄花物語』では「藤式部」と呼ばれている。父為時が式部丞だった。(2章)
2. 中務宮(具平親王)の邸・千種殿は文人サロンの場であり、紫式部の父為時の兄の
 為頼は具平親王と和歌における交流があった。為時と為頼は同じ敷地に住んでいたと
 思われるため、紫式部はおじから和歌の手引きをしてもらったと推定できる。
 紫式部にとり、具平親王は近しい人物であった。宮中の文化から諸芸能に至るまでの
 親密な師でもあったと推定できる。 (1章~3章)
3. 為頼・為時の母(定方女)と、具平親王母(荘子)はおば・姪の関係であり、紫式
 部と具平親王の祖母は姉妹である。紫式部と具平親王は遠縁の関係でもある。(3章)
4. 夫・宣孝の喪が明けたころから、紫式部が成長する娘賢子の理想的な将来の姿とし
 て筆を執ったのが「若紫物語」であり、短編として書かれたと著者は想像している。(8章)
5. 南北朝時代の書『河海抄』は、大斎院選子から中宮彰子に物語の求めがあり、中宮
 は紫式部に新しい物語を作り差し出すよう命じた。それで紫式部が石山寺に参籠して
 物語を書き始めたとの説を伝えている。『源氏物語』の生み出される端緒となる。
  大斎院選子は、12歳で賀茂斎院に卜定めされ、天皇五代57年間その任にあり、物語
 を収集し、文化サロンを形成した。選子内親王は具平親王の妹である。(7章~8章)
6. 紫式部が女房となったのは、寛弘2年(1005)12月29日とする説が有力。だが、その
 直後から宮中を退出し、出仕拒否の期間が続く。寛弘4年4月当時には、すでに女房で
 あったとしかいえない。 (8章~9章)
7. 『紫式部日記』は人に読まれることを前提に書かれた作品である。
 寛弘5年7月から始まり、中宮彰子が敦成親王を出産する見聞記は、道長の求めに応じ
 て記された高度なドキュメンタリー作品となっている。道長とかその周辺から資料が
 与えられないと書くことができないほどの複雑さを含む。(10章)

 さらに詳しくは本書をお読みいただくとよい。

 本書の中で、著者が興味深いことを述べている。最後にそのことに触れておこう。本文から引用する。
*「物語に登場する人物のようだ」とか、「まるで絵に描かれているのと変わらない」などとする表現が、しばしば清少納言や紫式部の口から出される。当時の人々のものを見る眼は、物語の内容とか絵の場面がまず先に想念に浮かび、その基準で現実の姿を判断していたのであろうか。それほど、日常生活の中に、物語や絵が普通に存在し、人々に共有されていたのであろう。  p247
*清少納言がいた定子サロンにも、大斎院の女房集団にも、わがほうはけっして引けをとらないとする。『紫式部日記』は人々に読まれることを前提にしているだけに、世の人が想像している以上に自分たちは高度な文化集団であると主張したく、それはまた道長の願いでもあった。  p298

 紫式部その人を知るための学究的なアプローチとして役立つ一冊である。
 それにしても、紫式部は幾重もの御簾の向こう居るかの如く、素顔を見せることのない人だなぁと感じる次第。
 
 ご一読ありがとうございます。

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『千里眼 ファントム・クォーター』  松岡圭祐   角川文庫

2024-05-20 17:59:22 | 松岡圭祐
 千里眼・岬美由紀の新シリーズ。書き下ろし第2弾! とは言えど、平成19年(2007)1月刊行である。私がこのシリーズを知ったのは、シリーズが脱稿されたよりも遅かったと思うので、著者の近年の作品群とパラレルに、このシリーズを読み継いできている。

 この第2弾、新シリーズの第1作に敷かれていた伏線が浮上してくる。第1作の読後印象記の中で、次の点に触れている。
<< 美由紀がトレーニングを受けている時期に、全く離れたミラノでの場面がパラレルに挿入される。それは東大の理工学部を卒業してイタリアに渡った小峰忠志に関わる話である。彼は、遊園地用のアトラクションを製造する大手企業の子会社において、”存在するものを無いように見せる”技術として、フレキシブル・ペリスコープとなづける円筒を開発した。だが、その製造費用の巨額さでは採算に合わないと判断され、小峰を含む開発チームは解雇される。解雇された小峰に、マインドシーク・コーポレーション特殊事業課、特別顧問と称するジェニファー・レインが接触してくる。そして、2年後に南イタリアのアマルフィ海岸の崖からの自動車転落事故で小峰が事故死したことがさりげない挿話となる。これで小峰のことはストーリーからは潜行してしまう。新シリーズの次の展開への大きな伏線がここで敷かれた。>>
 <フレキシブル・ペリスコープとなづける円筒> これが、この第2作の核心になっている。

 このストーリー、実に巧みな構成になっている。映画の予告編風に、本作の小見出しに絡めて、コマ撮り風の紹介を加えてみよう。

[千里眼の女]
 冒頭、場所はシベリアの港町ナホトカ。ロシアン・マフィアのペルデンニコフに、情報屋家業のベテラン、アサエフが現代の日本で”千里眼の女”と称されるのが岬美由紀であるという情報を伝える。アサエフが得た報酬はペルデンニコフの拳銃から放たれた銃弾だった。

[ストップ安]
 美由紀は高遠由愛香(タカトオユメカ)と一緒にメルセデス・ベンツCLS550で、プレイガイドをめざす。その時、美由紀は証券会社の電光掲示板に目を止める。国内製造関連主要企業の株価が軒並み大暴落、日本以外の国では重工業を中心にあらゆる業種の株価が軒並み高騰という表示。市場が開いて間なしにストップ安がかけられていた。美由紀はその異常さに懸念を感じる。

[マトリョーシカ]
 在日ロシア大使館の館員二人がチェチェン難民の男の子が作ったという木彫りのマトリョーシカを手土産に、臨床心理士会のビルを訪れ、美由紀と面談する。チェチェン難民に対して現地に赴き、ボランティアで救助活動に加わって欲しいという依頼だった。美由紀は受諾する。明後日成田発という慌ただしいスケジュールを知らされる。

[ステルス・カバー]
 由愛香との待合場所にメルセデスで向かおうとした美由紀に、リムジンが接近してきた。運転手に後部座席へ誘われる。航空自衛隊の広門空将が居て、防衛政策局の佐々木洋輔を紹介される。車内で佐々木が美由紀に円筒形のフレキシブル・ペリスコープに関する資料を見せる。それをトマホークに被せれば、見えない巡航ミサイルが出現すると語る。対策チームに美由紀が参画するようにとの要請だった。対策チームは3日後から稼働すると言う。

 ここで第1作の伏線が恐怖の武器に関連付けられて、浮上してくる。だが、美由紀は臨床心理士として、ボランティア活動に出向くことを選択する。
 この第2作のおもしろいところは、最初から最後まで、底流として、セブン・エレメンツ来日公演のチケット獲得のための行動譚が織り込まれていくところにある。美由紀の日常生活の一面がこのストーリーでいわばオアシスになっている。
 美由紀のマンションに、萩庭夕子と名乗る研修予定の大学生が訪れる。だが、それは偽名でクライアントの水落香苗だった。彼女の挙動から美由紀は直ちに見抜いた。一泊させて、翌朝同僚に香苗を引き渡すことを美由紀は予定に組み入れた。翌朝9時過ぎ、メルセデスで同僚の所を経由し、香苗を託した後に羽田に向かうつもりだったが、美由紀はメルセデスでの移動中に想定外の事態に遭遇する。香苗は美由紀の状況に巻き込まれていくことに・・・・・。マトリョーシカが禍となる。

[ゲーム]~[ガス室]
 場面は一転する。美由紀が意識を取り戻す。美由紀は全く覚えのない場所に居た。そこはアンデルセンの童話の挿絵に似た景色なのだ。二世紀ほど前のデンマーク風の二階建ての屋敷と森が見える広場。美由紀は調べてみると何も身に所持していない。近くのベンチには、奇妙なプラスチックの物体を見つける。板チョコほどの大きさで、二つ折り、液晶画面が付いたロールプレイングゲーム機だった。そのゲーム機の液晶画面に出ている景色は、美由紀が今居る空間と同一だ!!!
 美由紀はゲーム機の液晶画面にシンクロナイズするゲームの世界に投げ込まれて居るのだ。なぜ、そんな事態になったのか?
 ゲーム機を手にしながら、美由紀はこの非現実的なゲームの世界のルールを体験学習により解析し、ルールを発見・理解しつつ、この世界でまずはサバイバルしなければならない。そんな窮地に美由紀は立たされた。

 このストーリー展開の飛躍が、まずおもしろいではないか!
 ロールプレイング・ゲームを日頃楽しむ世代には、実に楽しいストーリー展開として読めることだろう。それを楽しむことのない世代にとっても、この設定は異相空間の話として楽しめる。
 
 美由紀にとって、このゲームが進行するリアルな空間は、最終目的をつかめぬまま、今、ここで直面しサバイバルを迫られた喫緊の課題になっていく。ここが、ファントム・クォーター(幻想の地区)なのだ!

 美由紀とユベールがサバイバルした。セスナ172Nで、美由紀は島から脱出する。

[教官]
 美由紀が脱出して4日が過ぎた。美由紀は市谷にある防衛省A棟内のある会議室で、広門空将と佐々木と面談せざるを得ない状況に居る。ここから現実の世界が始まっていく。
 あのファントム・クォーターで美由紀が直面した世界と日本の現実の世界が繋がっていく。美由紀がファントム・クォーターで掴んだ恐るべき事実と、広間と佐々木が懸念する事態が直結する。
 さて、ここからこのストーリーは、第二の山場へと昇り詰めていくことになる。
 ひとこと触れておこう。課せられたことは見えざる武器を操る組織の行動を如何に阻止するかである。
 岬美由紀が活躍する場面が進展する。そのプロセスを本書でお楽しみいただきたい。

 2点付け加える。一つは遂に由愛香等は、代々木体育館でのセブン・エレメンツのステージを観客として体験できることになる。
 もう一つは、クライエントの水落香苗の抱えた悩みに美由紀が対応し、紆余曲折を経て、香苗は認知療法で快癒に向かう。そのミニ・ストーリーがきっちりと織り込まれていく。中途半端な登場のさせ方にしないところが実におさまりとしてよい。

 第二の山場においても、トリッキーな落とし所がちゃんと組み込まれている。著者はやはり実に巧みなストーリーテラーだと思う。

 ご一読ありがとうございます。

こちらもお読みいただけるとうれしいです。
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