散文的で抒情的な、わたくしの意見

大河ドラマ、歴史小説、戦国時代のお話が中心です。

ドラマJIN-仁-の面白さを2つほど

2019年06月13日 | ドラマ仁
ドラマJIN-仁-の面白さを2つほど

1、歴史の変更に臆病なタイムトラベラー

主人公の南方仁先生は幕末にタイムスリップした外科医です。
面白いのは、既に第一話段階で「歴史を変更していいのだろうか」と悩むことです。
コレラが細菌に由来することも最初は隠します。コレラ細菌説を江戸期に持ち込むことに躊躇するのです。
が橘咲という女性に励まされ、結局は医学で人を救う道を選びます。

それでも毎回毎回、歴史の改変に対して異常なぐらい悩みます。設定としては未来に恋人がおり、彼女に何か影響を与えないか迷うわけですが、それにしてもこれほど歴史の改変に臆病なタイムスリップものは珍しいかも知れません。

最終的にはパラレルワールドを採用することで、歴史の改変との調和が図られます。

2、西洋医学と東洋医学の調和

南方先生は結局現代に戻りますが、ほぼ同じ世界に戻ったと思ったら、一点重要な変更がなされます。
大学病院に東洋医学内科がおかれ、保険制度が充実し、総合医療が行われているらしいのです。
ちらとしか描かれませんが。

西洋医学が発達する裏で、その限界も分かってきて、東洋医学というか「全身治療」の必要が理解されつつあります。
全身とは「生活習慣を含めた全身」ということです。
南方先生がタイムスリップした結果、西洋医学と東洋医学が今より更に融合したパラレルワールドが出現する。

これは大変面白い視点だと思います。

ドラマ「仁」・橘咲(綾瀬はるか)とシーボルトイネ

2019年06月13日 | ドラマ仁
ドラマ仁を初めてしっかりと見ました。

綾瀬はるかさん演じる橘咲が魅力的で、シーボルトイネみたいだなと思ってみていました。

でもドラマにシーボルトイネは登場しません。しかし原作では登場するし、橘咲に大きな影響を与えるようです。

そりゃそうです。ドラマで描かれる彼女の一生はシーボルトイネにそっくりです。

では相方の南方仁先生はイネの恋人である村田蔵六、大村益次郎かなと思いましたが、これは違っているようです。まあ似てもいません。「無私」な点が似ているのみです。

そもそも村田蔵六は途中で医者をやめて軍学家に転向しますし。

この橘咲さんという武士の娘は非常に謙虚でありながら「ものすごい強い女性」として描かれています。

一方思い人の南方仁先生は、江戸では神のような医師とされながら、そもそも現代人なので、さらにトラウマを持った人なので、いつもいつも泣いています。

で、橘咲さんに励まされて、毎回毎回、復活します。復活しても、次の回にはまた泣いています。

完結編は「龍馬暗殺阻止、しかしできず」がテーマとなります。このドラマの龍馬は結構いい感じです。彼も結構へたれなのです。道に迷っている。で、南方仁に影響されて己の生き方を決めていきます。かっこよすぎる龍馬じゃなくて、いい感じです。

長州征伐を見た南方先生は龍馬を責めます。「日本人同士を戦わせてどうなる。戦をしてどうなる。龍馬さんは武器商人に成り下がっている」

面白い視点です。そういう視点から龍馬を責めたドラマはほぼないでしょう。それでも南方先生は友達として龍馬暗殺阻止に動きますが、結局は救えません。

龍馬が生きていたら、というのはいかにも想像力をかきたてる設定ですが、まあ誰もが思うように「商人」になっていたでしょう。それに明治維新は何も龍馬によって成ったわけでもなく、彼も数多い志士の一人に過ぎません。ドラマにおいても勝海舟などは龍馬がいなくても、代わりが出てくると言っています。つまり南方先生は日本の為に龍馬を生かそうとするわけではなく、友人だから助けようとするわけです。

さて橘咲。一生を医学に捧げる人生を送ったことになっています。一方南方先生は現代に戻り「かつての恋人の生まれ変わりのような女性」と出会います。この点ちょっと咲が可愛そうです。

原作では南方先生は2つに分かれ、過去では咲と結婚し、現代では彼なりの道を歩むとなっているようです。そっちのほうがいいかなと。咲と結婚させてやりたかったな、と思わせるドラマです。

緒方洪庵とドラマJIN「仁」

2019年06月13日 | ドラマ仁
ドラマJIN「仁」には前半の重要人物として緒方洪庵が登場します。武田鉄矢さんです。

きちんと見たのは今回が初めてです。

日本史上の巨人でありながら映像化されることは多くはない緒方洪庵ですが、脚本がよくできており、彼の偉大さは十分に伝わってきます。

現代からタイムスリップした外科医である南方仁の正体にうすうす気がついており、彼から学ぶことに対して極めて謙虚な姿勢をとります。

が、ドラマでも史実通り結核で亡くなります。

ドラマではペニシリンの製造が描かれます。江戸期なら結核菌に耐性は少なく、ペニシリンが効く可能性はあったと思いますが、それを使用するシーンはありません。

ペニシリンでは結核は治らないという前提にたって描かれます。

緒方洪庵は彼自身の功績もさることながら(種痘など)多くの門弟を育てます。

その第一が福沢諭吉でしょうが、第二は村田蔵六です。両名とも塾頭になっています。

さてドラマ。

病原細菌との戦いが描かれます。梅毒、コレラ、感染症などです。

パスツールが病原細菌をはっきりと特定したのが、1860年代です。つまり1867年の大政奉還前後になってやっと、病原細菌説が確立していくわけです。

それによって隔離や消毒などの治療は進んでいきますが、抗生物質が発見されるのが1928年。それがつまりペニシリンです。発見者はフレミング。

調べてみると実用化は1942年です。終戦の三年前。海外ですらそれまで抗生物質はなかったわけです。

私があまり「昔は良かった」とか言いたくないのは、こういう事実があるからでもあります。