「粛々とすすめる」

いうまでもなく政治家が民の声をおさえこんで自分たちの権力を実施していこうという時のセリフである。菅官房長官はこの言葉は使わないというようなことを言っていたが、安倍首相はやはり「辺野古への基地移転」を強行することを念頭にこの語を使っている。

沖縄県の知事を先頭に沖縄県民の基地移設反対の声を踏みにじっていこうという政治権力者がいう「粛々として進める」という言葉が実に不気味である。

若い頃、私は漢詩に興味をもちかなり多くのそれを覚えることに努めた。この中の一つに「川中島」がある。「漢詩」というより江戸期の学者頼山陽が詠んだ詩だから「日本人の漢詩」の一つである。詩の題は「川中島」ではないが、

  鞭声粛粛夜過河(べんせいしゅくしゅく夜川をわたる)
  暁見千兵擁大牙(あかつきにみる千兵のたいがを擁するを)
  遺恨十年磨一剣(遺恨なり十年いっけんをみがく)
  流星光底逸長蛇(流星こうてい長蛇を逸す)

 上杉謙信が宿敵武田信玄を倒すべく10年間の悲願をもってついに襲うことができた
 しかし残念なことに今一歩で信玄を取り逃がすことになった、というような意味である。

この時に粛々が使われている。詩の文脈からみても「絶対にねらいをつけた敵を倒すのだ」という趣旨が読み取れる。最近の「権力的政治」を形容する語としてまさに的確性を持っていると言えないだろうか。

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